ドル円 辞任報道での安値割れをひとまず回避(3/8)

トランプ大統領の経済顧問トップであるコーン国家経済会議(NEC)委員長はトランプ政権による保護主義的政策へのブレーキ役とみられてきたが、

ドル円 辞任報道での安値割れをひとまず回避(3/8)

【概況】

3月7日朝にコーン国家経済会議委員長辞任報道が入ってドル円は106円割れ、さらに105.45円まで下落したが、その後は突っ込み警戒感と7日夜の米国市場を見定めようとして下げ渋った。
夜間では105.50円まで下げたが午前安値割れを回避、2月のADP全米雇用報告で民間部門就業者数が前月比23.5万人増となり市場予想の20万人増を上回ったことからドル高感が強まって上昇、さらにトランプ大統領の関税導入について安全保障上の適用除外があるとの報道から7日朝の下落はやや過剰反応だったとしてドル円への買い戻しが進み、深夜には106円台を回復した。

【米トランプ政権による関税導入問題】

トランプ大統領の経済顧問トップであるコーン国家経済会議(NEC)委員長はトランプ政権による保護主義的政策へのブレーキ役とみられてきたが、辞任により先行きのトランプ政権経済政策への不透明感が強まった。またトランプ政権による貿易戦争も辞さない保護主義が増長する懸念も増した。
トランプ政権ではロス商務長官が大統領の関税導入方針を貫くとの姿勢を示したが、7日もムニューシン米財務長官が関税導入について大統領が約束した経済成長を損なうことはないと支持的な発言をした。これに対してEU、カナダ、中国等の報復的な対応も出始め、今後の展開次第では貿易戦争的な状況に進む可能性が高まった。

しかし、7日夜にはロス米商務長官が「トランプ米大統領は金属課税で柔軟な対応を示唆している」と発言。さらに大統領報道官が「安全保障に基づく適用除外がある」「鉄鋼輸入制限についてはカナダとメキシコの適用除外も検討」との旨を述べたと報じられたため、7日午前の反応はやや過剰だったと市場は受け止めた。一時は300ドル以上の下落だったNYダウも100ドル未満へ下げ幅を縮小した。
米大統領の輸入制限に関する署名は米国時間3月8日午後3時半(日本時間9日午前5時半)に予定されている。
この問題はまだ継続的で紆余曲折があると思う。外交的な駆け引きも絡むため、市場も悲観し過ぎや楽観し過ぎで右往左往する可能性もあるが、トランプ大統領の米国第一主義=保護主義姿勢は一貫しているので、今回の関税導入もその一つとして保護主義拡大、貿易摩擦の拡大、日本に対することも含めて対米貿易黒字国への各種圧力は強まってゆくと思われる。

【アトランタ連銀総裁発言、ECB理事会】

米アトランタ地区連銀のボスティック総裁は7日、トランプ政権による関税措置や各国の報復措置により年末に成立した米減税措置による経済成長押し上げ効果が相殺される可能性があるとの見方を示した。影響があれば米連銀の利上げペースを鈍化させる必要が生じるとも述べた。現時点では減税効果により米連銀の経済成長見通しは押し上げられており、「より積極的な政策」に向かってきたが、「貿易をめぐる事案は別の方向への先行き不透明性となっている」とした。またコーン委員長の辞任も米政権による経済政策が先行き不透明になるとした。
同総裁はFOMCの投票権を持っており、12月時点では2018年は2回の利上げと予想していたが、減税法案成立により3回へ引き上げたと述べている。

3月20-21日に次回FOMCがある。関税措置導入がより具体化し、影響がどの程度で始めるのかにより、3月のFOMC判断にも影響が出てくるかもしれない。それにより利上げペース加速姿勢が堅持されればドル高へ進みやすいが、関税問題の影響が深刻化する兆しがあれば利上げペース加速への慎重姿勢も出てくるかもしれない。

ADP民間雇用統計が良かったことで9日夜の米雇用統計(前月と同じ20万人増の事前予想)も良い可能性が高まっている。その点はドル高要因になっているが、8日夜にはECBの理事会もある。最近のユーロ圏インフレ率の伸び鈍化もあるので緩和縮小プロセス入り姿勢を強くアピールするのかやや鈍化するのか注目されるが、内容次第ではユーロ高ドル安、逆にドル高ユーロ安の反応も出やすいので注意が要る。

