ドル円見通し 7日の戻り鈍く一段安警戒(5/8)

FOMC、米雇用統計と重要イベントを通過した。多少の乱高下を入れながらもメジャー通貨の加重平均であるドル指数は5月3日やや下げたものの4日、7日と反騰して

ドル円見通し 7日の戻り鈍く一段安警戒(5/8)

【概況】

5月3日未明のFOMCを前にした5月2日深夜に110.03円の高値をつけたが、FOMC声明では従来よりもタカ派的で積極的な利上げペース加速感を示さなかったことから3日夜にかけてはドル安円高反応となった。4日夜の米雇用統計では失業率が3.9%まで低下したが、非農業部門就業者増加数と平均時給伸び率が市場予想を下回ったために米連銀の利上げペース加速判断にはさほど寄与しないとして一旦売られて108.64円まで下げた。その後はドル売りをさらに加速させる程ではないとして109円台を回復した。
週明け7日は午前に108.75円まで下げたものの新たな安値更新を回避、ユーロが下げる中で夜間には109.39円まで戻したが、109.50円超えには至らず深夜は失速した。8日午前には109円を割り込んでいる。

【FOMC、雇用統計を通過したが、今度はイラン問題等のリスクテーマ】

FOMC、米雇用統計と重要イベントを通過した。多少の乱高下を入れながらもメジャー通貨の加重平均であるドル指数は5月3日やや下げたものの4日、7日と反騰してこの間の高値を更新している。1月後半からは安値圏の持合いで推移していたが4月後半から持ち合い上放れとなって上昇してきている。先週のイベントでは米連銀の利上げ回数が年3回から4回へ加速するほどの印象を与えなかったものの利上げペースが鈍化する訳ではなく、ECBや英中銀の金融引き締め姿勢が鈍化したことによる4月後半からのドル高感は継続という印象だ。
しかし、その一方ではドル円の上昇を阻害するリスク回避的なテーマも出てきている。一つはイラン問題、もう一つは米中貿易戦争問題であり、全般的なドル高基調が継続してもドル円としては110円到達による高値警戒感も踏まえてリスク回避型の流れに転じつつある印象だ。

サンダース米大統領報道官は7日、貿易摩擦解消に向けた中国との閣僚級協議を来週再開するとした。米中両国は5月3日から4日に北京で協議をしたが特段の成果は見られずにいったん散会していた。今度は米国で協議を行う。トランプ政権は知的財産権侵害に対抗する対中貿易制裁について6月に判断するとされている。中国も既に対抗措置としての大規模関税導入案を示しているが、両国とも協議による妥協を探っている。米中貿易戦争問題は日米貿易不均衡是正への圧力とも絡み、ドル円にとっては他人事ではない。110円到達によりさらに円安へ進んだ場合の米国側からの牽制等を警戒する市場心理がドル円の上昇を抑えている可能性がある。

トランプ米大統領は7日に「2015年のイラン核合意に関して米国時間8日午後2時(日本時間9日午前3時)に決定を発表する」とツイッターに投稿した。核合意を離脱するかどうかを示すと思われる。米国が合意を離脱する場合はイランに対する経済制裁発動へ進み、イランの反発から中東情勢不安が拡大する可能性がある。イランは米国からの合意内容修正には応じないが米国が合意から離脱しても合意にとどまる姿勢を示している。しかし米国の経済制裁内容次第では強硬な対立姿勢を示す可能性がある。

【60分足 一目均衡表、サイクル分析】

【60分足 一目均衡表、サイクル分析】

60分足の一目均衡表では3日夜の下落で先行スパンから転落した。7日夜への反発では先行スパンに潜り込んだが突破しきれずに失速し、8日午前には再び転落している。遅行スパンも悪化中だ。このため4日夜安値から小規模な二段戻しを入れたがそこで戻り一巡、下げ再開に入っている印象が強まってきている。先行スパンからの転落中は一段安警戒とし、強気回復は先行スパンを上抜き返すところからとする。

60分足の相対力指数は7日夜の上昇で60ポイント台に乗せたが、8日午前への反落で40ポイント割れまで低下しているので、戻り一巡からの下げ再開が懸念される姿となっている。50ポイント台回復、維持へ進めば上昇再開の可能性ありだが、40ポイント割れの状況が続く場合は30ポイント前後試しへの下落を想定する。

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、4月27日深夜安値から5日目となる5月4日夜安値で直近のサイクルボトムをつけて戻していたが、前回サイクルトップの2日深夜高値から3日目となる7日夜高値で既にサイクルトップをつけた可能性がある。4日夜安値割れ回避の内は109.20円超えから上昇再開の可能性も残るが、109円以下での推移中は弱気転換注意として4日夜安値試しとし、底割れからは新たな弱気サイクル入りとして次のボトム形成期となる9日夜から11日夜にかけての間への下落を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、4日夜安値108.64円を支持線、109.00円を抵抗線とみておく。
(2)109円以下での推移中は4日夜安値試しとし、底割れからは108.40円から108.00円にかけてのゾーンを試す下落入りとする。また109円台を回復、維持できない内は9日、10日への続落注意とみる。

(3)109円台回復の場合は109.20円試しとし、超えられない内はその後の109円割れから下げ再開とみるが、109.20円超えからは7日夜高値109.39円前後試しへの上昇を想定する。ただし109.30円から109.50円にかけては反落警戒圏とみる。
(4)5月4日安値を割り込む場合、5月2日深夜高値からの下落が二段下げ型となるため、3月26日以降の上昇が一巡、中勢レベルの円高再開となる可能性が出てくる点に注意する。(了)<9:30執筆>

【当面の主な予定】

5/8(火)
15:00 (独) 3月鉱工業生産 前月比 (2月 -1.6%、予想 +0.8%)
15:00 (独) 3月貿易収支 (2月 +184億ユーロ、予想 +225億ユーロ)
15:00 (独) 3月経常収支 (2月 +207億ユーロ、予想 +270億ユーロ)
未 定 (中) 4月貿易収支 (3月 -49.8億ドル、予想 +275.0億ドル)
16:15 (米) パウエルFRB議長、講演

5/9(水)
21:30 (米) 4月生産者物価指数 前月比 (3月 +0.3%、予想 +0.2%)
21:30 (米) 4月生産者物価コア指数 前月比 (3月 +0.3%、予想 +0.2%)
21:30 (米) 4月生産者物価指数 前年比 (3月 +3.0%、予想 +2.8%)
21:30 (米) 4月生産者物価コア指数 前年比 (3月 +2.7%、予想 +2.4%)
23:00 (米) 3月卸売売上高 前月比 (2月 +1.0%)
26:15 (米) ボスティック米アトランタ連銀総裁、講演

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