ドル円見通し 乱高下一服で持ち合いだが不安材料もくすぶる(8/29)

乱高下が一服、新たな手掛かり欠けて105円台後半を中心とした持ち合いに入っている。

ドル円見通し 乱高下一服で持ち合いだが不安材料もくすぶる(8/29)

【概況】

8月23日夜に中国が米国への報復関税拡大を発表、米国が即座に対抗措置を発表したことでドル円は23日夜高値106.73円から26日朝安値104.45円まで急落し、今年1月3日以来の104円台に突入、2018年3月26日安値104.63円も割り込み、2016年11月9日のトランプ大統領誕生ショック時以来の安値水準となったが、26日夜には106.37円までV字反騰した。
急落し過ぎたことの反動とトランプ大統領が中国との電話協議に言及したことで揺れ返しが発生。その後は乱高下が一服、新たな手掛かり欠けて105円台後半を中心とした持ち合いに入っている。

8月26日はザラバの安値で104.45円まで下げたが、翌朝の終値は106.08円であり、終値ベースでは8月12日の105.28円、2018年3月26日底前日の104.69円を割り込んでいないため、新たな安値更新へ進まなければ2018年3月底や今年1月3日底と同様に円高がひとまず落ち着く可能性もあるが、円安ドル高へと流れが変わるには8月23日夜の暴落前高値106.73円、さらに8月13日高値106.95円を超えて107円台に乗せる必要があるだろう。9月1日には米中双方の関税拡大実施予定もある。

【米30年債と3か月TBの逆イールド発生】

NYダウは27日に120.93ドル安と反落したが28日は258.20ドル高と反発した。8月1日に急落した後は26000ドルを挟んだ乱高下で持ち合いを続けており、23日に前日比623.34ドル安の大幅下落となった後は23日のレンジ内での推移にとどまっている。
米10年債利回り小幅上昇の1.48%で終了したが、2年債利回りは1.50%で2年債利回りと10年債利回りの逆転が2日連続となった。またこの日は30年債利回りが1.97%で3か月物TB利回りの1.9924%を下回り、2007年以来の逆転現象となった。10年債利回りとTB利回りの逆転も68営業日連続しており、景気後退不安を反映した逆イールド現象が一段と広がっている印象だ。

【9月1日、予定通りの米中双方関税発動か】

8月26日にトランプ大統領はG7において「中国が電話してきた」と発言したが、26日及び27日に中国外務省は電話協議はなかったと否定した。
8月28日にトランプ大統領は中国との協議は(過去の米政権による協議と比較して)うまくいっているとツイートしたが、具体的な内容は伴っていなかった。
8月28日、米通商代表部(USTR)はトランプ大統領が8月1日に提示した総額3000億ドルの中国製品に対する第4弾の関税率を9月1日付けて5%引き上げて15%とする案を承認したと発表した。延期対象のスマートフォン等については12月15日付けで15%の関税を発動させる。ただし、トランプ大統領が8月1日に言及した既に実施済の総額2500億ドル相当の中国製品に対する関税率を25%から30%に引き上げる方針については28日時点で言及しなかった。

仮に10月1日からの関税率引き上げが見送られて閣僚級協議の日程が示され、米中双方が合意形成へ向けて従来より相当程度に前向きな姿勢を示せば市場も楽観を回復する可能性があるが、予定通りに9月1日から関税が拡大され、10月1日からの税率引き上げについてもUSTRが承認して実施される可能性が高まり、米中双方の批判合戦がエスカレートするなら市場は再び悲観に陥るだろう。週末にかけては駆け引き的な動きや発言も出てくるかもしれないので注意したい。

【強いドル政策を放棄する可能性は?】

ムニューシン米財務長官は通信社のインタビューで、米国による為替市場介入を「現時点で検討していない」と述べたが、「将来は状況が変わる可能性がある」とも述べた。米国は「強いドルは国益」とする姿勢を続けてきたが、最近のトランプ大統領は米連銀の利下げが不十分とし、ドル高が米国にとっては貿易上で不利益を招いていると批判しているため、ドル安誘導を仕掛ける可能性についても憶測を呼んでいる。この日のインタビューでムニューシン財務長官は、実際に為替介入することになれば単独ではなく同盟国と協調する可能性にも言及している。
米中通商協議が米国の思惑通りに進展せず、中国人民元は対ドルで下落を続けている。米連銀が7月末に利下げしたものの、それと前後して各国の利下げも拡大しているためドル指数は2月末からの上昇基調を継続している。トランプ大統領にとっては不満な状況であり、米中問題での進展が見られなければドル安誘導を始める可能性も否定できないところだ。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは8月21日朝安値から3日目となる8月26日朝安値で直近のサイクルボトムを付けて強気サイクル入りしたと思われる。高値形成期は23日夜高値を基準とすれば28日夜から30日夜にかけての間と想定されるので、105.50円以上での推移中は戻り高値を試す余地ありとするが、105.50円割れから続落の場合は弱気サイクル入りとみて29日の日中から9月2日朝にかけての間への下落と26日朝安値試しを想定する。

