ドル円見通し29日夜の一段高を帳消しとする下落
【概況】
8月29日にはドル全面高を背景に111.82円まで上昇して24日高値111.48円を上抜く一段高となった。8月1日から8月15日へと高値が切り下がって7月19日からの下落が二段下げ型に入っていたが、24日、29日と高値切り上げへ進んだことで調整一巡による上昇再開感が強まり始めたところだったが、30日午前には経済指標悪化をきっかけにオセアニア通貨が急落したことで失速気味となり、さらに新興国通貨安への不安が拡大、人民元も前日から続落し始めたことでリスク回避感によるクロス円での円高感が強まった。
【オセアニア、新興国通貨安】
ニュージーランドのNBNZ企業信頼感指数は前月の-44.9から-50.3へ悪化した。
オーストラリアの4−6月期の四半期民間設備投資は-2.5%へ悪化、また7月の住宅許可件数も-5.2%へ悪化した。これらをきっかけに前夜は上昇していたニュージーランドドル、豪ドルが30日午前に急落商状となった。
ドル人民元の基準値も前日から引き上げられ、その後のオフショア市場でもドル高人民元安で推移、人民元安再燃への懸念が浮上した。
トルコリラ、アルゼンチンペソ、南ア・ランド等新興国通貨安が進行したが、特にアルゼンチンペソが史上最安値をさらに更新、前日比15%安と暴落商状となり、年初からの下落率は52%安に達した。新興国通貨安はクロス円で顕著となり、トルコリラ円は5日続落で8月13日の史上最安値にあとわずかへ迫った。ドルストレートでもドル円以外ではドル高が進んでいるが、ドル高以上に円高反応となっている。
【米連銀利上げ姿勢と大統領の牽制】
米商務省が発表した7月の個人消費支出(PCE)物価指数は前年同月比で2.3%上昇し前月の2.2%を上回った。2012年3月の2.4%以来6年4カ月ぶりの高水準であり、コア指数でも2.0%の上昇となたため米連銀の利上げ判断に利する数字となった。米連銀は9月25日から26日にかけて次回のFOMC(連邦公開市場委員会)を開催するが、利上げはほぼ確実視されている。
米個人消費統計はドル高要因だったが、トランプ米大統領発言がこれを打ち消している。ブルームバーグのインタビューにおいてトランプ大統領は「金融緩和になっていない」と改めて米連銀の利上げ継続姿勢を批判した。パウエルFRB議長について「好きで尊敬できる人物を指名した」として人事には後悔していないことを強調したものの、各国が貿易に有利になる金融政策を講じている、FRBは米政権を支えるべきだとの旨を主張したようだ。
【米中貿易戦争全面化懸念再燃】
ブルームバーグによるとトランプ米大統領は中国に対する追加制裁としての総額2000億ドル規模の中国製品への関税強化を来週にも発動したい意向という。米商務省が8月20日からこの問題に対する影響に関しての公聴会を開いたが、一般からの意見募集が9月6日まで行われる。その後に実施へ進む計画という報道内容だった。米国はすでに500億ドル規模の制裁関税を決定し、7月に340億ドル、8月23日には残りの160憶ドル規模の発動を行ったばかりだ。8月23日には米中商務次官級協議も開催された。しかしトランプ大統領は北朝鮮の非核化が進んでいないのは中国のせいだと批判しており、北朝鮮問題も含めて中国への圧力強化姿勢を継続していると思われる。
8月16日以降は次官級協議開催や24日の人民銀行による基準値算出方式変更による元安抑制姿勢等で米中貿易戦争全面化回避への楽観がやや戻っていた。27日には北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉で米国とメキシコが大筋合意、カナダも合意への姿勢を示したことで世界的な貿易戦争リスクが後退したとして株高が進んできたが、こうした流れに水を差すものとなってきた。
【60分足 サイクル及び一目均衡表分析】
8月24日高値111.48円から27日昼安値110.93円まで下落した後は28日夜まで111円を割り込むところは買い戻されつつ111.30円台が抵抗となる持ち合いだった。29日夜の上昇でこの持ち合いを上放れして111.82円まで一段高したのだが、30日は終日下落となり、31日未明には110.95円まで下げて29日の上昇を解消した。さらに31日午前には110.93円も割り込んできた。
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、8月28日昼への上昇で27日朝の戻り高値を超えるところまで戻したために29日朝時点では27日昼安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとして次のトップ形成期となる29日の日中から31日にかけての間への上昇を想定した。29日深夜へ一段高となり、その後も111.50円以上を維持していたので30日朝時点ではまだ上昇余地ありとしたが、24日高値から3日を経過しているのですでにトップアウト注意期に入っているとして111.50円割れを弱気転換注意とし、111.20円割れからは弱気サイクル入りと仮定するとした。
111.20円を割り込んで続落しているため29日深夜高値をサイクルトップとした弱気サイクル入りとする。今回の安値形成期は30日午後から9月3日にかけての間と想定するが、前回のサイクルボトムが27日昼から28日夜にかけての持ち合い圏安値だったため9月4日以降へと延長される可能性もある。111.40円越えへ戻せないうちはボトム形成への下落継続優先とみる。
60分足の一目均衡表では29日夜の一段高により遅行スパンが好転、先行スパンからも大きく上抜けてきたが、30日深夜の反落により遅行スパンが悪化、先行スパンからも再び転落している。このため遅行スパン悪化中は安値試し優先とし、強気転換は両スパンそろって好転するところからとする。
60分足の相対力指数は29日深夜で80ポイントまで上昇してから反落してきたが、31日朝時点では30ポイントを割り込んでいる。80ポイントまで上昇した後なので20ポイント前後を試し可能性ありとみる。また相場が小反発の後に安値を更新する際に指数のボトムが切り上がる強気逆行等が見られないうちは下落継続しやすいと注意する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、110.70円を支持線、111.30円を抵抗線とみておく。
(2)111.30円以下での推移中は下向きとし、110.70円割れからは110.50円前後試し、さらに110.25円前後まで下値目途が切り下がる可能性ありとみる。111円以下で週を終える場合は週明けも安値試しが続きやすいとみる。
(3)111.30円越えからは強気転換注意とするが、111.50円を超えてさらに続伸できないうちは60分足先行スパン突破に至らないため、111.30円から111.50円にかけてのゾーンは戻り売りにつかまりやすいとみる。(了)<9:40執筆>
【当面の主な予定】
8/31(金)
10:00 (中) 8月 国家統計局 製造業PMI (7月 51.2、予想 51.0)
14:00 (日) 7月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (6月 -7.1%、予想 -4.3%)
18:00 (欧) 7月 失業率 (6月 8.3%、予想 8.2%)
18:00 (欧) 8月 消費者物価指数、速報 前年同月比 (7月 2.1%、予想 2.1%)
22:45 (米) 8月 シカゴ購買部PMI (7月 65.5、予想 63.0)
23:00 (米) 8月 ミシガン大学消費者態度指数・確報 (速報 95.3、予想 95.5)
オーダー/ポジション状況
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