ドル円110円割れ回避 新興国通貨暴落一服で戻す
【概況】
先週後半からのトルコリラ暴落等、新興国通貨の暴落的な下げに加えてユーロやポンド等も大幅下落したことによるリスク回避感からクロス円で円高が進み、ドル円も13日午前に急落して110.10円の安値をつけた。この段階では7月26日安値110.59円を割り込んだために7月19日高値からの下落が二段下げ型となった。しかし13日夜は110円割れ回避とドル高優先で反発、14日はトルコリラ暴落にひとまず歯止めがかかったことから続伸となり111円台を回復してきた。日経平均の大幅上昇に続いてNYダウ等米国株式市場も5日ぶりに反騰し、新興国通貨暴落へのやや過剰な不安心理が後退したために15日未明へ続伸している。
【新興国通貨暴落一服】
トルコリラの暴落は8月10日には一時23%を超える暴落率となり、13日も一時11%を超える暴落率となったが、14日は13日の暴落分を解消している。また連鎖暴落していたロシアルーブル、南アランド、インドルピー等も落ち着いたが、いずれもまだ先週末の暴落水準に止まっており、暴落一服ではあるがこれで問題解決という印象には至らないと思う。
元来、米連銀が金融緩和を終了して過剰流動性の還流が始まり、利上げサイクルに入ったことで新興国への投資マネーの還流も徐々に始まってきた。そこへトランプ政権による米国第一主義という名の保護主義・関税強化による貿易戦争が仕掛けられたことで中国を中心に先行きの景気不透明感が拡大した。追い撃ちを掛けるようにイラン核合意からの離脱により米国はイラン制裁を開始、同盟国へイラン原油禁輸や取引停止を要請し、トルコでの米国人軟禁問題を口実にトルコへの制裁・関税強化を打ち出したことが今回のトルコリラ暴落を加速させるものとなった。一方的な暴落が続けば大規模な通貨危機に見舞われるが、今のところはまだそこまで深刻化しておらず、連日の暴落を一服させているが、再び暴落商状が出始めれば為替市場も先週末から週明けにかけての混乱状況を拡大してゆくことも懸念される。
【ドル人民元が一段高=元安継続】
ドル人民元が8月3日高値を超えたことに注意すべきと思う。ドル人民元は4月後半からドル高元安に入り、6月15日から元安が加速した。7月3日に6.7168元をつけた後は人民銀行総裁らの口先介入でいったん下げたが早々に一段高となり、8月3日には6.8926元までドル高元安が進んだ。その後は丸1週間を持ち合いとして新たな高値更新を回避していたが、新興国通貨暴落や米国による国防権限法成立、14日の中国経済指標が総じて弱めだったことから上昇再開となり、6.8939元へと高値を更新した。1年3か月振りの高値水準であり、2017年1月の6.9603元、さらに7.0元へと迫ってゆく可能性も指摘されている。
トランプ米大統領は13日に2019会計年度の国防権限法(NDAA)に署名し、同法が成立した。総額7160億ドルの軍事支出のほか、中国通信機器大手の中興通訊(ZTE)と華為技術(ファーウェイ)に対する米政府との取引制限を盛り込んだ。既に中国に対する制裁として総額500億ドル規模の関税強化が発動されてきたが、この先にはさらに2000億ドル規模の関税強化も計画されている。トルコリラ暴落が焦点化されているが、新興国通貨安懸念の中心には人民元安があること、それが単純なドル高だけではなくリスク回避的な円高要因となってくることを認識しておきたい。
【60分足 一目均衡表、サイクル分析】
8月13日安値からの反騰具合は7月31日の日銀金融政策発表から反騰した時に近い動きとなっている。7月31日安値110.75円から8月1日高値112.15円までは1.40円幅であり、その前の7月26日安値からの上昇としてみれば1.56円幅であった。今回は既に1円を超える上昇となっているが、8月1日への上昇と比較した目安としては安値から1.38円幅で111.47円、1.56円幅で111.65円と計測される。このため111.50円前後、111.50円超えの上昇では戻り売りも出やすくなるかもしれないと考える。
