【概況】
6月20日未明の米連銀FOMCによる年内利下げ姿勢をきっかけに6月4日から続いていた1円弱の値幅での持ち合いを下放れ、6月25日にはトランプ大統領が日米安保条約破棄に言及したとの報道もあって107円を割り込んで106.75円の安値を付けた。その後は米連銀の早期大幅利下げ姿勢がトーンダウンしたことと、米中首脳会談への期待が強まったことからドルが持ち直し、27日未明には107.84円まで上昇して21日深夜の戻り高値を上抜いた。6月27日昼前に香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストが米中首脳会談前に休戦で合意したと報じたことから一段高となり、27日午後には108.16円まで戻り高値を切り上げたが、その後は同報道内容への否定的な発言も続いたために108円台を維持できずに失速している。
6月27日夜の米経済指標はやや弱めだった。米労働省が発表した週間の新規失業保険申請は季節調整済みで22万7000件となり前週比1万件増加、市場予想の22万件を上回った。
米商務省が発表した2019年1〜3月期のGDP確定値は季節調整済み年率換算で前期比3.1%増となり改定値と変わらなかった。このうち個人消費は前期比年率0.9%増で市場予想の1.3%増及び改定値の1.3%増を下回り2018年1〜3月期以来の低い伸びとなった。
【米中首脳会談への期待と懸念】
6月29日に米中首脳会談がある。6月26日にムニューシン米財務長官が米中協議については90%進展しており妥結への道筋があると述べたことが首脳会談から合意形成へ向かうとの楽観見通しが強まり、27日昼前に香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストが「中国の習近平国家主席が首脳会談に応じた見返りとしてトランプ米大統領は中国からの輸入品ほぼすべてに追加関税を拡大する第4弾の発動延期を決めた」と関税戦争休戦を報じたために楽観見通しがさらに強まりドル円を押し上げた。
しかし27日夜にはクドロー米国家経済会議(NEC)委員長が米FOXニュースとのインタビューで「米中首脳会談前に両国が具体的な取り決めに合意したということはない」とし、合意に際しては「約束した内容を実行に移すため強制力のある枠組みが含まれるべきだ」と述べたために市場の期待感は後退した。
27日夜にはロイター通信社が米高官の話として、米企業との取引を事実上禁止している中国通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)に対する制裁解除に応じる可能性は低いと報じ、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は習主席が首脳会談で制裁解除を求める方針と報じるなど、市場にとっては期待と懸念が交錯する報道が続いている。トランプ大統領自身も習近平国家主席を持ち上げたり、中国を強烈に批判したり、合意期待を述べる一方で制裁に言及するなど硬軟入り混じりの発言を繰り返しているので、実際の首脳会談とその後のトランプ大統領発言や中国外務省の会見等を見定めないと情勢は固まらないが、週明けからは強弱いずれかへ大きく反応してゆくだろう。
【米連銀の利下げ姿勢はどの程度か】
パウエル米連銀議長が6月25日夜の講演で早期利下げに踏み切る用意があるとしたものの利下げ時期には言及せずに利下げ要求を繰り返す米トランプ大統領による介入姿勢を批判した事や、その直前にセントルイス地区連銀のブラード総裁が「7月のFOMCで利下げするとしても0.50%の利下げ幅は大きすぎる」と述べたことで7月のFOMCで0.50%の利下げを期待していた市場にとっては両者の発言が失望となった。
利下げ問題については6月27日もサンフランシスコ連銀のデイリー総裁が「政策手段(利下げ)を使うのかどの程度適用するのかを把握するのは時期尚早だ」と述べている。同総裁はFOMCでの投票権を持たないが米連銀が早期の大幅利下げには慎重な姿勢であることを再認識させた。
前回のFOMCでは年内の政策金利変更見通しについてゼロ回が8人、1回ないしは2回の利下げが8人で同数だった。今後の経済指標、米中動向、株式市場動向によって利下げ時期、回数も変わってくるが、今のところは利下げをするのかどうかも検討中ということだろう。
