21日から3連騰だがドル安再燃で終える(8月第4週)

24日の23時からはパウエル米連銀議長のジャクソンホール公演があったが、その内容が予想よりハト派だったとして市場はドル安に反応した。

21日から3連騰だがドル安再燃で終える(8月第4週)

【概況】

7月19日高値113.17円から7月26日安値110.59円まで下落、いったん8月1日高値112.15円まで戻してから一段安へ入り、8月13日に110.10円へ、さらに8月21日には109.77円まで続落して7月19日高値からの下げ幅は3.40円幅となった。しかし8月21日安値当日から23日まで日足は陽線3本連続=赤三兵で上昇、24日も戻り高値を切り上げて111.48円まで上昇したが、昼以降はやや下げて終了した。
7月19日高値からの下落は7月20日のトランプ大統領によるドル高批判ツイートがきっかけだった。8月1日への反発は31日の日銀金融政策決定会合からの円安がきっかけだったが長続きせずに失速した。8月16日午前に米中商務次官級協議開催が報じられたことで人民元安が一服、新興国通貨安も一服したことでドル高感が後退したためにドル円でも円高が進んだ。しかし110円割れに対する突っ込み警戒感からの反発に加え、23日未明には米連銀FOMCの議事録公開で米連銀の利上げ姿勢が再認識されたこと、米中次官級協議が特段の成果なく終了したことなどからドル高がぶり返してドル円も上昇した。

【中国人民銀行、元安抑制姿勢を示す】

24日は午後から人民元が急騰した。中国人民銀行が日本時間10時過ぎに日々公表している人民元の「基準値」算定方法について「反景気循環的要因」を採用する方法へ変更するとの姿勢を示したことで人民銀行による元安抑制姿勢が示されたとしてドル安元高反応となった。中国人民銀行は「最近のドル・インデックスの上昇と貿易摩擦の影響により為替市場では新景気循環的な動きがあった」「新景気循環的な市場心理が人民元安を招いている」とし今後の基準値算出の際に「反景気循環的な要因」を使用することを決めたとした。
人民元安が加速した7月3日に中国人民銀行総裁がHP上で元安への牽制的な懸念を示して元安にブレーキをかけた時よりも今回はより具体的な姿勢転換メッセージと思われる。
米中次官級協議の中身については特段の成果や楽観的な妥協への方向付け等が示されなかったものの、中国側は米中貿易戦争を望んでいないとし、人民元安抑制へ人民銀行が動いたこととで中国側が譲歩と解決へ向けた姿勢を示していると市場は受け止めたようだ。

【パウエル議長、講演内容はインフレへの不満抱えるハト派的】

24日の23時からはパウエル米連銀議長のジャクソンホール公演があったが、その内容が予想よりハト派だったとして市場はドル安に反応した。議長講演では「経済が過去の経験則の通用しにくい新局面」として「景気が良ければ物価や賃金も上昇するという相関関係が薄れている」、「(インフレに)加速の兆しは見えない」「かすんだ視界の中での浅瀬航海だ」と述べた。バブル的な景気過熱を利上げで抑えるタカ派姿勢ではなくインフレ進行度合いに満足していないことに苦慮している姿勢と市場は受け止め、ハト派的としてドル売り材料とした。

米セントルイス地区連銀のブラード総裁もこの日にCNBCのインタビューに答えて「インフレ率が高まる兆候がない上、来年には財政刺激策の効果が切れて経済成長が減速すると予想されることから、米連銀は今、利上げを停止すべきだ」と述べた。同総裁にFOMCでの投票権は無いが米連銀内のインフレ進行への不満足を代弁するものと思われる。
市場は9月会合での利上げは規定路線としてほぼ確実視しているが、12月についてはまだ確実とまでは見ていない。また来年には利上げも終了する可能性があるのではないかとの見方も徐々に出てきているため、利上げ継続によるドル高というイメージも従来よりは弱まってきている印象がある。

【7月19日からの三段下げへ進むか、二段調整終了から上昇再開へ向かうか】

【7月19日からの三段下げへ進むか、二段調整終了から上昇再開へ向かうか】

7月19日高値から8月21日安値までは二段下げとなったが、21日から赤三兵で戻して26日移動平均を超えてきた。21日までの下落幅は3.38円幅で、その後の戻り幅は1.71円幅で半値戻しを若干越えてきている。また7月26日から8月1日への反発幅1.56円幅もやや上回っている。
下げ相場の途中で赤三兵で26日移動平均を一時的に超えるところまで戻すことはよくあることだが、26日移動平均越えの状況を維持するか、いったん割り込んでから出直して戻り高値を切り上げてくる場合は上昇基調継続へ進みやすい。また二段下げの場合は一段目の下げからの戻り高値を上抜くところまで上昇すると二段下げ調整から脱却して上昇基調を再確立するケースが多くなる。このため今回も26日移動平均(ないしは一目均衡表の26日基準線)を上回る状況維持に入ること、一段目の下げ後の戻り高値である8月1日の112.15円を超えることが上昇基調確立への目安となってくると思う。

