【概況】
先週末の米雇用統計が予想より悪かったことで6日深夜に反落、107円を割り込んだ。週明けはいったん107.20円まで戻したが米中貿易戦争問題やシリア情勢等を意識して106.61円まで下落。10日午前の習近平主席によるボアオ・アジアフォーラムでの発言が米中協議の可能性を示唆したことでこの問題でのリスク回避感が後退して10日深夜には107.39円まで戻した。しかしこの段階では4月5日深夜高値107.48円超えには至らず。
4月10日は米国のシリアへの軍事攻撃の可能性が強まったとしてジリ安推移、11日深夜には106.65円まで下げて10日午前安値106.61円に迫っている。
4月10日深夜高値では4月5日深夜高値を上抜けずに反落したため、両高値によるダブルトップ形成から下落に転じる可能性が懸念される推移となってきている。10日夜の下落では3月26日安値と4月3日未明安値、4日夕刻安値、10日午前安値をほぼ1直線で結ぶ上昇トレンドの支持線から転落している。
市場心理的には米中貿易戦争全面化への懸念がやや後退したもののシリア情勢の緊迫化がリスク回避行動をとらせる状況となっている。この問題を背景にNY原油は67.45ドルまで上昇して1月天井の66.66ドルを突破、天井破りとなっている。また有事リスク等での安全資産買い対象となるゴールドのスポット価格は1365.02ドルまで上昇して1月天井の1366.04ドルに迫っている。
【シリア情勢】
シリアの化学兵器使用疑惑をめぐり、米国による安保理での調査団派遣決議案はロシアの拒否権で否決された。しかし米トランプ政権は軍事行動に踏み切る構えを強めており、10日にロシア高官が「シリアにミサイルが飛来すれば迎撃する」と述べたことに対して「ロシアは準備せよ。なぜならミサイルが来るからだ」とツイートして挑発を強めている。大統領は南米歴訪予定をキャンセルしており、英仏の協力姿勢を取り付けて共同行動をとる可能性も出てきている。
1年前の4月6日、米トランプ政権はシリアの化学兵器使用疑惑に対して巡行ミサイル50発を打ち込んだ。今回も同様の単独攻撃か、英仏を含めた多国籍有志連合による継続的な空爆へ発展するか、状況を見定める必要がある。またシリアにロシア軍が駐留している事を踏まえると米国の攻撃がロシア軍に及んで米露の軍事的緊張が激化するシナリオも考えられる。それにはサウジとイランの対立も加わると中東情勢不安も現状からさらに深刻化する可能性も懸念させる。
国連安全保障理事会は12日に「平和と安全の維持」に関する非公開会合を開く予定であり、ロシアに近い非常任理事国ボリビアが要請した。時間稼ぎと米英への牽制と思われる。
【FOMC議事要旨】
1.過半数の参加者、貿易問題をめぐる報復や不透明感は米経済のリスク
2.複数の参加者、鉄鋼とアルミ輸入制限を懸念する企業の意見を紹介
3.漸進的な利上げで米景気、年内は力強く、中期的に緩やかに拡大
4.大半の参加者、最近の物価指標でインフレの2%目標へ自信深めた
5.参加者のほぼ全員。利上げを支持。2人は物価踏まえ据え置きを主張
6.数人の参加者、今後数年の利上げペースは従来より幾分加速する公算
7.全参加者、いくらかの漸進的引き締めが正当化される公算大
8.投票メンバー、財政刺激の効果は1月の想定より大きい公算と発言
9.数人の参加者、潜在成長力を超える景気拡大と金融緩和はリスク
10.全参加者、景気見通しは過去数カ月で強まったとの見方で一致
11.参加者、1-3月期の消費や設備投資の軟化は一時的と指摘
12.参加者、景気拡大期の刺激例少ないため財政刺激策の効果などは不透明
米連邦準備制度理事会(FRB)は3月20〜21日の連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨を公表した。「今後数年の適切な利上げは従来想定より幾分加速する公算が大きい」との姿勢を示し、利上げペースの加速を支持する動きと思われるが、3月後半のNYダウ急落とその後の乱高下を踏まえると、3月会合時点より現状ではややタカ派姿勢が後退している可能性もあるため、市場の反応は限定的だった
【60分足 一目均衡表分析】
3月23日と26日に104円台の安値をつけたが、その後は4月5日まで二段上げで上昇してきた。しかし10日夜は新たな高値更新へ進めずに下落したため、3月26日以降の上昇トレンド支持線から転落、ダブル天井の可能性が出ている。10日午前安値106.61円を割り込む場合は5日深夜高値からの下落が二段下げへ発展、ダブル天井完成による下げ再開感が強まると思われるが、安値更新回避か、一時的に割り込んでもすぐに切り返せば106.60円前後をフラットないしはやや右下がりの支持線とした高値圏持ち合いに留まる可能性もある。
60分足の一目均衡表では、11日夜の下落で遅行スパンが悪化、先行スパンから転落した。このため、先行スパンを上抜き返せない内は一段安警戒とし、強気回復は両スパンが揃って好転するところからとみる。
60分足の相対力指数は11日夜の下落で30ポイント台序盤に下げたが、その後は40ポイント台での推移となっている。50ポイント台回復、維持へ進めない内は一段安注意として30ポイント割れを目指すとみる。
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは4月5日深夜高値を前回のサイクルトップとし、10日午前安値を同サイクルボトムとして上昇していたが、5日深夜高値から3日目となる10日深夜高値でダブルトップを形成して下落期に入ったと思われる。10日午前安値割れ回避の内は上昇再開の可能性もあるが、10日午前安値割れからは弱気サイクル入りとして次のボトム形成期となる13日朝から17日朝にかけての間への下落を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、10日安値106.61円を支持線、107円を抵抗線とみておく。
(2)107円以下での推移中は10日午前安値割れからの一段安警戒とし、106.50円から106.30円台への下落を想定する。また106.75円以下での推移中は13日の日中も安値を試しやすいとし、106.50円以下での推移なら106円割れを試す可能性もあるとみる。
(3)107円超えの場合は107.10円台までの戻りを想定するが、107円を再び割り込むところからは下げ再開とみる。ただし、107.25円以上へ戻すようなら高値圏持ち合いの形成として106.60円前後から107.40円前後でのボックス型持ち合い相場入りと考える。(了)<10:00執筆>
【当面の主な予定】
4/12(木)
18:00 (欧) 2月 鉱工業生産 前月比 (1月 -1.0%、予想 0.2%)
21:30 (米) 3月 輸入物価指数 前月比 (2月 0.4%、予想 0.4%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 24.2万件、予想 23.0万件)
27:00 (メ) メキシコ中銀、政策金利 (現行 7.50%)
4/13(金)
未 定 (中) 3月 貿易収支 米ドル (2月 337.4億ドル、予想 278.7億ドル)
未 定 (中) 3月 貿易収支 人民元 (2月 2248.8億元、予想 1029.0億元)
06:00 (米) カシュカリ米ミネアポリス連銀総裁、講演
18:00 (欧) 2月 貿易収支 (1月 33億ユーロ
20:30 (米) ローゼングレン米ボストン連銀総裁、講演
22:00 (米) ブラード米セントルイス連銀総裁、講演
23:00 (米) 4月 ミシガン大学消費者態度指数 速報 (3月 101.4、予想 101.0)
オーダー/ポジション状況
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