ドル円 114円到達も米連銀議長講演から失速(11/29)

29日未明高値で114.03円をつけたが11月12日高値114.20円には届かず、パウエル米連銀議長講演をきっかけとしたドル安により113.45円まで失速した。

ドル円 114円到達も米連銀議長講演から失速(11/29)

【概況】

11月8日にNYダウ及び日経平均が戻り一巡となって揺れ返しの下落に入ったことで株安を嫌気したドル安円高が11月20日まで続いた。日経平均は11月21日まで下げたが10月26日安値割れを回避、NYダウは11月23日まで下げたが10月29日安値割れを回避してひとまず日米株安の二段下げへの突入が回避されたことでドル円も戻しに入った。NYダウは26日から3連騰で28日には617.7ドル高と大幅上昇した。日経平均も22日から4連騰で戻し、29日も続伸開始となっている。
株高を背景にドル円の上昇も26日から加速した。29日未明高値で114.03円をつけたが11月12日高値114.20円には届かず、パウエル米連銀議長講演をきっかけとしたドル安により113.45円まで失速した。

28日夜発表の米GDP改定値は速報値から据え置かれたが住宅販売件数が予想を下回って悪化したこともドル安要因となった。米商務省が発表した10月の新築一戸建て住宅販売件数は季節調整済みで前月比8.9%減の54万4000戸(年換算)となり、市場予想の57万8000戸を下回った。最近ではNAHB住宅指数、住宅着工及び着工許可件数、中古住宅販売等一連の住宅統計が鈍化傾向を示している事に対して株式市場はさほど懸念していないようだが、資産バブルのピークアウト感の予兆として注目する必要がある。

【米連銀議長発言】

11月27日は米連銀のクラリダ副議長が講演し、「政策金利は景気を過熱も冷やしもしない中立水準により近づいている」としたことを「まだ中立水準に達していないため利上げも継続する姿勢」と市場が受け止めてドル高反応したのだが、29日未明のパウエル議長講演では「金利は依然として歴史的な水準に比べて低い」として12月会合での利上げは示唆したものの「中立金利に近づいている」としたために市場は「利上げの終点が近い」と受け止めてドル全面安反応となった。
正副米連銀議長講演の内容はいずれも12月利上げ姿勢、当面の利上げ継続であり、景気を抑えたり過熱させたりしない中立金利水準にはまだ達していないという意味では同じだが、前者はやや利上げ継続感を意識させ、後者は利上げの終点を意識させるものと市場は受け止めたということだが、やや過剰反応な印象もある。ドル円としては23日夜安値からの上昇も丸3日を経過して3日間の上昇幅も1.37円と拡大したことや11月12日高値に迫る114円に到達したところにあったために高値警戒感を抱いた状況で講演内容をドル安として修正局面入りのきっかけとしたのだろう。

ユーロやポンドも反騰、豪ドルも上昇しているが、これらも直前の下げに対する突っ込み警戒感のなかで議長講演をリバウンド入りの口実とした印象がある
11月30日未明には前回FOMCの議事録要旨公開もあるので、またそこで解釈を巡って乱高下する可能性もある。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、11月20日夕安値から3日目となる23日夜安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとして26日夜から28日夜にかけての間への上昇を想定してきた。28日午前時点では既に前回サイクルトップから4日を経過しているのでトップアウト警戒期としたが、29日未明の反落により28日深夜高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとする。今回のボトム形成期は28日夜から30日夜にかけての間と想定されるので、早ければ29日未明安値ないしは29日午前までの安値でボトムをつけて反騰入りする可能性もあるので113.85円超えからは強気転換注意とするが、28日深夜高値更新へ進めない内は一段安余地ありとし、29日未明安値割れからは29日夜、30日早朝へ下落継続しやすいとみる。

60分足の一目均衡表では29日未明の急落で遅行スパンが悪化、先行スパンへ潜り込んできている。このため遅行スパン悪化中は安値試し優先とするが、先行スパンを上抜いた状況を維持し始める場合は強気転換注意とし、両スパン揃って好転するところからは新たな強気サイクル入りの可能性を優先する。

