ドル円見通し 昨年3月26日安値へ徐々に迫る、104円台後半で下げ止まれないケースも想定(週報8月第2週)

9日深夜には105.25円まで下げて三角持合いから下放れ、週明け12日夜には105.04円まで続落した。

ドル円見通し 昨年3月26日安値へ徐々に迫る、104円台後半で下げ止まれないケースも想定(週報8月第2週)

【概況】

8月1日未明の米FOMCが予想通りの0.25%利下げを決定したことに加え、パウエル議長が会見であくまでも中間調整的な利下げとしたことがドル高要因となりドル円は8月1日に109.31円を付けて6月25日安値以降の高値を切り上げた。しかしその直後のトランプ大統領による対中国制裁関税第4弾発動宣言から情勢が一変してドル円は急落に転じた。さらに米国が中国を為替操作国に指定し、人民元が対ドルで7元を超える元安ドル高が発生、中国が米国産農産物輸入停止姿勢を示す等の米中対立エスカレートによりドル円は8月6日に105.52円、8月7日深夜に105.49円と安値を切り下げてきた。
8月9日の日中までは105.50円前後を支持線とした60分足レベルの三角持合いに止まっていたが、9日深夜には105.25円まで下げて三角持合いから下放れ、週明け12日夜には105.04円まで続落した。

米中対立からのリスク回避感と米連銀の追加利下げ見通しが円高ドル安の背景だが、トランプ大統領は9日、中国との貿易交渉について「我々には合意する用意はできていない」と述べ、9月にワシントンで予定されている閣僚級協議が行われない可能性も示唆した。またゴールドマン・サックスは11日のエコノミストレポートで来年の米大統領選前に米中が合意に至ることはないと予想し、10-12月期の米GDP見通しを0.2%下方修正して1.8%とした。これらに加えて香港の国際空港がデモ鎮圧の影響で封鎖されたこともリスク回避的な円高圧力となった。
8月12日のNYダウは前週末比389.73ドル安、一時は460ドルを超える下落だった。株安による債券買いで米10年債利回りは1.65%まで低下して2016年10月以来の低水準となっており、株安からのリスク回避的円高圧力、日米長期金利差からの円高も継続している。

【6月25日安値を割り込んで1月底へ迫る】

8月1日夜からの急落で6月25日安値割れまで一挙に急落した。この結果、6月25日安値を起点とした概ね3か月前後の底打ちサイクルでは8月1日に高値をつけて下落期に入ったと思われる。このサイクルの次の安値形成期は短ければ8月末あたりの可能性も多少あるが、平均的には9月中後半にかけての間と想定されるので、暫くは安値試しを続けやすいと思われる。106円を割り込んだところで安値を出し切って反騰する姿勢を見せられずに愚図ついている状況はまだ安値を出し切っていない印象だ。

8月1日までの上昇は米連銀の利下げが大幅なものにならないとの見方による揺れ返しと、それを裏付けた8月1日未明のFOMC結果を受けてのものであり、その後の下落は米中対立エスカレートによるリスク回避感、米連銀が追加利下げへ追い込まれるとの見方及び株安債券買いで米10年債利回りが急低下したことが背景となった。すなわちこれら全般的なリスク回避感を解消するような情勢変化が生じなければ円高基調がドル円のみならずクロス円全般で継続しやすい環境も続くのではないかと思われる。トランプ政権による対中制裁関税発動宣言が呼び水だったことを踏まえれば、情勢一変には米中和解を相当程度に期待させるようなトランプ発言が必要ということになろうか。

【金融緩和と通貨安競争】

米連銀が凡そ10年ぶりの利下げを決定したが、7月には南アフリカ、韓国、インドネシア、トルコが引き下げを決定した。8月に入ってからもタイ、インド、ニュージーランド、フィリピンが利下げしている。ECBも9月理事会での利下げ姿勢を示し、豪中銀も利下げ継続姿勢を示している。
米連銀が2015年12月から段階的な利上げへ進む中で投機マネーの流出を防ぐために新興国も利上げを余儀なくされてきたが、米連銀が利上げをストップしてさらに利下げへ舵を切ったことやドル人民元が7元を超える元安へ進んだことにより、新興国も利下げで対応しないと自国通貨高により輸出競争力を低下させかねず、米中貿易戦争悪影響が懸念される中で予防的な金融緩和姿勢を示してゆく必要に迫れていると解釈できる。既に金融緩和政策の手を尽くしてマイナス金利状況にある日本円としてはこうした各国の利下げと通貨安競争化の中で一段と円高圧力を受け続けやすくなってきていると思われる。

