【概況】
7月20日のトランプ大統領による米連銀利上げ姿勢及びドル高への牽制ツイートをきっかけとして7月19日高値113.17円から7月23日朝安値110.75円まで急落。その後は111円を挟んだ持ち合いが続いていたが、31日午後の日銀金融政策を円売り材料として反騰、31日深夜に111.95円をつけ、さらに1日午後には112.15円まで上昇して7月20日以来の112円台をつけた。しかし、その後は上昇が続かず低迷した。1日夜はADP民間雇用統計が予想以上に良かったことや8月2日未明のFOMCでの利上げ姿勢継続と景気判断上方修正により、ユーロドルベースではドル高ユーロ安となったものの、ドル円は下落した。
米10年債利回りは上昇、日銀が長期金利上昇を一定容認するとしたことで日本10年債利回りも上昇で金利差面での強弱は打ち消し合ったと思われる。
米連銀の9月利上げはほぼ確実ということは市場も織り込み済であり、ドル指数で見れば対ユーロ以外ではさほどドル高でもない。3日夜の米雇用統計も良ければドル高感は進むかもしれないが、それよりも米中問題への懸念が優先されるというのが昨晩の円高背景だったのではないかと思われる。
米民間雇用サービス会社オートマティック・データ・プロセッシング(ADP)が発表した7月の全米雇用報告では非農業部門民間就業者数が前月比21万9000人増、市場予想の18万5000人増を上回った。
米サプライ管理協会(ISM)が発表した7月の米製造業景況指数は58.1、6月の60.2から低下して市場予想の59.5も下回ったが景気拡大目安の50を23カ月連続で上回った。
米連銀(FRB)は連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を年1.75〜2.00%に据え置き現状維持としたが、景気判断を「強固なペースで拡大」として6月会合時点の「強いペースで拡大」から上方修正したため、市場は9月会合での利上げはほぼ確実との見方を継続、12月に年4回目の利上げが決定される可能性も引き続き高いとの見方を維持した。ただ内容的にはドル全面高へ推し進める程のサプライズ感はなく、市場の反応も限定的なものだった。
【米国の対中制裁関税強化の動き】
米通商代表部(USTR)はトランプ大統領の支持により中国製品2000億ドル相当へ25%の追加関税を検討していると報じられた。米中貿易戦争問題では第一段階として500億ドル相当に25%の関税を上乗せすることが決定され、7月6日にはこのうちの340億相当分への関税が発動され、残り160億ドル相当分についても近く実施される見込みとなっている。これに追加してトランプ政権は2000億ドル相当の中国製品6031品目に対して10%の追加関税を課すとの原案を示してきたがが、今回はこれについて10%ではなく25%へ引き上げるという制裁強化提案となった。仮に決定されれば9月には発動されることになる。
米国とEUの通商問題はトランプ大統領とユンケルEU委員長の首脳会談で協議継続として自動車等への関税発動が当面見送りとなり、市場には楽観論が広がっていたが、ここにきて本丸の中国問題が重要テーマとしてクローズアップされることになった。
ドル/人民元は貿易戦争問題が顕在化した6月15日からドル高元安に走りだし、7月3日に6.7元を超えるところまで大幅上昇した。中国人民銀行総裁発言や中国国有銀行系のドル売り元買い等によりブレーキのかかる場面もあったが現在は6.8元を超えて一段高となっている。ドル高元安と同調して円高元安も進んでいる。また上海総合株価指数は7月25日から反落し、8月1日は前日比で1.8%安と下落している。米USTRによる圧力に対して中国当局がどのような対応を見せるのか注目されるが、対抗的になれば貿易戦争全面化懸念がクロス円にとってのリスク回避要因となって円高を招きかねない。
