ドル円 戻り高値切り下がりからの安値更新(6/26)

米ウォールストリートジャーナル紙は中国資本が25%以上を占める企業に対して米財務省が産業上重要な技術を保有する米国企業の買収を禁じる規則を策定していると報じた。

ドル円 戻り高値切り下がりからの安値更新(6/26)

【概況】

6月14日未明の米FOMC、14日夜のECB理事会、15日の日銀金融政策決定会合と米欧日の金融政策発表の週を終え、ドル円は日銀金融政策発表後の6月15日午後に110.90円の高値を付けたが、この高値をピークとして下落に転じている。
先週から市場の主要テーマは米国の仕掛ける保護主義、貿易戦争の全面化リスクとなり、6月19日は中国に対する規制強化の動きから109.55円へ急落して6月14日安値109.90円を割り込み、5月30日以降継続してきた「高値切り上げ、その後の安値も切り上げる強気パターン」が崩れた。19日の急落が一服、ドルが一段高する中で20日、21日と戻したが、21日高値110.75円では15日高値110.90円に届かずに反落、安値切り下がり後の戻り高値も切り下がった。
21日夜からはドル高が一服、ユーロ等が上昇する中で再び円高へ傾斜、週明けの25日は貿易戦争問題の報道により一段安となって25日午後には109.37円を付けて19日安値109.54円を割り込んだ。この結果、「戻り高値を切り下げてその後に安値を更新する弱気パターン」に入った。26日未明には109.36円まで安値を更新してからいったんは110.039円まで反騰したが、110円台維持へとは進めずに失速している。

【貿易戦争問題は混迷が進む】

米ウォールストリートジャーナル紙は中国資本が25%以上を占める企業に対して米財務省が産業上重要な技術を保有する米国企業の買収を禁じる規則を策定していると報じた。財務省当局者もこれを認めた。投資制限に関する発表は6月29日に予定されているようだ。
6月25日にはムニューシン米財務長官が米ハイテク企業等への投資規制については中国だけが対象ではなく、「米国の技術を盗もうとする全ての国が対象になる」とツイートしたため、貿易戦争や規制強化が全世界を対象として広がるのではないかとの懸念が拡大した。これまでノーマークだった日本のIT企業への影響も懸念される。
こうした一連の報道を懸念して25日のNYダウは一時500ドル近くの大幅下落となり、終値でも前日比328.09ドル安と下落した。またハイテク中心のナスダック総合指数も影響が大きく160.81ポイント安と大幅続落となった。25日は日経平均、上海株価指数等も下落しており世界的な株安懸念が拡大している。

米国時間25日午後にナバロ米大統領補佐官(通商製造業政策担当)がCNBCテレビのインタビュー放映で「中国やその他の主要国に対する投資規制案は間近に迫っているわけではなく、市場は過剰反応している」と述べたことで、この報道後には過剰反応への反動も若干見られ、ドル円も109.36円から110.039円まで反騰するのだが、継続的な流れには至らずに26日朝には失速している。
6月25日、中国は北京でEUとの相互投資協定について協議し、単独行動主義や保護貿易主義に反対することで一致したと中国の劉鶴副首相、欧州委員会のカタイネン副委員長が共同記者会見を行った。
また中国の李克強首相はフィリップ仏首相と会談し、「中国は今年、航空機を大量に調達する計画があり、エアバス機購入の協議を続けたい」と伝えたと報じられた。米国のボーイング機を大量購入する姿勢をこれまでの米中協議の妥協の中で示唆してきた経緯があるが、米中間の対立激化の中で米国との大規模商談を破断させて欧州機へ乗り換える可能性をちらつかせて米国をけん制した格好だ。

