来週の為替相場見通し 『ドル円は米国経済指標を睨む展開。ユーロはECB理事会がメインイベント』(9/7朝)

来週は、9/11の米・8月生産者物価指数や、9/12の米・8月消費者物価指数、9/13の米・8月小売売上高など、米国ファンダメンタルズの結果に注目が集まります

来週の為替相場見通し 『ドル円は米国経済指標を睨む展開。ユーロはECB理事会がメインイベント』(9/7朝)

ドル円は米国経済指標を睨む展開。ユーロはECB理事会がメインイベント

今週のレビュー(9/2−9/6)

<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初106.25で寄り付いた後、@米中両政府が9/1付で追加関税の発動に踏み切ったことや、A英国にて解散総選挙の可能性が報じられたこと、B中国商務省による「米国の追加関税は大阪サミットの米中首脳会談で決定された合意を破るもの」との発言、C一部メディアより「米中貿易交渉を巡る9月会合の設定が難航している」との報道、D米・8月ISM製造業景況指数(結果49.1、予想51.3)の冴えない結果(※2016年8月以来となる好不況の分かれ目50割れ)が重石となり、9/3には、一時105.74まで急落しました。

しかし、E日銀の片岡審議委員より「経済や物価の下振れリスクが高まる中、先制的な政策対応が重要」と追加緩和を示唆する発言が報じられたことや、F香港のキャリー・ラム行政長官より「混乱の原因となった逃亡犯条例・改正案を正式に撤回する」との発言が見られたこと、G英下院が欧州連合からの合意なき離脱を阻止するための離脱延期法案を「賛成327票・反対299票」で可決したこと、H米中両国が閣僚級通商協議再開(10月初旬)に合意したこと、I米・8月ADP雇用統計(結果19.5万人、予想14.9万人)や、米・8月ISM非製造業景況指数(結果56.4、予想54.0)が市場予想を上回る好結果を記録したこと等が支援材料となると、9/5には、約1ヶ月ぶり高値となる107.22まで急伸しました。

もっとも、107円台では戻り売り意欲も根強く、伸び悩むと、週末にかけて再び反落。市場予想を下回る米・8月非農業部門雇用者数(結果13.0万人、予想16.0万人)の結果も重石となる中、結局106.90台まで押し戻されての越週となっております。尚、今週は、ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁による「米経済はリスクと不確実性に直面」「先行きを注視し適切に行動する」との発言や、セントルイス連銀ブラード総裁による「FRBは50bp利下げすべき」との発言、ボストン連銀ローゼングレン総裁による「米経済のリスクが鮮明となればFRBは積極的に利下げすべき」との発言、パウエルFRB議長による「適切に行動する」との発言など、ブラックアウト期間入りを前に、米当局者サイドよりハト派的な発言が相次ぎましたが、市場の反応は総じて限定的となりました。

<ユーロドル相場>

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.0990で寄り付いた後、@英国情勢の不安定化(解散総選挙の可能性を巡る報道)や、A9/12のECB理事会で包括的な緩和パッケージが示されるとの一部報道を材料に、翌9/3にかけて、2年3ヵ月ぶり安値となる1.0926まで急落しました。

しかし、Bエストニア中銀ミュラー総裁による「債券買い入れ再開の強い論拠はない」との発言や、Cフランス中銀ビルロワドガロー総裁による「ECBの債券購入再開が今すぐ必要かどうかは疑問」との発言、DラガルドIMF専務理事(次期ECB総裁)による「金融緩和は必要だが非伝統的政策が及ぼす副作用にも注意しなければならない」との発言(=複数の欧州当局者による市場の過度な緩和期待を牽制する発言)がショートカバーを誘発すると、E英下院が欧州連合からの合意なき離脱を阻止するための離脱延期法案を可決したこと(賛成327票・反対299票)や、Fイタリアにて新内閣が発足したこと、Gグローバルなリスク選好ムードを背景にユーロ円が急伸した事なども支援材料となり、9/5には、約1週間ぶり高値となる1.1084まで上値を伸ばしました。

その後はHボリンジャー・ミッドバンドや、一目均衡表基準線が控える1.10台後半では上値も重く、伸び悩むと、I良好な米経済指標(米ADP雇用統計や、米ISM非製造業景況指数)を受けた「米長期金利上昇→ドル高」の流れが重石となり、結局、1.1030近辺まで押し戻されての越週となっております。

