FOMCと日銀金融政策決定会合がメインイベント
今週のレビュー(9/9−9/13)
<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初106.83で寄り付いた後、早々に週間安値となる106.77まで下落しました。しかし、@グローバルに広がるリスク選好ムードに下支えされると、A9/19に開催される日銀金融政策決定会合で「金融緩和の是非が議論される」との一部報道や、Bトランプ米大統領による「米中通商協議を来週再開する」との発言、C米・8月生産者物価指数(結果1.8%、予想1.7%)及び同コア指数(結果2.3%、2.2%)が市場予想を上回ったこと、D中国が一部の米国製品に対して追加関税適用の免除を発表したこと、Eトランプ米大統領が「善意のしるし」として対中関税の引き上げ時期を10/1から10/15に先送りすると発表したこと、
F米・8月消費者物価コア指数(結果2.4%、予想2.3%)が2018年7月以来の伸びを示したこと、Gトランプ米政権が「追加関税の一部先送りや撤回に繋がる限定的な合意を検討している」と報じられたこと(※後にホワイトハウスが事実では無いと否定)、H米長期金利が急上昇したこと(米10年債利回りは週初の1.553%から週末には1.903%へ)などが支援材料となり、9/13には、8/1以来となる高値108.26まで急伸しました。引けにかけて反落するも下値は堅く、結局108.05近辺での越週となっております。
尚、今週はトランプ米大統領が外交及び安全保障を担当するジョン・ボルトン大統領補佐官を更迭した他、「FRBは政策金利を0%かそれ以下に引き下げるべき。それを受けて我々は債務の借り換えを行う」「他の国が既にやっていることを認めようとしないのは、馬鹿正直なパウエル氏とFRBだけ」「愚か者共の為に我々は千載一遇のチャンスを失っている」「ECBは非常に強いドルに対するユーロの価値を引き下げることに尽力・成功し、米国の輸出に打撃を与える」「FRBは手をこまねいているだけだ」とFRBを痛烈に批判(=利下げ圧力)しましたが、為替市場の反応は限定的なものに留まりました。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、ECB理事会(9/12)を前に様子見ムードが根強く、週前半は方向感を欠いた値動きに終始しました。9/12に開催されたECB理事会では、@預金ファシリティ金利の引き下げ(▲0.4%→▲0.5%)、A資産買い入れ(QE)の再開(11/1から月額200億ユーロ)、B貸出条件付き長期資金供給オペ(TLTRO)の条件緩和(適用金利:政策金利+10bp→政策金利、満期期間: 2年→3年)、C金利階層化の導入(マイナス金利の副作用を軽減する目的)、Dフォワードガイダンスの変更(国債購入期限は「必要である限り」と無期限に変更、低金利の継続期間についても「強く収束するまで」と期限を設けず)が発表されました。
ほぼ満額回答の緩和パッケージとなったことで、直後は7営業日ぶり安値となる1.0927まで急落しました。しかし、年初来安値1.0926まで後1ポイントのところで下げ渋ると、材料出尽くし感に伴うショートカバーや、ドイツやフランス、オランダ、オーストリア、エストニア中銀総裁が資産買入再開に反対したとの一部報道、資産買い入れ規模が市場予想に届かなかったこと、ドラギECB総裁が「財政出動を講じるべき」との発言を行ったことなどが支援材料となり、週末にかけては、約3週間ぶり高値となる1.1109まで急伸しました。引けにかけて反落するも下値は堅く、結局、1.1070前後での越週となっております。
来週の見通し(9/16−9/20)
<ドル円相場>
ドル円は一目均衡表雲上限を突破し、@約4ヶ月ぶりに強い買いシグナルを表す三役好転が出現しました。Aトレンドの方向性を示唆するボリンジャー・ミッドバンドを8営業日連続で上回っていること、B強い上昇トレンドを示唆するバンドウォーク(上限)が続いていること、C8/12安値(105.05)と8/26安値(104.45)を底とするダブルボトムの上放れに成功したこと、D90日移動平均線(107.85)を突破したこと等も考慮すれば、テクニカル的に見て「ドル高・円安」基調の継続が予想されます。目先は8/1に記録した高値109.33を上抜けるかどうかがポイントとなります。同水準を突破できれば、ダウ理論における下落トレンドの終了が明らかとなり、中長期的な「下落」→「中立」へのトレンド転換が発生することになります。
