ドル円 2か月で7円超の上昇後に崩れる(週報3月第4週)

1月3日の暴落安値から出直り相場が続いてきたが、3月20日から22日への3日間で1.95円の急落となり、110円を割り込んで週を終えた。

ドル円 2か月で7円超の上昇後に崩れる(週報3月第4週)

ドル円 2か月で7円超の上昇後に崩れる

【概況】

1月3日の暴落安値から出直り相場が続いてきたが、3月5日高値の後は新たな高値更新へ進めず、3月20日から22日への3日間で1.95円の急落となり、110円を割り込んで週を終えた。
21日未明の米連銀FOMCが年内の利上げを断念、9月には保有資産縮小計画を終了させるとし、金利水準や物価及び成長率見通しを下方修正したことでドル全面安となった事がきっかけだったが、22日には欧州の景況感悪化を嫌気してユーロが急落、さらに米景況感の悪化も重なって米長期金利が大幅低下、NYダウが400ドル以上の大幅下落となりドル円は前日比で0.94円の下落、当日の高安では1円を超える下落幅となった。

【3月22日の日足大陰線の意味】

1月3日からの上昇については、凡そ2か月の上昇で上昇幅も6円を超えた段階から、昨年3月26日から5月21日へ凡そ2か月、上昇幅6.75円の後に5月29日へ3.27円の下げとなったことや、2017年9月底から11月6日天井まで2か月、上昇幅7.40円から11月27日へ3.88円の下落となったことを踏まえ、それらと同様の下落が発生しやすい状況にあると指摘してきた。
1月3日から3月5日まで2か月、上昇幅は7.30円に拡大したが、その後は新たな高値更新へ進めずにいた。このため、60分足レベルでは3月8日夜から14日未明、10日へと底上げが続いてきた流れを維持するうちは上昇継続としたが、底上げパターンが崩れるところからは下げ再開を警戒とし、3月8日安値割れの場合は1月31日から2月27日、3月8日へと底上げしてきたパターンが崩れるために日足レベルでの下落再開感が強まると指摘した。3月5日高値112.12円から3月22日安値109.74円までの下げ幅はまだ2.38円だが、上記の通り3円を超える下げ幅へ発展しやすい状況に入ってきている印象だ。

3月20日の下落で2月27日や3月8日の安値を下支えした26日移動平均を割り込んだ。3月8日安値を割り込んだために3月5日からの下げは二段下げとなった。さらに2月27日安値も割り込んだため、チャート上の下値目途とすべき節目の安値は1月31日安値108.50円まで切り下がった印象だ。
3月22日の日足は高安で1円を超える下落幅の大陰線だが、これは昨年10月4日から12月前半まで三角持ち合いを形成した後に下放れを開始した12月20日の1.38円幅の大陰線、2017年11月6日天井後の戻り高値を付けて下落再開となった2018年1月10日の1.23円幅の大陰線と同様の意味合いを持つ印象がある。

仮に昨年3月26日から10月4日までの大上昇途中で見られた3円超規模の下落=押し目形成としても昨年5月29日への下げ幅3.27円、8月21日への下げ幅3.38円、10月26日への下げ幅3.17円等、3円を超える規模とすれば、現状からあと1円前後の下落継続となっても不思議ない。また2017年11月27日への下落幅3.88円を超える規模となれば、長期上昇途中の「押し目」レベルを超える、戻り天井を付けての下落再開感が強まる姿となってゆくのではないかと思われる。

【欧米の金融引き締め化政策が腰砕け、それだけの景気不安】

3月22日のユーロ急落はドイツの製造業PMI悪化がきっかけだった。英調査会社IHSマークイットが22日発表した3月のドイツ製造業PMIは44.7となり前月の47.6から低下、約6年半ぶりの低水準となった。ユーロ円の急落衝撃でドル円でも円高ドル安が進んだが、その後にマークイットの米製造業PMIも2017年6月以来の低水準となったため、円高がさらに加速した。

米10年債利回りは22日に前日比0.10%低下の2.44%となり2017年12月以来約1年3カ月ぶりの低水準となったが、3カ月物TB(財務省証券)利回りを下回る「長短金利逆転(逆イールド)」も発生した。この逆イールドは景気後退入りのサインとされるが、米連銀の年内利上げ棚上げもそれだけ景気後退懸念が拡大しているとの認識を強める呼び水というネガティブ評価となり、22日のNYダウは前日比460.19ドル安と大幅下落した。
3月7日にECBが年内利上げを断念して量的緩和政策の再開を決定した。米連銀も年内利上げをほぼあきらめた。それだけ世界的な景気動向はよくないということを市場に認識させるものとなったが、やはり最大の問題は中国の景気減速にあるのだろう。この問題は米中通商摩擦によってより状況が悪化し始めていることは確かだろうが、それ以前から中国の経済成長は鈍化しており、通商摩擦はそれに追い打ちをかけるものとなっている。

