【概況】
2月27日のパウエル議長による下院議会証言での利上げ積極姿勢を懸念してNYダウが大幅下落、さらに3月1日夜の米トランプ大統領による関税導入発言からNYダウは3日間の大幅続落となり、世界連鎖株安状況となった。この株安継続リスクを背景にドル円は2月27日高値107.67円から3月2日夜安値105.24円まで下落、昨年9月底を割り込んで付けた2月16日安値105.546円も割り込んだ。しかし、27日夜から3月2日への株安等はやや過剰反応ではないかとして3月5日夜からは戻しに入った。
3月7日朝には関税導入反対派のコーン国家経済会議委員長が辞任するとの報道からいったん反落して105.45円を付けたが週末の米雇用統計も控えていた段階のために新たな底割れには至らず106円台へ持ち直した。
3月9日未明、トランプ大統領が関税導入に署名したものの、NAFTA再交渉中のメキシコ、カナダを対象外としたこと、それ以外の国でも安全保障問題によって除外する可能性があることが示したために関税問題でのリスク回避感がやや後退してドル高円安に動き始めた。
3月9日午前、北朝鮮からの米朝首脳会談要請をトランプ大統領が受諾したと報じられたために朝鮮半島有事リスクが一挙に後退、リスクオン心理からドル円は106円台後半へ反騰した。
3月9日夜、米雇用統計において2月の非農業部門就業者数が前月比31.3万人増となり、市場予想の20.5万人増、1月の23.9万人増(速報の20.0万人増から上方修正)を上回ったことでドル高反応となり、ドル円は発表直後には107.05円まで続伸した。しかし失業率は4.1%に止まって予想の4.0%より悪く、平均時給伸び率も予想の0.2%増に届かない0.1%増だったため、当初の上昇は続かずに107円台を維持できずに終了した。
【米連銀利上げペース、米朝首脳会談の行方、関税導入影響】
雇用者数の伸びは米連銀の利上げペース加速判断に十分な数字だったが、平均時給の伸び鈍化を踏まえると総合的な判断は今後のインフレ指標等による追認が必要ということでドル全面高へ進むという状況にまではならなかったということだろう。また午前中に関税問題や北朝鮮問題により先行する形で上昇していたため、さらに一段とドル円を押上げるには力不足だったということかもしれない。
3月14日に米消費者物価指数の発表がある。全体の前年比は前月の+2.1%に対して市場予想は+2.2%、コア指数の前年比は前月の+1.8%と変わらずの予想となっている。コア指数が予想以上に伸びてくれば利上げペース加速の可能性が高まるが、予想通りの横ばいやかえって低下する場合には利上げペース加速の可能性もやや後退するかもしれない。
鉄鋼・アルミへの関税導入問題では、特に中国との摩擦拡大も懸念される。日本も安全保障関連で除外対象となる可能性があるのではないかとされているが、そのためには防衛費分担の増額や兵器購入等のバーターがさらに追加要求される可能性もあり、EUとの関係もぎくしゃくする可能性が残っているので、当初よりも緩いという印象がいつまでも続くとは限らず、先行き不透明要素であることもドル高にブレーキをかけている印象だ。
北朝鮮問題でも、これまでの対話と対立の繰り返しを踏まえれば、実際に首脳会談が実現するまでは楽観しすぎるわけにもいかない。また喫緊の有事リスクは後退したといってもそれが株高やドルの押上げ要因になってゆく具体的な効果性はまだ認められない。
言えることは関税と貿易戦争リスク問題、北朝鮮問題、米連銀の利上げペース加速問題はまだ金融市場全体にとっては情勢をリスクオンにもリスクオフにも様変わりさせる大きな変数であり、不確定な状況にあるということだろう。
【107.50円超えへ進めるかどうかが試金石】
ドル円は昨年11月6日高値114.73円を起点として下落してきた。11月27日安値からいったん戻してから12月12日高値を新たな起点に二段目の下落となってきた。11月高値から3月2日安値までの下落幅は9.48円幅であり、下げ道中の小反発は2月2日への2.19円幅、2月21日への2.35円幅があるが、いずれも2.50円以上を戻せず、また下降トレンドの抵抗線となりやすい26日移動平均を上抜けない程度であった。
3月2日安値105.24円から3月9日深夜高値107.05円まではまだ1.81円幅に過ぎず、26日移動平均(現在107.35円)に届いていない。このため3月2日からの反発が下落途中の小反発レベルを超えてゆくためにはまず26日移動平均を超え、超えた状況を維持して107.50円超え、2月21日高値107.90円超えへと続伸してゆく必要があるだろう。
(1) 26日移動平均超えから続伸できれば、概ね3か月前後の短期サイクルによるリバウンド入りとして3月中盤、3月20-21日の米FOMC前後へ上昇基調が継続する可能性が出てくると思われる。その際は52日移動平均(現在109.19円)から110円を目指す可能性も開けてくるかもしれない。日足の相対力指数は2月16日から3月2日へ安値を切り下げた期間で指数のボトムが切り上がる強気逆行型を見せている。また12月12日からの下落も3か月、11月高値からは4か月間下落しているため、いったんまとまった戻しに入ってもおかしくない時間帯にある。