【米中対立、先見えず】

トランプ米大統領は8月9日にホワイトハウスで記者団に対し、中国との貿易協議では「合意する準備ができていない」と述べた。「オープンな対話は続いている」としながらも9月に予定されているワシントンでの閣僚級協議については「中止になるかどうかこれから分かる」「実現するなら結構だ。実現しなければそれでも構わない」と強硬姿勢を示した。
米中は7月末に北京で閣僚級協議を行ったが目立った成果は見られず、ワシントンで再協議する予定としていたが予定日等は決まっていない。このまま8月末へ両国の進展がなければ9月1日に米国は中国からの輸入品ほぼすべてに制裁関税を拡大する第4弾を発動する。発動されれば中国の対抗措置、人民元安の進行、市場の悲観も増して株安もさらに進む可能性がある。
米国の対中関税第4弾が発動されれば中国のGDPは2019年が6.2%、2020年には6.0%へ低下するとIMFは見通しを示しているが、さらに下方修正される可能性もあると指摘している。

【中勢における円高のレベル感】

今年1月3日への暴落的な下げと、当日の反騰により日足・週足ではたくり足=長い下ヒゲが発生して戻した状況は、2015年8月24日への急落時におけるたくり足とその前後状況と類似していることを何度が指摘してきた。たくり足を中心として左右対称的に戻しても高値が切り下がり、戻り一巡後からは1年サイクルの下落期に入ったのが2015年8月底からの反騰と2015年末からの下落再開だったが、今年1月3日底からの上昇も4月24日高値から既に下落に転じている。

概ね10か月から1年周期のサイクルでは、1月3日を底、4月24日高値を天井として既に下落期に入っている。次の底形成期は11月から1月にかけての間と想定されるが、ここ数年の1年サイクルにおける下落規模=下げ幅は2018年10月4日から今年1月3日まで9.72円、2017年116日から2018年3月26日まで10.09円、2016年12月15日から2017年9月8日まで11.33円等で凡そ高値から10円規模だが、その前は2015年11月18日戻り高値から2016年6月底まで26.8円である。これらの規模感を踏まえると、今回もまず4月高値から10円規模で102円前後、2016年6月底99.04円を目指しても不思議なく、あるいは2016年6月への下落規模まで発展する可能性もないとは言えないということだろう。

【当面のポイント】

【当面のポイント】

8月12日安値105.04円の後は105円割れを回避してやや落ち着いているが、8月1日からの下落基調は継続してゆくと考える。
(1)105.50円を超えて続伸なら106円前後まで戻しても不思議ないが、106円前後、106円台序盤は戻り売りにつかまりやすいとみる。
(2)105円割れからは2018年3月26日底104.63円試しとみる。104.63円割れの場合は下値目処が100円の大台試しまで切り下がるとみた上で、まず102円台への下落を想定する。102円台前半は反発注意圏だが、仮に102円台まで下げた後は105円手前が戻り抵抗となり、短期的な戻りが一巡した後の下げで100円割れを試すというイメージで考える。

【当面の主な予定】

8/13(火)
休 場、トルコ
日米貿易協定事務レベル会合(ワシントン、8月14日まで)
10:30 (豪) 7月 NAB企業景況感指数 (6月 3)
13:30 (日) 6月 第三次産業活動指数 前月比 (5月 -0.2%、予想 -0.1%)
15:00 (独) 7月 消費者物価指数改定値 前月比 (速報 0.5%、予想 0.5%)
15:00 (独) 7月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 1.7%、予想 1.7%)
17:30 (英) 7月 失業保険申請件数 (6月 3.80万件、予想 3.20万件)
17:30 (英) 6月 失業率・ILO方式 (5月 3.8%、予想 3.8%)
18:00 (独) 8月 ZEW景況感 期待指数 (7月 -24.5、予想 -28.5)

