ドル円戻りは鈍く一段安を試しやすい(週報3月第4週)

先週のドル円はもみあいを放れ円高方向へと舵を切ってきました。最初のきっかけは水曜NY後場のFOMCで、市場参加者の予想以上にハト派な内容となりました。

ドル円戻りは鈍く一段安を試しやすい(週報3月第4週)

今週の週間見通し

先週のドル円はもみあいを放れ円高方向へと舵を切ってきました。最初のきっかけは水曜NY後場のFOMCで、市場参加者の予想以上にハト派な内容となりました。既に前回FOMCで引き締めスタンスは当面ストップという状態でしたが、今回は成長見通しの下方修正に合わせて2019年の利上げ無しとなり、12月の見通しから大幅下方修正となりました。

また9月でバランスシートの縮小を終了と、これまで債券の再投資額を縮小してきたこともストップすることを前倒して実施することに言及しました。あまり早い段階でハト派的なスタンスを見せると市場参加者が過剰に反応する恐れもあり、今回のFOMCではもう少しモデレートな結果になることを個人的には見ていましたし、おそらく同様の見方を取っていた市場参加者にとってはハト派サプライズだったと言えます。

これでFRBはこれまでの引き締め姿勢から中立へと完全にスタンスを変更したこととなり、米金利は大幅に低下、シカゴFF先物の織り込み度では予想通り過剰反応し、今年12月FOMC時点では利上げの織り込み度ゼロ、現状維持43%、利下げ見通し57%と急激に利下げを織り込んでくる結果となっています。この市場との対話が成功だったのかどうかはまだわかりませんが、トランプ大統領の機嫌はよくなったようです。

そして、先週2つ目のドル安のきっかけは、意外なことに金曜のユーロ圏PMIでした。予想よりも弱い結果に欧州株安、ユーロ安をきっかけにユーロ円の売りから、クロス円全般にリスクオフの円買いが広がり、さらに米国PMIが弱かったことが追い打ちをかけ、ストップオーダーも巻き込みながら110円の大台を割り込むこととなりました。
これまでもドル円は底堅い動きをしていましたが、特段リスクオンに動く材料は無かったはずです。
おそらく、あまり値動きが無かったために安易にドル買いで動いていた向きもあって、こうしたポジションの投げが起きたと思えます。

FOMCとPMIとがストップを誘発し円高へと流れを変えるきっかけとなったといえますが、3月末に向け本邦実需筋からのドル売り、またブレグジットに対する懸念等、材料的には引き続き円高バイアスがかかりやすいと見ています。

テクニカルにも変化が出ています。日足チャートをご覧ください。

1月末安値を起点とした上昇チャンネル(青)も、1月3日のフラッシュクラッシュ翌日4日からの上昇チャンネル(ピンク)も下抜けたことで、現状は下げへと方向転換をしたと考えて良いでしょう。現状はまだ短期のレジスタンスライン(赤太線)しか引けませんが、下値を探る展開が続きやすい流れです。

年初来安値と高値との値幅は7円を超えていますので、それなりの値幅を伴った調整が入ると考えフィボナッチ・リトレースメント(青の水平線)を見てみましょう。すると、38.2%押しが109.37で現状のターゲット、さらに円高が進む場合には半値押しの108.52レベルも視野に入ってきそうです。一方で戻りは2月中旬以降のサポート(オレンジの水平線)で、21日安値の110.30レベルが最初のレジスタンス、110円台半ばよりも上の水準では戻り売りが出やすいと考えられます。

今週は戻りの鈍い週を考え、109.00レベルをサポートに、110.50レベルをレジスタンスとする週を見ておきます。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2019年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、ボストン、セントルイス、カンザスシティ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。

3月25日(月)
10:45 シカゴ連銀総裁講演
18:00 ドイツ3月ifo企業景況感
19:00 (フィラデルフィア連銀総裁講演)

3月26日(火)
06:45 NZ2月貿易収支
08:50 日銀会合(15日)主な意見公表
16:00 ドイツ4月GFK消費者信頼感
16:45 フランス3月企業景況感
16:45 フランス10〜12月期GDP確報値
16:45 (フィラデルフィア連銀総裁講演)
19:30 シカゴ連銀総裁講演
21:30 米国2月住宅着工・建築許可件数
22:00 米国1月住宅価格指数
22:00 米国1月ケースシラー住宅価格指数
23:00 米国3月消費者信頼感
23:00 米国3月リッチモンド連銀製造業景況指数
27:00 (サンフランシスコ連銀総裁講演)

