ドル円見通し 108円台前半での持ち合い続く
【概況】
米中対立の深刻化を背景とした株安と米長期債利回り大幅低下を背景に5月31日に109円を割り込む一段安となり、6月4日午後には107.82円まで続落した。米国によるメキシコへの制裁関税問題が両国協議により回避される可能性が出てきたことや米連銀議長講演で年内の利下げ確率が上昇したとしてNYダウは6月3日の安値更新から反騰入りしたために株安からの円高圧力は後退したが、米連銀による利下げの可能性が高まったことによる米長期債利回り低下がドル売り円買い要因となり、6月5日は108円割れは買い戻されつつ、108円台前半での持ち合いを継続している。
5日夜の米ADP民間雇用統計で雇用者数の伸びが予想外の低水準となったことで6月4日夕安値をわずかに割り込む場面もあったがその後のISM非製造業景況指数が予想よりも強かったことやNYダウの連騰により6日未明には4日深夜高値をわずかに上回る場面も見られた。
米民間雇用サービス会社オートマティック・データ・プロセッシング(ADP)が発表した5月の全米雇用報告では、非農業部門民間就業者数が季節調整済みで前月比2万7000人増となり市場予想の18万人増を大きく下回った。これは凡そ9年ぶりの低水準で市場にはサプライズとなり、発表からはドル安円高となった。週末の米労働省雇用統計本番でも予想を下回る弱気な数字が出れば米連銀の年内利下げ判断が早まるのではないかとの見方も強まった。
その後に米サプライ管理協会(ISM)が発表した5月の米非製造業景況指数は56.9となり、前月の55.5から上昇して市場予想の55.5も上回った。このためADP発表からのドル安円高がいったん解消され、ダウが3連騰で終了したためにドル円は6日未明へやや反発基調となった。
NYダウは3連騰で前日比207.39ドル高と上昇した。米墨協議による制裁関税発動回避への期待や6月3日のパウエル米連銀議長講演で年内利下げの可能性が高まったことに加え、5日はブレイナード米連銀理事がヤフーファイナンスとのインタビューで、「経済拡大を持続するために政策を調整する用意がある」と述べたことが利下げ姿勢と受け止められたことが背景となった。
しかしトランプ米大統領は5日の米墨協議ではメキシコ側の対応は「全く不十分」と批判して合意に至らず、6日も継続協議となったために両国が合意できるかどうか疑わしくなっている。メキシコ側が報復関税を準備しているとの報道もある。フィッチやムーディーズ等格付け会社はメキシコを格下げしている。
5日夜はユーロが急落した。EUの欧州委員会はイタリア財政がEUの規律違反とした報告書をまとめて「過剰財政赤字是正手続き」=イタリアへの経済制裁を開始すべきだとした。EU加盟国の承認が必要だが、承認されれば正式な手続きに入り、イタリア政府が是正に応じなければ同国GDPの0.2%から最大0.5%相当の制裁金が科される可能性がある。
6日夜にはECB理事会とドラギ総裁の会見が予定されており、ドラギ総裁の発言内容が注目される。ECBの金融緩和姿勢が強まる内容ならユーロ売りを助長しかねないところで、全般的に株高基調ならユーロ安ドル高によりドル円にとっては上昇要因となりうるが、株安基調の場合はユーロ安円高がドル円での円高ドル安に寄与する可能性がある。
米10年債利回りはほぼ横ばいの2.13%で2017年9月以来の低水準にある。2年債利回りは1.85%までさらに低下した。3か月物TB(財務省証券)利回りも2.3469%へ低下し、3か月物TB利回りが10年債利回りを上回る「長短金利逆転(逆イールド)」は9営業日連続となった。米長期債利回り低下傾向は引き続きドル円にとっての売り圧力となっている。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、5月31日の一段安により、5月30日夜高値をサイクルトップとした弱気サイクル入りとして6月3日から5日にかけての間への下落を想定してきたが、4日午後へ一段安した後に戻したために5日朝時点では6月4日午後安値を直近のサイクルボトムとした。
6月5日夜の下落場面ではわずかに4日午後安値を割り込んだがほぼ同値にとどまってその後の反発で4日深夜高値を上抜いた。このため4日午後安値と5日夜安値をダブル底とした強気サイクル入りの可能性が考えられるが、高安レンジを若干拡張しての持ち合いにとどまって一段安する可能性も考えられる。
108.50円超えから続伸の場合はダブル底からの強気サイクル入りの可能性も踏まえて6日夜から7日にかけての上昇余地ありとするが、5日夜安値を割り込むところからは弱気サイクルによる下落再開として7日午後から11日の日中にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では6日未明への上昇で遅行スパンが好転、先行スパンを上抜けてきている。このため、遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、両スパンそろって悪化するところからは下げ再開として遅行スパン悪化中の安値試し優先へ切り替える。
