ドル円 二段上昇だが戻り幅は3円に届かず(4月第2週)

4月6日夜に発表された米雇用統計では非農業部門就業者数が10.3万人増となり、市場予想の18.5万人増、前月速報値の31.3万人増を大幅に下回った。

ドル円 二段上昇だが戻り幅は3円に届かず(4月第2週)

【概況】

米中貿易戦争全面化への懸念を抱きつつも3月23日と3月26日の104円台安値からは戻しに入り、3月29日未明には107.00円を付けた。米連休明けの4月2日には105.656円まで下げたが切り返し、4日も米中貿易戦争懸念からいったん106円割れまで下げる場面もあったが、5日深夜には107.49円まで上昇、3月26日からの上昇は二段上げ型となった。しかし、4月6日の米雇用統計が予想より悪かったこと、6日早朝の米国による関税強化姿勢に対抗して中国が対決姿勢を強める商務省報道官による記者会見を行ったことから再び貿易戦争リスクが焦点化、NYダウ大幅下落によるリスク回避感から107円を割り込んで週を終えた。

4月6日夜に発表された米雇用統計では非農業部門就業者数が10.3万人増となり、市場予想の18.5万人増、前月速報値の31.3万人増を大幅に下回った。4月4日のADP民間部門雇用報告では24.1万人増(前月は23.5万人から24.6万人に上方修正)と良好だったため、本番の労働省雇用統計も良好かと思われていたが、寒波による就業困難等により低い伸びに止まった。
発表からはドル安反応となったが、ドル円は強烈な下落というほどでもなかった。前月分が32.6万人増へ上方修正され2か月平均では20万人増を超えていること、平均時給も前月比0.3%増と予想通りだったものの前月の0.1%増から改善したことから、悲観的に悪い数字とは言えないという印象だった。

米雇用統計発表直前の21時からは中国商務省が緊急会見を行い、米トランプ政権が5日深夜に追加関税導入検討を指示したことへの強い対抗姿勢を示した。会見内容が徐々に伝わる中で米雇用統計の発表もあったため、市場は雇用統計によるドル高へのブレーキ感とともに、米中貿易戦争リスク懸念によるドル安感も加わった状況となった。NYダウが大幅下落反応となったことでリスク回避感が拡大したという認識が為替市場へも影響したが、ダウは572.46ドル安で終了、一時は700ドルを超える下落となっていた。
7日未明にはパウエル米連銀議長の講演もあったが、特段材料視すべき発言はなく、景気拡大やインフレ目標実現への自信を示しつつ、緩やかな利上げが適切との従来姿勢を示したにとどまった。

【3月26日から26日移動平均超えだが戻り幅は2.85円幅】

ドル円は3月23日と26日に104円台まで下落したが、その後は二段上げで戻した。3月29日未明高値からいったん下げたが切り返して戻り高値を107.49円まで切り上げた。この上昇により年初からの下落において上抜ききれなかった26日移動平均、一目均衡表の26日基準線を上抜いたことはこれまでの短期的な中間反発のレベルを超えた上昇へ進む可能性を示唆する。
しかしこの間の戻り幅は2.85円幅であり、2月2日への2.19円幅、2月21日への2.35円幅、3月13日への2.04円幅を超えている。しかし、昨年11月6日天井からの下落における最初のリバウンドとなった12月12日への反発時の2.90円幅には届いていない。12月12日への反発では最初の反発期だったために26日移動平均、26日基準線も超えたのだが、11月27日安値から12月12日までは数えで12日間の戻りに止まり、その後は反落に転じている。

今回の戻りは4月5日深夜まで数えで9日間、移動平均では52日移動平均、一目均衡表では先行スパンの下限に到達するところであり、戻り抵抗感が出やすい水準といえる。11月6日天井からの下落を三段下げと仮定すれば、11月27日へ一段目の下落から戻したところが12月12日高値、二段目の下落が伸びて3月26日安値まで続き、今回は二段目の下げ一服で戻したが、一段目の下げからの反発と同レベルの戻り幅で終わって三段下げの三段目に入ってゆくという可能性も考えられる。

4月9日からの週で戻り高値を超えてくれば、今回は12月12日への反発時を超え、108円台、ないしは109円を目指すところへ発展する可能性が出てくると思われる。そのためには世界連鎖株安ではなく米中協議への期待等から株高、リスクオンとなってドル円も上昇するという構図が必要だろう。
3月26日から二段上げで戻し、安値を切り上げてきたので、この上昇パターンを破るのは中間点いある4月3日未明安値105.656円を割り込む必要がある。ただし、そこまで下げなくても、3月26日安値と4月3日未明安値、4月5日夕刻の一時的な下落による安値を結ぶ上昇トレンドの支持線が106.50円近辺に来ているため、106.50円割れから続落し始める場合は二段戻し終了による下げ再開警戒を優先すべきと思われる。