(2) 26日移動平均を超えられないか、一時的に超えても短期日で下回り、戻り幅の半値を削る場合は下げ再開が疑われる。その場合はFOMC前への下落継続として105円割れ、104円台前半を目指す可能性が出てくると思われる。ただしその場合はFOMCを前後して当面の売り材料消化としてリバウンドに入る可能性に注意する。(了)<11日21:50執筆>
【当面の主な予定】
3/12(月)
(欧)ユーロ圏財務相会合
08:50 (日) 1-3月期 四半期法人企業景気予測調査・大企業業況判断指数(BSI)
27:00 (米) 2月 月次財政収支 (1月 +492億ドル、予想 -2160億ドル)
3/13(火)
08:50 (日) 2月 国内企業物価指数 前年比 (1月 2.7%、予想 2.5%)
09:30 (豪) 2月 NAB企業景況感指数 (1月 19 )
21:30 (米) 2月 消費者物価指数 前月比 (1月 0.5%、予想 0.2%)
21:30 (米) 2月 消費者物価コア指数 前月比 (1月 0.3%、予想 0.2%)
21:30 (米) 2月 消費者物価指数 前年比 (1月 2.1%、予想 2.2%)
21:30 (米) 2月 消費者物価コア指数 前年比 (1月 1.8%、予想 1.8%)
3/14(水)
(独) メルケル独首相、就任宣誓
06:45 (NZ) 10-12月期 四半期経常収支 (前期 -46.79億NZドル、予想 -24.50億NZドル)
08:50 (日) 日銀・金融政策決定会合議事要旨
08:50 (日) 1月 機械受注 前月比 (12月 -11.9%、予想 5.2%)
11:00 (中) 2月 小売売上高 前年比 (12月 9.4%、予想 10.0%)
11:00 (中) 2月 鉱工業生産 前年比 (12月 6.2%、予想 6.2%)
16:00 (独) 2月 消費者物価指数改定値 前月比 (速報 0.5%、予想 0.5%)
17:00 (欧) ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁、講演
19:00 (欧) 1月 鉱工業生産 前月比 (12月 0.4%、予想 -0.4%)
21:30 (米) 2月 生産者物価指数 前月比 (1月 0.4%、予想 0.1%)
21:30 (米) 2月 生産者物価コア指数 前月比 (1月 0.4%、予想 0.2%)
21:30 (米) 2月 生産者物価指数 前年比 (1月 2.7%、予想 2.8%)
21:30 (米) 2月 生産者物価コア指数 前年比 (1月 2.2%、予想 2.6%)
21:30 (米) 2月 小売売上高 前月比 (1月 -0.3%、予想 0.3%)
21:30 (米) 2月 小売売上高(除自動車) 前月比 (1月 0.0%、予想 0.4%)
23:00 (米) 1月 企業在庫 前月比 (12月 0.4%、予想 0.6%)
3/15(木)
06:45 (NZ) 10-12月期 四半期GDP 前期比 (前期 0.6%、予想 0.8%)
21:30 (米) 3月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (2月 13.1、予想 15.0)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 23.1万件、予想 22.8万件)
21:30 (米) 3月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (2月 25.8、予想 23.5)
21:30 (米) 2月 輸入物価指数 前月比 (1月 1.0%、予想 0.3%)
23:00 (米) 3月 NAHB住宅市場指数 (2月 72、予想 72)
3/16(金)
19:00 (欧) 2月 消費者物価指数(HICP、改定値) 前年比 (速報 1.3%、予想 1.2%)
21:30 (米) 2月 住宅着工件数 (1月 132.6万件、予想 129.0万件)
21:30 (米) 2月 建設許可件数 (1月 139.6万件、予想 132.8万件)
22:15 (米) 2月 鉱工業生産 前月比 (1月 -0.1%、予想 0.3%)
22:15 (米) 2月 設備稼働率 (1月 77.5%、予想 77.7%)
23:00 (米) 3月 ミシガン大学消費者態度指数速報値 (2月 99.7、予想 99.3)
オーダー/ポジション状況
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