【概況】
米中貿易戦争問題に振り回される日々だが、4月4日午後の中国による米国に対する対抗的な大規模関税導入宣言から106円割れまでいったん急落したドル円はその後の米中協議による妥協へ進む可能性ありとした楽観見通しの巻き返しにより反騰、5日夜には3月28日高値107.00円を超え、深夜には107.49円の高値を付けた。米中の関税拡大姿勢による貿易戦争リスクが高まったことを背景とした3月26日安値104.63円からは2.86円幅となる上昇で、3月29日高値を超えたことにより上昇波動も二段上げ型へと伸びた。
ところが、6日早朝、トランプ大統領が中国に対してさらに1000億ドル規模も追加制裁関税導入を指示したと報じられたことで6日朝には107.00円まで反落している。
6日夜には米雇用統計、パウエル米連銀議長の講演もあるため、市場もここ3日の状況に対してやや楽観し過ぎたとしてポジション調整的な動きに入る可能性がある。米中貿易戦争問題での楽観はまだ早く、両国の欧州は続くこと、トランプ大統領は交渉事では常に強硬姿勢を貫いており、今回の問題でも同様の姿勢だということも再認識させられつつある。
【米中貿易戦争はまだ応酬合戦中】
今年2月、米国は中国に対する太陽光パネル・洗濯機に緊急輸入制限を発動、3月1日には鉄鋼・アルミへの関税導入姿勢を示し、3月22日に中国の知財権侵害に対する貿易制裁を表明、3月23日には鉄鋼・アルミの輸入制限を発動した。
4月1日、中国財政省は対抗措置として米国製アルミニウムスクラップに25%の追加関税を導入し、米国からの果物、ワイン、鋼管など120品目に対して15%、豚肉など8品目に25%の関税をそれぞれ上乗せした。
4月3日、米国は通商法301条に基づいて中国の知的財産権侵害に対抗する貿易制裁措置の原案を公表し、一律25%の追加関税の対象として中国製品1300品目、総額にして500億ドル規模、航空宇宙、情報通信、ロボット等のハイテク製品を主な標的とした。
4月4日午後、中国商務省は米国から輸入する大豆、自動車、航空機など合計106品目に25%の関税を上乗せすると発表。米トランプ政権による中国の知的財産権侵害に対する制裁関税拡大姿勢への報復措置とした。
4日時点で中国は報復関税の実施時期を明示せず、米国との協議姿勢を示した。
4月5日、ロス米商務長官が米中交渉により制裁措置発動を回避する可能性もあると示唆、またクドロー米国家経済会議委員長も制裁発動は協議次第と述べた。
NYダウは4月2日に458.92ドル安と急落したが、その後は米中協議による貿易戦争全面化回避期待への楽観から3日に389.17ドル高、4日に230.94ドル高、5日も240.92ドル高と3連騰した。またドル円も4月3日未明安値105.656円から上昇、4日夕刻にいったん急落を入れたが切り返して一段高してきた。
4月6日朝、米トランプ大統領は中国へさらに1000億ドル規模の新たな追加関税を検討する方針を表明したと報じられた。また来週ペルーで開かれる米州首脳会議に出席して中南米諸国のパートナー国は中国ではなく米国であるべきだとの考えを示すと政権当局者がコメントしたことも伝えられた。これを受けてドル円は107.00円まで反落している。
北朝鮮情勢を巡り、米国は段階的に圧力を強める強硬姿勢を貫いてきた。その結果として米朝首脳会談実現の可能性までこぎつけている。トランプ大統領は就任後も一貫して持論の米国第一主義、強い米国の復活、その実現への強硬姿勢を示してきた。中国も習近平長期政権を確立したばかりで体制は盤石のため、今回の米国との貿易戦争へは正面から対決姿勢を示している。4月3日の米国による追加制裁関税導入原案公表に対してその翌日には同規模の対抗措置を発表したことでも十分な事前準備と作戦を練ってきていることがわかるが、トランプ大統領もさらに追加制裁姿勢を示す等、まだこの問題はエスカレートの最中にあり、両者がカードを出し切ったあとは妥協点を見つけるために協議するしかない、という地点には至っていないようだ。
【戻り高値切り下げパターンから脱却】
