日銀追加緩和思惑で円安に(週報2016年4月第四週)

先週は週初前場こそG20と産油国会議の失望感から円高でのスタートを切りましたが、

日銀追加緩和思惑で円安に(週報2016年4月第四週)

前週の主要レート(週間レンジ)

     始値   高値   安値    終値

ドル円  108.06  111.81  107.82   111.80
ユーロ円 122.08  125.51  121.71  125.49
ユーロドル 1.1298 1.1398  1.1218   1.1224
日経平均 16521.25 17572.49 16254.20 17572.49

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。


前週の概況

4月18日(月)

週明けの市場は、G20後の会見で米財務長官が日本の為替介入を牽制していると取れる発言を行ったこと、まだ産油国会議にイランが欠席し合意に至らなかったこと、また熊本の震災の影響もあってリスクオフからドル円がギャップダウンでのスタートを切りました。WTI原油先物も40ドル台半ばから37ドル台半ばへと急落したものの東京後場以降は落ち着きを取り戻し、海外市場移ってからは日経平均先物が夜間取引でじり高の展開。NY市場では原油先物が40ドル台を回復、NYダウは夜間取引での下げを解消し18000ドル台に上昇したことも重なって、ドル円は週末終値よりも上昇してのクローズとなりました。

4月19日(火)

月曜海外市場以降のリスクオフの巻き返しが継続する一日となりました。短期筋の新たなポジション調整(買い戻しのストップオーダー)が断続的に続いたこともあり、ドル円は109円台半ばまで水準を切り上げ、その後若干押してのクローズ。いっぽう、ユーロドルは、先週後半からのじり高の流れを継続し1.13台後半へと上昇し、結果としてユーロ円が大幅上昇124円台半ばまで買われることとなりました。

4月20日(水)

東京市場では、月曜海外市場から続く円安の動きに対して調整が入り、ドル円が108.76レベル、ユーロ円も123.54レベルまで下押しする動きとなりました。しかし、海外市場に入ると円安の流れが再開、NY市場では原油が大幅高、株式市場も前日高値を上抜けたことからリスクオンの動きに。また、米金利が強かったことも相まって為替市場はドル高、ドル円は109.88レベルと大台目前の水準まで水準を切り上げ高値圏でのクローズ。ユーロドルは1.1388レベルまで水準を切り上げたところからドル買いの動きで急反落、1.1291レベルの安値を付けての引けとなりました。

4月21日(木)

ECB理事会までは主要3通貨ペアともに小動きに終始していました。理事会の結果もドラギ総裁会見もサプライズは無いだろうというのが大方の見方で、予想通りであったもののイベント通過後はユーロ買いが先行、一時1.1398レベルと前日高値を上回る水準まで買われました。しかし、高値更新後に徐々に上値が重くなると急速に売りが強まり、ストップオーダーも巻き込みながらあっという間に上昇前の水準への押しが入る荒っぽい値動き。リビアの原油増産の噂から原油価格が下げ、NYダウも売りが強まり、ここ2日の上げ幅を失っての引けとなりました。ユーロは、そのまま上値が重たいクローズとなり、ドル円はNYダウの動きを見ながらじり安で引けました。

4月22日(金)

金曜の後場一番で入ってきた「日銀が金融機関への貸出にもマイナス金利適用検討」とのニュースに円が全面安、日経平均は大幅高の一日となりました。27・28日に開催される金融政策決定会合では、なんらかの追加緩和が行われるのではないかとの思惑が広がる中で、貸出金利にもマイナス検討との想定外のニュースにドル円は海外市場に移ってからも円売り一色、高値111.81レベルと東京の安値から2円55銭ものドル上昇となり高値圏でのクローズとなりました。クロス円も軒並み円安となり、ユーロ円も125円台半ばへと2円10銭もの大幅高で引けました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。FRB地区連銀総裁講演の内、2016年FOMCメンバー(ニューヨーク、ボストン、クリーブランド、セントルイス、カンザスシティ)ではない地区連銀はカッコ付で示しました。わかりやすさ優先で、あえて正式呼称で表記していない場合もあります。

4月25日(月)
**:** シドニー市場、ウェリントン市場休場
17:00 ドイツ4月ifo景況感指数
23:00 米国3月新築住宅販売件数
23:30 米国4月ダラス連銀製造業活動指数

4月26日(火)
21:30 米国3月耐久財受注
22:00 米国2月ケースシラー住宅価格指数
22:45 米国4月MarkItサービス業PMI速報値
23:00 米国4月消費者信頼感指数
23:00 米国4月リッチモンド連銀製造業指数
**:** FOMC(〜27日)

4月27日(水)
07:45 NZ3月貿易収支
10:30 豪州1〜3月期CPI
15:00 ドイツ5月GFK消費者信頼感
15:45 フランス4月消費者信頼感指数
17:30 英国1〜3月期GDP速報値
23:00 米国3月中古住宅販売保留件数指数
23:30 米国週間原油在庫発表
27:00 FOMC結果公表
**:** 日銀金融政策決定会合(〜28日)

