【概況】
6月19日朝、トランプ米大統領が中国による知的財産権侵害への制裁として新たに2000億ドル相当の中国製品に対する10%の追加関税を検討すると表明、中国も同様の追加の対抗措置をとる姿勢を示したため、米中の貿易戦争が全面化する懸念が強まってドル円は急落、110円を割り込み、6月14日安値109.91円割れからさらに午後安値で109.55円まで下げた。
【貿易戦争本格開戦への懸念、世界全般を巻き込む】
米中貿易戦争問題は3月から始まっているが、これまでは両国の対話による妥協という期待があった、しかし先週15日、トランプ政権は総額500億ドルの中国製品に対して25%の追加関税を課すと発表、第一弾の818品目については7月6日から発動し、残りの284品目に対しても意見聴取を踏まえて発動時期を判断するとした。さらに19日朝に大規模な関税拡大方針を示したわけで、今度は米中貿易戦争もいよいよ開戦、全面戦争になるのではないかという懸念が強まった。
既に米国による鉄鋼・アルミへの高関税発動に対してEU、カナダ等がWTO提訴や報復関税導入へ動いており、米中だけではなく世界全体を巻き込んだ関税戦争化へ進む懸念も強まる。
新興国、資源輸出国、あるいは米中へのハイテク輸出国にとっても、こうした動きは販売、輸出戦略の先行き見通しを不透明化するために新規投資は手控えられ、積極的な在庫拡大へ進めずに在庫縮小へと萎縮してゆく可能性がある。
不透明感を背景に19日はアジア、欧州株が軒並み下落した。19日の米株式市場も取引開始から大幅安となり、ダウは一時400ドル以上の下落となり、終値でも287ドル安と大幅続落した。日経平均も400円を超える下落だったが、特に目立ったのは上海総合指数3.8%安の急落となり年初来安値を更新したことだ。下落率は一時5%を超えた。
為替市場でもユーロ安の他、ポンド、豪ドル、南ア・ランド、人民元、アジア通貨が全面安となった。つまりドル・ストレートではドル全面高だが、クロス円ではそれ以上に円高となり、ドル円は下落という構造だ。リスク回避先として通常は買われるゴールドも大幅下落に入っているが、これは資産としての地金への期待値よりも原材料資源としての需要低下懸念を背景にモノとしてのゴールドが売られている状況を示す。
米長期債はまだ安全資産として買われている。FOMCまで上昇していた10年債利回りは低下しているが、米国株から米国債へ資金シフトが起きていると思われる。米長期金利低下は日米金利差拡大による円安ドル高の梯子を外している。
【6月19日下落のテクニカル的な意味】
6月15日高値からの下げ幅は1.36円幅であり、5月30日以降の上昇期における調整安としては6月8日への1.08円幅、6月14日への0.94円幅を超えるレベルとなった。
5月30日以降は5月31日深夜、6月8日夜、6月14日夕と底上げしてその後の高値を更新してきたが、19日への下落で14日安値を割り込んだためにこの底上げパターンが崩れた。また5月30日と6月8日の安値を結ぶ上昇トレンドの支持線を割り込んだ。
ひとまず1円強の下落に対する突っ込み警戒感で20日午前にかけてはやや戻し、110円台を回復してきているが、あくまでも短期的な戻りと思われる。また今回の戻りで6月15日高値110.90円を超えられずに下落再開し、19日安値を割り込むところからは安値切り下げ、その後の戻り高値を切り下げて一段安する弱気パターンとなり、下降トレンド形成へ進む可能性が高まる。つまり、5月30日以降のリバウンドが3週弱で終了して新たな下落期=円高再開へ入る可能性出てきている状況にある。
【60分足 一目均衡表、サイクル分析】
60分足の一目均衡表では19日午前の下落で遅行スパンが悪化、先行スパンから転落した。19日午後からの反発で遅行スパンは好転しやすいところまで来ているが、先行スパンを上抜き、さらにその状況を維持してゆけない内は次の遅行スパン悪化からは下げ再開に入りやすいと思われる。
60分足の相対力指数は19日の下落で20ポイントまで急落したが、下げ過ぎ感からその後は50ポイントまで戻している。40ポイントまでを支持線とし、割り込むところからは下げ再開と仮定して30ポイント割れへ向かう可能性を考える。
概ね3日から5日周期の高値・安値形成サイクルでは、6月14日夕安値を前回のサイクルボトム、14日未明高値と15日午後高値をダブルトップとした弱気サイクル入りとし、ボトム形成期を19日午後から21日夕刻にかけての間への下落を想定した。19日午後安値から110円超えまで戻しているので前回ボトムから3日目となる19日午後安値を直近のサイクルボトムとする。新たな底割れ回避の内は20日の日中から22日にかけての間への上昇余地ありとするが、109.75円割れからは弱気転換注意として19日午後安値試しとし、底割れからは新たな弱気サイクル入りとして次のボトム形成期となる22日の日中から26日にかけての間への下落を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、支持線を109.75円、次いで19日安値109.55円、抵抗線を110.25円から110.45円にかけての間とみておく。
(2)109.75円を上回る内は110.25円から110.45円にかけての間へ戻す可能性ありとみるが、15日高値からの下落に対する半値戻し110.22円以上は反落警戒とみる。
(3)109.75円割れからは19日午後安値109.55円試しとし、底割れからは109円前後試しへの下落を想定する。109円割れは突っ込み警戒、反発注意だが、19日午後安値を割り込む場合は21日、22日へ続落しやすいとみる。(了)<9:35執筆>
【当面の主な予定】
6/20(水)
未 定 (英) 英中銀金融政策委員会(MPC)1日目08:50 (日) 日銀・金融政策決定会合議事要旨
15:00 (独) 5月 生産者物価指数 前年比 (4月 2.0%、予想 2.5%)
15:30 (日) 黒田日銀総裁、講演
21:30 (米) 1-3月期 四半期経常収支 (前期 -1282億ドル、予想 -1290憶ドル)
22:30 (欧) ドラギECB総裁、講演
22:30 (米) パウエル米FRB議長、講演
23:00 (米) 5月 中古住宅販売件数 年率換算件数 (4月 546万件、予想 555万件)
6/21(木)
07:45 (NZ) 1-3月期 四半期GDP 前期比 (前期 0.6%、予想 0.5%)
07:45 (NZ) 1-3月期 四半期GDP 前年比 (前期 2.9%、予想 2.7%)
16:30 (ス) スイス国立銀行 3カ月物銀行間取引金利誘導目標中心値 (現行 -0.75%、予想 据え置き)
20:00 (英) イングランド銀行(BOE)金利発表 (現行 0.50%、予想 据え置き)
20:00 (英) 英中銀資産買取規模 (現行 4350億ポンド、予想 据え置き)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.8万件、予想 22.0万件)
21:30 (米) 6月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (5月 34.4、予想 28.2)
22:00 (米) 4月 住宅価格指数 前月比 (3月 0.1%)
23:00 (米) 5月 コンファレンスボード景気先行指数 前月比 (4月 0.4%、予想 0.4%)
23:00 (欧) 6月 消費者信頼感 速報 (5月 0.2、予想 0.0)
27:00 (メ) メキシコ中銀、政策金利 (現行 7.50% )
29:15 (英) カーニーBOE総裁、発言
オーダー/ポジション状況
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