21:30 (米) 7月 消費者物価指数 前月比 (6月 0.1%、予想 0.3%)
21:30 (米) 7月 消費者物価指数 前年同月比 (6月 1.6%、予想 1.7%)
21:30 (米) 7月 消費者物価コア指数 前月比 (6月 0.3%、予想 0.2%)
21:30 (米) 7月 消費者物価コア指数 前年同月比 (6月 2.1%、予想 2.1%)

8/14(水)
休場、トルコ
08:50 (日) 6月 機械受注 前月比 (5月 -7.8%)
08:50 (日) 6月 機械受注 前年同月比 (5月 -3.7%)
09:30 (豪) 8月 ウエストパック消費者信頼感指数 (7月 96.5)
11:00 (中) 7月 小売売上高 前年同月比 (6月 9.8%、予想 8.7%)
11:00 (中) 7月 鉱工業生産 前年同月比 (6月 6.3%、予想 6.0%)
15:00 (独) 4-6月期GDP速報値 前期比 (前期 0.4%)
15:00 (独) 4-6月期GDP速報値 前年同期比 (前期 0.7%)
15:00 (独) 4-6月期GDP速報値 季調前 前年同期比 (前期 0.6%)

17:30 (英) 7月 消費者物価指数 前月比 (6月 0.0%)
17:30 (英) 7月 消費者物価指数 前年同月比 (6月 2.0%)
17:30 (英) 7月 消費者物価コア指数 前年同月比 (6月 1.8%)
17:30 (英) 7月 小売物価指数 前月比 (6月 0.1%)
17:30 (英) 7月 小売物価指数 前年同月比 (6月 2.9%)
17:30 (英) 7月 生産者物価コア指数 前年同月比 (6月 1.7%)
18:00 (欧) 6月 鉱工業生産 前月比 (5月 0.9%)
18:00 (欧) 6月 鉱工業生産 前年同月比 (5月 -0.5%)
18:00 (欧) 4-6月期GDP改定値 前期比 (速報 0.2%)
18:00 (欧) 4-6月期GDP改定値 前年同期比 (速報 1.1%)
21:30 (米) 7月 輸入物価指数 前月比 (6月 -0.9%、予想 0.0%)
21:30 (米) 7月 輸出物価指数 前月比 (6月 -0.7%)

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

2019年の為替相場を予想

FXが初めての方向け特集

円通貨ペア 為替チャート・相場予想

米ドル(USD)

米ドル(USD)相場の焦点
  • ・米景気の先行き見通しと金融政策 ◎
    ・米中貿易戦争をはじめとする米保護主義の拡大懸念◎
    ・トランプ政権の「ロシアゲート」の広がり ◎↓
    ・ドル高の人為的是正の有無 ◎↓
    ・アメリカ第一主義、保護貿易政策への転換の経済への影響波及
    ・減税、インフラ投資等の実効性
米ドル/円 通貨ペア 詳細分析

ユーロ(EUR)

ユーロ(EUR)相場の焦点
  • ・英国EU離脱の今後の展開と影響 ○ 
ユーロ/円 通貨ペア 詳細分析

豪ドル(AUD)

豪ドル(AUD)相場の焦点
  • ・米中貿易摩擦による中国の景気減速懸念◎↓
    ・金融緩和打ち止め観測 ○↑
    ・国内ファンダメンタルズの相対的な安定 ○↑
豪ドル/円 通貨ペア 詳細分析

NZドル(NZD)

NZドル(NZD)相場の焦点
  • ・新政権下の中銀の政策スタンス変化の有無 △↓
    ・米中貿易摩擦による中国の景気減速懸念◎↓
    ・国内の住宅価格の高騰とピークアウト ○↓
NZドル/円 通貨ペア 詳細分析

トルコリラ(TRY)

トルコリラ(TRY)相場の焦点
  • ・エルドアン大統領の経済政策、中銀支配への不安◎↓
    ・政情不安、経済政策への不信による海外資金の流出 ○↓
    ・米国との関係悪化一段落◎↑
トルコリラ/円 通貨ペア 詳細分析

南アフリカランド(ZAR)

南アフリカランド(ZAR)相場の焦点
  • ・米中貿易摩擦で中国景気失速懸念◎↓
    ・ムーディーズによるソブリン格付け引き下げ懸念◎↓
    ・資源価格の下げ止まり ○↑
    ・金価格反発  △↑
南アフリカランド/円 通貨ペア 詳細分析

ライブ株価指数

政策金利表

ページトップへ戻る