60分足の一目均衡表では28日夜の上昇で遅行スパンが好転、先行スパンも上抜いているので遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、105.50円割れからは両スパンそろって悪化となるので下げ再開とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は29日未明への上昇で70ポイントに到達したが、その後はやや失速している。50ポイントを割り込んでも切り返すうちは上昇余地ありとみるが、29日未明高値を上抜いたところで指数のピークが切り下がる場合は弱気逆行発生となりやすいと注意し、40ポイント割れからは下げ再開とみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、105.50円を下値支持線、29日未明高値106.22円を上値抵抗線とする。
(2)105.50円以上での推移中は106.22円超えから26日夜高値106.37円試しとし、さらに高値更新なら23日夜高値106.73円試しを想定するが106.50円以上は反落警戒圏としてその後の106円割れからは下げ再開を疑う。
(3)105.50円割れからは下げ再開として当初105円試しとする、105円割れではいったん買い戻しも入る可能性があるが、105円割れをスルーで下げる場合は26日朝安値割れへ進む可能性も高まると警戒する。

【当面の主な予定】

8/29(木)
10:00 (NZ) 8月 NBNZ企業信頼感 (7月 -44.3)
16:55 (独) 8月 失業者数 前月比 (7月 0.1万人、予想 0.4万人)
16:55 (独) 8月 失業率 (7月 5.0%、予想 5.0%)
18:00 (欧) 8月 経済信頼感 (7月 102.7、予想 102.3)
18:00 (欧) 8月 消費者信頼感確定値 (速報 -7.1、予想 -7.1)

21:00 (独) 8月 消費者物価指数速報値 前月比 (7月 0.5%、予想 -0.1%)
21:00 (独) 8月 消費者物価指数速報値 前年同月比 (7月 1.7%、予想 1.5%)
21:30 (米) 4-6月期GDP改定値 前期比年率 (速報 2.1%、予想 2.0%)
21:30 (米) 4-6月期GDP個人消費改定値 前期比 (速報 4.3%、予想 4.3%)
21:30 (米) 4-6月期コアPCE改定値 前期比 (速報 1.8%、予想 1.8%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 20.9万件、予想 21.5万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 167.4万人、予想 168.0万人)
23:00 (米) 7月 住宅販売保留指数 前月比 (6月 2.8%、予想 0.0%)
23:00 (米) 7月 住宅販売保留指数 前年同月比 (6月 -0.6%、予想 1.8%)

8/30(金)
休場、トルコ
07:45 (NZ) 7月 住宅建設許可件数 前月比 (6月 -3.9%)
08:30 (日) 7月 失業率 (6月 2.3%、予想 2.3%)
08:30 (日) 7月 有効求人倍率 (6月 1.61、予想 1.61)
08:30 (日) 8月 東京都区部消費者物価指数・生鮮食料品除く 前年同月比(7月0.9%、予想0.8%)
08:50 (日) 7月 小売業販売額 前年同月比 (6月 0.5%、予想 -0.6%)
08:50 (日) 7月 百貨店・スーパー販売額(既存店) 前年同月比 (6月 -0.5%、予想 -4.5%)
08:50 (日) 7月 鉱工業生産 前月比 (6月 -3.3%、予想 0.3%)
08:50 (日) 7月 鉱工業生産 前年同月比 (6月 -3.8%、予想 -0.5%)
10:30 (豪) 7月 住宅建設許可件数 前月比 (6月 -1.2%、予想 0.0%)
10:30 (豪) 7月 住宅建設許可件数 前年同月比 (6月 -25.6%、予想 -22.2%)

14:00 (日) 7月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (6月 0.3%、予想 -5.4%)
18:00 (欧) 7月 失業率 (6月 7.5%、予想 7.5%)
18:00 (欧) 8月 消費者物価指数 前年同月比 (7月 1.1%、予想 1.0%)
18:00 (欧) 8月 消費者物価コア指数 前年同月比 (7月 0.9%、予想 1.0%)
21:30 (米) 7月 個人所得 前月比 (6月 0.4%、予想 0.3%)
21:30 (米) 7月 個人消費 前月比 (6月 0.3%、予想 0.5%)
21:30 (米) 7月 PCEデフレーター 前年同月比 (6月 1.4%、予想 1.4%)
21:30 (米) 7月 PCEコア・デフレーター 前月比 (6月 0.2%、予想 0.2%)
21:30 (米) 7月 PCEコア・デフレーター 前年同月比 (6月 1.6%、予想 1.6%)
22:45 (米) 8月 シカゴ購買部協会景況指数 (7月 44.4、予想 48.0)

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