3月26日底から4か月弱の上昇で7月19日高値を付けた。その後の下落では5月29日、6月26日、7月26日安値を1直線で結ぶ支持線を割り込んだ。26日移動平均自身も下降し始めた。これらは昨年11月天井への揺れ返し上昇が一巡して下落期に入った可能性を示唆するものとなっている。
戻り一巡から下落期に入った最初のリバウンドは大きくなり、直前の天井に迫ることも多い。直近の事例では昨年11月6日天井から11月27日へ3.88円幅してから12月12日へ2.9円幅と戻したが、そこから一段安へと進んだケースがある。今回も直前の下げ幅は11月への下げと近い。このため26日移動平均を超えただけでは上昇再開とまでは言えないが、8月1日高値試し、あるいは高値更新から7月19日高値に迫る可能性は出てきたと言える。その可能性を継続するには8月21日からの上昇幅の半値以上を削らずに戻り高値を切り上げることが必要であり、現時点では半値押しとなる110.625円を割り込まないことが上昇継続性への条件と考えられる。

【当面の強弱目安】

(1)24日は人民元の反発とパウエル議長講演からのドル安により、新興国通貨及びメジャー通貨においてもドル安再燃の気配となった。週明けからユーロやポンド、豪ドル、人民元等が上昇してドル高感が強まる場合はドル円も110円割れから弱気転換注意となり、戻り幅の半値押しラインの110.625円割れからは下げ再開の可能性が強まると思われるので、8月末日にかけての円高で8月21日安値109.77円に迫る可能性が考えられる

(2)111円を割り込まないか、割り込んでも押し目買いされて戻り高値を更新する場合は上昇基調継続感が強まるので、ユーロやポンド等が下落し始め、人民元安も進まない状況になるか、ドルストレートではドル安で、クロス円ではリスクオンにより円安となり、ドル円でも円安という組み合わせで進む可能性もある点に注意する。このため111.50円越えからは8月1日高値112.15円試しへ向かう可能性ありとみる。(了)<8月27日22:15執筆>

【当面の主な予定】

8/27(月)
英国休場
17:00 (独) 8月 IFO企業景況感指数 (7月 101.7、予想 101.9)

8/28(火)
20:00 (欧) プラートECB理事、講演
22:00 (米) 6月 ケース・シラー米住宅価格指数 前年同月比 (5月 6.5%、予想 6.4%)
23:00 (米) 8月 リッチモンド連銀製造業指数 (7月 20、予想 18)
23:00 (米) 8月 コンファレンスボード消費者信頼感指数 (7月 127.4、予想 126.5)

8/29(水)
14:00 (日) 8月 消費者態度指数・一般世帯 (7月 43.5、予想 43.3)
15:00 (独) 9月 GFK消費者信頼感 (8月 10.6、予想 10.6)
21:30 (米) 4-6月期 四半期GDP、改定値 前期比年率 (速報値 4.1%、予想 4.0%)
23:00 (米) 7月 住宅販売保留指数 前月比 (6月 0.9%、予想 0.5%)

8/30(木)
トルコ市場休場
07:45 (NZ) 7月 住宅建設許可件数 前月比 (6月 -7.6%)
08:50 (日) 7月 小売業販売額 前年同月比 (6月 1.8%、予想 1.2%)
10:00 (NZ) 8月 NBNZ企業信頼感 (7月 -44.9)
10:30 (豪) 7月 住宅建設許可件数 前月比 (6月 6.4%、予想 -2.0%)
16:55 (独) 8月 失業者数 前月比 (7月 -0.6万人、予想 -0.8万人)
16:55 (独) 8月 失業率 (7月 5.2%、予想 5.2%)

18:00 (欧) 8月 経済信頼感 (7月 112.1、予想 111.9)
18:00 (欧) 8月 消費者信頼感 確定値 (速報 -1.9、予想 -1.9)
21:00 (独) 8月 消費者物価指数 速報 前月比 (7月 0.3%、予想 0.2%)
21:30 (米) 7月 個人消費 前月比 (6月 0.4%、予想 0.4%)
21:30 (米) 7月 個人所得 前月比 (6月 0.4%、予想 0.4%)
21:30 (米) 7月 PCEコア・デフレーター 前月比 (6月 0.1%、予想 0.2%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.0万件、予想 21.5万件)

8/31(金)
08:30 (日) 7月 失業率 (6月 2.4%、予想 2.4%)
08:30 (日) 8月 東京都区部消費者物価コア指数 前年同月比 (7月 0.8%、予想 0.8%)
08:50 (日) 7月 鉱工業生産・速報値 前月比 (6月 -1.8%、予想 0.2%)
10:00 (中) 8月 国家統計局 製造業PMI (7月 51.2、予想 51.0)
14:00 (日) 7月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (6月 -7.1%、予想 -4.3%)
18:00 (欧) 7月 失業率 (6月 8.3%、予想 8.2%)
18:00 (欧) 8月 消費者物価指数、速報 前年同月比 (7月 2.1%、予想 2.1%)
22:45 (米) 8月 シカゴ購買部PMI (7月 65.5、予想 63.0)
23:00 (米) 8月 ミシガン大学消費者態度指数・確報 (速報 95.3、予想 95.5)

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