4月28日(木)
06:00 NZ中銀政策金利発表
08:30 本邦3月CPI、4月東京区部CPI
08:30 本邦3月失業率、有効求人倍率
10:30 豪州1〜3月期物価指数
**:** 日銀金融政策決定会合結果発表
15:30 黒田日銀総裁記者会見
16:55 ドイツ4月失業率
18:00 ユーロ圏4月消費者信頼感確報値
18:30 南ア3月PPI
21:00 ドイツ4月CPI速報値
21:30 米国1〜3月期GDP速報値
21:30 米国新規失業保険申請件数

4月29日(金)
**:** 東京市場休場
08:05 英国4月GFK消費者信頼感
10:00 NZ4月ANZ企業信頼感
10:30 豪州1〜3月期PPI
14:30 フランス1〜3月期GDP速報値
16:00 スペイン1〜3月期GDP速報値
17:00 スイス中銀総裁講演
18:00 ユーロ圏1〜3月期GDP速報値
18:00 ユーロ圏4月CPI速報値
18:00 ユーロ圏3月失業率
19:30 (ダラス連銀総裁講演)
21:00 南ア3月貿易収支
21:30 米国3月個人所得、消費支出
21:30 米国1〜3月期雇用コスト指数
22:45 米国4月シカゴ購買部協会景気指数
23:00 米国4月ミシガン大消費者信頼感指数確報値

5月1日(日)
 10:00 中国4月製造業、非製造業PMI

今週の週間見通し

先週は週初前場こそG20と産油国会議の失望感から円高でのスタートを切りましたが、その後は週末に向け株高の動きとともにじりじりと円安方向へと進んでいました。そこで飛び出したのが、日銀が金融機関への貸出にもマイナス金利適用検討」とのニュースです。このニュースを受け、ドル円は一段高となり、週初の107.82レベルの安値から考えると、4円ものドル高・円安の水準へと切り上げてのクローズとなりました。

週初の段階で短期筋が円高思惑でドル売りポジションを増やし、そうしたポジションがストップオーダーを巻き込みながら水準を上げたであろうことは容易に想像がつきますが、金曜の日銀の話は全くのサプライズであったと言えます。この話は、日銀サイドから敢えて事前にリークしたものとも考えられ、これまでの緩和策が市場に見透かされた動きとなってきたことから、予めどのような反応をするかをチェックしたものかもしれません。

しかし、今回の貸出金利にまでマイナスを拡大するとの話は、どこまで検討が進んでいるのか、果たして27・28日に開催される金融政策決定会合での発表を意識したものなのかについては疑問が残るところです。可能性としては考えられる案だとしても、これまでに深く議論を進めてきたとも思えませんし、貸出枠にも限度があり、それこそ日銀に預けるマイナス付利の範囲内であるとか、復興資金に限るとか、という話になってくると事前の期待が剥落して元の木阿弥ということにもなりかねません。日銀としても逆に政策の幅を狭めてしまったのではないかという懸念さえ感じます。

実際に、これまでの政府による景気対策は効果がはっきりせず、日銀の金融緩和に至っては黒田バズーカ2以降の効果は何も出ていないと言えます。マイナス金利導入以降は実効性どころか、今朝の日経朝刊にもあるように一般企業では運用面で大きな問題が起こっていて収益圧迫要因になると同時に、金融機関やシステムベンダーでもシステム改修の負担が発生して、5月末には期限となる3月末決算も手作業でといった話も漏れ聞こえて来る状態です。

果たして、貸出金利をマイナスにしても事務処理なども含めて、どの程度の効果があるのかは全くの未知数で、新たな不安要因にさえなる可能性が否定できない点も怖いところでしょう。今週は、26・27日にFOMCもあるのですが、金曜以降はイベントとしてスルーされていて27・28日の日銀の動向に向け金曜の思惑をどのように消化し、更にどのような思惑が出て、実際に蓋を開けてみてどうなるのか、なかなか見通しを立てるのが難しくなってきました。

ただ、長期的なドル安・円高トレンドが今回のニュースで転換したとまでは言えず、111円前後から114円台半ばのもみあいを割り込んでから107円台半ばまでの中期的なドル安が終わったという状況にあるかと見ています。であるとすれば、もみあいのレジスタンスは現在113円台半ばを緩やかに下降中で、年初来高値(121.69)と年初来安値(107.64)の38.2%戻しが113.00にあることを考えると、上昇の限界点は113円台前半というところにあると考えられます。

また、もう少し近いところでは、もみあい最後の高値113.80と安値107.64の78.6%(61.8%の平方根)戻しが112.48となっていて、この112円台半ばがまずは高値のターゲットと考えてよいでしょう。そして、下値についてはニュース前の水準109円台前半まで戻すことは無いでしょうから、ニュースが出た後の押し、110円台前半はひとつの目安となります。トータルして考え、今週のドル円は、大台110.00レベルをサポートに、112.50レベルをレジスタンスとする見通しとしておきます。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみ平均足と同様とすることで、短期的な方向性(緑=上昇、赤=下降)を見やすく加工した当週報独自のチャートとなっています。また、国内外で人気の高い一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。トレンドラインは週初の段階で過去一定期間から自動的に表示される自動トレンドライン(無い場合もあります)となっています。

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