【概況】
104円台半ばから107円到達まで反騰するも週末は失速。米連銀による利上げペース加速云々よりも米トランプ政権による保護主義的な関税強化による貿易戦争勃発リスクを警戒してNYダウが3月22日に724.42ドル安、23日に424.69ドル安と大幅下落し、ドル円も3月23日には104.63円まで下落、2016年11月のトランプショック時以来の安値を付けた。この段階では世界連鎖株安がさらに進行してドル円もリスク回避で一段安へと進む可能性が懸念されていたが、貿易戦争回避で米中が通商交渉を開始しているとの報道で過剰反応に対する反動高となって27日は105円台を回復、28日には予想以上に米GDPが上方修正されたためにドルの買い戻しが進んで29日未明には107.00円まで戻した。しかしその後は107円台を維持できずに30日夕刻には106.12円まで下落した。
【戻り高値切り下げパターンを崩せるか?】
3月26日安値から29日高値までの上昇幅は2.38円幅であり、直前の22日高値からの2.00円幅を上回り、22日高値も上抜いた。また3月13日に107.29円まで戻したときには日足終値ベースでは26日移動平均を上抜けなかったが、今回は同線を上抜いた。一目均衡表の26日基準線も同様に上抜いた。前日比でも1.53円幅の陽線を立てているので注目に値する上昇であるが、まだ年初からの下落基調における戻り高値切り下がりパターンを脱却する=3月13日高値を超えるところまでにはいたらなかった。
現状は昨年11月6日高値で概ね10か月から1年周期のサイクルにおける天井を付けて下落してきた状況にある。この間、何度か小反発を入れてきたが、2月2日への反発は2.19円幅、2月21日への反発は2.35円幅、3月13日への反発は2.04円幅であり、いずれも戻り幅は3円に満たず、戻り高値切り下がりからその後に一段安を繰り返してきた。
今回の戻りは26日移動平均を超えるところまで戻したが、戻り幅としてはこれまでの小反発と同レベルである。また高値切り上げとなるには3月13日高値107.29円を超える必要があるが、今のところはクリアできずにいる。またいったん上抜いた26日移動平均(現在106.22円)を再び割り込みつつある。
【中勢の強弱分岐ポイント】
(1)26日からの戻りの半値押しを下回ると下落再開警戒
今回の上昇幅に対する半値押しは105.82円。半値押しをさらに超える下落となる場合はこれまでの小反発同様に戻り高値を切り下げて安値更新へ向かう可能性がやや高まると思われる。ただし、3月26日安値で中勢レベルの底を付けたとすれば、初押しはやや深めとして半値押しを超えて105.50円前後まで下げてもそこから切り返せば、3月26日安値を中心として60分足レベルの逆三尊、日足での小規模逆三尊形成の可能性がある。このため、いったん106円割れしてから106.50円超えへ上昇なら上昇継続の目は残る。
105.50円割れへ進むならそのまま3月26日安値試しへ向かう可能性が高まる。そこでダブル底形成の可能性はあるが、底割れなら一段安開始となり、週足レベルのチャート上の節目となる2016年11月のトランプショック時安値101.18円、英国EU離脱決定ショックの2016年6月24日安値98.97円まで下値目途が切り下がってゆく可能性が高まると考えられる。
(2)29日未明高値超えから3月13日高値超えへ進めば状況好転
3月29日未明高値107.00円を超えてくれば、3月26日安値からの上昇は60分足レベルでの二段上げとなり、3月13日高値を上抜けば日足レベルの高値切り下がりパターンから脱却し、26日移動平均線を上抜いての上昇という強気な状況を確保し始める可能性が出てくる。そうなれば108円台、109円を試す可能性まで上昇感が拡大すると思われる。
【NYダウ、三角持合いからどう進むか?】
3月22日未明の米連銀FOMCによる利上げ決定、2018年の利上げペース加速の可能性示唆によるドル円の上昇はわずかであった。FOMC前からの主テーマは3月1日のトランプ大統領による鉄鋼・アルミの関税導入、中国に対する貿易戦争的な大規模関税導入の動きであった。これが株安を発生させ、株安リスクからの逃避先として米長期国債は買われ、結果として米長期金利は低下した。米FOMCが短期の政策金利を引き上げても長期金利が低下すればドル売り要因となり、株安不安とともにドル円はリスク回避の円買い戻しにより下落へ向かいやすくなる。それが3月26日への円高ドル安の背景といえる。