【米中貿易戦争への懸念、世界連鎖株安不安付きまとう】

米国による中国への大規模関税はまだ原案公表、追加検討指示であり、実行決定に至っていない。中国も対抗リストを示したが、実施時期は未定としている。すでに両国の水面下交渉は進んでいるかもしれないが、決定に至るまではまだ1か月、2か月を要すると思われる。
トランプ大統領は中間選挙を踏まえて強硬姿勢を進め、少しでも有利な状況を得ようとするだろうが、習近平体制も長期政権の基盤ができたばかりで盤石とすれば、簡単に妥協はしないだろう。それは中国が輸入の3分の2を依存し、米国が生産の3分の1を中国向け輸出に充てている大豆への関税強化を今回の報復リストに加えたことでも示される。

米中貿易戦争問題は、世界貿易の萎縮や新規投資手控えによる金融市場全般のリスク回避的行動化や、直接的な人民元高ドル安のみならず、次のターゲットとして日本への貿易赤字縮小要請による円高へと進んでゆく可能性も懸念される。米中協議が難航すればなおさら日本への要求は強まるだろうと推察されるためだ。
しばらくは米中貿易戦争、株式市場の動揺、金融市場全般のリスク回避行動化を意識した展開を余儀なくされそうだ。

これまでの米中貿易摩擦問題の経過
(1)3月1日、トランプ大統領が鉄鋼・アルミへの関税導入を宣言。
(2)3月23日、米国が鉄鋼・アルミの輸入制限を発動。(メキシコ、カナダ、韓国、EU等は除外)
(3)4月1日、中国財政省が対抗措置として米国製アルミニウムスクラップに25%の追加関税を導入、米国からの果物、ワイン、鋼管など120品目に対して15%、豚肉など8品目に25%の関税をそれぞれ上乗せした。

(4)4月3日、米国は通商法301条に基づいて中国の知的財産権侵害に対抗する貿易制裁措置の原案を公表し、一律25%の追加関税の対象として中国製品1300品目、総額にして500億ドル規模、航空宇宙、情報通信、ロボット等のハイテク製品への関税導入計画を示した。実施時期は未確定。
(5)4月4日午後、中国商務省は米国から輸入する大豆、自動車、航空機など合計106品目に25%の関税を上乗せすると発表。米トランプ政権による中国の知的財産権侵害に対する制裁関税拡大姿勢に対してわずか1日後に報復措置を決定したが、実施時期については未定とした。
(6)4月5日夜(日本時間6日早朝)、トランプ米大統領は中国に対してさらに1000億ドル規模の新たな追加関税の検討を指示。
(7)4月6日夜、中国商務省報道官は緊急の記者会見を開き、「1000億ドルの課税リストが発表されれば、直ちに強力な反撃に出る」「中国は貿易戦争を希望しないが受けて立つ」と宣言した。

※ クドロー米国家経済会議(NEC)委員長は6日、米中問題は3か月以内に解決する可能性がある、まだ貿易戦争の状態にはないと述べた。またトランプ大統領の関税適用についての警告は「脅し」ではないとも指摘した。

※ ムニューシン米財務長官は6日、米CNBCテレビのインタビューで、米中間で「貿易戦争になる可能性はある」「トランプ大統領は米国の利害を守る決意だ」と述べたが、「現段階で米中は貿易戦争の状態ではない」「米中間には米国の貿易赤字削減により双方が利益を得るとの明確な理解がある」とし、問題の解決へ「慎重ながら楽観している」と述べた。

【60分足 一目均衡表分析】

【60分足 一目均衡表分析】

60分足の一目均衡表では4月6日夜の下落で遅行スパンが悪化した。先行スパンへ潜り込んでおり、106.74円割れからは転落に入る。このため、遅行スパン悪化中は安値試し優先とし、先行スパン転落からは下げが加速しやすいと注意する。遅行スパン好転からは先行スパン突破も重なるため上昇再開と仮定して高値試し優先へ切り替える。

