ドル円年間見通し 2年半の三角持ち合い転落か

ドル円と日経平均、米長期金利は相関しやすい。

ドル円年間見通し 2年半の三角持ち合い転落か

ドル円年間見通し 2年半の三角持ち合い転落か

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さて、今年も「FX羅針盤」の年間相場予想の季節がやってきました。
例年動きの激しい年初の相場が終了したあたりで、「FX羅針盤」の執筆者の皆様に年間の相場見通しを書いていただいています。今年の第一弾は日々詳細なドル円日報を執筆いただいている上村和宏さんのドル円年間予想。「3つの3月1日問題」と円高進行の可能性に注目です。
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【2015年6月から2016年6月への展開と類似】

【2015年6月から2016年6月への展開と類似】

ドル円と日経平均、米長期金利は相関しやすい。日銀が異次元緩和を行った2014年後半は特殊要因での例外だが、基本的には株安=債券買い・長期債利回り低下=日米金利差縮小とリスク回避での円高という連動が発生する。その連動で丸1年下落したのが2015年6月から2016年6月への下げ相場だ。
2018年10月2日にNYダウが史上最高値をつけて天井、日経平均は前日の10月2日にバブル崩壊後の最高値を更新して天井をつけたが、ドル円は10月4日から高値更新できなくなって三角持合いとなり12月20日に下放れた。日経平均と米長期債利回りの下落開始規模は2015年の下落当初を上回りつつある印象だ。ドル円が1月3日に暴落したのは出遅れ挽回的な動きであり、本格的な下落期入りへの前兆だったともいえる。

10月の株暴落当初は米長期金利上昇を嫌気したものだったが、それ以上に米中関係悪化と保護主義による世界景気の先行き不安、トランプラリー2年経過でのバブル的な株高が終焉したのではないかとの懸念が主要因となっている。米中関係悪化がアップルの業績悪化に直結して株安となる悪循環だ。
株安及び米長期金利の下落規模は2015年6月からの下落期の再現としてドル円も崩れるのではないかと警戒すべきところだと思う。

【三つの3月1日問題、その@ 米中貿易戦争の行方】

2019年のドル円年間見通しを考察する上での最重要テーマは米中貿易戦争問題の行方と米中及び世界景気減速に陥るのかどうかということに尽きるだろう。この問題を楽観的にみるか悲観的にみるのかにより、年間の展開シナリオの組み立て方も変わってくるだろう。


(1)米中貿易協議が決裂ないしは泥沼化の場合、最悪の場合は新たな冷戦状態に陥るかもしれない。そこまで悪化しないまでも米中関係の悪化が続けば投資マインドが徐々に冷え込み、中国景気減速から新興国全般の景気後退、それが主要先進国にも波及してゆく悪循環が発生しやすくなる。その場合は金融市場全般がリスクオフ行動へ走り、クロス円では円が全面高になる可能性が高まる。米連銀は利上げできなくなり金融緩和を再開するかもしれないが、それでも金融市場全般における負のスパイラルは簡単には止まらないだろう。

(2)米中貿易協議が妥協的なレベルにせよ合意に至り、冷戦化を回避、中国市場が楽観的な成長軌道に復帰すれば新たな世界景気拡大の推進力となり日中米欧等の株式市場も楽観主義にあふれ、金融市場全般はリスクオン行動へ走り、クロス円では円が全面安となる可能性が出てくる。米トランプ政権が上手く立ち回って景気刺激を続け、米連銀の利上げも忍耐強いものになれば昨年10月からの株安から始まった金融市場全般への不安感がいったん払拭され、ダウが史上最高値を再び更新してゆく展開へ回帰するかもしれない。

(3)ただし、(2)のケースでも日米通商協議における為替条項も含めた対日圧力が強まれば、消費増税後に購買意欲が委縮してゆくことも加わって日本の景気後退感が鮮明になってしまう可能性がある。米中が上手く展開してゆくのを後目に日本が目立って失速し、日本株安と円高が進むという可能性も考えておく必要があるかもしれない。

米朝関係では軍事緊張と一触即発不安から一転して首脳会談実現となった。トランプ大統領の強硬姿勢と駆け引き、態度豹変は就任以来続いてきた。2018年も大統領のツイート一つで金融市場全体が一喜一憂を繰り返し、2018年9月までは結果的にトランプラリーを持続してNYダウは史上最高値を大幅に更新したが、その神通力も効力が低下している印象だ。このため2019年も大統領ツイート。発言に振り回されるのだろうが、これまでよりもネガティブな方向へ振り回されるのではないかと懸念する。米中協議による関税強化猶予は3月1日まで。

【三つの3月1日問題、そのA ブレクジットの行方】

2016年6月24日に英国が国民投票でEU離脱を決めたブレクジット・ショックはドル円を直撃し、2016年6月24日にドル円は99.04円の安値をつけた。ポンドは2016年10月まで大幅続落したがその後はこの問題への悲観し過ぎに対する反動でポンドは上昇に転じた。しかし2018年4月17日からはポンド安ドル高が続いている。2018年4月後半からのポンド安はユーロ安、人民元安、ゴールド安とも同調しておりポンド安というよりもドル高と言えるが、メイ首相とEUの離脱協定案を巡って英国は混乱が続いている。

