【概況】
7月5日の米6月雇用統計において非農業部門就業者数が市場予想を上回ったことでドル全面高となり、ドル円は6日未明に108.63円まで上昇して7月1日高値108.53円を上抜いた。8日には108.73円までいったん下げたが切り返し、8日夜には戻り高値を切り上げ、9日も若干の続伸、10日早朝も109円に迫っている。
6月20日未明の前回FOMCにおいて早期大幅利下げ期待が膨らんだために108円台の持ち合いから転落し、6月25日には106.75円まで続落したが、セントルイス連銀のブラード総裁やパウエル米連銀議長の発言等から7月末のFOMCにおける大幅利下げ期待がトーンダウンしたために持ち直しに入った。6月29日の米中首脳会談での貿易戦争休戦入りにより米中対立問題でのリスク回避感が後退したこともプラスに作用した。7月5日の米雇用統計をきっかけに一段高したために6月25日安値からの上昇は7月1日までを一段目とし、7月3日安値から現状までを二段目とする上昇波動を形成している。
現状の円安ドル高は、6月中旬までの米連銀による早期大幅利下げ、年内複数回利下げへの期待がやや過剰だったとしての巻き返しの動きである。利下げによる株高期待を先取りする形でNYダウは7月3日に昨年10月3日高値を超えて史上最高値したが、雇用統計後は利下げ幅への期待がトーンダウンしたことで足踏みとなり、5日に43.88ドル安、8日に115.98ドル安下げ、9日も22.65ドル安と3日続落となった。一方で米10年債利回りは7月3日安値で1.939%まで低下した後は反発しており9日は2.07%台まで戻している。メジャー通貨の加重平均であるドル指数は6月25日95.842から反騰入りして9日には97.593まで上昇している。仮に米連銀の利下げが先送りされるようなことになると、金利面ではドル高へ進みやすくなるが、利下げ催促的に株安が発生してドル円の足を引っ張る可能性もある。
【10日夜、パウエル議長議会証言、11日未明FOMC議事録】
パウエル米連銀議長は半年次金融政策報告について議会証言(日本時間10日23時、米下院金融サービス委員会)を行う。11日には上院銀行住宅都市委員会でも証言する。また日本時間11日午前3時にはFOMC議事要旨の公開がある。
6月19-20日の前回FOMCでは参加者の8名が年内の政策金利を現状維持と予想し、1名が1回の利下げ、7名が2回の利下げを予想した。現状維持派と利下げ派は五分だったが、記者会見でのパウエル議長発言が利下げ姿勢に傾斜したものだったためにFOMC後にはドル安円高が進んだ。しかし6月25日の議長講演では利下げ姿勢を示したものの利下げ時期への言及がなかったために市場は利下げ姿勢がトーンダウンしたのではないかと受け止めた。その直前のセントルイス連銀ブラード総裁が利下げするにしても0.50%の引き下げは過剰だと述べたことも響いた。
7月9日にはフィラデルフィア連銀のハーカー総裁が米ウォール・ストリート・ジャーナル電子版のインタビューで、「現時点で金利をどちらの方向にも動かす差し迫った必要性はない」と述べて政策金利据え置きを主張した。またアトランタ連銀のボスティック総裁は「(7月末のFOMCでは利下げについて)確実に議論するだろう」と述べている。パウエル議長は9日に金融システム等についての講演をしたが金融政策姿勢については触れていない。
市場は今のところ、7月30-31日のFOMCで0.25%程度の利下げが決定される可能性があるとみている。ただその程度の利下げでは既に織り込み済の反応に留まるか、さらなる利下げ催促への動きへ進む可能性がある。利下げ見送りの場合は失望により株安が発生しかねない。このため、10日夜の議会証言、明朝の議事録要旨は利下げ姿勢の強さ、引き下げ幅、年内利下げ回数についての方向性が見えるかどうかで大きく動くのだろうと、市場も待ち構えている。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、7月3日午前安値をサイクルボトムとして上昇に入ったが、6日未明高値から8日午後へいったん下げてから一段高したために、7月3日午前安値から3日目となる8日午後安値で直近のサイクルボトムをつけて新たな強気サイクルに入った。今回の高値形成期は6日未明高値を基準として11日未明から15日朝にかけての間と想定されるので、議会証言や議事録等をきっかけに一段高する場合は11日の日中からさらに週末、週明けへと高値追及の流れに乗りやすいとみる。ただし失望からドル安円高へと急旋回する可能性もあるので、108.50円割れから続落に入る場合及び直前高値から0.50円以上の下落となる場合は弱気サイクル入りを疑い、11日の日中から15日にかけての下落を想定する。
60分足の一目均衡表では7月5日夜の上昇で遅行スパンが好転、先行スパンも突破した。10日朝も両スパン好転を維持しているので、遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、遅行スパン悪化からは弱気転換注意とし、先行スパンから転落する場合は6月25日からの戻り一巡による下げ再開となる可能性が高まるとみる。