60分足の相対力指数は30ポイント台まで低下した。また強気逆行は見られていない。このため50ポイント手前を抵抗として30ポイント割れへ低下する可能性を警戒する。

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、5日深夜高値から6日午前、7日未明へ二段下げとなっているので、5日深夜高値を直近のサイクルトップとした下落期入りと考える。今回の安値形成期は3日未明安値を基準として7日未明から10日朝にかけての間と想定されるが、いったん反発を入れてから安値更新へと崩れる場合は連続的な弱気サイクル入りとなる可能性があるため、5日深夜高値超えへ進めないうちは一段安警戒を優先する。5日深夜高値超えからは新たな強気サイクル入りとして次の高値形成期となる10日夜から12日にかけての間への上昇を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、106.75円を支持線、107.25円を抵抗線とみておく。
(2)107.25円を上抜けないうちは106.75円割れからの一段安警戒とみる。さらに106.50円割れの場合は26日以降の上昇トレンドから転落となるため、106円割れを目指す可能性に注意する。106.50円以下での推移が続くうちは一段安警戒を優先し、106円割れからは4月3日未明安値105.656円試しを想定する。

(3)107.25円超えからは5日深夜高値試しとし、高値更新の場合は108円台序盤まで上値目途を引き上げる。また5日高値更新後は107.25円を上回るうちは上昇継続性ありとする。
(4)4月3日安値105.656円を割り込む下落発生からは3月26日からの戻り一巡による下落再開として、先行きは3月26日安値割れへ向かう円高期と考える。(了)<8日21:40執筆>

【当面の主な予定】

4/9(月)
08:50 (日) 2月 国際収支・経常収支 (1月 6074億円、予想 2兆1960億円)
08:50 (日) 2月 国際収支・貿易収支 (1月 -6666億円、予想 +2497億円)
15:00 (独) 2月 貿易収支  (1月 174億ユーロ、予想 190億ユーロ)

4/10(火)
10:30 (豪) 3月 NAB企業景況感指数 (2月 21)
17:30 (米) カプラン米ダラス連銀総裁、講演
21:30 (米) 3月 生産者物価指数 前月比 (2月 0.2%、予想 0.1%)
21:30 (米) 3月 生産者物価コア指数 前月比 (2月 0.2%、予想 0.2%)
21:30 (米) 3月 生産者物価指数 前年比 (2月 2.8%、予想 2.9%)
21:30 (米) 3月 生産者物価コア指数 前月比 (2月 2.5%、予想 2.6%)

4/11(水)
07:30 (米) ボスティック米アトランタ連銀総裁、講演
08:50 (日) 2月 機械受注 前月比 (1月 8.2%、予想 -2.5%)
08:50 (日) 3月 国内企業物価指数 前年比 (2月 2.5%、予想 2.0%)
10:30 (中) 3月 生産者物価指数 前年比 (2月 3.7%、予想 3.3%)
10:30 (中) 3月 消費者物価指数 前年比 (2月 2.9%、予想 2.6%)
14:05 (豪) ロウRBA総裁、講演

17:30 (英) 2月 貿易収支 (1月 -123.25億ポンド、予想 -119.0憶ポンド)
17:30 (英) 2月 鉱工業生産指数 前月比 (1月 1.3%、予想 0.4%)
21:30 (米) 3月 消費者物価指数 前月比 (2月 0.2%、予想 0.0%)
21:30 (米) 3月 消費者物価コア指数 前月比 (2月 0.2%、予想 0.2%)
21:30 (米) 3月 消費者物価指数 前年比 (2月 2.2%、予想 2.4%)
21:30 (米) 3月 消費者物価コア指数 前年比 (2月 1.8%、予想 2.1%)
27:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨

4/12(木)
18:00 (欧) 2月 鉱工業生産 前月比 (1月 -1.0%、予想 0.2%)
21:30 (米) 3月 輸入物価指数 前月比 (2月 0.4%、予想 0.4%) 
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 24.2万件、予想 23.0万件)
27:00 (メ) メキシコ中銀、政策金利 (現行 7.50%) 

4/13(金)
未 定 (中) 3月 貿易収支 米ドル (2月 337.4億ドル、予想 278.7億ドル)
未 定 (中) 3月 貿易収支 人民元 (2月 2248.8億元、予想 1029.0億元)
06:00 (米) カシュカリ米ミネアポリス連銀総裁、講演
18:00 (欧) 2月 貿易収支 (1月 33億ユーロ
20:30 (米) ローゼングレン米ボストン連銀総裁、講演
22:00 (米) ブラード米セントルイス連銀総裁、講演
23:00 (米) 4月 ミシガン大学消費者態度指数 速報 (3月 101.4、予想 101.0)

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