ドル円 105円割れ回避 世界連鎖株安一服で戻す(3/6)

この関税問題が3月1日、2日のNYダウ大幅下落要因だったが、さすがに4日間の急落を過剰反応かもしれないとして2日は下ヒゲをつけて戻し、週明けもやや楽観を回復し、

ドル円 105円割れ回避 世界連鎖株安一服で戻す(3/6)

【概況】

2月27日夜のパウエル米連銀議長の米下院議会証言をきっかけにNYダウが急落、当初上昇していたドル円は107.67円で戻り高値をつけ、2月21日高値107.90円を超えられずに下落に転じた。さらに3月1日にトランプ大統領が鉄鋼とアルミに輸入関税を導入すると公言したことから世界連鎖株安が進み、リスク回避からドル円は2日夜に105.24円まで続落して2月16日安値105.55円を割り込んだ。

3月2日のNYダウが4日続落ながらも安値からは300ドル以上を戻したことで下げ一服、週明け5日の日経平均は139.55円安と続落したが、NYダウは336.7ドル高と大幅上昇、世界連鎖株安はひとまず一服した。
3月5日の日中はイタリア総選挙での右派勝利により欧州政局不安もあったためにドル円は105.50円を挟んだ持ち合いで様子見となっていたが、夜間ではNYダウ反騰を好感し、ユーロの下落も深夜には一服したためリスク回避感が後退、ドル円は106円台前半を回復した。
今のところは1月27日へ戻した時と同レベルの反発だが、安値から1.50円以上を戻してくると2月16日から21日へ2.35円幅で上げた時の上昇レベルへ発展する可能性も出てくると思う。

【米国の鉄鋼・アルミ関税導入による貿易摩擦拡大リスクは残る】

トランプ米大統領は3月1日、鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の輸入関税をかけると発言した。これを受けて株価が急落したものの、2日早朝のツイッターには「貿易戦争は良いことで、簡単に勝てる」と投稿した。さらにロス米商務長官は「私が提示した複数の選択肢のうち、大統領が選んだのは全ての国の全製品に幅広く関税を賦課するというものだった」「我々は世界の問題に世界規模で対応し、関税を逃れるため他国を経由させるという何度も繰り返される事象を根絶する必要がある」旨を述べ、関税導入による決意の強さを示した。

この関税問題が3月1日、2日のNYダウ大幅下落要因だったが、さすがに4日間の急落を過剰反応かもしれないとして2日は下ヒゲをつけて戻し、週明けもやや楽観を回復し、米共和党のライアン下院議長が強い反対姿勢を示したこともあってリバウンド入りとなったが、仮に株の反発が続けば今度は米長期金利が上昇再開し、週末の米雇用統計が強めの数字なら米連銀の利上げ加速問題が焦点化してくるため、現状で株高再開というところまでは言い切れないと思う。
トランプ氏の関税導入に対してはこれまでにEU、カナダ、中国、ブラジルが報復を示唆している。

【欧州情勢】

昨年の総選挙から連立政権樹立に至らず混迷が続いてきたドイツでは、第2党の社会民主党(SPD)が4日の党員投票によりメルケル首相のキリスト教民主・社会同盟との大連立が承認された。これによりメルケル政権は継続することになり、ドイツを巡っての政治混乱リスクはひとまず後退した。
一方、4日に投票されたイタリア総選挙では5日の開票により野党・右派連合を構成する「同盟」(旧北部同盟)が躍進、サルビーニ書記長が勝利宣言を行った。EU懐疑派とされる新興政党の「五つ星運動」のディマイオ首相候補も「政権を担う責任を感じている」と勝利宣言した。右派連合は複数政党の連合体だが、政党別では五つ星が第1党の勢いとなっている。今後は右派連合内の主導権争い、先行きの政局不安も継続してゆくと思われる。既に現政権の与党・民主党のレンツィ前首相は敗北宣言し、党首を辞任すると表明している。

