ドル円見通し 米長期金利低下と株安不安再燃で反落、5月13日深夜安値割れへ向かうか(5/31)

30日は全般的なドル高と株安不安一服により109.92円まで戻した。しかし深夜からは一転して急落している。

ドル円見通し 米長期金利低下と株安不安再燃で反落、5月13日深夜安値割れへ向かうか(5/31)

【概況】

5月13日深夜安値109.02円から5月22日未明高値110.67円まで戻したが4月24日からの下落に対する半値戻し110.70円には一歩届かずに下落に転じ、24日深夜、28日、29日の109.12円まで安値を切り下げてきたが、5月13日深夜安値割れをひとまず回避し、30日は全般的なドル高と株安不安一服により109.92円まで戻した。しかし深夜からは一転して急落している。

米商務省が発表した2019年1〜3月期GDP改定値で個人消費支出(PCE)物価コア指数が1.0%上昇となり、速報値の1.3%上昇から下方修正されたことと、クラリダFRB副議長が「インフレ率がFRBの目標2%を長期的に下回れば適切な金融政策運営スタンスを考慮に入れるだろう」と講演で発言した事が利下げ検討姿勢と受け止められたために米長期債利回りが低下、金利差からドル円は売られた。

31日午前にはトランプ米大統領がメキシコへの関税強化姿勢を打ち出してメキシコペソが急落、株安不安も再燃してダウ先物が200ドルを超える下落となる中で109.50円を割り込んできている。
トランプ大統領は不法移民問題に関連してメキシコからの輸入品すべてに5%の関税をかけるとし、不法移民問題がさらに深刻化する場合は10月1日までに25%へ引き上げるとツイートした。

米中対立では中国外務省次官が「貿易紛争を仕掛ける下心があり、むき出しの経済テロリズム、経済排外主義、経済いじめ主義だ」と米国を非難し、対米対抗姿勢がエスカレートした印象だ。
米労働省が発表した週間新規失業保険申請は季節調整済みで21万5000件となり前週比3000件増加したが市場予想と一致した。
米商務省が発表した2019年1〜3月期GDP改定値は季節調整済み年率換算で前期比3.1%増となり速報値(3.2%増)からわずかに下方修正された。

【米長期債利回り低下】

米中貿易戦争の深刻化と景気減速懸念により米長期債利回りは低下傾向にある。それでもドル高基調が継続してきたのはドイツ、英国等の長期債利回りも大幅低下傾向にあるため米長期債利回り低下だけではユーロ安やポンド安に歯止めがかからないためだが、ドル円においては米長期債利回り低下はドル売り円買い圧力であり、株安不安が後退している局面ではリスクオンとドル・ストレートでのドル高に同調する場面もあるが、株安不安を抱えながらの米長期債利回り低下だとドル円も下落しやすい。
米長期金利の指標である10年債利回りは30日に0.05%低下の2.22%となり、3カ月物TB(財務省証券) 利回りの2.3711%を下回ったが、「長短金利逆転(逆イールド)」状態は5日連続となった。31日朝には米10年債利回りが2.22%を割り込んで昨年10月以降の低水準となっている。ドイツ10年債利回りは既にマイナス金利状態にあるが30日には0.179%まで低下して2016年7月水準を割り込んで過去最低記録を更新している。英国10年債利回りも2016年10月以来の低水準となっている。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の高値・安値形成サイクルでは、5月28日夕刻の下落で25日未明安値を割り込んだために29日朝時点では底割れによる弱気サイクル入りとしていたが、30日未明の反騰で28日高値を超えたために30日朝時点では29日午前安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとした。またトップ形成期を31日から6月4日にかけての間としたが、ボトム形成が短縮されたのでトップ形成も短縮して弱気転換する可能性があるとし、109.40円割れからは弱気転換注意とした。
30日深夜高値からの反落で109.40円を割り込んでいるため30日深夜高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとする。ボトム形成期は6月3日から5日にかけての間と想定する。109.60円以上へ戻す場合は強気転換注意とするが、新たな強気サイクル入りは30日深夜高値超えからとする。

60分足の一目均衡表では31日朝への反落で遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落した。このため遅行スパン悪化中は安値試し優先とし、強気転換は両スパン揃って好転するところからとする。

60分足の相対力指数は30日深夜への上昇場面で780ポイントに迫ったがその後の急降下で40ポイントを割り込んでいる。29日安値及び13日深夜安値を割り込む場合は20ポイント前後まで低下する可能性がある。またいったん小反発してももう一段安する過程で指数のボトムが切り上がる強気逆行型が見えない内は下落継続しやすくなるとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5月29日安値109.12円を下値支持線、109.50円を上値抵抗線とする。
(2)109.50円を下回る内は一段安警戒とし、29日安値割れからは1月31日安値108.50円試しへ向かう流れとみて108.75円から108.50円にかけてのゾーンを試すとみる。108.75円以下は反発注意だが、109円以下で終了なら週明けも続落しやすいとみる。
(3)109.50円を超えて維持し始める場合は上昇再開の可能性ありとし、109.60円超えからは30日深夜高値109.92円試しへの揺れ返し上昇を想定するが、30日深夜高値とのダブルトップ形成による反落を警戒する。

【当面の予定】

5/31(金)
10:00 (中) 5月 国家統計局製造業PMI (4月 50.1、予想 49.9)
14:00 (日) 4月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (3月 10.0%、予想 -0.9%)

21:00 (独) 5月 消費者物価指数速報 前月比 (4月 1.0%、予想 0.3%)
21:00 (独) 5月 消費者物価指数速報値 前年同月比 (4月 2.0%、予想 1.6%)
21:30 (米) 4月 個人所得 前月比 (3月 0.1%、予想 0.3%)
21:30 (米) 4月 個人消費 前月比 (3月 0.9%、予想 0.2%)
21:30 (米) 4月 PCEデフレーター 前年同月比 (3月 1.5%、予想 1.6%)
21:30 (米) 4月 PCEコア・デフレーター 前月比 (3月 0.0%、予想 0.2%)
21:30 (米) 4月 PCEコア・デフレーター 前年同月比 (3月 1.6%、予想 1.6%)
22:45 (米) 5月 シカゴ購買部景況指数 (4月 52.6、予想 53.7)
23:00 (米) 5月 ミシガン大学消費者信頼感指数確報 (速報 102.4、予想 101.5)
25:00 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演 

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