ドル円見通し 5月13日安値割れをひとまず回避、109円台でややレンジ拡張型の持ち合い(5/30)

29日深夜以降には株安一服と全般的なドル高感を背景にいったん戻しに入り、30日未明には109.69円をつけて先週末以降の戻り高値を若干切り上げた。

ドル円見通し 5月13日安値割れをひとまず回避、109円台でややレンジ拡張型の持ち合い(5/30)

【概況】

株安不安を背景に5月29日午前安値は109.12円をつけて28日安値109.20円を割り込んだが、5月13日深夜安値割れをひとまず回避して下げ渋り、深夜以降は株安一服と全般的なドル高感を背景にいったん戻しに入り、30日未明には109.69円をつけて先週末以降の戻り高値を若干切り上げた。
5月29日付の中国共産党機関紙・人民日報が「米国の電子製品や軍事装備などは中国のレアアースに深く依存している」との論説を掲載、米国によるファーウェイ等への取引規制に対抗して中国側がレアアースの輸出制限等に動くのではないかとの懸念が広がった。さらにファーウェイが米国による取引規制は米国憲法違反だとして29日にテキサス州連邦地裁に略式判決を請求したと発表した事も米中対立の深刻化を意識させた。これらを嫌気してNYダウは一時400ドルを超える下落となり、終値でも221.36ドル安の大幅下落となった。

一方ではドルストレートでのドル高も進んでいる。ユーロやポンドは5月23日からいったん反発したものの27日から29日へ3日間の続落となっている。米中貿易戦争の深刻化とその影響の拡大、ブレクジット問題、EU議会選挙でのEU統合派の後退、イタリア財政赤字問題でのEUとイタリアの対立等がユーロ安とポンド安の背景となり、ドルが相対的に押し上げられている。
EU行政執行機関の欧州委員会はイタリアの財政規律違反に対し、「過剰財政赤字是正手続き(EDP)」の最初のステップに着手するとして29日にイタリア財務相宛てに書簡を送付している。

【NYダウが二段下げへ発展】

NYダウは29日の下落で5月13日安値を割り込んだため、4月23日の戻り天井からの下落は二段下げ型へと発展した。一段目と同レベルの下げなら24000ドル前後を目指す可能性が出てきた印象だが、昨年10月3日天井からの大幅下落時や昨年1月26日高値からの急落時等に匹敵する下落レベルとなる可能性も懸念される。
日経平均も5月29日は256.77円安と下落したが、5月14日安値20751.45円割れに余裕がなくなってきている。3月に二度、21000円割れを切り返したために21000円割れに対する値頃買いも入りやすい水準ではあるが、5月14日安値を割り込む場合はそれよりも一段安による先安懸念が勝るだろうと思われる。

上海総合株価指数は29日に若干高で今週の週足は現時点で陽線気配だが、4月末から5週連続陰線で下げた後の下げ渋り的な横ばいに止まっており、5月20日安値2833.04割れに対する余裕も乏しい。日米中の平均株価が揃って二段下げ型に入れば世界連鎖株安へと発展しかねず、株安と債券高が欧米等の長期債利回り低下を招き、リスク回避面と金利差面の双方から円高を助長しやすくなると懸念される。