貿易戦争問題、関税強化合戦は米中以外における新興国、資源輸出国にとって対中国輸出計画、対米国輸出計画の先読みを難しくさせるため、仮需要の減少、積極的な在庫投資が手控えられることとなり、国際商品市況全般を冷やす。本来なら金融市場の動揺を背景に安全資産として買われるべきゴールドが急落してきていることもこうした動きを背景にしている。
株式市場にとっても新興国投資・各種投機ポジションへのリスク回避姿勢が強まるため、ポジション解消・投資計画の棚上げ・遅延・資金引き上げ等により投資マネーの逆流、負のスパイラルを発生させてゆく。
世界経済成長の好循環がストップすると「弱い環」で資金循環が行き詰まり、ほころび始める。最も顕著に表れるのは新興国通貨・株式市場への下落圧力と思われる。特に震源地になるのは中国であり、人民元が対ドルで急落していること、上海総合株価指数が大幅下落している状況は要警戒レベルと思われる。
また貿易戦争問題は日本も他人事ではなくなってきていることを日本市場も自覚し始めていると思われる。

【60分足 一目均衡表・サイクル分析】

【60分足 一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成のサイクルでは、6月19日安値から4日目となる25日午後安値とほぼ同値の26日未明安値で目先の底を付けて26日未明に反発したと思われる。しかしその反発は一時的なものにとどまってすでに失速しているため26日未明安値109.36円を割り込む場合は新たな弱気サイクル入りとなる可能性がある。26日未明安値割れ回避のうちは110.80円越えから上昇再開の可能性ありとし、26日未明高値越えなら110.15円から110.40円にかけてのゾーンを試す可能性ありとみるが、109.70円以下での推移に留まるうちは底割れからの弱気サイクル入り警戒とし、底割れの場合は次の安値形成期となる29日から7月2日にかけての間への下落期へ進むと想定される。

60分足の一目均衡表では22日早朝に先行スパンから転落し、その後も転落状況が続いている。26日早朝の反発も先行スパンの下限に抑えられているので、先行スパンを上抜き返せないうちは一段安警戒とする。

60分足の相対力指数は25日の30ポイント割れから26日未明に50ポイント台まで戻したが再び50ポイントを割り込んでいるので、60ポイント越えへと反騰できないうちは一段安警戒として30ポイント割れを目指しやすいとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、109.80円を抵抗、109.36円を支持線とみておく。
(2)109.36円割れ回避のうちは109.80円越えから上昇再開の可能性ありとし、26日未明高値110.03円越えからは110.10円から110.40円手前への上昇を想定するが、そこは戻り売りにつかまりやすいとみる。
(3)109.36円割れからは新たな下落期入りと仮定して109.00円試しを想定する。株安動向や新たな貿易戦争関連報道によっては108円台後半を試す可能性ありとみる。また26日未明安値を割り込んだ後も109.50円以下での推移が続くうちは27日、28日へと続落しやすい状況に入るため、108円割れを目指す可能性が高まってゆくとみる。
(4)5月30日、31日、6月8日、6月14日と安値切り上がりパターンが続いたが、6月15日高値を折り返し地点として6月14日安値を19日に割り込み、25日も安値を更新したため、今後は高値切り上げ型へと切り返せないうちは多少戻しても一段安を繰り返しやすくなったと思われる。(了)<9:30執筆>

【当面の主な予定】

6/26(火)
22:00 (米) 4月 ケース・シラー米住宅価格指数 前年比 (3月 6.8%、予想 6.7%)
23:00 (米) 6月 リッチモンド連銀製造業指数 (5月 16、予想 15)
23:00 (米) 6月 コンファレンスボード消費者信頼感指数 (5月 128.0、予想 128.0)
26:00 (米) ボスティック米アトランタ連銀総裁、講演
26:45 (米) カプラン米ダラス連銀総裁、講演

6/27(水)
07:45 (NZ) 5月 貿易収支 (4月 2.63億NZドル、予想 1.00億NZドル)
17:30 (英) カーニー英中銀(BOE)総裁、発言
21:30 (米) 5月 耐久財受注 前月比 (4月 -1.6%、予想 -1.0%)
21:30 (米) 5月 耐久財受注・輸送用機器除く 前月比 (4月 0.9%、予想 0.5%)
23:00 (米) 5月 住宅販売保留指数 前月比 (4月 -1.3%、予想 1.0%)
25:15 (米) ローゼングレン米ボストン連銀総裁、講演

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