ドル円見通し 米10年債と2年債の利回り逆転、株式市場動揺で円高再開か(8/15)

上げ幅が小さくても2日、3日と続伸すれば上昇感が強まるものだが、短期的な上昇は翌日以降への継続性がないと却って戻り売りの急所となりやすい。

ドル円見通し 米10年債と2年債の利回り逆転、株式市場動揺で円高再開か(8/15)

【概況】

8月1日深夜に米国が中国への制裁関税第4弾発動を宣言したことをきっかけとしてドル円は1日高値109.31円から急落、12日夜には105.04円まで下げたが105円割れをぎりぎりで回避。13日夜に米通商代表部(USTR)が9月1日から発動予定の対中国制裁関税第4弾についてスマートフォンや衣類等への発動を12月15日まで延期すると発表したことで修正高となり、13日深夜には106.95円まで短時間で反騰した。しかし107円にはわずかに届かずに失速し始め、14日はNYダウが大幅下落する中で106円割れまで続落した。

8月1日から12日までの下げ幅は4.27円で、13日夜の反騰幅は1.91円、半値戻しに届かない一時的な買い戻しに止まった。悲観売りで安値を試し続け、先週の105.50円前後を支持線としていた安値圏持ち合いから下放れし、ドル売り円買いが進みかけたところでの一部関税発動延期報道だったために売り方が狼狽して踏み上げ=損切りの買い戻しを余儀なくされたことが短期的な急騰となった。踏み上げ一巡後は新たな買い気を呼ばなかったため、ドル安円高のトレンドは変わらないとみて売り方が再び優勢に立ち始めた印象だ。

アベノミクスと日銀の異次元金融緩和で大規模な円安へ進んでいた途中の2013年2月25日に、1日で4円近い急落が発生した際も、高値警戒感が出たところで買い方が一時的に狼狽して急落したのだが、流れ変わらずとして買い戻され、高値更新から一段高へ進んだ事がある。今回はその時の半分程度の規模で逆の反発場面だったと思われる。上げ幅が小さくても2日、3日と続伸すれば上昇感が強まるものだが、短期的な上昇は翌日以降への継続性がないと却って戻り売りの急所となりやすい。

【米10年債と2年債の利回り逆転は2007年以来】

8月14日のNYダウは800.49ドル安と急落した。1日の下げ幅としては8月5日に767.27ドル安の急落時に年初来最大の下げ幅となっていたが、今回はそれを超えている。また安値で25471.59ドルまで下げたものの8月7日安値25440.39ドル割れには至らなかったが、終値ベースでは8月5日終値を割り込んでいるため7月16日からの下落はすでに実質的には二段下げに入った印象だ。
株安のきっかけは中国経済指標悪化、ドイツGDP速報のマイナスへの転落、米債券市場での10年債と2年債利回りの逆イールド発生だった。
中国国家統計局が発表した7月の鉱工業生産は前年同月比4.8%増だったが伸び率は前月から1.5ポイント低下し、単月としては17年5カ月ぶりの低水準となった。ドイツ連邦統計局が発表した4-6月期GDP速報値は季節調整済みで前期比0.1%減となり3四半期ぶりにマイナス成長となった。いずれも米中貿易戦争の深刻化と世界的な保護主義化による景気萎縮が背景と思われる。

米債券市場では10年債利回りが3ヶ月TB利回りを下回る長短逆イールドが長期化しているが、14日は10年債利回りが急低下して2年債利回りを下回る長期債での逆イールド現象が発生した。これは2007年6月以来であり、その時は1年後の2008年秋にリーマンショックが発生している。中国、欧州の経済指標の悪化、長期債での逆イールド発生がダウを急落させ、ドル円に対する売り圧力となったわけだが、この事象はまだ継続性ありとすれば、株安とともに円高が進行しやすくなってゆくと懸念される。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、8月6日朝安値から4日半となる8月12日夜安値で直近のサイクルボトムを付け、13日夜安値で底割れを回避してダブルボトムとして反騰入りしたが、14日朝時点では8月8日昼高値から既に6日目に入っているため既にサイクルトップを付けての反落警戒期にあるとし、106円割れからは下げ再開を疑い12日夜安値試しとした。14日夜の下落で106円を割り込んできているため、まだ12日夜安値割れには至っていないものの13日夜高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りと仮定して次のボトム形成期となる15日夜から19日夜にかけての間への下落を想定する。106.50円超えから続伸の場合は強気転換注意とするが、新たな強気サイクル入りは13日夜高値超えからとする。

