来週の為替相場見通し:『ドル円は日米金融政策イベントを経て急上昇。トレンド転換に期待』(9/21朝)

ドル円は週初に記録した年初来安値139.58をボトムに切り返すと、週末にかけて一時144.50まで急伸しました。

来週の為替相場見通し:『ドル円は日米金融政策イベントを経て急上昇。トレンド転換に期待』(9/21朝)

『ドル円は日米金融政策イベントを経て急上昇。トレンド転換に期待』

〇今週のドル円、週明け早々年初来安値139.58まで急落後、週末にかけて、週間高値144.50まで上昇
〇FOMCが予想ほどハト派的では無かったことに対する安堵感、日銀植田総裁のハト派的発言等が背景
〇ドル円、主要テクニカルポイント上抜け、強い買いシグナルも点灯、地合い改善
〇FOMCの「タカ派的な利下げ」と日銀による過度な利上げ期待の後退がドル円をサポート
〇ドル円相場の見通しを、ベア(弱気)からブル(強気)へと変更
〇来週の予想レンジ(USDJPY):142.00ー147.00、(EURUSD):1.0950−1.1250

今週のレビュー(9/16−9/20)

<ドル円相場>
今週のドル円相場は、週初140.74で寄り付いた後、(1)前週来続くドル売りの流れの継続(米WSJ紙と英FT紙による50bp利下げの可能性を示唆する記事掲載の影響を受けて、米FRBによる大幅利下げ観測再燃→米ドル全面安)や、(2)米中貿易摩擦に端を発した米中対立激化懸念(米通商代表部は中国から輸入する電気自動車などへの制裁関税を9/27に引き上げることを発表→中国商務省は対抗措置を示唆)、(3)市場参加者に意識されていたサポート水準(昨年12/28に記録した安値140.25や心理的節目140.00)を割り込んだことに伴う仕掛け的なドル売り・円買いが重石となり、週明け早々に、年初来安値139.58(昨年7/28以来となる約1年2カ月ぶり安値圏)まで急落しました。

しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(4)急ピッチな下落に対する反動買いや、(5)高市経済安全保障担当相による「金融緩和は我慢して続けるべき」「低金利を続けるべき」とのハト派的な見解発表、(6)米9月ニューヨーク連銀製造業景況指数(結果+11.5、予想▲4.0)の市場予想を上回る結果、(7)米8月小売売上高(結果+0.1%、予想▲0.2%)の市場予想を上回る結果、(8)米8月設備稼働率(結果78.0%、予想77.9%)の市場予想を上回る結果、(9)米8月鉱工業生産(結果+0.8%、予想+0.2%)の市場予想を上回る結果、(10)米FOMCが予想されたほどハト派的では無かったことに対する安堵感(ボウマンFRB理事が25bpの利下げを主張していたことや、ドットチャートの下方修正幅が市場参加者の織り込み水準に到達しなかったこと)、(11)パウエルFRB議長による「FRBが急いでいることを示唆する予測は何もない」「50bpの利下げ幅を新たなペースと見なすべきではない」との慎重な発言、

(12)米金利上昇に伴うドル買い圧力、(13)米9月フィラデルフィア連銀製造業景況指数(結果+1.7、予想0.0)の市場予想を上回る結果、(14)米新規失業保険申請件数(結果21.9万件、予想23.0万件)の良好な結果、(15)米8月景気先行指数(結果▲0.2%、予想▲0.3%)の市場予想を上回る結果、(16)米主要株価指数の堅調推移、(17)植田日銀総裁によるハト派的な発言(植田総裁は会合後の記者会見で「経済・物価情勢の見通し実現に応じて政策金利を引き上げ、金融緩和度合いを調整していく」と発言しつつも、一方で「追加利上げに決まったペースやスケジュールはない」「年初以降の円安に伴う物価の上振れリスクは相応に減少している」「政策判断にあたり(海外経済の状況などを)確認していく時間的余裕はある」との慎重な発言あり)、(18)上記17を背景とした日銀による過度な利上げ期待の剥落が支えとなり、週末にかけて、週間高値144.50まで上昇しました。引けにかけて小反落する下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間9/21午前5時30分現在)では、144.00前後で推移しております。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週初1.1078で寄り付いた後、(1)前週来続くドル売りの流れの継続や、(2)ECBによる10月利下げ観測の後退(ラガルドECB総裁は「欧州経済が悪化すれば10月利下げの可能性も出てくるが包括的な情報が入手できるのは12月会合」と発言)、(3)ドイツ連銀ナーゲル総裁による「消費者物価指数は来年末までにECBが目標とする2%まで減速する見通しだが、政策当局者は警戒を緩めてはならない」との見解発表、(4)ユーロ圏7月貿易収支・季調済(結果155億ユーロ黒字、予想150億ユーロ黒字)の市場予想を上回る結果、(5)リトアニア中銀シムカス総裁による「10月利下げの可能性は非常に小さい」とのタカ派的な発言、(6)米FOMCでの50bpの大幅利下げ決定、(7)米金利低下に伴うドル売り圧力が支えとなり、週央にかけて、週間高値1.1189(8/27以来)まで上昇しました。

