ドル円見通し 米中協議決裂懸念拡大で一段安、3月25日安値へ徐々に迫る(5/8)

株式市場が昨年6月並の小規模調整で済まないと察すれば、ドル円自身も昨年6月のようにはやり過ごせずに株安連鎖で急落モードに入りかねない。

ドル円見通し 米中協議決裂懸念拡大で一段安、3月25日安値へ徐々に迫る(5/8)

【概況】

5月2日未明の米FOMCで早期の利下げ期待が後退、3日夜の米雇用統計も概ね良好で失業率が3.6%へ低下して49年振り低水準となったが、ドル円におけるドル買い反応は一時的なものに止まり、イベント通過後の売りに押されて先週は111円台序盤まで押されて終了した。
休み中の5日にトランプ米大統領が2000億ドル規模の中国製品に対する10%の追加関税を5月10日から25%へ引き上げると表明し、現時点では関税を課していない3250億ドル相当の中国製品についても近く25%の関税を発動するとツイートした。このことから週明け6日朝にドル円は急落、午前安値で110.27円をつけた。その段階ではまだ米中協議決裂を結論付けるのは時期尚早としていったん戻したものの111円には届かず、7日の日中はジリ安推移となった。中国商務省が「劉副首相は5月9日と10日の米中協議で訪米する」と表明したために、一時はリスク回避感が後退する場面も観られたが、中国は米国が追加関税を発動した場合に備えて報復関税を準備しているとの報道もあり、協議決裂懸念が拡大した。

7日のNYダウは一時600ドルを超える下落となり、引けも473.39ドル安で今年2番目の大幅下落となった。6日には470ドル超の下落を切り返して終値では66ドル安まで回復していたが、反騰分を解消してさらに安値を切り下げる形となった。
リスク回避感が一段と強まる中でドル円も8日未明には6日午前安値を割り込んでいる。

【米中協議決裂なら昨年6月の下落時並では済まない?】

昨年6月15日に米中閣僚級協議が合意に近づいたところでトランプ大統領が拒絶、決裂した際にはゴールドや原油等のコモディティー市場が大幅下落となり、昨年8月16日に両国の次官級協議が再開されると報道されるまで下落が続いた経緯がある。
その当時、NYダウは6月11日高値25402ドルから6月28日安値23997ドルまで下げたが、7月には反騰に転じて10月3日天井へ向かった。日経平均もダウに習って6月12日から7月5日まで下げたが、その後は戻して10月2日天井へ上昇している。
当時のドル円も6月15日高値110.90円から6月25日安値109.36円まで下げたものの早々に切り返して7月19日高値113.15円へ一段高、さらに10月4日高値114.54円へと上昇している。

これらの動きを踏まえると、昨年6月時点での米中協議決裂については、貿易戦争の深刻化がまずは物流や資源、原材料へ影響しても米国有利な貿易戦争の進展なら株式市場はまだ高値追及へ行けるという楽観論が勝っていたのだろうと推察される。しかし、既に米中交渉も1年を経過するのにまとまらない。年末からは閣僚級が北京とワシントンを何度も往復してきたのにまとまらないということで、トランプ大統領がしびれを切らしたとしたら、もう一段階深刻な関税戦争へ進む可能性がある。そうなると史上最高値近辺にあって高値警戒感もある株式市場では、昨年6月のような多少の懸念と楽観という顛末にはならず、深刻な株安のトリガーとなる可能性があると警戒すべきではないかと思う。
NYダウは12月26日底からのV字反騰を継続して10月3日天井に迫っている。ほぼイッテコイが実現した中で直近の高値から500ドル以上の下げが発生している。昨1月26日天井からの大幅下落、10月からの暴落も高値から500ドル超の下落を切り返せなくなったところから一挙に加速している。

