ドル安トレンド再開(週報2016年4月第一週)

先週のドル円は、イエレン議長講演をきっかけに、地区連銀総裁によるタカ派寄り発言から再びFOMCにおけるハト派寄りスタンスへと戻される流れを見せました。

キーワード:

ドル安トレンド再開(週報2016年4月第一週)

前週の主要レート(週間レンジ)

      始値   高値   安値    終値

ドル円  113.46  113.80  111.59  111.60
ユーロ円 126.59  128.22  126.51  127.10
ユーロドル 1.1157 1.1438   1.1152  1.1390
日経平均 17129.27 17167.88 16113.01 16164.16

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。

前週の概況

3月28日(月)

東京市場前場は仲値の実需筋によるドル買いに加え、株価が堅調な動きとなっていたこともあって113.69レベルまで円安が進行しました。しかし、後場以降は欧州市場がイースターで休場が続くこともあり動意薄、調整のドル売りも出ていたものの目立った動きは見られませんでした。NY市場に入り弱めの経済指標をきっかけにこれまでのドル買いの調整が進み、特にポンドを中心として欧州通貨買いが目立つ展開となりました。ユーロドルもこれまでのもみあいを上放れ1.12台乗せ、ドル円もドル売りの動きとなったもののスピードの差からユーロ円が127円台に乗せてのクローズとなりました。

3月29日(火)

仲値の実需筋によるドル買いと堅調な株価がドル円を中心としたドル買いの動きを継続させることとなりました。この動きは欧州市場序盤まで続きましたが、その後はイエレンFRB議長の講演を前に調整が進み、株価指数夜間取引での上値が重くなったこともドルの上値を重くする動きとさせました。議長発言は「利上げに対する慎重姿勢が特に正当化される」と3月FOMCのハト派寄りの姿勢に変化が無いことを示しました。地区連銀総裁のタカ派寄りの発言が続いたこともあって、イエレン議長もスタンスに変化が見られるのではないかという思惑が一部であったため、発言後に株価は急騰、為替はドルが大幅安という動きにつながりました。

3月30日(水)

イエレン議長発言の余波が残り東京市場でもドル安の動きが続きました。特にドル円でのドル売りが目立ったことから、アジアの主要株価指数が上昇する中で日経平均のみが下落、後場に入ると株安と円高とが相互に足を引っ張り合いながら、欧州市場と重なる時間帯には一時112.02レベルの安値を付けました。海外市場に移ってからドル円は買い戻しも出て112円台半ばを中心としたもみあいとなりましたが、ユーロドルはドル一段安(ユーロ高)の動きとなり、NY市場で1.1365レベルまで上昇、ユーロ円も前日高値を上抜け127.82レベルまで水準を上げました。

3月31日(木)

期末ということもあって仲値の実需の買いが出て以降は動意薄、日経平均が弱い展開となっていたこともあってドルの上値が重たい流れを続けました。いっぽうユーロドルは欧州市場に入り強い英国の経済指標からポンド買いがリードする形でユーロ買いの動きに、前日高値を上回ると一段高となり、2月高値1.1377レベルをもあっさりと上抜け1.14台乗せ。引けにかけてはやや小緩んでのクローズとなりました。

4月1日(金)

朝方発表された日銀短観は、直後の為替市場こそ影響は無かったものの、株式市場では悪材料とされ寄り付き直後から大幅安、ドル円は株式市場に追随して円買いの動きとなりました。欧州市場に入るとEU離脱懸念がくすぶるポンドが対ユーロで売り込まれ、結果としてユーロが対ドル、対円でも強含み、ドル軟調地合いのまま米国雇用統計待ちとなりました。雇用統計は注目されるNFP、賃金の伸びともに良い結果、一時的にドル買いの動きとなりましたが、あとが続かず。ドル円は引けにかけて再び売りが目立ち、111.59レベルの安値を付けて安値引け。ユーロ円でも円買いが強まり127.10レベルの安値引けとなりました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。FRB地区連銀総裁講演の内、2016年FOMCメンバー(ニューヨーク、ボストン、クリーブランド、セントルイス、カンザスシティ)ではない地区連銀はカッコ付で示しました。わかりやすさ優先で、あえて正式呼称で表記していない場合もあります。

4月4日(月)
**:** 香港市場休場
16:00 トルコ3月CPI
17:30 英国3月建設業PMI
17:30 プラートECB理事講演
18:00 ユーロ圏2月失業率
18:00 ユーロ圏2月PPI
22:30 ボストン連銀総裁講演
23:00 米国2月製造業受注指数
23:30 米国3月労働市場情勢指数

4月5日(火)
08:00 (ミネアポリス連銀総裁講演)
10:30 豪州2月貿易収支
13:30 豪中銀政策金利発表
14:00 (シカゴ連銀総裁講演)
16:50 フランス3月サービス業PMI確報値
16:55 ドイツ3月サービス業PMI確報値
17:00 ユーロ圏3月サービス業PMI確報値
17:30 英国3月サービス業PMI
21:30 米国2月貿易収支
22:45 米国3月MarkIt3月サービス業PMI確報値
23:00 米国3月ISM非製造業景況指数
23:00 米国4月IBD景気楽観度指数
25:15 ドイツ財務相講演