もっとも、買い一巡後に伸び悩むと、(8)パウエルFRB議長による「FRBが急いでいることを示唆する予測は何もない」「0.50%の利下げを新たなペースと見なすべきではない」との慎重な発言や、(9)上記8を背景とした米ドルのショートカバー誘発、(10)米金利上昇に伴うドル買い圧力が重石となり、週後半にかけて、週間安値1.1069まで反落しました。もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、(11)欧州株の堅調推移(ドイツDAXの史上最高値更新)が支えとなり、本稿執筆時点(日本時間9/21午前5時30分現在)では、1.1160前後で推移しております。尚、今週発表されたユーロ圏9月ZEW景況感指数(結果+9.3、前回+17.9)、ドイツ9月ZEW現況指数(結果▲84.5、予想▲80.0)、ドイツ9月ZEW景況感指数(結果+3.6、予想+17.0)はいずれも冴えない結果となりましたが、ユーロ売りでの反応は限られました。

来週の見通し(9/23−9/27)

<ドル円相場>
ドル円は週初に記録した年初来安値139.58をボトムに切り返すと、週末にかけて一時144.50まで急伸しました。この間、日足ローソク足が主要テクニカルポイント(一目均衡表転換線、21日移動平均線、ボリンジャーミッドバンド)を上抜けした他、4時間足ベースで強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」や「強気のバンドウォーク」が点灯するなど、テクニカル的に見て、地合いの改善を強く印象付けるチャート形状となりつつあります。

また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)米FRBによる過度な利下げ期待の剥落(米FOMCで50bpの大幅利下げが決定するも、ボウマンFRB理事が50bpの利下げに反対していたことや、ドットチャートの下方修正幅が市場参加者の織り込み水準に到達しなかったこと、パウエルFRB議長より「FRBが急いでいることを示唆する予測は何もない」「50bpの利下げ幅を新たなペースと見なすべきではない」との発言が見られたこと等を踏まえると、今回の利下げは「タカ派的な利下げ」と解釈可能)や、(2)日銀による過度な利上げ期待の後退(植田日銀総裁は「経済・物価情勢の見通し実現に応じて政策金利を引き上げ、金融緩和度合いを調整していく」と発言しつつも、一方で「追加利上げに決まったペースやスケジュールはない」「年初以降の円安に伴う物価の上振れリスクは相応に減少している」「政策判断にあたり(海外経済の状況などを)確認していく時間的余裕はある」との慎重な発言あり)、

(3)上記1、2を背景とした円キャリートレードの再開期待(日米金利差は当面縮まらないとの見方から日米金利差に着目したドル買い・円売りが再開するとの期待感)、(4)株式市場の堅調推移(リスク選好の円売り圧力)など、ドル円相場の反発を期待させる材料が増えつつあります。日米金融政策イベント通過に伴うアク抜け感(材料出尽くし感)もドル円相場を下支えすると見られることから、当方ではドル円相場の見通しを、ベア(弱気)からブル(強気)へと変更いたします。尚、来週は米9月カンファレンスボード消費者信頼感指数や、米第2四半期GDP確定値、米8月耐久財受注、米8月PCEコアデフレータ、本邦9月消費者物価指数、米当局者発言(アトランタ連銀ボスティック総裁、シカゴ連銀グールズビー総裁、ミネアポリス連銀カシュカリ総裁、ボストン連銀コリンズ総裁、クグラーFRB理事、パウエルFRB議長、ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁、バーFRB副議長など)、本邦自民党総裁選投開票などに注目が集まります。

来週の予想レンジ(USDJPY):142.00ー147.00

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は年初来高値圏での底堅い動きが続いています。日足ローソク足が全てのテクニカルポイント(21日線、50日線、90日線、200日線、一目均衡表転換線、基準線、雲上下限、ボリンジャーミッドバンド)の上側で推移していることや、強い買いシグナルを示唆する「強気のパーフェクトオーダー」「一目均衡表三役好転」が点灯していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは強いと判断できます。但し、アップサイドに強力なレジスタンスとして意識される1.1200の抵抗帯が控えているため、ここからの更なる上昇は容易では無いと考えられます。

また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)欧州経済の先行き不透明感(ドイツ経済の先行き不安)や、(2)上記1を背景としたECBによる根強い追加利下げ観測、(3)米FRBによる過度な利下げ期待の剥落、(4)上記1、2を背景とした欧米金融政策の方向性の違いなど、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が揃っています。来週予定されているユーロ圏の主要経済指標(ユーロ圏9月製造業PMI、ユーロ圏9月サービス業PMI、ドイツ9月IFO景況感指数、ユーロ圏9月欧州委員会景況指数)が市場予想を下回る場合や、欧州当局者(エルダーソンECB専務理事、チポローネECB専務理事、ドイツ連銀ナーゲル総裁、ラガルドECB総裁、デギンドスECB副総裁、フィンランド中銀レーン総裁、レーンECB専務理事など)よりハト派的な発言が見られる場合には、ECBによる追加利下げ観測再燃→欧州債利回り低下→ユーロ売りの経路で、ユーロドルに強い下押し圧力が加わるシナリオも想定されるため、当方ではユーロドル相場の短期的な見通しをブル(強気)からベア(弱気)へと変更いたします。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.0950−1.1250

注:ポイント要約は編集部

『ドル円は日米金融政策イベントを経て急上昇。トレンド転換に期待』

ドル円日足

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