【60分足 一目均衡表、サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、7月31日の日銀金融政策発表及び黒田総裁会見等から反騰して7月27日未明高値を上抜いたために31日午後安値を直近のサイクルボトムとして強気サイクルに入った。今回の高値形成期は8月1日未明から3日未明にかけての間と想定されたが、1日夕刻高値から0.50円以上の反落となったために1日夕高値を直近のサイクルトップとして弱気サイクル入りしたと思われる。次の安値形成期は3日から7日にかけての間と想定されるので、1日夕高値を上抜けない内は一段安警戒とし、2日夜から3日にかけては続落しやすいと注意する。ただし1日夕高値超えからは新たな強気サイクル入りとして6日から8日にかけての間への上昇へ進む可能性が高まる点にも注意する。たとえば8月3日にかけて下落し、3日夜の米雇用統計等からドル高反応して高値更新へ進む場合はこのケースに入ると考えられる。
60分足の一目均衡表では1日夜の下落で遅行スパンが悪化したが、先行スパン転落は回避している。先行スパン転落を回避する内は112円前後まで戻す可能性があるが、先行スパン転落からは111円割れを目指す下落入りの可能性ありとして遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は31日深夜高値から8月1日夕高値へと高値を切り上げる際に指数のピークが切り下がる弱気逆行となった。このため60ポイント超えへ戻せない内は一段安警戒として30ポイント割れを試す可能性ありと注意する。
以上を踏まえて31日の日中から1日朝にかけてのポイントを示す。
(1)当初、8月2日未明安値111.39円を支持線、111.75円、次いで112円を抵抗線とみておく。
(2)111.39円以上を維持する内は111.75円超えから112円手前を試す可能性ありとみるが、そこは戻り売りにつかまりやすいとみる。
(3)111.39円割れからは一段安入りとして111.00円、さらに31日午後安値110.75円試しへ向かうとみる。110.70円台は突っ込み警戒、反騰注意とするが、111.50円以下での推移中は3日にかけても安値を試しやすいとみる。
(4)強気転換は1日高値112.15円超えからとし、その場合は112円台後半、さらに113円試しへ向かうとみる。
【当面の主な予定】
8/2(木)
10:30 (豪) 6月 貿易収支 (5月 8.27億豪ドル、予想 9.00億豪ドル)
18:00 (欧) 6月 生産者物価指数 前月比 (5月 0.8%、予想 0.8%)
18:00 (欧) 6月 生産者物価指数 前年比 (5月 3.0%、予想 3.5%)
20:00 (英) イングランド銀行(BOE)政策金利発表 (現行 0.50%、予想 0.75%へ引き上げ)
20:00 (英) 英中銀資産買取プログラム規模 (現行 4350億ポンド、予想 据え置き)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.7万件、予想 22.0万件)
23:00 (米) 6月 製造業新規受注 前月比 (5月 0.4%、予想 1.0%)
27:00 (メ) メキシコ中銀、政策金利 (現行 7.75%)
8/3(金)
08:50 (日) 日銀・金融政策決定会合議事要旨
10:30 (豪) 6月 小売売上高 前月比 (5月 0.4%、予想 0.3%)
10:45 (中) 7月 財新サービス業PMI (6月 53.9 )
16:55 (独) 7月 サービス業PMI、改定値 (速報 54.4、予想 54.4)
17:00 (欧) 7月 サービス業PMI、改定値 (速報 54.4、予想 54.4)
17:30 (英) 7月 サービス業PMI (6月 55.1、予想 54.7)
18:00 (欧) 6月 小売売上高 前月比 (5月 0.0%、予想 0.3%)
18:00 (欧) 6月 小売売上高 前年比 (5月 1.4% )
21:30 (米) 6月 貿易収支 (5月 -431億ドル、予想 -431億ドル)
21:30 (米) 7月 非農業部門雇用者数 前月比 (6月 21.3万人、予想 19.5万人)
21:30 (米) 7月 失業率 (6月 4.0%、予想 3.9%)
21:30 (米) 7月 平均時給 前月比 (6月 0.2%、予想 0.3%)
21:30 (米) 7月 平均時給 前年比 (6月 2.7%、予想 2.7%)
23:00 (米) 7月 ISM非製造業景況指数 (6月 59.1、予想 59.0)
オーダー/ポジション状況
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