3月28日夜のドル円上昇は米GDPの予想を上回る上方修正であった。株安が一服して戻してきた最中での押上げ材料として市場は反応した。4月6日には米雇用統計の発表も控えているので、仮に米雇用統計が予想より強く、米国株が上昇している状況ならばGDP上方修正反応と同様にドル高要因となる可能性があるが、株安不安がある中で米雇用統計が予想より悪い場合は28日とは逆にドル売りが加速する要因となりかねない。
この問題はトランプ政権の発言、姿勢報道等で大きく左右される。NYダウは2月序盤の暴落的な下げで付けた2月9日安値を3月23日時点では割り込まずにやや戻したため、1月26日天井からは支持線フラット型の三角持合いの様相となっている。同じく波乱要因となる上海総合株価指数も底割れを踏みとどまっているが、さほど余裕がないところまで下げている。NYダウが持ち合い下放れ、上海も底割れなら世界連鎖株安によるリスク回避で円高再燃、加速が警戒され、NYダウが三角持合い下放れを回避するうちはドル円上昇再開の可能性も残る、という関係性で注目する必要があると思う。(了)<1日21:10執筆>
【当面の主な予定】
4/2(月)
イースターマンデー
豪、NZ、香港、英、仏、独、スイス休場
家族の日
南ア休場
08:50 (日) 1-3月期 日銀短観・大企業製造業業況判断 (前期 25、予想 25)
08:50 (日) 1-3月期 日銀短観・大企業製造業先行き (前期 19 、予想 22)
08:50 (日) 1-3月期 日銀短観・大企業全産業設備投資 前年度比 (前期 7.4%、予想 1.1%)
10:45 (中) 3月 財新製造業PMI (2月 51.6、予想 51.7)
23:00 (米) 2月 建設支出 前月比 (1月 0.0%、予想 0.3%)
23:00 (米) 3月 ISM製造業景況指数 (2月 60.8、予想 60.0)
4/3(火)
07:00 (米) カシュカリ米ミネアポリス連銀総裁、講演
08:50 (日) 3月 マネタリーベース 前年比 (2月 9.4%
13:30 (豪) 豪準備銀行(RBA)、政策金利発表 (現行 1.50%、予想 据え置き)
16:55 (独) 3月 製造業PMI、改定値 (速報 58.4、予想 58.4)
17:00 (欧) 3月 製造業PMI、改定値 (速報 56.6、予想 56.6)
17:30 (英) 3月 製造業PMI (2月 55.2、予想 54.8)
22:30 (米) カシュカリ米ミネアポリス連銀総裁、講演
4/4(水)
10:30 (豪) 2月 住宅建設許可件数 前月比 (1月 17.1%、予想 -5.0%)
10:30 (豪) 2月 小売売上高 前月比 (1月 0.1%、予想 0.3%)
10:45 (中) 3月 財新サービス業PMI (2月 54.2、予想 54.6)
18:00 (欧) 2月 失業率 (1月 8.6%、予想 8.5%)
18:00 (欧) 3月 消費者物価指数(HICP) 速報値 前年比 (2月 1.2%、予想 1.4%)
21:15 (米) 3月 ADP民間非農業部門就業者数 前月比 (2月 +23.5万人、予想 20.0万人)
22:45 (米) ブラード米セントルイス連銀総裁、講演
23:00 (米) 3月 ISM非製造業景況指数 (2月 59.5、予想 59.0)
23:00 (米) 2月 製造業新規受注 前月比 (1月 -1.4%、予想 1.7%)
24:00 (米) メスター米クリーブランド連銀総裁、講演
4/5(木)
清明節 中国休場
10:30 (豪) 2月 貿易収支 (1月 10.55億豪ドル、予想 8.25億豪ドル)
16:55 (独) 3月 サービス業PMI、改定値 (速報 54.2、予想 54.2)
17:00 (欧) 3月 サービス業PMI、改定値 (速報 55.0、予想 55.0)
17:30 (英) 3月 サービス業PMI、(2月 54.5、予想 54.2)
18:00 (欧) 2月 生産者物価指数 前年比 (1月 1.5%
18:00 (欧) 2月 小売売上高 前月比 (1月 -0.1%、予想 0.3%)
18:00 (欧) 2月 小売売上高 前年比 (1月 2.3%
21:30 (米) 2月 貿易収支 (1月 -566億ドル、予想 -558億ドル)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.5万件
26:00 (米) ボスティック米アトランタ連銀総裁、講演
4/6(金)
清明節 中国休場
08:30 (日) 2月 全世帯消費支出 前年比 (1月 2.0%