3月27日(水)
10:00 NZ中銀政策金利発表
16:45 フランス3月消費者信頼感
16:45 フランス2月PPI
17:00 ドラギECB総裁講演
17:00 オーストリア中銀総裁講演
17:45 プラートECB理事講演
19:00 ラウテンシュレーガーECB理事講演
19:45 デギンドスECB副総裁講演
21:30 米国1月貿易収支
21:30 米国10〜12月期経常収支
22:30 メルシュECB理事講演
23:30 週間原油在庫統計

3月28日(木)
06:30 カンザスシティ連銀総裁講演
09:00 NZ3月企業信頼感
18:10 デギンドスECB副総裁講演
18:30 南ア2月PPI
19:00 ユーロ圏3月消費者信頼感
20:15 クオールズFRB副議長講演
**:**南ア中銀政策金利発表
21:30 米国新規失業保険申請件数
21:30 米国10〜12月期GDP確報値
22:00 ドイツ3月CPI速報値
22:30 クラリダFRB副議長講演
23:00 米国2月住宅販売保留件数
26:15 NY連銀総裁講演

3月29日(金)
06:20 セントルイス連銀総裁講演
06:45 NZ2月住宅建設許可件数
08:30 本邦2月失業率・有効求人倍率
08:30 本邦3月東京区部CPI
09:01 英国3月GFK消費者信頼感
16:00 トルコ2月貿易収支
16:45 フランス3月CPI速報値
17:55 ドイツ3月失業率
18:30 英国10〜12月期GDP改定値
19:00 ユーロ圏3月CPI速報値
21:00 南ア2月貿易収支
21:30 米国1月個人所得・消費支出
22:45 米国3月シカゴ購買部協会景気指数
23:00 米国3月ミシガン大消費者信頼感確報値
23:00 米国2月新築住宅販売件数
25:45 クオールズFRB副議長講演

3月31日(日)
 **:** 欧州と英国が夏時間移行

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

3月18日(月)
ドル円は朝方こそ底堅い株価とともにドル買いが先行しましたが、東京昼前につけた111.63レベルを高値に再び前日からのドル売りの流れに戻りました。その後も値幅は伴わないものの高値を切り下げる展開が続き、NY市場では英国下院議長の発言にポンド円をはじめ、クロス円での円買いが目立つこととなりました。一時111.30レベルの安値をつけましたが、引けにかけてはやや戻しと値幅的には33銭に留まりました。


3月19日(火)
東京市場のドル円は朝方から大きく下げた日経平均株価を見ながら下げましたが、昼前につけた111.16レベルを安値に株価の回復とともにドル買いに転換しました。それでもNY市場までは同意薄の展開が続きましたが、ダウの上昇も手伝って111.47まで戻し、その後は方向感がはっきりしないもみあいのまま引けました。

3月20日(水)
水曜のFOMCでは成長見通しを下方修正し、2019年の利上げなし、9月でバランスシート縮小終了と事前の予想以上にハト派な結果となりました。これを受け長期金利が下がり為替市場もドル全面安となり、110.54レベルまで下押ししました。


3月21日(木)
FOMC後のドル全面安、東京は休場となる中でのスタートでドル売りが続き、欧州市場序盤にはドル円は110.30レベルの安値をつけました。欧州市場ではEUサミットを前に警戒感が広がる中、ドル円は短期筋の利食いから反転、NY市場ではダウが1日遅れで大幅高となる動きに沿って110.96レベルまで反発後に若干押して引けました。

3月22日(金)
ドル円は東京市場では全く動かず欧州市場入り。ユーロ圏経済指標が弱かったことをきっかけに欧州株安、ユーロが対ドル、対円で下落しドル円でも売りが広がりました。さらに、リスクオフの動きが新興国通貨にも波及し、ドル円が前日安値を割り込んでからはストップオーダーも巻き込みながら大きく水準を切り下げました。NY市場に入り米国PMIも弱く、株価とともに一段の下げを演じ、昼前には109.75レベルの安値をつけやや戻しての引けとなりました。

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