ドル円 6日間の持ち合い放れ待ち(週報2月第4週)

米中通商協議は2月19日から次官級協議を再開、21日から22日まで劉副首相を含めた閣僚級協議がワシントンで開かれてきた。

ドル円 6日間の持ち合い放れ待ち(週報2月第4週)

【概況】

1月23日高値109.99円から1月31日安値108.50円までは米連銀の追加利上げ棚上げ姿勢への転換見込みによるドル安円高だった。31日のFOMCで当面の利上げ棚上げと保有資産縮小の早期終結見込みを示したことでこの件でのドル安はひとまず一巡となり、ユーロやポンド等が下落基調に転じたことで相対的にドルが浮上してドル円も1月は突破できなかった110円の壁を超えた。
株高が続く中でリスクオン心理も回復し、高値更新によるテクニカル要因も加わってドル円は2月14日高値111.12円まで高値を切り上げてきた。しかし2月14日夜の米小売統計が弱かったことでこのドル高も頭打ち感が強まってドル円は反落した。

2月14日高値111.12円から15日安値110.25円まで0.87円の下落だったが、その後はややジリ高の推移ではあったが111円台を回復するには至らずに109円台後半を中心とした持ち合いにとどまった。
米中通商協議に対する合意形成への期待感と株高がドル円にとっては下支え要因だが、米国も欧州も中国も経済指標の悪化が目立つこと、米中協議もなかなか決着しないこと、米債務上限問題、英国のEU離脱問題の混乱継続等がドル円の上値を抑えてきた。また米連銀の追加利上げ棚上げ姿勢に関しても、21日未明のFOMC議事録では年内利上げの可能性も排除されていない内容だったものの当面の棚上げと保有資産縮小の早期切り上げ姿勢は継続しており、米長期債利回り低下傾向が継続していることもドル円の上昇を慎重にさせている。

【米中閣僚級協議、どうなったか?】

米中通商協議は2月19日から次官級協議を再開、21日から22日まで劉副首相を含めた閣僚級協議がワシントンで開かれてきた。合意進展へ向けた覚書策定に入っているとの報道や、トランプ大統領が協議期限の延長や米中首脳会談の可能性を示唆したことは合意の可能性が高まったとして株高に寄与した。NYダウは2月22日に前日比181ドル高と上昇、昨年12月26日からのV字反騰を継続して11月8日以来3か月半ぶりの水準へ切り返している。日経平均もNYダウ程の勢いはないものの2月21日まで反騰を続けている。日米株高はドル円にとってはプラスではある。
しかし株高なら債券が売られて米長期債利回りは上昇するところだが、1月後半からは米10年債利回りはジリ安傾向にあり、日米長期金利差からはドル円にとっては押し上げ材料とならずかえって売り圧力と化している。米中協議についてもこれまで何度も合意間近と思わせては決裂してきた経緯もあり、株式市場程には楽観的な上昇感を抱けないでいる。

米中閣僚級協議は予定を2日間延長して24日まで開催されている。その結果は本稿執筆時点では入電していない。22日夜段階では人民元相場の安定化や中国の対米貿易黒字解消に向けた中国側の輸入拡大策(追加輸入規模11兆2000億ドル)で進展があったとの報道や、トランプ大統領が「協議が決裂する可能性よりも合意に至る可能性が高い」として3月中の米中首脳会談実現の可能性を示唆したが、中国による知的財産権侵害問題等では依然として溝が深いようで、ライトハイザー通商代表部(USTR)代表は「非常に大きな難関が残されている」と述べ、トランプ大統領も「覚書」を支持しないとも述べている。仮に合意形成となっても将来に不安を抱える場合、中国に不利益な合意や米中双方にプラスとならない程度の内容になる場合はリスクオフ感が拡大する可能性もある。

【米債務上限問題、米連銀議長の議会証言】

米中通商協議問題の他にも市場が警戒しているリスク問題もある。米国の債務上限を定めた法律は3月2日から再び適用されるため、3月1日までに米議会は債務上限をさらに引き上げることで合意する必要がある。トランプ政権による大型減税やインフラ投資により債務は22兆ドルを超えるところまで膨れ上がっており、上限引き上げが議会で承認されなければ米政府の資金繰りが行き詰まってデフォルトに陥る可能性がある。国境の壁問題での非常事態宣言により米政府と議会の対立も深まっているため議会が上限引き上げに応じない可能性もあると注意したい。一時的にせよデフォルト発生ならドル円にとってはドル売り円高圧力となってくると思われる。

