ドル円見通し 2016年11月以来の104円台突入(3/23)

3月23日早朝、ドル円は104.635円まで急落した。米関税導入、特に対中国での巨額関税措置による貿易戦争リスクからNYダウが急落、日経平均先物も夜間で大幅下落した

ドル円見通し 2016年11月以来の104円台突入(3/23)

【概況 米中貿易戦争懸念】

3月23日早朝、ドル円は104.635円まで急落した。米関税導入、特に対中国での巨額関税措置による貿易戦争リスクからNYダウが急落、日経平均先物も夜間で大幅下落したことを嫌気してリスク回避の円高となった。104円台は2016年11月以来の低水準。
3月1日にトランプ大統領が鉄鋼・アルミへの関税導入を宣言した後の3月2日、ドル円は105.24円まで下落、いったん107円台回復まで戻したが3月16日には105.60円へ再び下落した。その段階では安値を切り上げており、22日未明のFOMC直後には106.63円まで戻したもののFOMC反応での上昇はごく短期に終わって失速、それよりも貿易摩擦問題が懸案となるとのリスク回避的な動きとなって106円割れ、22日午前には16日安値を割り込み、23日早朝の下落で3月2日安値、さらに105円も割り込む急落となった。

3月22日、トランプ大統領は500億ドル規模の中国製品に対する関税賦課の大統領令に署名した。 米USTRは関税引き上げ対象リストを15日以内に取りまとめるとした。この報道からNYダウは前日比724.42ドル安と暴落的な下落となった。
在米中国大使館はこれに対して「保護主義的で一方的な措置だ。深く失望し、強く反対する」「中国は貿易戦争を望んでいないが、戦いを恐れず、ひるむことはない」「米国が貿易戦争を始めた場合、正当な利益を守るため、あらゆる必要な措置を講じて戦い抜く」と対抗姿勢を示した。

22日未明のFOMCから上昇したユーロ、ポンドは貿易摩擦問題と株安を嫌気して下落、ドル円はリスク回避の円買い戻しに急落。また株安から米長期債が買い戻されたために米長期債利回りは低下した。FOMCによる利上げ及び今後の利上げペース加速の可能性云々よりも貿易摩擦問題、保護主義、米中対立という世界経済全般へのマイナスイメージが主テーマとなってきている。

【円高の長期化 昨年4月への下落並を概ね実現】

2016年12月天井の118.66円から2017年4月17日底まで4か月で10.53円幅の円高ドル安となった。それ以降は概ね108円前後を支持線、114円台後半を抵抗線とした循環的の持合いが続いてきた。昨年11月6日にこの循環的な戻り天井をつけて下落してきたが、今年2月の下落で昨年9月底を割り込む一段安となった。多少の安値更新でも早々に切り返せば、循環的な持合い相場の継続という可能性もあったが、2月16日に105.546円をつけ、3月2日に105.24円、さらに23日朝の下落で105円割れと下落基調を継続した。
昨年4月への下落幅を昨年11月高値に適用すれば、同値幅の下げとすると下値計算値は104.20円となり、概にこの水準に来始めている。下落期間も4か月を超えており、同レベルの下げという点では104円台への下落は突っ込み警戒、反騰注意圏と言えるだろう。

しかし、昨年4月底への下落規模を超える円高ドル安レベルへと発展し、2016年前半レベルの下落へと発展する可能性も警戒される。またチャート上の節目となる下値支持線候補は2016年6月底の98.97円まで見当たらなくなっている。1日で2円、3円の下げということも勢い付いた時には発生する可能性もあるので、逆張的感覚での反騰期待も慎重さが必要かもしれない。

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは3月16日夜安値を前回の底、20日夜と22日未明の高値をサイクルトップとして弱気サイクル入りしてきた。今回の安値形成期は22日の日中から23日夜にかけての間と想定される。また22日朝時点では22日夜にかけてはまだ一段安懸念が優勢とした。既に前回ボトムから4日を経過しているのでこのサイクルの底をつけて戻しに入ってもよい時間帯に来ているが、23日夜、あるいはやや延長して24日未明、26日早朝にかけて続落するリスクがある。強気回復には105.50円を超える反騰か、直前安値から0.75円以上の反発を見せる必要があると思う。またいったん強気転換しても、その後に戻り幅の半値を削る下落となる場合は次の弱気サイクルに入る可能性も警戒される。特に23日夜へいったん戻してから崩れる場合はそのケースを疑う。

60分足の一目均衡表では22日未明への下落で遅行スパンが悪化、先行スパンから転落し、その後も両スパン悪化が続いている。このため遅行スパン悪化中は安値試し優先とし、遅行スパン好転からはいったん戻しに入ると仮定して戻り抵抗となる先行スパンを試すとみる。

60分足の相対力指数は22日午前の下落時に20ポイント台前半まで下落し、その後は指数自身の安値を更新していないので強気逆行を形成する可能性があるが、そのためには50ポイント超えへ上昇する必要がある。50ポイント超えへ進めない内は逆行を継続して20ポイント割れを試す可能性にも注意し、50ポイント台回復からさらに上昇し始めるところからはリバウンド入りと考える。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、3月23日朝安値104.635円を支持線、105.25円を抵抗線とみておく。
(2)105.25円以下での推移中は一段安警戒とし、安値更新の場合は104.00円前後試しへ向かうとみる。104円前後は突っ込み警戒、反騰注意とするが、105円以下に留まる内は週明けの続落警戒とする。
(3)105.25円超えから続伸の場合は105.50円前後試しとみるが、そこは戻り売りも出やすいとみる。(了)<9:40執筆>

【当面の主な予定】

3/23(金)
    (欧) EU首脳会議(ブリュッセル、22日〜23日)
21:30 (米) 2月 耐久財受注 前月比 (1月 -3.6%、予想 1.7%)
21:30 (米) 2月 耐久財受注・除輸送用機器 前月比 (1月 -0.3%、予想 0.5%)
23:00 (米) 2月 新築住宅販売件数 (1月 59.3万件、予想 62.0万件)
21:10 (米) ボスティック米アトランタ連銀総裁、講演
23:30 (米) カシュカリ米ミネアポリス連銀総裁、講演

3/24(土)
08:00 (米) ローゼングレン米ボストン連銀総裁、講演

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