来週の為替見通し 『リスク回避ムード後退でドル円は上値余地を探る展開か』(5/18朝)

5/13週のドル円相場は、米中貿易摩擦を巡る報道に振らされる1週間となりました。週

来週の為替見通し 『リスク回避ムード後退でドル円は上値余地を探る展開か』(5/18朝)

5/13−5/17の振り返り

5/13週のドル円相場は、米中貿易摩擦を巡る報道に振らされる1週間となりました。週初109.75で寄り付いたドル円相場は、中国政府による「600億ドル相当の米国製品に対して6/1より関税を5%から25%に引き上げる」との報復報道を嫌気する形で下げ足を速めました。「米中貿易摩擦の激化→米中の報復合戦長期化→米中2大経済大国の景気下振れ懸念→世界的な景気下振れリスク→グローバルな株安連鎖→リスク回避の円買い」への連想からドル円が急落すると、米ダウ平均株価が一時600ドル超の下落を見せる中で、2/1以来、約3ヶ月半ぶり安値となる109.02まで下げ幅を広げました。

もっとも、同水準では押し目買い意欲も根強く、下げ渋ると、トランプ米大統領による「残り3000億ドルの追加関税については最終的な決定をしていない」「G20で中国の習近平国家主席と会談する」「中国との協議は成功すると思うし、それは3、4週間後に判明する」などの楽観的な発言を支援材料に週後半にかけて持ち直す動きとなりました。この間、中国の4月小売売上高(結果7.2%、予想8.6%)や同鉱工業生産(結果5.4%、予想6.5%)、米国の4月小売売上高(結果▲0.2%、予想0.2%)や同鉱工業生産(結果▲0.5%、予想0.0%)など米中の主要経済指標が軒並み下振れるなど、リスク回避ムードを誘発する場面も見られましたが、ドル円の下落は一時的なものに留まりました。週後半にかけては、「トランプ米大統領は自動車輸入に対する関税発動期限(5/17)を6ヶ月間延期する計画」との報道が好感される形で一段高となり、米国の5月フィラデルフィア連銀製造業景気指数(結果16.0、予想9.0)や同ミシガン大消費者信頼感指数(結果102.4、予想97.5)の良好な結果も後押しすると、週間高値110.18まで上昇し、結局110.03での越週となりました。

一方、ユーロドル相場は週を通して軟調推移が継続しました。週初1.1241で寄り付いた5/13週のユーロドル相場は、米国債利回りの低下を背景に、一時1.1266まで上昇する場面も見られました。しかし、ドイツの5月ZEW景況感指数(結果▲2.1、予想5.0)が市場予想を下回ったことや、イタリアのサルヴィーニ副首相が雇用支援を目的に財政拡大方針を表明したこと(→イタリア財政悪化懸念の再燃)、ブレグジットに絡む英国情勢の不安定化が重石となると、週末にかけては、週間安値1.1155まで下げ幅を広げ、結局1.1160近辺での越週となりました。

5/20−5/24の展望

ドル円は109.02をボトムに切り返すと、週末にかけて110.18まで反発しました。終値ベースで110円乗せを達成したことで、米中貿易摩擦の激化に端を発した下落相場に幾分「持ち直し」の兆しが見えつつあります。テクニカル的に見れば、一目均衡表転換線(109.94)を上抜けたことで、近い将来の三役逆転・解消が意識され始めました。また、今週の反発を経て、強い下落トレンドを表すバンドウォーク(ボリンジャーバンド下限に沿って下落)の解消も実現しました。これらを踏まえると、ドル円は一時的に調整局面に突入する可能性が高いと判断できます。実際、ドル円はこの5日間、日々下値を切り上げるなど(5/13安値109.02→ 5/14安値109.14→ 5/15安値109.16→ 5/16安値109.33→ 5/17安値109.50)、押し目の「浅さ」が浮き彫りとなりました。テクニカル的にみて、ドル円は「短期的な上昇リスクに警戒が必要」と言えそうです。

一方、ファンダメンタルズ的に見れば、足元で続く良好な米経済指標を踏まえて、パウエルFRB議長が21日の講演でこれをどう評価するかに注目が集まります。市場でくすぶる米利下げ観測を一掃するようなタカ派的な内容となれば、ドル買いに拍車がかかる恐れもあり注意が必要です。もっとも、米中貿易摩擦を巡っては、既に6/28ー6/29の米中首脳会談に焦点が当たりつつあるため、来週は様子見ムードからリスク回避ムードへの感応度はひとまず和らぐと考えられます。

以上のことから、来週のドル円相場は上値余地を探る展開が見込まれます。心理的節目110円の突破に成功しましたので、来週は一目均衡表雲下限(110.30)や一目均衡表基準線(110.71)を試す動きが強まりそうです。

来週のユーロドル相場は上値の重い展開が見込まれます。@欧米貿易摩擦への懸念や、Aユーロ圏経済の下振れリスク、Bイタリアの財政悪化問題、CECBによる金融緩和観測など、このところ潜在的なユーロ安材料が増えつつあることが背景です。来週23日に発表されるドイツの5月Ifo景況感指数が市場予想を下回る冴えない結果となれば、「欧州経済の先行き懸念→ECBによる金融緩和観測→欧州金利の低下」といった波及経路でユーロドルを一段と押し下げるシナリオも想定されます。当方では引き続き、ユーロ安・ドル高をメインシナリオとし、年初来安値1.1111を試す動きを想定いたします。

ドル円の予想レンジ:108.75−111.25
ユーロドルの予想レンジ:1.1050−1.1250

5/13−5/17の振り返り

ドル円日足

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