パウエル米連銀(FRB)議長は米上下院で26日と27日に議会証言(四半期金融政策報告)を行う。28日には米10−12月期GDPの発表(政府機関閉鎖時の影響により速報と改定値が一本化して発表される)もある。
最近は米経済指標の悪化傾向も目立つ。欧州や中国の経済指標もよくない状況が続いている。世界景気全般の減速、後退感が高まる場合は米中貿易戦争問題が一服したとしても市場心理が悪化する可能性もある。またそうした状況を米連銀がどの程度のリスク感で見ているのかというところも重要だろう。

【当面のポイント、持ち合い放れにつく】

【当面のポイント、持ち合い放れにつく】

週明けは閣僚級協議の結果を受けて市場がリスクオン心理を全面化するか、逆にリスクオフになるのかをまず判断してゆくことになると思われる。2月15日以降は2月14日高値111.12円と2月15日安値110.25円までのレンジ内での持ち合いが続いている。先週は19日安値110.44円から20日高値110.94円までのレンジ内にとどまった。
110.94円超えからは2月14日高値試しとなり、高値更新からは持ち合い上放れとともに1月3日からの上昇継続として上昇に勢いがつく可能性がある。逆に110.44円割れ、さらに15日安値110.25円割れと下げれば持ち合い下放れとなり2月14日からの下落も二段目の下げに入るために1月3日からの上昇一巡による円高ドル安再開感が強まると思われる。「持ち合いは持ち合い放れにつけ」が鉄則であり、流れに乗るスタンスで構えておきたい。

(1)2月14日高値超えなら昨年10月からの三角持合いを下放れる起点となった112.50円前後を目指すとみるが、1月3日からの上昇も2か月近くを経過しているので一段高は短命の可能性があると注意する。
(2)米中合意でも景気拡大期待に寄与せずに株高が進まず、世界的景気減速懸念でかえって株安となる場合、米中協議決裂の可能性や内容の伴わない延長戦入りの場合は円高再燃を警戒する。2月15日安値割れの場合は1月31日への下落時並みと仮定してまず109.65円前後への下落を想定する。さらに109.50円割れへ崩れる場合は26日移動平均割れからの続落となるので1月3日からの戻り一巡による下落期入りと考える。
その場合は1月31日安値試し、1月3日暴落時に下ヒゲで戻した107.50円を段階的に試す流れに入るとみる。
(3)1月3日からの上昇は2月14日まで2か月弱で上昇幅は6.30円だが、昨年3月以降でも2か月から2か月半の間隔でピークをつけて3円以上の下落を発生させてきた。今回もそうした下落が入りやすい時間帯に来ていると注意したい。またより中長期的に見れば1月3日では大底とまでは言えず、新たな下落期に入ってゆく可能性もあると思われる。(了)<24日19:00執筆>

【当面の主な予定】

2/25(月)
06:45 (NZ) 10-12月期小売売上高指数 前期比 (前期 0.0%、予想 0.5%)
08:50 (日) 1月 企業向けサービス価格指数 前年同月比 (12月 1.1%、予想 1.1%)
14:00 (日) 12月 景気先行指数(CI)改定値 (速報 97.9)
24:00 (米) 12月 卸売在庫 前月比 (11月 0.3%、予想 0.2%)
25:00 (米) クラリダFRB副議長、講演

2/26(火)
16:00 (独) 3月 GFK消費者信頼感 (2月 10.8、予想 10.8)
19:00 (英) カーニー英中銀(BOE)総裁、議会証言
22:30 (米) 12月 住宅着工件数・年率換算件数 (11月 125.6万件、予想 125.5万件)
22:30 (米) 12月 建設許可件数・年率換算件数 (11月 132.8万件、予想 129.3万件)
23:00 (米) 12月 ケース・シラー米住宅価格指数 前年同月比 (11月 4.7%、予想 4.5%)
24:00 (米) 2月 コンファレンス・ボード消費者信頼感指数 (1月 120.2、予想 125.0)
24:00 (米) 2月 リッチモンド連銀製造業指数 (1月 -2、予想 8)
24:00 (米) パウエル米連銀(FRB)議長、上院銀行委員会証言(半期金融政策報告)

