【概況】
米雇用統計前日の5日深夜に107.49円まで上昇して3月29日未明高値を上抜き、3月26日安値からの上昇は二段上げとなったが、6日夜の米雇用統計では非農業部門就業者数が10.3万人増に止まり市場予想の18.5万人増及び前月(32.6万人増)を大幅に下回ったこと、さらに中国商務省が緊急会見で米国の関税強化への対抗姿勢を強くアピールした事でのリスク回避感からNYダウが572.46ドル安と下落、ドル円も失速となり7日未明には106.77円まで下げた。
週明けの4月9日は日経平均がプラスで推移、やや株安リスク後退で戻したが、米国市場時間からは再び株安ドル安となり、ドル円も10日未明には106.61円まで安値を切り下げた。
【米中貿易戦争、シリア情勢、米財政赤字問題、ドル安要因が重なる】
米中貿易戦争リスク問題については、トランプ大統領が8日には「習主席は友人だ」「両国に素晴らしい未来を」とつぶやき、「中国は貿易障壁を撤廃するだろう」として「貿易戦争」回避の可能性を示唆した。またムニューシン財務長官も「目的は中国と対話を続けることだ」として交渉重視の姿勢を強調した。これらにより、米中貿易戦争の全面化への懸念はやや後退しているが、この問題に対する悲観と楽観は日々入れ替わっているので安心できない。少なくとも4月中は両国からの発信により一喜一憂が続くと思われるが、妥協に至るまでには米中の対抗姿勢の応酬が懸念されるためドル安要因としての影響がしばらく続くと思われる。
4月9日、FBIがトランプ大統領の私的弁護士であるコーエン氏事務所の強制調査を行ったと報じられた。大統領選挙を巡るロシアゲート問題ないしは大統領の女性問題に対する捜査の可能性も取沙汰されているため、政治リスクが意識されてドル安要因となったようだ。
米国の議会予算局は昨年末の議会による減税と歳出増合意を反映させ財政試算を公表した。それによると2018年度の財政赤字は8040億ドル(GDP比4.2%)、2019年は9810億ドル(同4.6%)、2020年度以降は毎年1兆ドルを超える赤字幅となる見通しとなった。高成長を維持しないと米財政赤字拡大問題が焦点化するリスクが示されたことはドル安要因となっている。
米トランプ大統領は4月9日、2日以内にシリアに関する重大な決定を下すと述べた。アサド政権による化学兵器使用問題ではロシアとイランに責任があるとの見方を示しているが、ロシアに対する制裁拡大の可能性がある。また「いかなる選択肢も排除しない」と述べているが、トランプ政権は昨年4月6日にアサド政権が猛毒神経ガスのサリンを使用したとしてシリア中部の空軍基地に巡航ミサイル59発を撃ち込んだ経緯がある。
シリア情勢を巡る地政学的リスクの高まりもまたドル安要因と思われる。
【60分足 一目均衡表、相対力指数、サイクル分析】
60分足の一目均衡表では、4月3日夜の上昇で遅行スパン好転、先行スパン突破となったが、6日夜の反落で遅行スパンが悪化、10日未明への下落により先行スパンから転落している。このため遅行スパン悪化中は安値試し優先とみるが、3月26日安値と4月3日未明安値を結ぶこの間の上昇トレンド支持線は現在106.50円近辺にあるため、106.50円割れからは下げが加速しやすいと警戒する。また107円台序盤に先行スパンがあるため107円手前から9日夜高値107.20円にかけては戻り抵抗になりやすいと思われる。
60分足の相対力指数は10日未明への下落で30ポイント台序盤へ下げているが、今のところ週末安値形成時との間では強気逆行は見られていないため、まだ一段安懸念が残る。このため50ポイント台回復、維持へ進めない内は下落警戒とし、指数自身の30ポイント割れへの下落が警戒される。
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは4月3日未明安値をサイクルボトムとして上昇してきたが、5日深夜高値でサイクルトップをつけて下落期に入っている。今回のボトム形成期は6日から10日朝にかけての間と想定されるが、7日未明安値からいったん戻して一段安しているため、7日未明安値をボトムとして既に底割れによる連続的な弱気サイクルに入っている可能性もある。9日夜高値107.20円を超えない内は連続的な弱気サイクル入りの可能性も踏まえて安値試し優先とし、107.20円超えからは直前安値をボトムとした強気サイクル入りとして次の高値形成期となる10日夜から12日夜にかけての間への上昇を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、106.50円を支持線、106.75円を抵抗線とみておく。
(2)106.50円から続落し始める場合は連続的な弱気サイクル入りの可能性を踏まえて106.00円前後試しへ向かうとみる。また106.50円以下での推移中は11日にかけても安値試しが続く可能性ありとみる。
(3)106.75円超えの場合は107.00円から9日高値107.20円手前を試すとみるが、9日高値超えへ進めない内は戻り一巡後の下落再開注意とし、直前安値割れからは106円試しへ向かうとみる。
(4)107.20円超えへ反騰の場合は強気サイクル入りとして5日深夜高値107.49円試しを想定する。その前後はいったん戻り売りにつかまりやすいとみるが、107円以上を維持するならば11日の日中も高値試しを継続しやすいとみる。(了)<9:50執筆>
【当面の主な予定】
4/10(火)
17:30 (米) カプラン米ダラス連銀総裁、講演
21:30 (米) 3月 生産者物価指数 前月比 (2月 0.2%、予想 0.1%)
21:30 (米) 3月 生産者物価コア指数 前月比 (2月 0.2%、予想 0.2%)
21:30 (米) 3月 生産者物価指数 前年比 (2月 2.8%、予想 2.9%)
21:30 (米) 3月 生産者物価コア指数 前月比 (2月 2.5%、予想 2.6%)
4/11(水)
07:30 (米) ボスティック米アトランタ連銀総裁、講演
08:50 (日) 2月 機械受注 前月比 (1月 8.2%、予想 -2.5%)
08:50 (日) 3月 国内企業物価指数 前年比 (2月 2.5%、予想 2.0%)
10:30 (中) 3月 生産者物価指数 前年比 (2月 3.7%、予想 3.3%)
オーダー/ポジション状況
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