ドル円 複数テーマを見定め中、変化待ち(6/1)

5月21日からの下落は、市場の心理とテーマで言えば、@米朝首脳会談中止報道や米中通商摩擦再燃での下落開始とこの問題の一服、

ドル円 複数テーマを見定め中、変化待ち(6/1)

【概況】

5月30日未明安値108.11円の後は109円前後を抵抗としつつ、新たな安値割れを回避して60分足レベルの持合いとなっている。イタリア情勢一服でユーロが反騰、リスク回避感がやや後退したためドル円は下げ渋りだが、6月1日からの米国による鉄鋼・アルミ関税適用の拡大開始もあり、1日夜の米雇用統計、米朝首脳会談実現への事前協議進捗状況への警戒感もあってやや膠着状態にある。

【5月21日からの下落背景】

5月21日からの下落は、市場の心理とテーマで言えば、@米朝首脳会談中止報道や米中通商摩擦再燃での下落開始とこの問題の一服、Aイタリア情勢懸念によるリスク回避とその問題の一服、B米国の鉄鋼・アルミ関税導入猶予期限切れにより米国の仕掛ける対世界的な貿易戦争拡大懸念の再燃によるプレッシャー、C米連銀による6月12-13日のFOMC接近とその前提条件となる雇用統計待ちでの揉み合い心理、という状況にある。

米朝首脳会談は予定通りの実現へ向けて事前協議が進展しているものの、両首脳のことだからドタキャンや延期の可能性もある。
米中通商問題も高官協議で合意形成されたと思いきや大統領が不満足を表明し、ZTEに対して罰金を条件に活動を認めたり、新たな対中関税の動きがでたり、なかなか定まらない。

6月1日からは鉄鋼・アルミのEU等への関税適用免除期間終了により関税適用が始まり、EU等の報復がこれから出てくる。
米連銀の利上げ問題については6月会合での利上げはほぼ確実視されているが、ここにきての米GDP下方修正等から6月1日の雇用統計が予想よりも悪いようだと年4回ペースへの加速感が後退するかもしれない。しかしその一方でイタリア問題等から3%割れへ低下していた米10年債利回りが再び上昇に転じるようだと、連銀の利上げ云々ではなく市中金利上昇により新興国・資源国への通貨・株式市場への影響等も出てくるため、為替市場を大きく左右してゆきかねない。
イタリア問題は一服中だが、今後さらに混乱してくるとイタリアのEU離脱問題や、ポピュリスト連立政権によるバラマキ財政を嫌気しての伊国債売り=長期金利急騰とその南欧債務国への波及等も懸念される。

【テクニカル総括】

こうした状況を見定めつつ、一喜一憂が続く中でドル円は下落してきたが、5月21日高値からの流れをテクニカル的に総括すれば、@概ね5か月から6か月周期のサイクルによる戻り一巡、A3分の2戻し実現、2か月上昇により9月8日から11月6日への凡そ2か月上昇とほぼ同レベルの戻りを実現したことによる上昇一巡であり、B今後は概ね5か月から6か月周期のサイクルによる安値形成へ向かいやすい状況ということができると思う。
5月30日未明安値で108.11円をつけた後は30日深夜に109.07円、31日夜も109.00円をつけたが109円乗せから続伸できずにいる。安値は31日の日中安値108.53円から深夜安値108.33円と切り下げているが、30日未明安値割れはまだ回避しているため、60分足レベルのチャート形状は三角持合いに見える。

6月1日夜の米雇用統計を前後して109円乗せ、維持から続伸へ進めば持ち合い上放れとして109.50円前後、あるいは28日朝高値109.82円あたりを目指す上昇へ進む可能性があるが、その場合は5月21日からの下落に対する半値戻し型の反発に入る可能性があるが、その戻りが一巡した後は下げ再開となりやすいのではないかと考える。
31日深夜安値割れからは持合い下放れ警戒となり、30日未明安値割れからは5月21日高値からの下落が24日深夜までを一段目、30日未明までを二段目とし、三段下げの三段目に入っての大幅下落へ向かう可能性が考えられる。この場合は概ね5か月から6か月周期のサイクルによる下落の長期化も踏まえつつ、当初はその半分の周期のサイクルで安値形成期となる6月中後半から7月序盤への下落継続が考えられる。

【60分足 一目均衡表 サイクル分析】

【60分足 一目均衡表 サイクル分析】

60分足の一目均衡表では5月30日未明安値からの持合いにより、遅行スパンは実線と交錯を繰り返し、先行スパンも薄く横這いのため実線もこれを前後している。30日深夜高値109.07円超えから続伸なら両スパン揃って好転となるため遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、108.50円割れからは両スパン揃っての悪化となるため遅行スパン悪化中の安値試し優先へ切り替える。

60分足の相対力指数は持ち合いのため50ポイントを挟んで指数自身も揉み合い状態にある。60ポイント超えからは上昇感が強まるが40ポイント割れからは下落再開感が強まるとみる。

概ね3日から5日周期の短期サイクルでは、5月24日深夜安値から3日目となる30日未明安値で直近のサイクルボトムをつけて戻しに入ったが、既に30日深夜高値でサイクルトップをつけてしまった可能性がある。31日夕高値109.00円超えの場合はサイクルトップ形成の継続として1日の日中から4日朝にかけての間への上昇を想定するが、31日深夜安値108.34円割れからは30日未明安値108.11円試しとし、底割れからは弱気サイクル入りとして次のボトム形成期となる2日未明から6日未明にかけての間への下落を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、108.34円を支持線、109.00円を抵抗線とみておく。
(2)109円超えから続伸へと進めない内は108.34円割れから下落再開と仮定して30日未明安値試しとし、底割れからは107.50円前後への下落を想定する。30日未明安値割れの場合は、早ければ2日未明ないしは4日朝で底打ちの可能性もあるが、108.50円以下での推移中は週明け、4日の日中、5日へ続落の可能性ありとし、その場合は107円前後試しまで下値目処を引き下げる。
(3)109円超えから続伸の場合は109.50円前後試し、勢い次第では28日朝高値109.80円試しを想定するが、109.50円以上は反落警戒圏とし、高値から0.50円以上の下落からは下げ再開とみる。(了)<9:50執筆>

【当面の主な予定】

6/1(金)
16:55 (独) 5月 製造業PMI 改定値 (速報 56.8)
17:00 (欧) 5月 製造業PMI、改定値 (速報 55.5)
17:30 (英) 5月 製造業PMI (4月 53.9、予想 53.5)
21:30 (米) 5月 非農業部門雇用者数 前月比 (4月 16.4万人、予想 19.3万人)
21:30 (米) 5月 失業率 (4月 3.9%、予想 3.9%)
21:30 (米) 5月 平均時給 前月比 (4月 0.1%、予想 0.3%)
23:00 (米) 4月 建設支出 前月比 (3月 -1.7%、予想 0.9%)
23:00 (米) 5月 ISM製造業景況指数 (4月 57.3、予想 58.0)

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