【概況】
7月17日夕刻からのドル全面高の流れを背景にドル円は18日午前に113円台に到達、午後には113.13円を付けたが夕刻以降は113円を割り込んでいる。深夜に112.71円まで下げた後は横ばいに留まっていたが19日午前は112.70円を割り込んできている。
18日夜にかけてはユーロが一段安したが、米住宅統計が予想を下回ったことや、16日からのドル高に対する反動も入ったためにユーロが戻してドル高にはややブレーキがかかった。また貿易戦争問題についても楽観し過ぎへの警戒感が強まった感もある。
18日夜は米住宅統計の発表があった。6月の住宅着工件数が117.3万件で市場予想の132万件及び5月の133.7万件(135万件から上方修正)を下回った。先行指標となる6月の着工許可件数は127.3万件で市場予想の133万件及び前月の130.1万件を下回った。前日は米鉱工業生産や設備稼働率が良好だったことがドル高に寄与したが、この日は逆に住宅統計がドル高をやや緩めた印象だ。
【米連銀の利上げ姿勢】
18日深夜にはパウエル米連銀議長の下院議会証言があったが、前日の上院での議会証言から新たな内容には乏しく、特段のサプライズはなかった。
パウエル議長は下院証言で、減税が景気浮揚効果をもたらすとしつつ、政府債務が速いペースで拡大しており、財政は持続不可能だと述べ、財政健全化の必要性を指摘した。現状については金融政策によるバブルではないとの見方を示した。また量的金融緩和策で膨張したFRBの保有資産については「3〜4年」で正常な水準に達するとの予想を示したが具体的な水準については言及しなかった。前日の上院議会証言では緩やかな利上げの継続姿勢を示しており、保護主義や政府債務拡大への懸念を持ちつつも金融政策運営への自信を示している。
米連銀は9月25-26日に次回のFOMCを開催するが、市場は9月会合での利上げ確率を9割以上とほぼ確実視している。また6月FOMCで年4回利上げペースが示されたことを受け、12月18-19日の会合での利上げ確率も6割以上と見ている。米連銀の利上げ姿勢継続は株高債券安の逆相関もあって米長期金利上昇に寄与し、ドル円にとっては日米長期金利差拡大によるドル高圧力となっている。
【貿易摩擦問題】
米国株式市場がナスダックの史上最高値更新等に示されるようにかなり楽観的で強気な推移を示し、一時は大きく懸念されていた米中貿易戦争問題についても過度な悲観論から抜け出している印象があるが、19日には米商務省による自動車輸入制限に関する公聴会が開催され、米自動車業界団体や日本、EU、カナダ、メキシコの当局者等が証言を行う予定があるため、再び貿易戦争問題を市場も意識しやすい状況となる。
米紙ポリティコ電子版は18日に、トランプ政権による自動車と自動車部品の輸入に対する追加関税を阻止するための超党派による対抗法案が提出される見込みと報じた。米議会内での対立も強まってくると思われる。
中国外務省は18日、米国による貿易戦争が世界経済にとって最大の信頼喪失要因になっていると批判した。また米国が強情を張り続ければ全世界が反撃するだろうと警告した。
米連銀地区報告(ベージュブック)ではカンザスシティーとダラス連銀が貿易政策めぐる農家の懸念が顕著だと指摘した。
EUは米国による鉄鋼輸入制限の影響を警戒して鉄鋼製品23品目へセーフガード(緊急輸入制限)を19日から発動すると発表した。米国の保護主義、関税強化が他国へと影響を及ぼしていることを印象付けたが、このセーフガードは韓国、中国、インド、ロシア等に影響が出るとみられている。
EUの欧州委員会は18日、米アルファベット傘下のグーグルに43億4000万ユーロ(約5700億円)の制裁金を払うよう命じた。アンドロイドOSに対するEU競争法(独占禁止法)違反による。直接的な貿易戦争ではないが、こうした米系企業への別件での制裁等も市場への懸念を助長するものとなってくると思われる。
【サイクル分析】
(USD/JPY 1時間足)
概ね3日から5日周期の高値・安値形成サイクルでは、7月13日夕刻高値112.80円直近のサイクルトップを付けて調整安に入っていたが、112円台序盤を支持線とした緩やかな三角持ち合い程度に止まり、17日夜からの上昇で13日高値を超えたことにより新たな強気サイクルに入った。今回の高値形成期は18日から20日にかけての間と想定されるが、13日午後高値からの下落により既に13日午後高値でサイクルトップを付けた可能性がある。19日の日中に113円台回復へ進めないうちは弱気サイクル入りと仮定して18日の日中から24日朝にかけての間、下落を想定する。ただし18日高値113.13円越えからは新たな強気サイクル入りとして次の高値形成期となる23日から25日にかけての上昇へ進むと考える。
60分足の一目均衡表では18日午後高値からの下落で遅行スパンが悪化している。先行スパンからも転落しやすい位置となっている。このため遅行スパン悪化中は安値試し優先とし、上昇再開は両スパンそろって好転となるところからとする。
60分足の相対力指数は18日午前から午後への高値更新時に指数のピークが切り下がる小規模な弱気逆行を見せた。50ポイント割れへ下降しているので30ポイント台へさらに下降しやすいとみる。また上昇再開には相場が安値を更新する際に指数のボトムが切り上がる強気逆行を見せるかどうか注目しておく。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初の下値支持線を112.50円、上値抵抗線を113.00円と想定しておく。
(2)113円を上回るうちは112.50円割れから112円前後を試す下落を想定する。112.20円以下は突っ込み警戒、反発注意とするが、112.65円を下回る場合は20日の日中にかけても安値を試しやすくなるとみる。
(3)113円越えからは上昇再開の可能性を優先し、18日高値越えからは113.50円前後への上昇を想定する。また113円台を維持するうちは20日の日中へさらに高値を試す可能性ありとし、先行きは114円台乗せの可能性が高まると考える。
【当面の主な予定】
7/19(木)
未 定 (南) 南アフリカ準備銀行 政策金利 (現行 6.50%、予想 現状維持)
10:30 (豪) 6月 新規雇用者数 (5月 1.20万人、予想 1.65万人)
10:30 (豪) 6月 失業率 (5月 5.4%、予想 5.4%)
17:30 (英) 6月 小売売上高 前月比 (5月 1.3%、予想 0.2%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.4万件、予想 22.1万件)
21:30 (米) 7月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (6月 19.9、予想 22.0)
23:00 (米) 6月 景気先行指数 前月比 (5月 0.2%、予想 0.5%)
7/20(金)
08:30 (日) 6月 全国消費者物価指数 前年比 (5月 0.7%、予想 0.8%)
08:30 (日) 6月 全国消費者物価コア指数 前年比 (5月 0.7%、予想 0.8%)
15:00 (独) 6月 生産者物価指数 前月比 (5月 0.5%、予想 0.3%)
17:00 (欧) 5月 経常収支 (4月 284億ユーロ)
21:00 (米) ブラード米セントルイス連銀総裁、講演
7/21(土)
20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議(ブエノスアイレス、〜22日)
オーダー/ポジション状況
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