英国のEU離脱協定批准期限は1月21日、EU離脱発効は3月30日と予定されている。このため離脱日の当月に入る3月1日が予定通りの離脱か延期か、合意無き離脱へ向かうかどうか、市場の混乱状況がさらに悪化するのか改善するのかの最終判断目安として重要になってくる。年末からはドルが全般に反落しているためポンドもユーロも上昇気味ではあるが、昨年8月から9月までの上昇が続かずに一段安したように、2018年4月を戻り天井としたポンド安のトレンド内でのリバウンドと思われる。英国が合意無き離脱濃厚となればポンドの急落がユーロ安を招き、ドルストレートでのドル高を発生させるかもしれないが、ポンド円やユーロ円の下落によりクロス円全般の円高がドルストレートでのドル高に勝ってドル円も下落を加速させる可能性があると思う。
EUを巡ってはフランスの反政府デモの激化も大いに気になるところだ。1%の富豪が世界の富の大半を抱え、ワーキングプアとの格差が社会問題化していることの反映でもある。2018年は欧州での極右政党の躍進、メルケル独首相の地方選挙敗北も含めEU政治情勢への懸念が強まった年でもあった。

【三つの3月1日問題、そのB 米債務上限】

2011年の債務上限を巡る米政権と議会の対立時にS&Pは米国債を史上初めて格下げした。
米連邦暫定予算を巡って米トランプ政権と議会は年末から対立し、トランプ大統領の強硬姿勢により政府機関の一部閉鎖が1月12日で22日間となり過去最高記録を更新し、その後も記録更新が続いている。短期的な閉鎖なら米景気への打撃も限定的だが長期化すれば実体経済にもマイナスの影響が出る。
3月1日までに米議会が債務上限引き上げに合意しないと米政府は新規の借り入れが出来なくなる。さすがにそれは回避されるのではないかとは思うが、2年後の時期大統領選挙で政権奪取を目論む民主党が大統領との対立姿勢を強め、トランプ大統領が強硬姿勢を曲げずに期限を超えるなら米国二度目の格下げリスク等で金融市場全般が混乱するかもしれない。

3月1日を前後して金融市場が劇的な楽観を回復するならよいが、悲観の泥沼へと落ちる事への警戒心も持っておく必要があるだろう。日本市場はそうした荒波にもまれても自力でしっかりできるならよいが、右往左往しかねないのだろうと不安になる次第だ。
金融市場全般を取り巻く諸情勢がどう展開してゆくのかは実際に進んでみないとわからないものだ。適当に当てをつけても仕方がない。しかし「相場は相場に聞け」というのが分析の基本だ。長期的なリズムと流れはどうか、その中での中勢はどうか、短期的なポイントはどこにあるのかを見定めてシナリオを立て、シナリオ変更が余儀なくされるところはどこか、ということをあらかじめ検討しておくことが大事だ。

【8年周期のサイクルと2年半の大三角持合い】

【8年周期のサイクルと2年半の大三角持合い】

まず月足レベルで大局的な流れをつかんでおく。
(1)変動相場制が採用されて以降、概ね8年周期の天井・底打ちサイクルで推移してきた。短い場合は7年で底打ちしているが、長引けば9年半を要するケースもある。また8年周期のサイクルは概ね4年周期のサイクルに2分割されるが、2011年10月31日底の後は2016年6月24日に5年弱で底をつけて2019年1月時点では2年半を経過したに過ぎないため、4年周期も8年周期でももう1年から2年程度の下落余地があるのではないかと思われる。

(2)2015年6月5日天井後は3年半の長期的な三角持合い形成だったが、三角持合い終点の2018年10月4日高値は2016年6月底から2年半=29か月目だった。この2年半というのが重要で、2007年6月天井が2005年1月底から30カ月の上昇で一巡、2002年1月31日天井が1999年11月底から27か月目で一巡、1990年4月2日天井が1988年1月底から28か月目で一巡したように、2年半程度の上昇で過去の戻りは一巡して次の大きな下落期に入っている。今回は上昇期というよりも下げ渋りの三角持合いを2年半経過し、そこから転落し始めたところという印象だ。つまり、日足レベルにおいて2018年10月4日から三角持合いを形成して年末年始の下落で転落したことは、月足レベルにおけるより大きな三角持合いからの転落開始の端緒と言えるのではないかと思う。

(3)4年周期及び8年周期の底打ちサイクルにおける下落期がもう1年、2年継続すると仮定すれば、2019年から2020年にかけての間が安値形成期と想定される。その際の下値目処は、2015年6月から2016年6月への下げ波動幅並としてN計算値91.85円、2016年12月への戻り幅の倍返しでV計算値79.43円等が計測される。当初は直近のチャート節目である2016年6月底99.04円前後≒100円試しの攻防と思われるが、2016年6月底を割り込むところからの先行きは90円台序盤、前日した3月1日問題等を悲観的に通過してさらに金融危機的な状況が発生するならば2011年10月底75.57円への揺れ返し的な下落規模へと発展する可能性も否定できないと思う。