60分足の相対力指数は26日深夜から29日未明への高値更新時に連続的な弱気逆行を見せていた。29日未明安値では30ポイント割れには至ってないためまだ安値を試しやすい状況にあるとし、55ポイント超えからは上昇再開の可能性を優先する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初の下値支持線を29日未明安値113.45円、上値抵抗を113.85円とみておく。
(2)113.85円を超えない内は29日未明安値割れから113.20円、さらに113.00円試しへ向かいやすいとみる。113.20円以下は反発注意圏だが、113.50円以下での推移中は29日夜から30日にかけても下向きとみる。
(3)113.85円を超え、その後も113.75円以上での推移が続き始める場合は上昇再開の可能性ありとして28日深夜高値114.03円試しとする。高値更新なら新たな強気サイクル入りとして12月3日夜から5日深夜にかけての間への上昇と114円台中盤試しへ向かうとみる。ただしわずかに高値を更新した程度から113.75円割れしてくる場合は60分足52本移動平均分足レベルのダブルトップ形成による下落再開を疑い、28日深夜以降の安値更新からは新たな弱気サイクル入りとなる点に注意する。

【当面の主な予定】

11/28(水)
ロシア、トルコ、イランがシリア情勢めぐり協議(カザフスタン・アスタナ、29日まで)
21:00 (独) 12月 GFK消費者信頼感 (11月 10.6、予想 10.5)
22:30 (米) 7-9月期GDP改定値 前期比年率 (速報値 3.5%、予想 3.5%)
24:00 (米) 10月 新築住宅販売件数・年率換算件数 (9月 55.3万件、予想 57.5万件)
24:00 (米) 11月 リッチモンド連銀製造業指数 (10月 15、予想 15)
26:00 (米) パウエル米FRB議長、講演

11/29(木)
G20財務相会議(アルゼンチン・ブエノスアイレス)
17:00 (欧) ドラギECB総裁、講演
17:55 (独) 11月 失業率 (10月 5.1%、予想 5.1%)
19:00 (欧) 11月 経済信頼感 (10月 109.8、予想 109.1)
19:00 (欧) 11月 消費者信頼感・確定値 (速報 -3.9、予想 -3.9) 
22:00 (独) 11月 消費者物価指数・速報値 前月比 (10月 0.2%、予想 0.2%)
22:30 (米) 10月 個人消費 前月比 (9月 0.4%、予想 0.4%)
22:30 (米) 10月 個人所得 前月比 (9月 0.2%、予想 0.4%)
22:30 (米) 10月 PCEコア・デフレーター 前月比 (9月 0.2%、予想 0.2%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.4万件、予想 22.0万件)
24:00 (米) 10月 住宅販売保留指数 前月比 (9月 0.5%、予想 0.8%)
28:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨
28:00 (米) クリーブランド、シカゴ、フィラデルフィア、ミネアポリス、ボストン、ダラス各連銀総裁が討論会参加

11/30(金)
G20首脳会議(アルゼンチン・ブエノスアイレス、12月1日まで)
06:45 (NZ) 10月 住宅建設許可件数 前月比 (9月 -1.5%)
08:30 (日) 10月 失業率 (9月 2.3%、予想 2.3%)
08:30 (日) 10月 有効求人倍率 (9月 1.64、予想 1.65)
08:30 (日) 11月 東京都区部消費者物価コア指数 前年同月比 (10月 1.0%、予想 1.0%)
08:50 (日) 10月 鉱工業生産・速報値 前月比 (9月 -0.4%、予想 1.2%)
08:50 (日) 10月 鉱工業生産・速報値 前年同月比 (9月 -2.5%、予想 2.5%)
09:01 (英) 11月 GFK消費者信頼感 (10月 -10、予想 -11)
10:00 (中) 11月 国家統計局製造業PMI (10月 50.2、予想 50.2))
14:00 (日) 10月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (9月 -1.5%、予想 0.3%)
19:00 (欧) 10月 失業率 (9月 8.1%、予想 8.0%)
19:00 (欧) 11月 消費者物価指数・HICP、速報値 前年同月比 (10月 2.2%、予想 2.1%)
23:00 (米) ウィリアムズNY連銀総裁、講演
23:45 (米) 11月 シカゴ購買部協会景気指数(PMI) (10月 58.4、予想 58.5)

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