株式市場が昨年6月並の小規模調整で済まないと察すれば、ドル円自身も昨年6月のようにはやり過ごせずに株安連鎖で急落モードに入りかねない。ドル円日足では既に1月31日安値と3月25日安値を結んだ下値支持線を割り込んでいる。まだ3月25日安値109.72円を割り込んでいないものの、3月5日高値と4月24日高値をダブルトップとした下落期に入り始めている印象だ。
5月9日から10日にかけての米中協議が、一転して合意に至ればリスクオン心理が爆発して株高円安へと切り返す可能性もある。しかし決裂、関税発動での交渉継続なら3月25日安値割れからさらに大幅下落へ進む可能性も警戒すべきところだろう。

【60分足一目均衡表、サイクル分析と今週の目安】

【60分足一目均衡表、サイクル分析と今週の目安】

概ね3日から5日周期の短期的な高値安値形成サイクルでは5月6日午前安値を直近のサイクルボトムとして反発したが、7日午前時点では戻りは短命の可能性があるので111円台を回復できない内は110.50円割れから6日午前安値試しとし、底割れからは新たな弱気サイクル入りとした。
8日未明への下落で6日午前安値を割り込んでいるので6日夜高値を直近のサイクルトップとした新たな弱気サイクル入りとして9日から13日にかけての間への下落を想定する。110.50円前後までを抵抗とし、下回る内は一段安警戒とする。110.50円超えからは強気注意とするが新たな強気サイクル入りは6日夜高値超えからとする。
60分足の一目均衡表では3日夜からの下落で先行スパンから転落し、7日夜の下落で遅行スパンも悪化した。このため遅行スパン悪化中は安値試し優先とみる。遅行スパン好転の場合は先行スパン帯が戻り抵抗となりやすいとみる。強気転換は両スパン揃って好転するところからとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、110.00円を下値支持線、110.50円を上値抵抗線とする。
(2)110.50円超えないかわずかに超えても維持できない内は一段安余地ありとし、110円割れの場合は3月25日安値109.72円試しを想定する。109.80円以下は目先の反発注意圏だが、3月25日安値を割り込む場合は先行きもさらに下落継続しやすくなると警戒し、110円以下での推移中は109円台序盤への下落を想定してゆく。
(3)110.50円前後は戻り売りにつかまりやすいとみるが、円安材料を伴って110.50円超えから続伸する場合は6日夜高値110.95円及び111円を目指すとみる。また110.75円以上を維持しての推移に入る場合は9日の日中も高値を試しやすいとみる。

【当面の主な予定】

5/8(水)
11:00 (NZ) ニュージーランド準備銀行(RBNZ)策金利 (現行 1.75%、予想 1.50%)
15:00 (独) 3月 鉱工業生産 前月比 (2月 0.7%、予想 -0.5%)
15:00 (独) 3月 鉱工業生産 前年同月比 (2月 -0.4%、予想 -2.6%)

5/9(木)
10:30 (中) 4月 消費者物価指数 前年同月比 (3月 2.3%、予想 2.5%)
10:30 (中) 4月 生産者物価指数 前年同月比 (3月 0.4%、予想 0.4%)
14:00 (日) 4月 消費者態度指数 (3月 40.5、予想 40.3)
21:30 (米) パウエルFRB議長、イベントで開会の辞
21:30 (米) 4月 生産者物価指数 前月比 (3月 0.6%、予想 0.2%)
21:30 (米) 4月 生産者物価指数 前年同月比 (3月 2.2%、予想 2.4%)
21:30 (米) 4月 生産者物価コア指数 前月比 (3月 0.3%、予想 0.2%)
21:30 (米) 4月 生産者物価コア指数 前年同月比 (3月 2.4%、予想 2.5%)
21:30 (米) 3月 貿易収支 (2月 -494億ドル、予想 -512億ドル)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 23.0万件、予想 22.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 167.1万人)

22:45 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演
23:00 (米) 3月 卸売在庫 前月比 (2月 0.2%)
23:00 (米) 3月 卸売売上高 前月比 (2月 0.3%)
26:15 (米) エバンス・シカゴ連銀総裁、昼食会で講演

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