ドル円 米中摩擦、ロシア問題、国内政局が重石(3/16)

15日夜の米経済指標はまちまち。3月のNY連銀製造業景況指数は22.5となり、市場予想の15.0及び前月の13.1を上回った。

ドル円 米中摩擦、ロシア問題、国内政局が重石(3/16)

ドル円 米中摩擦、ロシア問題、国内政局が重石

米国の鉄鋼・アルミへの関税導入宣言による貿易戦争懸念から3月2日に105.24円まで下落した後はやや落ち着いてリバウンドに入り、3月9日の米雇用統計、13日の米消費者物価指数等を手掛かりに13日夜高値107.29円まで戻してきた。しかし107円台を維持できず、国内政局不安及び米国の対中国関税強化姿勢や株安等を背景に下落して15日午後には105.78円まで失速した。来週のFOMCを意識して106円割れに対しては突っ込み警戒感も働いて106円台序盤まで戻したところにあるが、16日午前時点では106.50円超えへ進めずに上値の重さも出ている。

15日夜の米経済指標はまちまち。3月のNY連銀製造業景況指数は22.5となり、市場予想の15.0及び前月の13.1を上回った。
3月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数は22.3となり、市場予想の23.0及び前月の25.8を下回った。
週間失業保険申請件数は22.6万件となり、市場予想の22.8万件及び前月の23.1万件(23.0万件に下方修正)をわずかに下回った。
これら指標は米連銀の利上げペース加速判断を助長するほどでもなく、また判断を鈍らせるほどでもなかったために市場の反応は限定的だった。

米国のロシアゲート問題に関し、モラー米特別検察官がトランプ米大統領一族が経営する会社に対して疑惑に関連する文書の提出を求める召喚状を送ったと報じられたことはドル安要因とされた。
トランプ米大統領はラリー・クドロー氏を国家経済会議(NEC)委員長に指名したが、同氏は早速インタビューに答えて「私は王様ドルを買い、金を売るだろう」とドル高支持姿勢ともとれる発言を行ったが、これが多少、ドル高円安要因になったようだ。

【貿易戦争への懸念は継続】

3月1日にトランプ大統領が鉄鋼・アルミへの関税導入を宣言したために株安が発生したことが3月2日に105.24円まで下落したきっかけであった。その後はカナダとメキシコが関税対象から除外される等したため過剰反応に対する修正でドル円も戻しに入ったのだが、13日には中国への関税強化姿勢が示されたことで再び下落基調に転じた。
3月19日からG20財務相会議がアルゼンチンで開催されるが、ムニューシン米財務長官はその場で中国の鉄鋼・アルミ過剰生産を問題視すること、中国の貿易と投資政策を議論すると発言している。知的財産権の侵害問題等も焦点化しており、巨額の対中国関税導入をトランプ大統領が指示し、これに中国が反発を強めている状況にある。

北朝鮮問題において、半島の南北首脳会談が合意され、米朝首脳会談にトランプ大統領が応じる姿勢を示したことで朝鮮半島有事リスクが後退しているが、そうしたことも背景に米国の貿易問題における対中国姿勢が強硬になってきている印象がある。この問題はさらに継続してゆくと思われる。また今後は様々な分野での米国による保護主義的な圧力が日本を含めてかかってくることが警戒される。
米トランプ政権は昨年末に大規模減税を柱とする税制改革を決定、企業減税効果への期待が株式市場上昇に寄与したが、今回の関税導入による通商摩擦が貿易戦争的な状況へと拡大するのではないかとの不安感が金融市場全般を覆っている。

【英露対立、ロシアゲート問題】

英南部で起きた元ロシア情報員暗殺未遂事件に関し、英国政府はこれをロシア政府が関与したものとしてロシア外交官23人を追放した。これに対してロシアも対抗措置として英国の外交官を追放する措置を取る姿勢を示した。ロシアの大統領選挙前ということでロシア側は大統領選挙への妨害的な行為として非難している。
米財務省は15日、2016年の米大統領選へのサイバー攻撃等に関与したとして5団体・19個人を資産凍結等の制裁対象に指定した。米大統領選挙へのロシア政府による介入疑惑に対し、米国では昨年8月にロシア制裁強化法が成立したが、トランプ大統領はこれまで具体的な制裁発動を行っておらず、今回が初めての制裁発動となる。
北朝鮮有事リスクが後退する一方で、中国との貿易摩擦の拡大、ロシアと米英の対立等、外交的地政学的リスクが拡大の兆しが出てきている。一方ではドイツで大連立政権が発足したとはいえメルケル首相の指導力低下が懸念され、イタリアでの右派台頭、日本の政治的混乱等も市場のセンチメントを悪化させやすくなっていることにも注意が必要だろう。

【60分足 一目均衡表、相対力指数、サイクル分析】

【60分足 一目均衡表、相対力指数、サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、3月13日午前安値からの反騰で3月9日深夜高値を上抜いたためにいったんは新たな上昇期に入ったのだが、14日夜の下落で13日午前安値を割り込んだために底割れによる新たな弱気サイクル入りとなった。今回の安値形成期は16日から20日にかけての間と想定されるので、15日午後安値では底打ちとしては日柄が浅いため、16日夜、週明けにかけてはまだ一段安余地が残る。このため、106.50円を超えられないうちは106円割れからの下げ再開を警戒する。106.50円超えの場合は強気転換注意として107円手前を試す可能性があるがそこは戻り売りにつかまりやすいとみる。

60分足の一目均衡表では13日夜からの下落で先行スパンから転落し、14日夜には遅行スパも悪化した。15日深夜からの小反発で遅行スパンは好転しやすくなっているが、先行スパンが戻り抵抗帯となっているため、先行スパンを上抜けないうちは一段安警戒が優先されるとみる。

60分足の相対力指数は15位置の安値形成時に30ポイントを割り込んだが、その後の反発で50ポイント台を回復した。しかし、16日午前はやや失速気味となっているので、50ポイントを再び割り込む場合は下げ再開注意とみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、106.00円を支持線、106.50円を抵抗線とみておく。
(2)106.50円以下での推移中は106円割れから105.50円前後試し、さらに3月2日安値105.24円試しへ向かうとみる。106.24円以下で週を終える場合は週明けも安値を試しやすいとみる。
(3)106.50円超えの場合は戻り抵抗を106.75円から107円手前試しまで引き上げるが、そこは戻り売りにつかまりやすいとみる。(了)<10:00執筆>


【当面の主な予定】

3/16(金)
19:00 (欧) 2月 消費者物価指数(HICP、改定値) 前年比 (速報 1.3%、予想 1.2%)
21:30 (米) 2月 住宅着工件数 (1月 132.6万件、予想 129.0万件)
21:30 (米) 2月 建設許可件数 (1月 139.6万件、予想 132.8万件)
22:15 (米) 2月 鉱工業生産 前月比 (1月 -0.1%、予想 0.3%)
22:15 (米) 2月 設備稼働率 (1月 77.5%、予想 77.7%)
23:00 (米) 3月 ミシガン大学消費者態度指数速報値 (2月 99.7、予想 99.3)

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