【60分足 一目均衡表分析】

【60分足 一目均衡表分析】

60分足の一目均衡表では7日朝の下落により遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落したが、7日深夜の反発で106円台回復まで戻したために遅行スパンは好転、先行スパンからも上抜けてきた。ただし先行スパンに対する余裕はあまりなく、105.90円割れの状況が続くと先行スパンから再び転落することとなる。このため、先行スパンを上回る内は戻り高値を試す余地ありとするが、転落から続落し始める場合は下げ再開注意とする。さらに遅行スパン悪化へ進めば下げ再開として2日安値試しあるいは底割れへ向かう可能性を考える。

60分足の相対力指数は7日朝の急落後は指数のボトムが切り上がり、深夜の上昇で60ポイント超えまで戻した。このため50ポイント以上を維持する内は戻り高値を試す余地ありとするが、50ポイント割れからは下げ再開注意とみる。

概ね3日から5日周期の短期的高値・安値形成サイクルでは、3月2日夜安値で前回のサイクルボトムをつけて戻したが、3月6日昼高値と6日夜高値のミニダブルトップで直近のサイクルトップをつけて下落に転じた。7日深夜へ戻したが、6日の高値を上抜けずにいる内はまだボトム形成への下落再開懸念が残るので、105.90円割れからは下げ再開を疑う。
3月2日夜安値105.24円から7日安値105.45円へ安値が切り上がっているので、6日高値を上抜けずに戻り高値を切り下げてくる場合は、2日と7日の安値を結ぶラインを支持線とし、レンジ縮小型の三角持合いを形成する可能性がある。6日高値超えからは新たな強気サイクル入りとして次のトップ形成期となる9日から13日にかけての間への上昇期に入るとみるが、7日朝安値を割り込む場合は6日高値をサイクルトップとした下落の継続である可能性とともに、三角持合い下放れを踏まえて7日朝安値を直近のサイクルボトムとして底割れによる新たな弱気サイクル入りとなり、来週前半へ下落が長引く可能性も検討される。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、105.90円を支持線、106.25円を抵抗線とみておく。
(2)105.90円を上回る内は上昇継続余地ありとし、106.25円超えからは6日高値106.46円試しとみる。その前後は戻り売りにつかまりやすいとみる。高値更新から続伸する場合は106.70円前後まで上値目処を引き上げるが106.65円以上は反落警戒圏とみる。
(3)105.90円割れから早々に106円台回復へ戻す場合は上昇継続とするが、続落の場合は下落再開と仮定してまず7日安値105.45円、さらに割り込む場合は2日安値105.24円試しへ向かうとみる。
※ 8日夜のECB理事会、9日の米雇用統計等から売られる場合は2日安値割れからの一段安開始により104円台後半試しへ向かうとみる。逆にそれらを強気反応してゆく場合は107円台序盤への上昇へ向かう可能性を考える。(了)<10:00執筆>

【当面の主な予定】

3/8(木)
   (日) 日銀・金融政策決定会合 1日目
21:45 (欧) 欧州中央銀行(ECB)政策金利 (現行 0.00%、予想 据え置き)
22:30 (欧) ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁、定例記者会見
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.0万件、予想 22.0万件)

3/9(金)
未定 (日) 日銀金融政策決定会合、政策金利発表
08:50 (日) 2月 マネーストックM2 前年比 (1月 3.4%、予想 3.3%)
10:30 (中) 2月 生産者物価指数(PPI) 前年比 (1月 4.3%、予想 3.8%)
10:30 (中) 2月 消費者物価指数(CPI) 前年比 (1月 1.5%、予想 2.4%)
15:30 (日) 黒田東彦日銀総裁、定例記者会見
22:30 (米) 2月 非農業部門雇用者数変化 前月比 (1月 20.0万人、予想 20.5万人)
22:30 (米) 2月 失業率 (1月 4.1%、予想 4.0%)
22:30 (米) 2月 平均時給 前月比 (1月 0.3%、予想 0.3%)
26:40 (米) ローゼングレン米ボストン連銀総裁 講演
26:45 (米) エバンス米シカゴ連銀総裁 講演

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