ドル円、リセッション懸念が台頭。リスク回避ムードに一時105円台半ばへ急反落
海外時間の為替概況
14日の外国為替市場でドル円は急反落。対中関税一部延期のポジティブ・サプライズを背景に、ドル円は前日海外時間に105.07から106.97へと急伸するも、107円を抜け切れず反落に転じると、@中国の7月鉱工業生産(結果4.8%、予想6.0%)や、A同小売売上高(結果7.6%、予想8.6%)が冴えない結果となったことや、B香港におけるデモ隊と警察との衝突が激化したこと、Cドイツの第2四半期GDP(結果▲0.1%、予想▲0.1%)がマイナス成長に陥ったこと、Dユーロ圏の6月鉱工業生産(結果▲1.6%、予想▲1.5%)が市場予想を下回ったこと、E欧米の主要株価指数が急落したこと(ダウ平均株価は一時808ドル安の急落)、F米長期金利が急低下したこと(米10年債利回りは一時1.58%まで急低下し、リセッションの前兆として意識される米2年債利回りとの逆イールドが発生)などが重石となり、ドル円は一時105.67まで下げ幅を広げました。もっとも、急激に下げた反動から買い戻しが強まると、引けにかけては再び反発。結局105.90台まで値を戻してのクローズとなっております。
ユーロドルは終始上値の重い展開。@ドイツの第2四半期GDP(結果▲0.1%、予想▲0.1%)がマイナス成長に陥ったことや、Aユーロ圏の6月鉱工業生産(結果▲1.6%、予想▲1.5%)が市場予想を下回ったことで、「欧州経済を巡る先行き不透明感→欧州株の下落→リスク回避のユーロ売り(対円)」の経路と、「ECBによる追加緩和観測高進→欧州債利回り低下→ユーロ売り(対主要通貨)」の経路が重なり、ユーロドルは約2週間ぶり安値となる1.1130まで急落しました。引けにかけて小反発するも上値は重く、結局1.1140付近でのクローズとなっております。
ドル円のテクニカル分析
ドル円は、この3日間、105.05(8/12安値)→106.97(8/13高値)→105.67(8/14安値)と乱高下が続いております。対中関税一部延期のポジティブ・サプライズを受けても尚、107円すら抜け切れなかったことを踏まえれば、ドル円の上値余地は乏しいと言えるでしょう。テクニカル的に見ても、@ダブルトップからの下放れ(添付チャートの青線)や、A強い売りシグナルを表す「一目均衡表・三役逆転」の継続など、「ドル安・円高」地合いの継続が示唆されます。前日のショートカバーで短期筋によるドル円ショートが切らされた(=ポジションが軽くなった)ことも、ドル円の下落リスクを高める要因となりそうです。
ファンダメンタルズ的に見ても、@世界的な貿易戦争が世界的な通貨安戦争(利下げドミノ)へ波及するリスクや、A米中貿易摩擦を巡る先行き不透明感の高まり、B米国及び英国で見られる2年債と10年債の逆イールドの発生(リセッション懸念)、Cイランやトルコ、朝鮮半島を巡る地政学的リスクの高まり、D英国を巡る合意なき離脱リスクの危険性、E世界経済の不安定化、F香港を巡る緊張の激化、Gドイツ経済のマイナス成長、Hイタリアやアルゼンチンを巡る政局不透明感の高まりなど、ネガティブ材料は山積みです。また、I追加緩和の手札に乏しい日銀と、9月の大幅追加利下げ(50bp)を織り込みつつある米国との金融政策格差は明らかであり、ドル円にはテクニカル面、ファンダメンタルズ面双方の影響から下落圧力が加わり易い状況が続くと考えられます。
本日は、日本時間21:30に発表される、米8月ニューヨーク連銀製造業景況指数や、米7月小売売上高、米8月フィラデルフィア連銀景況指数、同22:15に発表される米7月鉱工業生産など、一連の米経済指標に注目が集まります。市場予想を下回る冴えない結果となれば、「米9月FOMCでの大幅利下げ観測高進→米長期金利低下→ドル売り」の経路に加えて、逆イールド深化を受けた「リセッション懸念→米主要株価指数の下落→リスク回避の円買い」の流れも加速すると見られ、ドル円が再び心理的節目105円を目指して下げ足を早める展開も想定されます。米中貿易摩擦に絡むヘッドラインや、トランプ米大統領のツイート、香港を巡る続報、米経済指標の結果を睨みつつも、「ドル安・円高」基調は続くと予想いたします。(予想レンジ:105.00ー106.50)
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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