14:00 (日) 2月 景気先行指数(CI) 速報 (1月 105.6
15:00 (独) 2月 鉱工業生産 前月比 (1月 -0.1%、予想 0.3%)
15:45 (欧) クーレECB理事、講演
21:30 (米) 3月 非農業部門雇用者数 前月比 (2月 31.3万人、予想 18.9万人)
21:30 (米) 3月 失業率 (2月 4.1%、予想 4.0%)
21:30 (米) 3月 平均時給 前月比 (2月 0.1%、予想 0.2%)
26:30 (米) パウエルFRB議長、講演
28:00 (米) 2月 消費者信用残高 前月比 (1月 139.1億ドル、予想 150.0億ドル)
4/7(土)
23:30 (米) エバンス米シカゴ連銀総裁、講演
オーダー/ポジション状況
関連記事
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:照葉 栗太
2024.11.23
来週の為替相場見通し『トランプトレードと円キャリーの組み合わせがドル円を下支え』(11/23朝)
ドル円は、今週前半にかけて、一時153.28まで急落する場面が見られましたが、週末にかけては一転154円台後半へと持ち直す動きとなりました。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:田代 昌之
2024.11.22
東京市場のドルは154円台後半で推移、日銀による追加利上げ観測が円安のブレーキ役に(24/11/22)
東京時間(日本時間8時から15時)のドル・円は、日本株のしっかりとした推移を材料にじり高の展開となり154円台後半で推移した。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:斎藤登美夫
2024.11.22
ドル円 値動きそのものは激しいが、結果レンジ内か(11/22夕)
東京市場はドルが小高い。やや激しめの乱高下をたどるなか、最終的にドルは高値引け。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:斎藤登美夫
2018.04.02
ドル戻り歩調続くか 北情勢など依然要注意(4月第1週)
先週のドル/円相場は、ドル高・円安。週明けに104.57円まで値を下げ、ドルは年初来安値を更新したものの、以降は一貫して強含み。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:編集人K
2018.03.30
円106円台前半、ユーロ1.23近辺で方向感無し(3/30夕)
本邦年度末の30日の東京市場で、為替はドル円、ユーロドルともに方向感なく推移しました。
-
みんなのFX トレイダーズ証券
みんなのFXはスワップもスプレッドも高水準!口座開設とお取引で最大1,010,000円キャッシュバックキャンペーン中!
取引は1,000通貨からOK、手数料も無料!eKYCで最短1時間後に取引可能
- 「FX羅針盤」 ご利用上の注意
- 掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
- 掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
- 当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
- FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
- 当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
- 当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
- 当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
- 当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
- 当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
- 当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
- 当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。