来週は、9/17ー9/18に予定されているFOMC(米連邦公開市場委員会)がメインイベントとなります(政策金利やドットチャートの発表は日本時間9/19の午前3時、パウエルFRB議長記者会見は同日午前3時30分)。政策金利の引き下げ(▲25bp)は既に織り込まれている為、市場の焦点は、FOMC参加者の予想分布図(ドットチャート)に移っております。年内後1回(今回とは別に)の利下げが示されれば、株高を通じてドル円はもう一段の上昇が見込まれます(メインシナリオ)。一方、今回を以って利下げ打ち止めが示さる場合は、「米長期金利上昇→ドル高」の経路と、「株安→リスク回避の円買い」の綱引きが生じる為、動きづらい展開となりそうです。また、来年末にかけて2回以上の利下げ(今回とは別に)が示された場合には、「株高→リスク選好の円売り」の経路より、「米長期金利低下→ドル売り」の経路が勝ると見られ、ドル円には幾分下落圧力が加わると予想いたします。
加えて、来週は9/19に予定されている日銀金融政策決定会合にも注目が集まります。黒田総裁が追加緩和の可能性を示唆したことで、俄かに追加緩和期待が高まっていますが、日銀は今回も動かないと予想されます。背景には、ドル円が既に持ち直していること(円高リスクが後退していること)や、トランプ米大統領への配慮(同氏による通貨安批判の矛先を避ける為)、英国情勢(合意なき離脱が起きるか否か)や消費増税の影響を見極めたいとの本音があるからです。日銀による追加緩和見送り決定後はやや失望的な円高を誘う可能性があり注意が必要でしょう。
以上の通り、ドル円は全般的なリスク選好ムードや、テクニカル的なモメンタムの強さに下支えされる形で、来週も「底堅い動き」が続くと予想されます。FOMCや日銀金融政策決定会合、米中通商協議を巡る続報、トランプ米大統領のツイートを睨みつつも、109円台を試す展開となりそうです(ドル円の予想レンジ:106.75ー109.25)
<ユーロドル相場>
ユーロドルは、ECBによる予想を超える緩和パッケージを受けても尚上昇に転じたことで、下値の堅さが改めて確認されました。この間、一目均衡表転換線や、ボリンジャーミッドバンド、一目均衡表基準線の突破に成功した他、9/3安値(1.0926)と9/12安値(1.0927)を起点としたダブルボトムの上放れも実現するなど、テクニカル的にみて「続伸リスク」が警戒されます。目先は、一目均衡表雲下限(1.1150)や8/26高値1.1166を試す動きとなりそうです。
一方、ファンダメンタルズ的に見ると、@米中貿易摩擦が欧米貿易摩擦に波及するリスクや、Aユーロ圏経済及び物価の先行き不透明感(ドイツ経済のリセッションリスクなど)、Bイタリアの財政不安、C中東を巡る地政学的リスクなど、不安材料は山積みです。ドラギECB総裁はこうしたネガティブ要素に立ち向かうべく、金融政策と財政拡張の両面から下支えすべきと訴えましたが、実現性は不確かです。しばらくは(次年度予算策定が始まる10月頃までは)、財政拡張期待を背景にユーロ高基調が続くと見られますが、欧州圏で財政拡張の足並みが揃わなければ(或いは財政出動規模が予想より小さくなる場合)、忽ちユーロ売りに転じる恐れもありそうです。
来週は、9/17に予定されている独ZEW景況指数や、日米の金融政策イベントに注目が集まります。予想通りFRBが25bpの利下げに踏み切り、ドットチャートで年内追加利下げの方向性を示せば、株高を背景としたリスク選好ムードに下支えされる形でユーロドルは底堅く推移すると予想されます。また、財政出動期待を背景としたユーロ買いや、まだまだ切れていないユーロショートのロスカットもユーロドルを下支えする要因になると考えられます。当方ではユーロドルが一目均衡表雲下限(1.1150)や、8/26高値(1.1166)、90日移動平均線(1.1183)などが位置する1.11台半ばから後半へと続伸する展開をメインシナリオとして予想いたします(ユーロドルの予想レンジ:1.1000−1.1200)
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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