【高値切り上げ・安値切り下がりのレンジ拡張型持ち合い】

5月25日未明安値109.24円、28日安値109.20円、29日安値109.12円と先週末からの安値ラインは切り下がってきている。その一方で戻り高値は27日の109.58円、28日の109.62円、30日未明の109.69円と切り上がっている。このため現状は109.40円を中心線として徐々にレンジが拡張する逆三角持合いの様相と思われる。109.85円を超えてさらに続伸するならレンジ拡張型持ち合いの範囲を超えてくるが、109.75円前後までの上昇から反落し、中心線の109.40円を割り込む場合は安値切り下がりラインを試してゆきやすい。その際に5月13日深夜安値109.02円を割り込むとレンジ拡張型持ち合いからの転落となって下げが加速しやすいが、5月13日深夜安値割れを回避する場合はレンジ拡張型持ち合いの継続で、揺れ返し上昇へ進む可能性が残ると思われる。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の高値・安値形成サイクルでは、5月25日未明安値を直近のサイクルボトムとしていったん戻したが、28日夕刻の下落で25日未明安値を割り込んだために29日朝時点では底割れによる弱気サイクル入りとした。またボトム形成期を29日深夜から6月3日朝にかけての間と想定し、強気転換は28日高値109.62円超えからとした。
30日未明の反騰で28日高値を超えたため、29日午前安値をやや短縮されたサイクルボトムとした強気サイクル入りとする。トップ形成期は31日から6月4日にかけての間とするが、ボトム形成が短縮されたのでトップ形成も短縮して弱気転換する可能性がある。109.40円を上回る内は上昇余地ありとするが、109.40円割れからは弱気転換注意とし、29日安値割れからは新たな弱気サイクル入りとして6月3日から5日にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では30日未明への上昇で遅行スパンが好転し先行スパンも上抜いた。このため遅行スパ好転中は高値試し優先とし、両スパン揃って悪化するところからは下げ再開と仮定して遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は28日から29日への安値更新時に指数のボトムを切り上げて強気逆行型となり、30日未明には60ポイント超えへ上昇している。50ポイントを割り込んでも切り返す内は70ポイントを目指す上昇余地ありとするが、50ポイント割れから続落の場合はさげ再開注意、40ポイント割れからは下げ再開とみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、109.40円を下値支持線、30日未明高値109.69円を上値抵抗線とする。
(2)109.40円を上回る内は一段高余地ありとし、30日未明高値超えの場合は109.75円から110円手前への上昇を想定する。109.69円を超えた後に109.40円を割り込む場合は下げ再開とみるが、109.40円以上を維持しての推移なら31日も高値を試しやすいとみる。
(3)109.40円割れからは下げ再開と仮定して29日安値109.12円及び5月13日深夜安値109.02円試しへ向かうとみる。109円前後では買い戻しも入りやすいとみるが、109.40円以下での推移中は31日も安値試しを続けやすいとみる。

【当面の主な予定】

5/30(木)
休 場 (ス) 聖霊降臨祭
07:45 (NZ) 4月 住宅建設許可件数 前月比 (3月 -6.9%)
10:30 (豪) 1-3月期 民間設備投資 前期比 (前期 2.0%、予想 0.5%)
10:30 (豪) 4月住宅建設許可件数 前月比 (3月 -15.5%、予想 0.0%)
10:30 (豪) 4月住宅建設許可件数 前年同月月比 (3月 -27.3%、予想 -22.4%)

21:30 (米) 1-3月期 GDP改定値 前期比年率 (速報 3.2%、予想 3.1%)
21:30 (米) 1-3月期 GDP個人消費 改定値 前期比 (速報 1.2%、予想 1.2%)
21:30 (米) 1-3月期 コアPCE 改定値 前期比 (速報 1.3%、予想 1.3%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.1万件、予想 21.5万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 167.6万人、予想 166.2万人)
23:00 (米) 4月 住宅販売保留指数 前月比 (3月 3.8%、予想 0.9%)
23:00 (米) 4月 住宅販売保留指数 前年同月比 (3月 -3.2%、予想 0.1%)
25:00 (米) クラリダFRB副議長、エコノミッククラブで講演

5/31(金)
08:01 (英) 5月 GFK消費者信頼感調査 (4月 -13、予想 -12)
08:30 (日) 5月 東京都区部消費者物価指数・生鮮食料品除く 前年同月比 (4月 1.3%、予想 1.2%)
08:30 (日) 4月 失業率 (4月 2.5%、予想 2.4%)
08:30 (日) 4月 有効求人倍率 (4月 1.63、予想 1.63)
08:50 (日) 4月 鉱工業生産速報 前月比 (3月 -0.6%、予想 0.2%)
08:50 (日) 4月 鉱工業生産速報 前年同月比 (3月 -4.3%、予想 -1.4%)
08:50 (日) 4月 小売業販売額 前年同月比 (3月 1.0%、予想 1.0%)
10:00 (中) 5月 国家統計局製造業PMI (4月 50.1、予想 49.9)
14:00 (日) 4月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (3月 10.0%、予想 -0.8%)

21:00 (独) 5月 消費者物価指数速報 前月比 (4月 1.0%、予想 0.3%)
21:00 (独) 5月 消費者物価指数速報値 前年同月比 (4月 2.0%、予想 1.6%)
21:30 (米) 4月 個人所得 前月比 (3月 0.1%、予想 0.3%)
21:30 (米) 4月 個人消費 前月比 (3月 0.9%、予想 0.2%)
21:30 (米) 4月 PCEデフレーター 前年同月比 (3月 1.5%、予想 1.5%)
21:30 (米) 4月 PCEコア・デフレーター 前月比 (3月 0.0%、予想 0.2%)
21:30 (米) 4月 PCEコア・デフレーター 前年同月比 (3月 1.6%、予想 1.6%)
22:45 (米) 5月 シカゴ購買部景況指数 (4月 52.6、予想 54.0)
23:00 (米) 5月 ミシガン大学消費者信頼感指数確報 (速報 102.4、予想 101.5)
25:00 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演 

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