ドル円 米連銀議長講演後の失速を挽回できず(11/30)

30日未明にFOMC議事録公開もあったが前日の議長講演内容との差異がなかったために市場反応は鈍く、4時台に113.55円の戻り高値をつけた後はやや失速気味となっている。

ドル円 米連銀議長講演後の失速を挽回できず(11/30)

【概況】

日米株式市場が10月末安値割れを回避して反騰してきたことでドル円も11月20日安値112.29円から28日深夜高値114.03円まで上昇してきたが、29日未明のパウエル議長講演からのドル安反応で失速、29日夜への続落で113.19円の安値をつけた。30日未明にはFOMC議事録公開もあったが前日の議長講演内容との差異がなかったために市場反応は鈍く、4時台に113.55円の戻り高値をつけた後はやや失速気味となっている。
ひとまず113円割れを回避しており、11月20日安値と23日深夜安値を結んだ安値ラインが113円に来ており、このラインはまだ維持されている。11月12日高値超えには至らなかったが、ここを押し目として113.75円超えへ戻せば上昇再開感が強まると思われるが、29日夜安値を割り込んで113円割れへ向かう場合は28日深夜高値の下げも二段下げ型に発展するために11月20日安値ヘイッテコイとなる可能性も出てくるかもしれない。

【米連銀利上げスタンスから米中戦争問題へ】

11月27日夜のクラリダ米連銀副議長講演では「政策金利は(景気を刺激も抑制もしない)中立水準に近づいている」としたが市場はこれを「中立水準にはまだ距離がある」と解釈して利上げ継続姿勢と受け止めてドル高反応となった。29日未明のパウエル議長講演では「金利は依然として歴史的な水準に比べて低い」として12月会合での利上げは示唆したものの「中立金利に近づいている」としたため、市場は「利上げの終点が近いと解釈してドル全面安反応となった。正副議長の講演内容に本質的な差異は無いと思われるのだが、市場は微妙なニュアンスの違いでドル安ドル高の乱高下反応を見せた。それだけ神経質なテーマという事だろう。

30日未明のFOMC議事録では12月の利上げを支持する意見が多かったこと、複数の参加者が「中立金利」に迫りつつあるとしたため利上げ終了時期が近づいていると市場は受け止めたが、前日のパウエル議長講演から大きな反応を見せたためにドル安加速というほどのサプライズは無いとして小動きにとどまった。
米連銀は来年6月に包括的な金融政策の見直しを行うと10月時点で表明しているが、これまでの四半期毎の利上げというスタンスからやや利上げペースを鈍化させて利上げの終点を市場に意識させようとし始めているのではないかとの印象もある。トランプ大統領による連銀批判も効いているのかもしれない。また2月に続く10月の世界連鎖株暴落も一服はしているがトランプラリーによるやや過剰な楽観主義的株高基調に大きなヒビが入ったことも意識されているかもしれない。

正副連銀議長の講演、FOMC議事録公開とイベントを通過したため、ひとまず米連銀の利上げスタンスに対する市場反応は一服と思われる。次は12月1日の米中首脳会談(夕食会での会談)を前後して米中貿易戦争問題が楽観的な妥協へ進む確率が高まるのか、悲観的な全面戦争への突入を意識させるのかというところへ向かうと思われる。
北朝鮮との首脳会談等は直前までは無理だろうとされていたところから急転直下の会談実現となった経緯もあるので、トランプ大統領のディール=取引の駆け引きによっては一挙に米中関係好転ということもあるかもしれない。しかし事は中国による技術革新と巨大経済圏形成が米国の覇権を脅かすものとして始まったヘゲモニー争い=冷戦であり、相当に中国側が妥協しなければ簡単には解決しないと思われるので、筆者は協議不調による全面戦争へ進み始めるきっかけになるのではないかと懸念している。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、11月20日夕安値から3日目となる23日夜安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとして26日夜から28日夜にかけての間への上昇を想定してきたが、29日未明の反落により29日朝時点では28日深夜高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとした。また今回のボトム形成期を28日夜から30日夜にかけての間と想定した。
23日夜安値から4日目となる29日夜安値からの小反発を踏まえて29日夜安値を直近のサイクルボトムと仮定する。底割れ回避の内は12月3日夜から6日未明にかけての間への上昇余地ありとするが、当初は28日深夜高値とのダブルトップ形成からの弱気転換注意とする。29日夜安値割れからは新たな弱気サイクル入りとして12月4日夜から6日夜にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では29日未明の急落で遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落した。29日夜安値からの小反発で遅行スパンは好転しやすい位置にあるので、好転からは高値試し優先とするが、再び悪化するところからは下げ再開警戒とし、29日夜安値割れからは遅行スパン悪化中の安値試し優先へ切り替える。

60分足の相対力指数は29日の日中から夜への安値更新時に指数のボトムが切り上がる強気逆行を見せているが、50ポイント前後で上げ渋りとなっている。60ポイント超えへ進めば上昇が勢い付いたことを示し、40ポイント割れからは下げ再開を疑わせる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初の下値支持線を29日夜安値113.19円、上値抵抗を113.75円とみておく。
(2)29日夜安値割れ回避の内は強気サイクルによる高値形成の可能性ありとし、113.75円超えからは28日深夜高値114.03円試しへ向かいやすいとみる。28日深夜高値近辺ではダブルトップ形成からの反落警戒とするが、113.75円以上を維持して推移するうちはダブルトップ破りによる一段高へ進む可能性ありとする。
(3)29日夜安値割れからは新たな弱気サイクル入りと仮定して週明けへの下落を想定する。当初は113円試しだが、113円割れから続落の場合は112.75円から112.50円にかけてのゾーンを試しにかかるとみる。また113.25円以下での推移中は安値試しを続けやすいとみる。

【当面の主な予定】

11/30(金)
G20首脳会議(アルゼンチン・ブエノスアイレス、12月1日まで)
10:00 (中) 11月 国家統計局製造業PMI (10月 50.2、予想 50.2))
14:00 (日) 10月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (9月 -1.5%、予想 0.3%)
19:00 (欧) 10月 失業率 (9月 8.1%、予想 8.0%)
19:00 (欧) 11月 消費者物価指数・HICP、速報値 前年同月比 (10月 2.2%、予想 2.1%)
23:00 (米) ウィリアムズNY連銀総裁、講演
23:45 (米) 11月 シカゴ購買部協会景気指数(PMI) (10月 58.4、予想 58.5)

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