ドル円 FOMCに対する強気反応は一瞬 (3/22)

FOMCの発表からドル安円高へ進む場合、短時間の下落に止まらずに下落したままの状況でアジア時間を通過すると、欧米市場時間にかけてさらに安値を試すケースが多い。

ドル円 FOMCに対する強気反応は一瞬 (3/22)

【概況、FOMC後はドル安円高】

米連邦準備制度理事会(FRB)は22日未明、連邦公開市場委員会(FOMC)において政策金利を0.25%引き上げて年1.50%〜1.75%へ引き上げた。決定は全会一致。昨年12月会合で利上げを実施し、2018年に3回の利上げ見通しを示してきたが、12月以来で今年1回目の追加利上げとなった。声明では「景気は緩やかに拡大している」「米経済見通しはここ数カ月で強まった」、「インフレ率は今後数カ月で上昇、中期的に2%近くで安定する見込み」、「大型減税や歳出拡大を背景に、さらなる緩やかな利上げが適切」との見通しを示した。

FOMC参加メンバーによる見通しでは、2018年の利上げ回数予想は3回が6人(12月時点は6人)、4回が6人(同3人)、5回が1人(同1人)、2回がゼロ(同3人)、1回が2人(同1人)となった。
FF金利の中央値予想では2018年が2.125%(前回と変わらず)、2019年が2.875%(同2.6875%から引き上げ)、2020年が3.375%(同3.0625%から引き上げ)となった。
GDP伸び率に対する見通しは、2018年が2.7%(同2.5%から上方修正)、2019年が2.0%(前回と変わらず)、2020年が2.0%(変わらず)
失業率の見通しは2018年が3.8%(同3.9%)、2019年が3.6%(同3.9%)、2020年が3.6%(同4.0%)。

今回の会合では、米経済成長率、インフレ率見通しが上方修正され、失業率も改善へと下方修正された。また年間の利上げ予想回数でも中央値の3回に対して4回も同数となり、5回を主張するものを含めれば7人と勝る状況になってきた。
市場は今回の会合での利上げをほぼ確実とみてきた。また利上げペースが3回から4回へ加速するのではないかとみてきた。利上げ回数予想の中央値が3回、2018年の金利水準見通しが前回から据え置かれたことで、ひとまず4回への加速と金利水準見通しの上方修正がなかったということでひとまず材料消化、イベント通過と受け止めた。ドル円はいったん106.63円まで上昇して20日高値106.60円をわずかに上抜いたものの早々に売られて105.88円まで失速した。さらに22日午前には安値を更新して3月16日安値へ迫ってきている。

ユーロ、ポンド等も反騰し総じてドル安反応となった。
米長期金利はいったん上昇後に下落、10年債利回りは2.93%へ上昇後に2.88%へ低下。NYダウは44ドル安と小幅下落。
米連銀の利上げペース加速の可能性については、2月27日のパウエル新議長就任議会証言から顕著になってきたことだが、それ以降もドル円はトランプ政権による関税強化等を警戒して円高ドル安へと進んだ。3月13日へ戻したものの再び下落してきたことも、米連銀利上げ云々よりも関税問題からの貿易戦争リスク、国内政局不安等がドル円にとってのテーマとしては重いということも認識する必要がある。

【3月2日からの安値切り上がりを継続できるか?】

FOMCの発表からドル安円高へ進む場合、短時間の下落に止まらずに下落したままの状況でアジア時間を通過すると、欧米市場時間にかけてさらに安値を試すケースが多い。アジア市場時間で発表直後の水準を回復する反発となる場合は短期的な下落反応に止まり、それ以前の流れへ復帰してドル高円安へと進むケースが多い。
今回は瞬間的な上昇一巡後に下落し、その後も安値圏に留まった状況にあること、FOMC以外でも保護主義的な不安感、日本の政局不安等による円高圧力もあることから、FOMC直後の騰落中心値である106.25円を超えられないうちは下向きとし、22日未明安値を割り込んだ推移が続く場合は円高基調再開を警戒して3月16日安値105.60円、さらに3月2日安値105.24円を目指す可能性を考える。さらに株安や米中の貿易摩擦拡大、その他政治リスクが拡大する場合は3月2日安値割れから円高が加速する可能性も警戒される。
3月2日安値割れを回避した上で106.25円を超え、その後も106円台を維持した状況が続き始める場合は20日からの下落基調一服で戻しに入る可能性があるが、戻りを継続するには22日未明高値を上抜き返す必要があるだろう。

