来週の為替相場見通し 『米中対立が世界的通貨安戦争に波及。利下げドミノを横目に円高必至か』(8/10朝)

来週は米7月小売売上高をはじめ主要経済指標の発表が目白押しとなることから、市場の関心はファンダメンタルズに移りそうです。

来週の為替相場見通し 『米中対立が世界的通貨安戦争に波及。利下げドミノを横目に円高必至か』(8/10朝)

米中対立が世界的通貨安戦争に波及。利下げドミノを横目に円高必至か

今週のレビュー(8/5−8/9)

今週のドル円相場は、週初106.59で寄り付いた後、@トランプ米大統領による対中関税「第4段」の発動を受けたリスク回避的なムードの高まりや、A人民元相場(対ドル)の約11年ぶり7.00突破を契機とした通貨安戦争幕開けへの警戒感の高まり、B米7月ISM非製造業景況指数(結果53.7、予想55.5)の予想外の急低下、C中国商務省による「米国産農産物の購入を一時停止する」との報復装置、D米財務省による中国を制裁対象とする「為替操作国」への認定などが重石となり、翌8/6には、一時105.53まで下げ幅を広げました。

しかし、急激に下げ過ぎた反動から反発に転じると、本邦財務省による「為替市場、緊張感を持って見続ける」との介入を示唆する発言や、中国人民銀行による対ドル基準値の元高設定が材料となり、ドル円はショートカバー主導で一時107.08(週間高値)まで急伸する場面も見られました。

もっとも、107円台後半では「戻り売り」意欲も根強く、ENZ中銀による50bpのサプライズ利下げを背景に世界的な「利下げドミノ」が意識されたことや、Fシカゴ連銀エバンス総裁による「リスクが増大しており、追加緩和が必要となる可能性がある」との発言、G米10年債利回りが一時2016年10月以来となる1.595%へ急低下したこと、Hトランプ米大統領による「FRBはより大幅で且つより速いペースで利下げを行う必要がある。馬鹿げた量的引き締めも直ちに終了させる必要がある」「FRBが100bpの利下げを行うことに期待」「9月の米中会合はキャンセルの可能性もあり得る」との発言、I米7月生産者物価コア指数(結果▲0.1%、予想+0.2%)のマイナス転化が重石となると、週末にかけては再び下落。8/9には、1/3以来、約7ヶ月ぶり安値となる105.27(週間安値)まで下げ幅を広げる場面も見られました。引けにかけて持ち直すも上値は重く、結局105.60台での越週となっております。

今週のユーロドル相場は、週初1.1101(週間安値)で寄り付いた後、@米中貿易摩擦を背景とした米長期金利の急低下や、A米7月ISM非製造業景況指数の冴えない結果、B対英ポンドでのユーロ買い圧力の高まりを背景に、翌8/6に、1.1251(週間高値)まで急伸しました。もっとも、C一目均衡表雲下限をバックに戻り売りが強まると、DECBによる根強い追加緩和観測や、Eイタリアを巡る政局不透明感の高まり等が重石となり、結局1.12絡みまで押し戻されての越週となっております。この間、ドイツ10年債利回りは一時▲0.61%まで急低下するなど、過去最低水準を更新する場面も見られました。

来週の見通し(8/12−8/16)

今週のドル円相場は、米中対立に絡む乱高下(106.59→105.53→107.08→105.50→106.29→105.27)の末、週末にかけて直近安値を割り込む展開となりました。この間、@ダブルトップからの下放れ(添付チャートの青線)や、A強い売りシグナルを表す「一目均衡表・三役逆転」、B強い下落トレンド入りを示唆する「バンドウォーク(下限)」の継続など、テクニカル的に見て、「下落リスク」と強く意識される状況です。RSIなどオシレータ系指標に一部過熱感(売られ過ぎ感)が見られるものの、トレンドが明確に出ている状況下、安易な逆張りは危険と判断できます。

ファンダメンタルズ的に見ても、@米中貿易摩擦の深刻化(報復合戦の応酬)や、A世界的な貿易戦争→世界的な通貨安戦争への波及リスク、B南ア中銀、トルコ中銀、FRB、インド中銀、タイ中銀、NZ中銀、フィリピン中銀が利下げに踏み切るなど、グローバルな「利下げドミノ」が意識されること、Cイランやトルコ、朝鮮半島を巡る地政学的リスクの高まり、D英国を巡る合意なき離脱リスクの危険性、E世界経済の不安定化、Fイタリアの政局不透明感など、ネガティブ材料は山積みです。G追加緩和の手札に乏しい日銀と、9月の大幅追加利下げ(50bp)を織り込みつつある米国との金融政策格差は明らかであり、ドル円にはテクニカル面、ファンダメンタルズ面双方の影響から下落圧力が加わり易い状況が続くと考えられます。

来週は米7月小売売上高をはじめ主要経済指標の発表が目白押しとなることから、市場の関心はファンダメンタルズに移りそうです。冴えない米経済指標が相次げば、米大幅利下げ観測高進→米長期金利低下→ドル売りの経路で、ドル円が105円丁度を割り込み、1/3のフラッシュクラッシュ時に付けた安値104.97を試す展開も想定されます。米中貿易摩擦を背景としたリスク回避的な「円買い」も続くと見られ、来週は「ドル安・円高」地合いの継続をメインシナリオとして予想いたします。(来週の予想レンジ:104.00ー107.00)

ユーロドル相場は、根強いドル売り圧力を背景に、トレンドの方向性を示唆するボリンジャー・ミッドバンドを26営業日ぶりに上抜けましたが、90日移動平均線や、一目均衡表雲下限に続伸を阻まれると、週後半以降、反落する展開となりました。テクニカル的にみて、「上値は重い」と判断できます。

ファンダメンタルズ的に見ても、@ECBによる根強い追加緩和観測や、A米中貿易摩擦が欧米貿易摩擦に波及するリスク、B米独関係の悪化懸念、Cユーロ圏経済及び物価の先行き不透明感、Dイタリアの財政及び政局不安、E中東を巡る地政学的リスク、F英国のハードブレグジット懸念など、不安材料は山積みです。米長期金利の低下が一服していることもユーロドルの上値を抑制すると考えられます。8/13に予定されているドイツ7月消費者物価指数や、ドイツ8月ZEW景況感調査を睨みながらも、来週はユーロドルの下落リスクに警戒が必要でしょう。(ユーロドルの予想レンジ:1.1050−1.1300)

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