2/27(水)
米朝首脳会談(ハノイ、28日まで)
06:45 (NZ) 1月 貿易収支 (12月 2.64億NZドル、予想 -3.00億NZドル)
17:00 (独) ワイトマン独連銀総裁、記者会見
19:00 (欧) 2月 経済信頼感 (1月 106.2、予想 106.0)
19:00 (欧) 2月 消費者信頼感確定値 (速報 -7.4、予想 -7.4)
24:00 (米) 1月 住宅販売保留指数 前月比 (12月 -2.2%、予想 -0.4%)
24:00 (米) 1月 住宅販売保留指数 前年同月比 (12月 -9.5%)
24:00 (米) 12月 製造業新規受注 前月比 (11月 -0.6%、予想 0.9%)
24:00 (米) パウエル米連銀(FRB)議長、金融サービス委員会証言(半期金融政策報告)

2/28(木)
08:50 (日) 1月 鉱工業生産速報 前月比 (12月 -0.1%、予想 -2.5%)
08:50 (日) 1月 鉱工業生産速報 前年同月比 (12月 -1.9%、予想 1.3%)
08:50 (日) 1月 小売業販売額 前年同月比 (12月 1.3%、予想 1.1%)
09:00 (NZ) 2月 NBNZ企業信頼感 (12月 -24.1) ※1月発表無し
09:01 (英) 2月 GFK消費者信頼感 (1月 -14、予想 15)
09:30 (豪) 10-12月期民間設備投資 前期比 (前期 -0.5%、予想 0.5%)
10:00 (中) 2月 国家統計局製造業PMI (1月 49.5)
14:00 (日) 1月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (12月 2.1%、予想 11.0%)
22:00 (独) 2月 消費者物価指数 前月比 (1月 -0.8%、予想 0.5%)
22:00 (独) 2月 消費者物価指数 前年同月比 (1月 1.4%、予想 1.5%)

22:00 (米) クラリダFRB副議長、全米企業エコノミスト協会での講演
※米GDP統計は政府機関閉鎖時の影響で速報値と改定値が統合で発表
22:30 (米) 10-12月期GDP 前期比年率 (前期 3.4%、予想 2.4%) 
22:30 (米) 10-12月期個人消費 前期比 (前期 3.5%、予想 3.7%)
22:30 (米) 10-12月期コアPCE 前期比 (前期 1.6%、予想 1.6%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 ( 前週 21.6万件、予想 22.0万件)
22:50 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、討論会参加
23:45 (米) 2月 シカゴPMI (1月 56.7、予想 58.0)
25:00 (米) 米カンザスシティ連銀2月製造業活動指数
25:00 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演
27:00 (米) カプラン・ダラス連銀総裁、講演

3/1(金)
米中通商協議期限
06:45 (NZ) 1月 住宅建設許可件数 前月比 (12月 5.1%)
08:30 (日) 1月 失業率 (12月 2.4%、予想 2.4%)
08:30 (日) 2月 東京都区部消費者物価指数・生鮮食料品除く 前年同月比 (1月 1.1%、予想 1.0%))
09:00 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演
10:45 (中) 2月 財新製造業PMI (1月 48.3、予想 48.5)
17:55 (独) 2月 製造業PMI改定値 (速報 47.6、予想 47.6)
17:55 (独) 2月 失業率 (1月 5.0%、予想 5.0%)
18:00 (欧) 2月 製造業PMI改定値 (速報 49.2、予想 49.2)
18:30 (英) 2月 製造業PMI (1月 52.8、予想 52.0)
19:00 (欧) 1月 失業率 (12月 7.9%、予想 7.9%)
19:00 (欧) 2月 消費者物価指数速報値 前年同月比 (1月 1.4%、予想 1.5%)
19:00 (欧) 2月 消費者物価コア指数速報値 前年同月比 (1月 1.1%、予想 1.1%)
※米個人消費統計は政府閉鎖で延期された12月分と1月分を併せて発表

22:30 (米) 1月 個人所得 前月比     
22:30 (米) 1月 個人消費 前月比 
22:30 (米) 1月 PCEデフレーター 前年同月比 
22:30 (米) 1月 PCEコア・デフレーター 前月比
22:30 (米) 1月 PCEコア・デフレーター 前年同月比
24:00 (米) 2月 ISM製造業景況指数 (1月 56.6、予想 56.0)
24:00 (米) 2月 ミシガン大学消費者信頼感指数確報 (速報 95.5、予想 95.6)
27:15 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演

オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る