【概況】
7月19日高値で113.17円まで上昇して5月29日安値からの上昇幅は5.06円幅となったが、7月20日のトランプ大統領による米連銀利上げ及びドル高批判ツイートにより7月23日安値110.75円まで急落した。その後は111円を挟んだ揉み合いが1週間続いたが、31日の日銀金融政策決定会合の結果を円安反応として上昇、31日夜に112円手前へ進み、31日午後には112.15円の高値を付けた。
日銀は長期金利の一定上昇を容認するが金利上昇場面では国債買い入れにより抑制するとした。また年間の国債買い入れ目標の総額は据え置き、ETF買い入れについては従来の日経平均連動系へ比重を置いたものからTOPIX連動系へとシフトしたが総額は据え置いた。ある意味、日銀の緩和政策も限界にきており長期金利上昇を厳格に抑えきることが難しくなっていることを示すものだが、それでも異次元緩和を継続してゆくという姿勢により市場は円安要因と受け止めた。しかしそれも一巡すると米中貿易戦争問題が主要テーマとなり、人民元の下落が一段と加速する中でドル円も失速し始める。
【米中貿易戦争問題のリスク感強まる】
トランプ政権は中国からの輸入総額2000億ドルに対する制裁関税につき、従来の10%加算から25%加算へ強化する姿勢を示した。中国も対抗準備はできているとしているが、水面下での協議進展が報じられたり、進展していないと否定報道が出たりする中で米通商代表部USTRは大統領の意向として検討・実施の方針だとしたことで米中貿易戦争問題も泥沼化する可能性が高まってきている。
ドル人民元は8月3日に1ドル6.90元まで上昇(元安)、2017年5月以来1年3か月振りの高値水準へ急騰しているが、4月から5か月連続の上昇であり、上昇規模は過去の上昇局面を凌駕している。2016年12月の6.9633元を超えて7元台へ進むのではないかとの懸念も出ている。
上海総合株価指数も8月1日に1.8%安、2日は一時3%を超える大幅続落もあったが2.0%安、3日も新たな安値更新には至らなかったが1.0%安と続落している。元安は中国製品の輸出にはプラス要因ではあるが、関税戦争で輸出そのものの先行きが不透明になる中では株安とともに中国の購買力低下要因となり、世界景気への悪影響との側面が強調される。
上海株安がさらに進むようだと世界連鎖株安を発生させかねないこと、米中貿易戦争問題が日米通商摩擦問題での対日圧力強化も連想させる(8月9日から日米協議が始まる)ために中国問題は円高要因となりやすいと警戒される。
【全般的なドル高感の強まり】
ドル円にとっては日銀金融政策からの円安がやや行き詰まり、米中貿易戦争全面化リスクが円高圧力と化している印象だが、メジャー通貨の指標であるドル指数は8月3日に95.368まで上昇して7月19日高値95.66に迫っている。2月に底打ちして4月後半から大幅上昇したが、6月、7月と高値を切り上げてきたものの95ポイント台を維持しきれずに高値圏持ち合いとなっている。7月19日高値を超えてくる場合は持ち合い上放れによる一段高入りとしてドル高感が強まる可能性がある。
ドル高の背景は米連銀の利上げ姿勢に対してECB、BOEの金融政策正常化への姿勢が鈍いことの差、貿易戦争問題における仕掛ける側の米国優位性、先行き不透明感によるドルへの回帰等と考えられる。
ドル指数と概ね逆の姿となるユーロドルは5月末へ急落して以降は1.150ドル台を維持しつつも6月14日高値で1.1850ドルまで戻した後は1.170ドル台で戻りが抑えられて横ばい型の持ち合いとなっている。1.150ドル割れからは持ち合い下放れからの一段安入りとなり、ユーロ安が加速、ドル高感を強める可能性がある。
こうしたドル高感がドル円におけるリスク回避感に勝ればドル円も上昇基調を継続することも可能だろう。しかしリスク回避感が勝ってドル・ストレートでドル高が進行し、クロス円では円高が進行、ドル円としても円高が勝る可能性にも注意がいる。ドル指数は今年2月16日底までの下落だったが、ドル円はリスク回避感優先で3月26日までさらに続落した経緯もある。
【7月26日安値割れを回避できるか、当面の強弱ポイント】
7月19日から26日へ下落したが、この段階では5月29日や6月25日の下落時に下値支持線となった52日移動平均で支えられた。7月31日には前日比で0.78円高の陽線を立てたため、5月29日へ下落した後の6月1日に0.72円高の陽線を立てて上昇再開に入ったところとの類似性が意識されたが、8月2日、3日への反落によりその勢いが削がれつつある。
(1)7月26日安値割れ回避のうちは3月26日安値からの上昇トレンドの維持として7月19日高値越え、さらに昨年5月、7月、11月の天井となった114円台をうかがう可能性が継続され、8月1日高値112.15円を超えるところからはその可能性も高まると思われる。