60分足の相対力指数は7月6日未明高値からさらに高値更新へ進んでいる中で指数のピークが切り上がってこない状況にあり、指数自身が三角持合いの様相となっている。50ポイント以上を維持する内は上昇余地ありとし、再び80ポイント試しへ向かう可能性ありとするが、50ポイント割れからは指数自身の持ち合い下放れによる下げ再開感が強まるとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、108.75円から108.50円を下値支持帯、109円を上値抵抗線とする。
(2)108.75円を上回るか一時的に割り込んでも切り返す内は上昇余地ありとする。109円到達では抵抗感も出やすいとみるが、109円超えからさらに続伸の場合は109.25円前後への上昇を想定する。さらに議長証言等で一段高の場合は4月からの下げ幅に対する半値戻し109.57円試し、あるいは109円台後半を目指す可能性もあるとみるが、109.50円以上は反落警戒とする。
(3)108.75円割れから続落の場合は108.50円前後試しとみるが、そこは押し目買いが入りやすいとみる。ただし議長証言等から108.50円割れとなる場合は下げ再開と仮定して108円前後を目指す下落期に入るとみる。また108.50円以下での推移が続く場合は11日の日中から夜にかけても続落しやすいとみる。
【当面の主な予定】
7/10(水)
10:30 (中) 6月 消費者物価指数 前年同月比 (5月 2.7%、予想 2.7%)
10:30 (中) 6月 生産者物価指数 前年同月比 (5月 0.6%、予想 0.3%)
17:30 (英) 5月 月次GDP 前月比 (4月 -0.4%、予想 0.3%)
17:30 (英) 5月 鉱工業生産指数 前月比 (4月 -2.7%、予想 1.5%)
17:30 (英) 5月 鉱工業生産指数 前年同月比 (4月 -1.0%、予想 1.1%)
17:30 (英) 5月 製造業生産指数 前月比 (4月 -3.9%、予想 2.1%)
17:30 (英) 5月 商品貿易収支 (4月 -121.13億ポンド、予想 -125.50億ポンド)
17:30 (英) 5月 貿易収支(物、サービス) (4月 -27.40億ポンド、-32.00億ポンド)
23:00 (米) パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、議会証言(上院)
23:00 (加) カナダ銀行(BOC)政策金利 (現行 1.75%、予想 1.75%)
23:00 (米) 5月 卸売在庫 前月比 (4月 0.8%、予想 0.4%)
23:00 (米) 5月 卸売売上高 前月比 (4月 -0.4%、予想 0.6%)
24:15 (加) カナダ中銀ポロズ総裁、ウィルキンス上級副総裁、会見
26:30 (米) ブラード・セントルイス連銀総裁、フォーラムで質疑応答セッション参加
27:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨 6月18-19日会合分
7/11(木)
未 定 (米) パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、議会証言(下院)
13:30 (日) 5月 第三次産業活動指数 前月比 ’(4月 0.8%、予想 )
15:00 (独) 6月 消費者物価指数 改定値 前月比 (速報 0.3%)
15:00 (独) 6月 消費者物価指数 改定値 前年同月比 (速報 1.6%)
18:30 (英) 英中銀、金融安定報告書公表
20:30 (欧) ECB理事会議事要旨(6月5-6日分)
21:30 (米) 6月 消費者物価指数 前月比] (5月 0.1%、予想 0.0%)
21:30 (米) 6月 消費者物価指数 前年同月比 (5月 1.8%、予想 1.6%)
21:30 (米) 6月 消費者物価コア指数 前月比 (5月 0.1%、予想 0.2%)
21:30 (米) 6月 消費者物価コア指数 前年同月比 (5月 2.0%、予想 2.0%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.1万件、予想 22.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 168.6万人)
24:10 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、討論会参加
25:15 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演
25:30 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、講演
26:30 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演
27:00 (米) 6月 月次財政収支 (5月 2078億ドル)
オーダー/ポジション状況
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2024.11.22
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9日の海外市場でドル円は続伸。パウエルFRB議長による議会証言を前に、「過度に織り込まれた米大幅利下げ観測の後退→米長期金利上昇→ドル高」の流れが継続し、
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