60分足の一目均衡表では14日夜の下落で遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落した。このため遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。両スパン揃って好転の場合は13日夜高値試しへ向かう可能性があるが、反発が続かずに両スパンが再び悪化するところからは下げ再開とみる。

60分足の相対力指数は14日夜の下落で50ポイントを割り込み、その後も50ポイント以上へ切り返せずにいる。50ポイント台へ戻しても維持できずに40ポイント割れしてくるところからは下げが加速しやすいとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す
(1)当初、105.50円を下値支持線、106.25円を上値抵抗線とする。
(2)106.25円以下での推移中は一段安警戒とし、105.50円割れからは12日夜安値105.04円試しを想定する。105円前後では買い戻しも入りやすいとみるが、105円割れをスルーして続落の場合は104円台前半への下落を想定する。また105.50円以下での推移なら16日の日中も安値を試しやすいとみる。
(3)106.25円を一時的に超えても維持できずに105.75円割れするところから下げ再開とするが、106.25円超えから続伸の場合は106.50円台への上昇を想定する。106.50円以上は反落警戒とみるが、新たなリスクオン材料を伴って上昇する場合は13日深夜高値106.95円試しへ向かう可能性も多少あると注意する。

【当面の主な予定】

8/15(木)
10:30 (豪) 7月 新規雇用者数 (6月 0.05万人、予想 1.40万人)
10:30 (豪) 7月 失業率 (6月 5.2%、予想 5.2%)
13:30 (日) 6月 鉱工業生産確報 前月比 (5月 -3.6%)
13:30 (日) 6月 鉱工業生産確報 前年同月比 (5月 -4.1%)
13:30 (日) 6月 設備稼働率 前月比 (5月 1.7%)
17:30 (英) 7月 小売売上高・除自動車 前月比 (6月 0.9%、予想 -0.2%)
17:30 (英) 7月 小売売上高・除自動車 前年同月比 (6月 3.6%、予想 2.3%)
17:30 (英) 7月 小売売上高 前月比 (6月 1.0%、予想 -0.2%)
17:30 (英) 7月 小売売上高 前年同月比 (6月 3.8%、予想 2.5%)

21:30 (米) 8月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (7月 4.3、予想 1.9)
21:30 (米) 7月 小売売上高 前月比 (6月 0.4%、予想 0.3%)
21:30 (米) 7月 小売売上高・除自動車 前月比 (6月 0.4%、予想 0.4%)
21:30 (米) 4-6月期 非農業部門労働生産性・速報値 前期比 (前期 3.4%、予想 1.4%)
21:30 (米) 4-6月期 単位労働コスト・速報値 前期比年率 (前期 -1.6%、予想 1.8%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 20.9万件、予想 21.2万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 168.4万人、予想 168.5万人)
21:30 (米) 8月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (7月 21.8、予想 10.0)
22:15 (米) 7月 鉱工業生産 前月比 (6月 0.0%、予想 0.1%)
22:15 (米) 7月 設備稼働率 (6月 77.9%、予想 77.9%)

23:00 (米) 8月 NAHB住宅市場指数 (7月 65、予想 66)
23:00 (米) 6月 企業在庫 前月比 (5月 0.3%、予想 0.1%)
27:00 (メ) メキシコ中銀、政策金利 (現行 8.25%、予想 8.00%)
29:00 (米) 6月 対米証券投資 (5月 329億ドル)
29:00 (米) 6月 対米証券投資・短期債除く (5月 35億ドル)

8/16(金)
18:00 (欧) 6月 貿易収支・季調済 (5月 202億ユーロ、予想 186億ユーロ)
18:00 (欧) 6月 貿易収支・季調前 (5月 230億ユーロ)
21:30 (米) 7月 住宅着工件数・年率換算件数 (6月 125.3万件、予想 125.5万件)
21:30 (米) 7月 住宅着工件数 前月比 (6月 -0.9%、予想 0.2%)
21:30 (米) 7月 建設許可件数・年率換算件数 (6月 122.0万件、予想 127.0万件)
21:30 (米) 7月 建設許可件数 前月比 (6月 -6.1%、予想 3.1%)
23:00 (米) 8月 ミシガン大学消費者信頼感指数 (7月 98.4、予想 97.4)

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