昨年11月6日天井および12月12日の戻り高値からの下落が続いてきたが、この間は小反発を入れながらも1月8日、2月2日、2月21日、3月13日と戻り高値が切り下がり、その後に安値を更新する弱気パターンが続いてきた。3月29日未明に107.00円まで上昇した段階では3月13日高値107.29円を超えらず、まだ戻り高値切り下がりの範囲にあったが、4月5日深夜高値で107.49円まで上昇して3月13日高値を上抜いた。このため3月26日安値からの上昇は二段上げとなり、戻り高値切り下がりパターンからひとまず脱却した。
米中貿易戦争問題で全面戦争へのエスカレート懸念が強まれば3月26日からの上昇も挫折する可能性があるが、3月26日安値104.63円、4月3日未明安値105.656円と安値を切り上げてきているパターンを維持するうちは、多少の反動安を消化しつつも戻り高値切り上げによる上昇を継続させてゆく可能性がある。そのためにはまず、6日夜の米雇用統計、パウエル議長講演、さらに週末の米中双方からの貿易戦争に関する発言、報道等を強気で乗り越える必要がある。それができずに4月3日安値を割り込む場合は、安値切り上げ型が崩れて下げ再開、円高加速となりかねない。
株高、特にNYダウが楽観的に上昇すればリスクオン心理で円安ドル高、株安が深刻化するようだとリスクオフで円高が巻き返してくる。週末週明けを強気で通過できれば108円、109円台乗せの可能性が高まり、弱気へ転じれば下げ再開が懸念されることになるのだろうと思われる。
【60分足一目均衡表分析】
60分足の一目均衡表では4日夕刻の急落で遅行スパンが悪化しかけたがその後の反騰で好転を維持、先行スパンからも転落しかけたが回避して一段高している。6日朝の反落で26本基準線を割り込んでおり、遅行スパンも悪化しやすくなっている。107円割れから続落し始める場合は遅行スパン悪化となるため、いったん安値試し優先として先行スパンからの転落を回避できるかどうかを試すとみる。雇用統計等今晩の米国市場時間で先行スパン転落へ崩れるか、回避して一段高するのかにより、その後の流れも決まると思われる。
遅行スパン悪化からは安値試し、そのまま先行スパン転落へ進めば下げ再開を想定し、遅行スパンが悪化回避ないしは一旦悪化した後の反騰で再び好転なら上昇再開、一段高の可能性を優先と考える。
60分足の相対力指数は5日夜に80ポイントへ迫ったが、6日朝は50ポイント割れまで低下したため、下落再開警戒となっている。40ポイント台に止まって60ポイント超えへ進めば上昇再開の可能性、40ポイント以下へ下げてさらに続落なら急落入りを警戒する。
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、4日夕刻の急落で弱気サイクル入りと思われたが、深夜の切り返しで高値を更新してきているため、4月3日未明安値を起点とした強気サイクルの継続としてきた。6日朝の反落によりサイクルトップを付けて下落期に入っている可能性がある。106.85円割れからは弱気サイクル入りの可能性を優先し、新たな高値更新へ進めないうちは6日の日中から10日朝にかけての間への下落を継続しやすくなるとみる。その場合は当初の下値目途を106.50円前後試しとし、米雇用統計等から下落の場合は106円台序盤試し、週明けの105円台後半試しへの下落を想定する。
また106.80円割れから弱気転換した後に高値更新へ反騰する場合は新たな強気サイクル入りとして10日から12日にかけての一段高で108円超えを目指すとみる。(了)<9:45執筆>
【当面の主な予定】
4/6(金)
清明節 中国休場
14:00 (日) 2月 景気先行指数(CI) 速報 (1月 105.6、予想105.6)
15:00 (独) 2月 鉱工業生産 前月比 (1月 -0.1%、予想 0.3%)
15:45 (欧) クーレECB理事、講演
21:30 (米) 3月 非農業部門雇用者数 前月比 (2月 31.3万人、予想 18.9万人)
21:30 (米) 3月 失業率 (2月 4.1%、予想 4.0%)
21:30 (米) 3月 平均時給 前月比 (2月 0.1%、予想 0.2%)
26:30 (米) パウエルFRB議長、講演
28:00 (米) 2月 消費者信用残高 前月比 (1月 139.1億ドル、予想 150.0億ドル)
23:30 (米) エバンス米シカゴ連銀総裁、講演
オーダー/ポジション状況
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