7月5日に米雇用統計がある。7月10日には米議会下院金融サービス委員会、11日には米上院銀行委員会でパウエル議長の議会証言がある。年内のFOMCは7月30日-31日、9月17−18日、10月29−30日、12月10−11日。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、6月21日昼安値でサイクルボトムを付けていったん戻してから一段安したために21日深夜高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして26日の日中から28日にかけての間への下落を想定していた。しかし、26日夜への上昇で21日深夜高値を上抜いたため、27日朝時点では25日昼過ぎ安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りと改めた。またトップ形成期は26日深夜から28日深夜にかけての間として107.50円以上での推移中は一段高余地ありとして108円台序盤までを上値目途とした。
27日午後に108円台序盤へ続伸したが108円台を維持できずに反落しているため27日午後高値でサイクルトップを付けた可能性が高い。107.50円割れ回避のうちは107.90円超えから上昇再開の可能性ありとするが、107.50円割れからは弱気サイクル入りとして次の安値形成期となる28日の日中から7月2日にかけての間への下落を想定する。その場合は当初の下値目途を6月25日安値106.75円試しとする。
28日夜から週明けに大幅続落の場合は106円前後試しへ引き下げるが、週明けに反騰の場合は直近のサイクルトップ(現時点では27日午後高値の可能性)を超えるところからは新たな強気サイクル入りとして7月2日から4日にかけての間への上昇と108.50円超えを目指す流れと考える。
60分足の一目均衡表では26日午後の上昇で遅行スパンが好転、先行スパンも突破したが、28日午前への下落で遅行スパンが悪化しつつある。遅行スパン悪化からは安値試し優先とし、先行スパン転落からは下げが加速しやすいと注意する。先行スパンから転落した後に反騰して先行スパンを上抜き返す場合は新たな強気サイクル入りの可能性を踏まえて遅行スパン好転中の高値試し優先へ切り替える。
60分足の相対力指数は26日夜から27日午後への高値切り上げに対して指数のピークがほぼフラットな弱気逆行となっているため27日午後高値からの下落が続きやすいとみて、30ポイント割れを試す流れとみる。上昇再開には60ポイント超え、その後も50ポイント以上を維持する展開が必要と思われる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、107.50円を下値支持線、107.90円を上値抵抗線とみておく。
(2)107.50円以上での推移中は107.90円超えから上昇再開の可能性ありとし、27日午後高値108.16円超えからは108.50円前後への上昇を想定する。108.50円以上は反落警戒とするが、108円台を維持しての終了なら週明けも高値を試しやすいとみる。
(3)107.50円割れから続落の場合は弱気サイクル入りとして107円前後試しを想定する。円高が加速する場合は25日安値106.75円試しへ下値目途を引き下げる。また29日の米中首脳会談結果から円高が進む場合は106円試しへさらに引き下げるが、逆に米中首脳会談動向や結果を受けて27日夜から週明けにドル高円安反応なら上昇再開の可能性を優先し、27日高値超えからは新たな強気サイクル入りによる一段高入りと考える。
【当面の主な予定】
6/28(金)
G20大阪サミット2019(6月28日~6月29日)、日米首脳会談
英仏独中ロとイラン、EUが核合意存続に向け協議(ウィーン)
14:00 (日) 5月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (4月 -5.7%、予想 -4.2%)
17:30 (英) 1-3月期GDP改定値 前期比 (前回 0.5%、予想 0.5%)
17:30 (英) 1-3月期GDP改定値 前年同期比 (前回 1.8%、予想 1.8%)
17:30 (英) 1-3月期経常収支 (前期 -237億ポンド、予想 -320億ポンド)
18:00 (欧) 6月 消費者物価指数速報値 前年同月比 (5月 1.2%、予想 1.2%)
18:00 (欧) 6月 消費者物価コア指数速報値 前年同月比 (5月 0.8%、予想 0.9%)
21:30 (米) 5月 個人所得 前月比 (4月 0.5%、予想 0.3%)
21:30 (米) 5月 個人消費 前月比 (4月 0.3%、予想 0.5%)
21:30 (米) 5月 PCEデフレーター 前年同月比 (4月 1.5%)
21:30 (米) 5月 PCEコア・デフレーター 前月比 (4月 0.2%、予想 0.2%)
21:30 (米) 5月 PCEコア・デフレーター、前年同月比 (4月 1.6%、予想 1.6%)
22:45 (米) 6月 シカゴ購買部協会景況指数 (5月 54.2、予想 54.0)
23:00 (米) 6月 ミシガン大学消費者信頼感指数確報 (速報 97.9)
6/29(土) 米中首脳会談
オーダー/ポジション状況
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