来週の見通し(9/9−9/13)

<ドル円相場>
ドル円は、トレンドの方向性を示唆するボリンジャー・ミッドバンド(106.26)を上抜けした他、8/23高値(106.75)や、8/13高値(106.98)、8/9高値(107.08)を一時的に突破しました。また、強い売りシグナルを表す一目均衡表・三役逆転の終焉や、8/12安値(105.05)と8/26安値(104.45)を起点としたダブルボトムの上抜けなど、テクニカル的に見て、「下落→中立」へのトレンド転換が意識されます。

とはいえ、@世界的な貿易戦争が通貨安戦争(利下げドミノ)に波及するリスクや、A米中貿易摩擦を巡る不透明感、Bイランやトルコ、朝鮮半島、インドやパキスタンで燻る地政学的リスク、C世界経済の不安定化、D米国経済の減速懸念など、ファンダメンタルズ面での不安要素は山積みです。今週は、E英国の合意なき離脱リスクの後退や、Fイタリアを巡る政局不安の後退、G香港情勢の好転、H米中閣僚級通商協議の再開合意など、相次ぐポジティブ・サプライズにドル円が押し上げられる結果となりましたが、特に上記EとHについては、ヘッドライン次第で状況が一変するリスクを孕むなど、まだまだ油断は出来ません。また、I追加緩和の手札に乏しい日銀と、追加利下げを織り込む米国との金融政策格差は明らかであり、ドル円の上値は次第に重くなると予想されます。

来週は、9/11の米・8月生産者物価指数や、9/12の米・8月消費者物価指数、9/13の米・8月小売売上高など、米国ファンダメンタルズの結果に注目が集まります(※ブラックアウト期間に入ったことで、米当局者からの発言はありません)。米国経済指標の冴えない結果が示されれば、9/17ー9/18に予定されているFOMC(米連邦公開市場委員会)での大幅利下げを再度織り込む形で、米長期金利低下→ドル売りの流れが強まるシナリオも想定されます。米中貿易摩擦や英国を巡る潜在的なリスクは払拭されておらず、楽観ムードは長続きしないと考えられます。トランプ米大統領のツイートや、米経済指標の結果を睨みつつも、来週は一巡後の反落リスクに警戒が必要でしょう。(ドル円の予想レンジ:105.00ー108.00)

<ユーロドル相場>
ユーロドルは、週後半にかけて急伸(1.0926→1.1084)するも、結局一目均衡表基準線(1.1089)や、ボリンジャー・ミッドバンド(1.1078)を上抜けるには至りませんでした。週末にかけては、一目均衡表転換線(1.1021)付近まで押し戻されるなど、テクニカル的に「上値の重さ」が意識されます。

ファンダメンタルズ的に見ても、@米中貿易摩擦が欧米貿易摩擦に波及するリスクや、Aユーロ圏経済及び物価の先行き不透明感(ドイツ経済のリセッションリスクなど)、Bイタリアの財政不安、C中東を巡る地政学的リスクなど、不安材料は山積みです。来週発表されるECB理事会(9/12)での根強い追加緩和期待も、「欧州債利回り低下→ユーロ売り」の経路でユーロドルを押し下げる一因と考えられます。

来週は、9/12に発表されるECB理事会に注目が集まります。同会合での追加緩和決定は既に織り込み済みであり、市場の関心は、ECBがどのような緩和策を発表するかに移っています。当方では、@預金ファシリティ金利の引き下げ(▲10bp)、A金利階層化の導入(マイナス金利が金融機関に及ぼす悪影響を軽減する目的)、B長期的な低金利を約束するフォワードガイダンスに加えて、C年内量的緩和再開の発表を予想しております。上記Cについては、市場でも織り込まれておらず、仮に決定されればややサプライズ的に「ユーロ売り」が強まる恐れがありそうです。来週のユーロドル相場は、ECBによる追加緩和発表を材料に「上値の重い」展開が続くと予想いたします。(ユーロドルの予想レンジ:1.0875−1.1175)

ドル円は米国経済指標を睨む展開。ユーロはECB理事会がメインイベント

ドル円日足

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