米中は閣僚級協議を継続しており、3月中の合意と首脳会談実現は無理となったが4月中の合意と首脳会談実現の可能性はあるだろう。しかし、そこで米中が合意に達したとしても、それを起爆剤として中国景気が盛り上がるかといえば、必ずしもそうならないのではないかという懸念もある。中国が不利な条件を飲み、米国産の農産物等を一時的に大量買いしたからと言って問題は解決せず、中国経済成長の鈍化傾向はさらに続くだろう。トランプラリーの半ばバブル的で楽観し過ぎた米国株式市場も足元が揺らげば一挙に瓦解しかねないし、米国株高頼みの欧州や日本の株式市場も自力的な上昇力が希薄とすれば世界連鎖株安がいつ発生しても不思議はない。
ドル円にとっては米長期債利回り低下によるドル安円高圧力、世界的な景気後退懸念によるクロス円投資の買い戻しによる円高、直接的な株安連動での円高等に反応しやすい第2四半期に入るのではないかと思われる。

【当面のポイント】

【当面のポイント】

(1)2か月の上昇で7円を超える円安ドル高が一巡し、長期的な円安ドル高基調が継続するとしても昨年5月後半の急落調整並みの下落となりやすい状況と思われる。より厳しく見れば戻り一巡により2018年1月から3月末にかけての円高ないしは昨年10月からの三角持ち合いを下放れして1月3日暴落へ進んだ展開並みの状況に入る可能性がある。
(2)1月3日から3月5日への上昇に対する半値押しが108.47円であり、1月31日安値108.50円に近い。直前高値から3円超規模の下げとすれば昨年5月29日への下落並みで下値計算値は108.85円、2017年11月27日への下落並みで下値計算値は108.24円。いずれも108円台を目指す計算値となっている。世界連鎖株安等と同調して下げが加速する場合は、1月3日の暴落時の日足下ヒゲ分を捨象した107.50円前後、3分の2押しとなる107.25円等まで一挙に崩れる可能性も警戒すべきだと思われる。

(3)26日移動平均割れによる下落加速のため、上昇再開感を取り戻すには26日移動平均(現在111.11円)を超えてさらに続伸する上昇が必要であり、26日移動平均に届かないか、超えても維持できずに失速するうちは一段安警戒を優先する。特に110円台序盤以下での推移中は下げがさらに加速しやすい状況と思われる。
(4)概ね3か月前後の底打ちサイクルでは、短ければ2か月(昨年5月29日の押し目底)で底打ちするケースもあるが長引けば4か月かかる場合もある(昨年3月26日への下落)、平均的な3か月として4月序盤への下落継続性が警戒される。(了)<24日18:30>

【当面の主な予定】

3/25(月)
10:45 (米) エバンス・シカゴ連銀総裁、香港での討論会
13:30 (日) 1月 全産業活動指数 前月比 (12月 -0.4%、予想 -0.4%)
18:00 (独) 3月 IFO企業景況感指数 (2月 98.5、予想 98.5)
19:00 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、ロンドンで講演

3/26(火)
06:45 (NZ) 2月 貿易収支 (1月 -9.14億NZドル、予想 -2.00億ドル)
08:50 (日) 2月 企業向けサービス価格指数 前年同月比 (1月 1.1%、予想 1.2%)
09:30 (米) ローゼングレン・ボストン連銀総裁、香港で講演
16:00 (独) 4月 GFK消費者信頼感 (3月 10.8、予想 10.8)
16:45 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、ドイツで講演
19:30 (米) エバンス・シカゴ連銀総裁、香港の討論会
21:30 (米) 2月 住宅着工件数・年率換算件数 (1月 123.0万件、予想 122.0万件)
21:30 (米) 2月 建設許可件数・年率換算件数 (1月 134.5万件、予想 130.0万件)
22:00 (米) 1月 ケース・シラー米住宅価格指数 前年同月比 (12月 4.2%、予想 4.0%)
23:00 (米) 3月 リッチモンド連銀製造業指数 (2月 16、予想 12)
23:00 (米) 3月 コンファレンス・ボード消費者信頼感指数 (2月 131.4、予想 132.0)
28:00 (米) デイリー・サンフランシスコ連銀総裁(FOMC投票権有)、講演