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、13日午後安値からの反騰が13日深夜高値を超えて二段上昇へと発展したため、13日午後安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りと考える。前回のサイクルトップを9日夜高値として今回の高値形成期を15日の日中から16日夜にかけての間と想定する。既に前回サイクルトップから4日目に入っているのでトップアウト注意期とするが、111円台を維持するか、わずかに割り込んでも早々に切り返す内は上昇継続性ありとみる。111円割れから続落の場合は弱気転換注意とし、14日深夜安値110.75円割れからは弱気サイクル入りとして次の安値形成期となる16日午後から20日にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では14日の上昇で先行スパンを突破、遅行スパンも好転し、15日午前時点では両スパン好転が継続している。このため遅行スパン好転中は高値試し優先とし、遅行スパン悪化からは弱気転換注意として安値試し優先へ切り替える。その場合は先行スパンが支持帯となってくると思われるが、先行スパンから転落に入れば円高再開も本格化すると思われる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、1111円を下値支持線、111.50円を上値抵抗線とみておく。
(2)111円を上回るか一時的に割り込んでも早々に回復する内は上昇余地ありとし、111.50円超えの場合は111.65円から111.75円にかけてのゾーンを試すとみる。ただし111.50円以上は反落警戒とし、その後の111円割れからは下落再開と考える。
(3)111円割れの状況が続き始める場合は弱気転換注意とし、14日深夜安値110.75円割れからは弱気サイクル入りとして110円台前半試しを想定する。さらに110.50円以下での推移に入る場合は16日への続落で13日安値試しへ向かいやすくなるとみる。(了)<9:50執筆>
【当面の主な予定】
8/15(水)
17:30 (英) 7月 消費者物価指数 前月比 (6月 0.0%、予想 0.0%)
17:30 (英) 7月 消費者物価指数 前年同月比 (6月 2.4%、予想 2.5%)
17:30 (英) 7月 小売物価指数 前月比 (6月 0.3%、予想 0.2%)
17:30 (英) 7月 小売物価指数 前年同月比 (6月 3.4%、予 3.4%)
17:30 (英) 7月 卸売物価コア指数 前年同月比 (6月 2.1%、予想 2.1%)
21:30 (米) 7月 小売売上高 前月比 (6月 0.5%、予想 0.1%)
21:30 (米) 7月 小売売上高(除自動車) 前月比 (6月 0.4%、予想 0.3%)
21:30 (米) 8月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (7月 22.6、予想 20.0)
21:30 (米) 4-6月期 四半期非農業部門労働生産性・速報値 前期比 (前期 0.4%、予想 2.4%)
21:30 (米) 4-6月期 四半期単位労働コスト・速報値 前期比年率 (前期 2.9%、予想 0.2%)
22:15 (米) 7月 鉱工業生産 前月比 (6月 0.6%、予想 0.3%)
22:15 (米) 7月 設備稼働率 (6月 78.0%、予想 78.2%)
23:00 (米) 8月 NAHB住宅市場指数 (7月 68、予想 67)
8/16(木)
08:50 (日) 7月 貿易統計(通関ベース) (6月 7214億円、予想 -412億ドル)
10:30 (豪) 7月 新規雇用者数 (6月 5.09万人、予想 1.50万人)
10:30 (豪) 7月 失業率 (6月 5.4%、予想 5.4%)
17:30 (英) 7月 小売売上高指数 前月比 (6月 -0.5%、予想 0.2%)
18:00 (欧) 6月 貿易収支 (5月 165億ユーロ )
21:30 (米) 7月 住宅着工件数 年率換算件数 (6月 117.3万件、予想 126.0万件)
21:30 (米) 7月 建設許可件数 年率換算件数 (6月 127.3万件、予想 131.0万件)
21:30 (米) 8月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (7月 25.7、予想 22.0)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.3万件 )
オーダー/ポジション状況
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