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは3月16日夜安値で目先の底をつけて戻したが、20日夜高値106.60円でサイクルトップをつけて下落した。22日未明にわずかな高値更新もあったが、20日夜高値とのダブルトップとしてサイクルボトム形成への下落継続中と思われる。今回の安値形成期は22日の日中から23日夜にかけての間と想定されるので、22日夜にかけてはまだ一段安懸念がやや優勢かと思う。強気サイクル入りには106円台回復への反騰が必要と思われるが、その場合は23日から27日夜にかけての上昇と107円手前を試す上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では22日未明への下落で遅行スパンが悪化、先行スパンから転落している。このため遅行スパン悪化中は安値試し優先とみる。安値更新が止まって横這いからジリ高へ進めば遅行スパンも好転しやすくなるが、22日夜へ安値を切り下げる場合は遅行スパン好転のきっかけも先送りされやすくなる。

60分足の相対力指数は22日未明への下落で30ポイント割れとなっている。突っ込み警戒圏ではあるが20ポイント以下へさらに下げる場合は、指数の強気逆行(相場が安値を更新しても指数がボトムを切り上げる)現象が見られないうちは安値試しが続きやすいと思う。強気回復には40ポイント以上への反騰、維持が必要と思われる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、3月16日安値105.60円を支持線、106.00円を抵抗線とみておく。
(2)106円台回復、維持へと戻せない内は一段安警戒とし、3月16日安値割れの場合は3月2日安値105.24円から105円試しへ向かいやすいとみる。105円前後は突っ込み警戒、反発注意だが、105.75円以下に留まる内は23日の日中にかけても安値を試しやすいとみる。
(3)106円台回復、維持へと戻す場合は目先の底をつけた反騰入りの可能性を優先、106.25円超えからは106.50円前後試しへの上昇を想定するが、106.50円前後は戻り売りにつかまりやすいとみる。(了)<9:50執筆>

【当面の主な予定】

3/22(木)
    (欧) EU首脳会議(ブリュッセル、22日〜-23日)
05:00 (NZ) ニュージーランド準備銀行(RBNZ)政策金利 (現行 1.75%、予想 据え置き)
09:30 (豪) 2月 新規雇用者数 (1月 1.60万人、予想 2.00万人)
09:30 (豪) 2月 失業率 (1月 5.5%、予想 5.5%)
17:30 (独) 3月 製造業PMI、速報 (2月 60.6、予想 59.8)
17:30 (独) 3月 サービス業PMI、速報 (2月 55.3、予想 55.0)

18:00 (欧) 3月 製造業PMI、速報 (2月 58.6、予想 58.1)
18:00 (欧) 3月 サービス業PMI、速報 (2月 56.2、予想56.0)
18:00 (欧) 1月 経常収支 (12月 299億ユーロ)
18:00 (独) 3月 IFO景況指数 (2月 115.4、予想 114.6)
18:00 (欧) 欧州中央銀行(ECB)月報
18:30 (英) 2月 小売売上高 前月比 (1月 0.1%
21:00 (英) イングランド銀行(BOE)金利発表 (現行 0.50%、予想 据え置き)
21:00 (英) 英中銀資産買取プログラム規模 (現行 4350億ポンド、予想 据え置き)
21:00 (英) 英中銀金融政策委員会(MPC)議事要旨
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.6万件、予想 22.5万件)
22:00 (米) 1月 住宅価格指数 前月比 (12月 0.3%、予想 0.4%)
23:00 (米) 2月 景気先行指数 前月比 (1月 1.0%、予想 0.5%)

3/23(金)
    (欧) EU首脳会議(ブリュッセル、22日〜23日)
(米) 鉄鋼とアルミの輸入制限を発動

21:30 (米) 2月 耐久財受注 前月比 (1月 -3.6%、予想 1.7%)
21:30 (米) 2月 耐久財受注・除輸送用機器 前月比 (1月 -0.3%、予想 0.5%)
23:00 (米) 2月 新築住宅販売件数 (1月 59.3万件、予想 62.0万件)
21:10 (米) ボスティック米アトランタ連銀総裁、講演
23:30 (米) カシュカリ米ミネアポリス連銀総裁、講演

3/24(土)
08:00 (米) ローゼングレン米ボストン連銀総裁、講演

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