3/27(水)
10:00 (NZ) ニュージーランド準備銀行(RBNZ) 政策金利 (現行 1.75%、予想 1.75%)
17:00 (欧) ドラギ欧州中銀(ECB)総裁、発言
21:30 (米) 1月 貿易収支 (12月 -598億ドル、予想 -575億ドル)
23:00 (米) 10-12月期 経常収支 (前期 -1248億ドル、予想 -13000億ドル)

3/28(木)
未 定 (南) 南ア準備銀行(SARB)政策金利 (現行 6.75%、予想 6.75%)
06:30 (米) ジョージ・カンザスシティ連銀総裁、NYで講演
09:00 (NZ) 3月 NBNZ企業信頼感 (2月 -30.9)

19:00 (欧) 3月 経済信頼感 (2月 106.1、予想 105.9)
19:00 (欧) 3月 消費者信頼感・確定値 (速報 −7.2、予想 -7.2)
20:15 (米) クオールズFRB副議長、ECB会議で講演
21:30 (米) 10-12月期 GDP、確定値 前期比年率 (速報 2.6%、予想 2.4%)
21:30 (米) 10-12月期 GDP個人消費・確定値 前期比 (速報 2.8%、予想 2.6%)
21:30 (米) 10-12月期 四半期コアPCE・確定値 前期比 (速報 1.7%、予想 1.7%)
21:30 (米) 週間新規失業保険申請件数 (前週 22.1万件、予想 22.5万件)
22:00 (独) 3月 消費者物価指数 速報値 前月比 (2月 0.4%、予想 0.6%)
22:00 (独) 3月 消費者物価指数 速報値 前年同月比 (2月 1.5%、予想 1.5%)

22:30 (米) クラリダFRB副議長、パリで講演
23:00 (米) 2月 住宅販売保留指数 前月比 (1月 4.6%、予想 0.0%)
23:00 (米) 2月 住宅販売保留指数 前年同月比 (1月 -3.2%)
23:00 (米) ボウマンFRB理事、講演
24:00 (米) 米カンザスシティ連銀3月製造業活動指数
24:30 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、討論会参加
26:15 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁(FOMC投票権有)討論会参加
28:00 (メ) メキシコ中銀、政策金利 (現行 8.25%、予想 8.25%)

3/29(金)
06:20 (米) ブラード・セントルイス連銀総裁、講演
06:45 (NZ) 2月 住宅建設許可件数 前月比 (1月 16.5%)
08:30 (日) 2月 失業率 (1月 2.5%、予想 2.5%)
08:30 (日) 3月 東京都区部消費者物価指数・生鮮食料品除く 前年同月比 (2月 1.1%、予想 1.1%)
08:50 (日) 2月 鉱工業生産・速報値 前月比 (1月 -3.4%、予想 1.3%)
08:50 (日) 2月 鉱工業生産・速報値 前年同月比 (1月 0.3%、予想 -1.2%)
08:50 (日) 2月 小売業販売額 前年同月比 (1月 0.6%、予想 0.9%)
09:01 (英) 3月 GFK消費者信頼感 (2月 -13、予想 -14)
14:00 (日) 2月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (1月 1.1%、予想 -0.1%)
17:55 (独) 3月 失業者数 前月比 (2月 -2.1万人、予想 -1.0万人)
17:55 (独) 3月 失業率 (2月 5.0%、予想 4.9%)

18:30 (英) 10-12月期 GDP、改定値 前期比 (速報 0.2%、予想 0.2%)
18:30 (英) 10-12月期 GDP、改定値 前年同期比 (速報 1.3%、予想 1.3%)
21:30 (米) 2月 個人所得 前月比 (1月 -0.1%、予想 0.3%)
21:30 (米) 1月 個人消費(PCE) 前月比 (12月 -0.5%、予想 0.3%)
21:30 (米) 1月 PCEデフレーター 前年同月比 (12月 1.7%、予想 1.4%)
21:30 (米) 1月 PCEコア・デフレーター 前月比 (12月 0.2%、予想 0.2%)
21:30 (米) 1月 PCEコア・デフレーター 前年同月比 (12月 1.9%、予想 1.9%)
22:25 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演[バージン諸島]
22:45 (米) 3月 シカゴ購買部協会景況指数 (2月 64.7、予想 61.0)
23:00 (米) 2月 新築住宅販売件数・年率換算件数 (1月 60.7万件、予想 62.0万件)
23:00 (米) 3月 ミシガン大学消費者信頼感指数 確報 (速報 97.8、予想 97.8)
25:05 (米) クオールズFRB副議長、NYで講演

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