(2)8月6日以降へ続落の場合は7月26日安値試しの可能性が高まり、さらに底割れからは上昇トレンド転落となって下落期入りとなる可能性が懸念される。仮に7月26日安値を割り込む場合はまず6月25日安値109.37円等を段階的に目指してゆくことが懸念される。米中問題の泥沼化進展、米国の対日圧力強化、人民元及び上海株の下落、米国株式市場の失速などが出始める場合は円高再開を警戒すべきだろう。(了)<5日22:50執筆>
【当面の主な予定】
8/6(月)
カナダ、オーストラリア休場
15:00 (独) 6月 製造業新規受注 前月比 (5月 2.6%、予想 -0.4%)
8/7(火)
08:30 (日) 6月 全世帯家計調査・消費支出 前年同月比 (5月 -3.9%、予想 -1.6%)
08:50 (日) 7月 外貨準備高 (6月 1兆2587億ドル)
13:30 (豪) 豪準備銀行(RBA)政策金利発表 (現行 1.50%、予想 据え置き)
14:00 (日) 6月 景気先行指数(CI)・速報値 (5月 106.9、予想 105.3)
15:00 (独) 6月 貿易収支 (5月 197億ユーロ、予想 208億ユーロ)
15:00 (独) 6月 経常収支 (5月 126億ユーロ、予想 212億ユーロ)
15:00 (独) 6月 鉱工業生産 前月比 (5月 2.6%、予想 -0.5%)
28:00 (米) 6月 消費者信用残 前月比 (5月 246億ドル、予想 180億ドル)
8/8(水)
未 定 (中) 7月 貿易収支 米ドル (6月 416.1億ドル、予想 387.5億ドル)
未 定 (中) 7月 貿易収支 人民元 (6月 2618.8億元)
08:50 (日) 6月 国際収支・経常収支 (5月 1兆9383億円、予想 1兆1958億円)
08:50 (日) 6月 国際収支・貿易収支 (5月 -3038億円、予想 8220億円)
8/9(木)
シンガポール、南ア休場
06:00 (NZ) ニュージーランド準備銀行(RBNZ)政策金利 (現行 1.75%、予想 据え置き)
08:50 (日) 7月 マネーストックM2 前年同月比 (6月 3.2%、予想 3.1%)
08:50 (日) 6月 機械受注 前年同月比 (5月 16.5%、予想 9.5%)
10:30 (中) 7月 生産者物価指数 前年同月比 (6月 4.7%、予想 4.4%)
10:30 (中) 7月 消費者物価指数 前年同月比 (6月 1.9%、予想 2.0%)
17:00 (欧) 欧州中央銀行(ECB)月報
21:30 (米) 7月 生産者物価指数 前月比 (6月 0.3%、予想 0.3%)
21:30 (米) 7月 生産者物価指数 前年同月比 (6月 3.4%、予想 3.4%)
21:30 (米) 7月 生産者物価コア指数 前月比 (6月 0.3%、予想 0.3%)
21:30 (米) 7月 生産者物価コア指数 前年同月比 (6月 2.8%、予想 2.8%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.8万件、予想 22.0万件)
23:00 (米) 6月 卸売在庫 前月比 (5月 0.6%、予想 0.0%)
8/10(金)
08:50 (日) 7月 国内企業物価指数 前年同月比 (6月 2.8%、予想 2.9%)
08:50 (日) 4-6月期 四半期GDP、速報値 前期比 (前期 -0.2%、予想 0.3%)
08:50 (日) 4-6月期 四半期GDP、速報値 年率換算 (前期 -0.6%、予想 1.4%)
10:30 (豪) 豪準備銀行(RBA)、四半期金融政策報告
17:30 (英) 6月 貿易収支 (5月 -123.62億ポンド、予想 -119.00億ポンド)
17:30 (英) 6月 鉱工業生産指数 前月比 (5月 -0.4%、予想 0.4%)
17:30 (英) 6月 製造業生産指数 前月比 (5月 0.4%、予想 0.3%)
17:30 (英) 4-6月期 四半期GDP、速報値 前期比 (前期 0.2%、予想 0.4%)
17:30 (英) 4-6月期 四半期GDP、速報値 前年同期比 (前期 1.2%、予想 1.3%)
21:30 (米) 7月 消費者物価指数 前月比 (6月 0.1%、予想 0.2%)
21:30 (米) 7月 消費者物価指数 前年同月比 (6月 2.9%、予想 3.0%)
21:30 (米) 7月 消費者物価コア指数 前月比 (6月 0.2%、予想 0.2%)
21:30 (米) 7月 消費者物価コア指数 前年同月比 (6月 2.3%、予想 2.3%)
27:00 (米) 7月 月次財政収支 (6月 -749億ドル)
オーダー/ポジション状況
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