4月6日(水)
10:45 中国3月MarkItサービス業PMI
23:30 米国週間原油在庫発表
25:20 クリーブランド連銀総裁講演
27:00 FOMC(3月15・16日)議事録公表

4月7日(木)
09:00 (ダラス連銀総裁講演)
09:30 黒田日銀総裁挨拶
15:30 プラートECB理事、クーレECB理事講演
16:00 コンスタンシオECB副総裁欧州議会出席
20:30 ECB理事会(3月10日)議事要旨公表
21:30 米国新規失業保険申請件数
28:00 米国2月消費者信用残高
**:** IMF経済見通し発表

4月8日(金)
06:30 イエレンFRB議長含め歴代4議長討論会
08:50 本邦2月貿易収支
09:15 カンザスシティ連銀総裁講演
23:00 米国2月卸売在庫

今週の週間見通し

先週のドル円は、イエレン議長講演をきっかけに、地区連銀総裁によるタカ派寄り発言から再びFOMCにおけるハト派寄りスタンスへと戻される流れを見せました。雇用統計は強い内容であったものの、4月利上げ思惑を復活させることはなく市場のコンセンサスは議長会見のある6月FOMCにおける利上げに落ち着いてきた様子です。

FOMCの動きは、過去にも市場思惑がぶれる中で比較的安定したスタンスを継続するということを何度も書いてきましたが、昨夏以降は海外情勢に配慮しつつも基本的なスタンス=緩やかな利上げ(0.25%ずつ時間をかけて)は維持していることを、うまく誘導している高等戦術のようにも思えます。2016年の議長会見があるFOMCは、6, 9, 12月ですから、経済情勢を見ながら各0.25%ずつの利上げだとすると計0.75%、12月のFF金利見通し(ドットプロット)1.0%と、3月のFF金利見通し0.5%の間に収まり、そのあたりが最終的な落ち着きどころとなる感じがしてきました。

さて、金曜には雇用統計の週末ということで、実質的には今週からが新年度入りということになりますが、本邦景気は足踏み状態、金曜の日銀短観を見ても先行きの見通しは悪化、株式市場も円高の動きが重なって大幅安での新年度となりました。東証上場銘柄のうち、上位30銘柄で構成されるTOPIX Core30(TOPIX全体の 3分の1を超える時価総額)という株価指数がありますが、2015年4月〜2016年3月でこれら日本のリーディングカンパニーの株価がプラスだったのはわずか4銘柄。日経平均も18%弱の下落と株価面では全く冴えない状態です。

日銀の緩和だけでは限界があることは当初からわかっていたものの、マイナス金利導入により、マイナス利回りでも国債にお金が向かう(更なるマイナス金利が進むことで国債価格は上昇。また金融機関にとっては日銀という買い手が存在する。)という歪んだ資金の流れを作ってしまったように思います。4月に入って果たしてどのような景気対策を出してくるのか、アベノミクスも最近では掛け声だけという感も強いのですが、非常に悩ましいスタートを切ったと言えます。

それでも、ドル円相場は比較的安定した値動きを続け、2月中旬以降は111円前後をサポートに、114円前後をレジスタンスとするほぼ平行のチャンネルを形成しています。日足チャートで、赤い太線(レジスタンス)とピンクの太線(サポート)で示したラインがそれですが、現状ではFOMC前の上値トライから、下値トライへと方向を変えているものの、引き続きチャンネル内での動きを続けていることが見て取れます。

日柄的にも6日水曜前後でいったんドル売りの流れが転換する可能性が高く、ドル円に関しては長期的なドル安トレンドは続いているものの、短期的には引き続きレンジ内での動きを継続しやすいといったチャートとなっています。今週も細かな経済指標や講演等は連日あるものの市場参加者が注目しているイベントに、金曜のFRB歴代4議長が参加する討論会があります。ボルカー元議長、グリーンスパン元議長、バーナンキ前議長、そしてイエレン議長と、こんなメンバーが揃うことは過去にも無かったので見ものです。

今週も上下は見られるでしょうが、ドル円に関してはレンジを下抜けするにはもうしばらく時間が必要そうです。111.10レベルをサポートに、112.90 レベルをレジスタンスとする見通しとしておきます。

            ドル円(日足)チャート

            ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみ平均足と同様とすることで、短期的な方向性(緑=上昇、赤=下降)を見やすく加工した当週報独自のチャートとなっています。また、国内外で人気の高い一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。トレンドラインは週初の段階で過去一定期間から自動的に表示される自動トレンドライン(無い場合もあります)となっています。

ディスクレーマー

アセンダント社が提供する本レポートは一般に公開されている情報に基づいて記述されておりますが、その内容の正確さや完全さを保証するものではありません。また、使用されている為替レートは実際の取引レートを提示しているものでもありません。記述されている意見ならびに予想は分析時点のデータを使ったものであり、予告なしに変更する場合もあります。本レポートはあくまでも参考情報であり、アセンダント社および二次的に配信を行う会社は、為替やいかなる金融商品の売買を勧めるものではありません。取引を行う際はリスクを熟知した上、完全なる自己責任において行ってください。アセンダント社および二次的に配信を行う会社は、本レポートの利用あるいは取引により生ずるいかなる損害の責任を負うものではありません。なお、許可無く当レポートの全部もしくは一部の転送、複製、転用、検索可能システムへの保存はご遠慮ください。

オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る