60分足の相対力指数は6月3日から4日への一段安において指数のボトムが切り上がる強気逆行となり、5日夜の一時的な安値更新でも4日午後安値形成時からボトムを切り上げているのでまだ上昇余地があると思われる。40ポイント割れへ低下しないうちは戻り高値を試す余地ありとし、40ポイント割れからは下げ再開とみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、107.80円を下値支持線、108.50円を上値抵抗線とする。
(2)108円を割り込んでも切り返すうちは上昇余地ありとし、108.50円超えの場合は108.75円から109円手前にかけてのゾーンを試すとみる。ただし108.50円以上は戻り売りにつかまりやすい水準としてその後の108.25円割れからは下げ再開注意、108円割れからは下げ再開の可能性を優先する。
(3)107.80円割れからは一段安入りとして107.50円前後試しを想定する。107.50円割れは買い戻されやすいとみるが、1株安再燃の場合及びドル全面安の場合は107.00円前後まで下値目途を切り下げる。
【当面の予定】
6/6(木)
休 場 戦没者慰霊日 韓国
休 場 断食明け大祭 マレーシア、インドネシア、トルコ
トランプ米大統領、訪仏
国際金融協会(IIF)春季総会、東京(6月7日まで)
10:30 (豪) 4月 貿易収支 (3月 49.49億豪ドル、予想 50.00億豪ドル)
15:00 (独) 4月 製造業新規受注 前月比 (3月 0.6%、予想 0.0%)
15:00 (独) 4月 製造業新規受注 前年同月比 (3月 -6.0%、予想 -5.9%)
17:25 (日) 黒田東彦日銀総裁、講演
18:00 (欧) 1-3月期GDP確定値 前期比 (改定値 0.4%、予想 0.4%)
18:00 (欧) 1-3月期GDP確定値 前年同期比 (改定値 1.2%、予想 1.2%)
18:00 (英) カーニー英中銀(BOE)総裁、東京で講演
20:45 (欧) 欧州中央銀行(ECB)政策金利 (現行 0.00%、予想 0.00%)
21:30 (欧) ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁、定例記者会見
21:30 (米) 1-3月期 四半期非農業部門労働生産性・改定値 前期比 (速報 3.6%、予想 3.5%)
21:30 (米) 4月 貿易収支 (3月 -500億ドル、予想 -506億ドル)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.5万件、予想 21.5万人)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 165.7万人、予想 166.2万人)
21:40 (米) カプラン・ダラス連銀総裁、討論会参加
26:00 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演
6/7(金)
休 場 端午節 中国、香港、台湾
休 場 断食明け大祭 インドネシア
メイ英首相が保守党党首辞任
金融包摂のためのグローバル・パートナーシップ(GPFI)
08:30 (日) 4月 全世帯消費支出 前年同月比 (3月 2.1%、予想 2.7%)
12:50 (日) 黒田日銀総裁、GPFIフォーラムで挨拶
13:00 (米) デイリー・サンフランシスコ連銀総裁、シンガポールで講演
14:00 (日) 4月 景気先行指数(CI)速報値 (3月 95.9、予想 96.0)
14:00 (日) 4月 景気一致指数(CI)速報値 (3月 99.4、予想 100.2)
15:00 (独) 4月 鉱工業生産 前月比 (3月 0.5%、予想 -0.5%)
15:00 (独) 4月 鉱工業生産 前年同月比 (3月 -0.9%、予想 -0.4%)
15:00 (独) 4月 貿易収支 (3月 227億ユーロ、予想 195億ユーロ)
15:00 (独) 4月 経常収支 (3月 302億ユーロ)
21:30 (米) 5月 非農業部門就業者数 前月比 (4月 26.3万人、予想 18.0万人)
21:30 (米) 5月 失業率 (4月 3.6%、予想 3.6%)
21:30 (米) 5月 平均時給 前月比 (4月 0.2%、予想 0.3%)
21:30 (米) 5月 平均時給 前年同月比 (4月 3.2%、予想 3.2%)
25:30 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、講演
28:00 (米) 4月 消費者信用残高 前月比 (3月 102.8億ドル、予想 130.0億ドル)
6/8(土)
G20財務相・中央銀行総裁会議開幕(福岡市、6月9日まで)
オーダー/ポジション状況
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