(4)長期スパンでの円高見通しを覆すには2018年10月4日高値を上抜き返して月足レベルの三角持合い上放れへ転身する必要がある。それができない内は長期的な円高期におけるリバウンドの範囲での円安に留まると思われる。

【1年周期のサイクル、春底・夏戻し・秋から越年の下落イメージ】

【1年周期のサイクル、春底・夏戻し・秋から越年の下落イメージ】

(1)週足レベルでは概ね1年周期の底打ちサイクルで推移している。2012年以降の底打ち間隔の平均値は49週であり、短くて44週、長引くと60週を要している。

(2)2019年1月3日暴落から長い下ヒゲをつけており、直前の下げ幅と週足下ヒゲ具合は2015年8月の下ヒゲ反発時に類似しているので、仮に1月第1週の下ヒゲが潰されずに110円超えへ戻す場合は2015年11月への反発時並に下げ幅の7割8割戻しへ発展する目は残っている。その場合は112円台前半を戻り目処とするが、月足レベルでの長期的な下落期のなかにあるとすれば、数週の戻りを入れて崩れるか、110円を挟んだ2か月から3か月程度の持ち合い推移に入ると思われる。

(3)1月第1週の下ヒゲ潰しが始まる場合、まず、1年サイクルの底形成期は継続中とし、2月中後半から3月、さらに伸びる場合は4月前半までの間と仮定して100円試しへ向かうとみる。そこでいったんは1年サイクルのリバウンドに入るとみるが、リバウンド一巡後は次の1年サイクルによる下落期へ向かうと考えておく。

(4)2016年12月15日高値、2017年11月6日高値、2018年10月4日高値と11カ月毎に1年サイクルの天井をつけてきたので、仮に今年前半のリバウンドが長引く場合は2019年9月まで戻す可能性も考えられるが、これまでは三角持合い中だったために等間隔的な推移だったとすれば、下落期においてはサイクルトップが短縮されやすいので、初夏には戻り一巡か下げ渋りの終了となってその次の1年サイクル底形成期となる2020年2月から4月へ向けた下落期に入ってゆくのではないかと考える。

【2019年の注目スケジュール】

1月 米中通商協議、日米通商協議、米欧通商協議
    英国、EU離脱協定批准期限(1/21)
   世界経済フォーラム年次総会 スイス・ダボス会議(1/22〜25)
   日銀金融政策決定会合(1/22〜23) 展望レポート 
   ECB理事会(1/24)
   米国、大統領一般教書演説
   FOMC(1/29〜1/30)
2月 中国、春節(2/5)
   イラン革命40周年
   米国、商務省による自動車輸入制限報告書提出期限(2/17?)
   米国、予算教書
   FRB議長、半期議会証言
3月 
   米国、中国への制裁関税猶予期限(3/1)
   米国、 連邦債務上限引き上げ期限
   中国、全国人民代表者会議(全人代)
   ECB理事会(3/7)
   日銀金融政策決定会合(3/14〜15)
   FOMC(3/19〜20)議長会見
   英国、EU離脱(3/30 0時離脱発効)

4月 日本、新元号公表米国、為替報告書
    日本、統一地方選(4/7 知事・政令指定都市首長)
   ECB理事会(4/10)
   日銀金融政策決定会合(4/24〜25)
   FOMC(4/30〜5/1)
5月 日本、新天皇即位(5/1)
   米国、イラン制裁での同盟国原油禁輸猶予期限
EU、欧州議会選挙(5/23〜26)
   ベルギー総選挙(5/26)
   オーストラリア総選挙、南ア総選挙
6月 ECB理事会(6/6)
   FOMC(6/18〜19)議長会見 年1回目の利上げ?
   EU首脳会議(6/20〜22)
   日銀金融政策決定会合(6/19〜20)
   ダボス夏季会議 中国大連(6/25〜27)
   G20サミット(大阪 6/28〜29)

7月 日本、参院選(ダブル選挙?)
   ECB理事会(7/25)
   日銀金融政策決定会合(7/29〜30) 展望レポート
   FOMC(7/30〜31)議長会見
   米FRB議長、半期議会証言
8月 G7首脳会議(仏、8/24〜26)
   下旬、カンザス連銀主催、ジャクソンホール・シンポジウム
9月 ECB理事会(9/12)
   国連総会(9/17〜)
   FOMC(9/17〜18)議長会見 
   日銀金融政策決定会合(9/18〜19)

10月 中国、建国70周年(10/1)
   日本、消費税率引き上げ(10/1〜) 
   スイス総選挙、ギリシャ総選挙(10/20)
   カナダ総選挙(10/21)
   ECB理事会(10/24)、ドラギECB総裁任期満了(10/31)
   FOMC(10/29〜30) 議長会見
   日銀金融政策決定会合(10/30〜31)
11月 ベルリンの壁包崩壊30周年(11/9)
12月 FOMC(12/10〜11) 議長会見 年2回目の利上げ?
   ECB理事会(12/12)
   日銀金融政策決定会合(12/18〜19)

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