【日銀副総裁候補】

国会による日銀正副総裁候補の所信聴取では緩和継続に積極的なリフレ派である副総裁候補の若田部昌澄早大教授が「出口政策を急げばデフレに逆戻りする」と懸念を表明した。もう一人の副総裁候補である雨宮正佳日銀理事は現在の緩和策を当面続けるとしたものの、「出口戦略についてどういう手段を持ち、それをどう使うのか検討はしている」と述べた。黒田総裁は2日の国会答弁で「2019年度頃にはインフレ目標を達成し、出口戦略も具体的に議論する」旨を発言している。
安倍政権継続中は金融緩和政策も継続するとみられるが、緩和拡大はすでに限界レベルにあり、出口戦略が議論されつつあること自体がドル円には重石となる状況だが、若田部氏の発言がドル円の下落に対してはややブレーキ役となった印象がある。

【60分足 一目均衡表分析】

【60分足 一目均衡表分析】

60分足の一目均衡表では3月5日夜の反騰で遅行スパンが好転、6日午前の続伸で先行スパンを上抜いてきた。このためひとまず3月2日夜安値で目先の底をつけてリバウンドに入っている印象だ。両スパンが好転中は戻り高値を試すとみるが、先行スパンへ潜り込む下落からは弱気転換注意とし、遅行スパン悪化からは新たな下落期に入る可能性ありとみる。

60分足の相対力指数は6日午前には70ポイント台へ上昇してきた。特に弱気逆行等は見られないが、70ポイント台はやや買われ過ぎ警戒圏とし、70ポイント台後半は反落注意とみる。2月21日への上昇時では80ポイントを超えたが、その後は下落再開となっている。

概ね3日から5日周期の短期的高値・安値形成サイクルでは、2月26日安値を前回のサイクルボトム、27日深夜高値を同サイクルトップとして下落してきた。26日安値から4日を経過した2日夜安値で直近のサイクルボトムをつけて強気サイクル入りしたと思われる。今回の高値形成期は6日の日中から6日深夜にかけての間と想定されるが、相場の基調が変わってリバウンドが継続してゆく場合は高値形成期も7日から8日にかけての間へと延長される可能性もある。106円台を維持する内は上昇継続余地ありとし、106円割れから続落し始めるところからは弱気サイクル入り警戒とする。また高値から0.50円以上の下落から続落する場合も弱気転換注意とする。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、106.00円を支持線、106.50円を抵抗線とみておく。
(2)106円以上を維持する内は戻り高値を試すとみて、106.50円超えの場合は106.75円前後への上昇を想定するが、107円手前は戻り売りにつかまりやすいとみる。106円台を維持する内は7日の日中も高値を試しやすいとみる。また米経済指標が強めの発表が続き、株高継続、米長期金利上昇なら週末の米雇用統計前までは上昇基調を継続する可能性ありとみる。
(3)106円割れから続落の場合は弱気転換注意として105.75円前後試しを想定する。さらに105.75円割れからは下げ再開と仮定して2日安値105.24円試しへ向かうとみる。この場合は9日の米雇用統計前後まで下落基調で進みやすくなるとみる。(了)<9:50執筆>

【当面の主な予定】

3/6(火)
12:30 (豪) 豪準備銀行、政策金利発表 (現行 1.50%、予想 据え置き)
21:30 (米) ダドリー米NY連銀総裁講演
24:00 (米) 1月 製造業新規受注 前月比 (12月 1.7%、予想 -1.2%)

3/7(水)
09:00 (米) ブレイナードFRB理事 講演
09:30 (豪) 10-12月期 四半期GDP 前期比 (前期 0.6%、予想 0.5%)
09:30 (豪) 10-12月期 四半期GDP 前年比 (前期 2.8%、予想 2.5%)
10:30 (米) カプラン米ダラス連銀総裁 講演
14:00 (日) 1月 景気先行指数(CI)・速報値 (12月 107.4、予想 106.1)
19:00 (欧) 10-12月期 四半期GDP、確定値 前期比 (速報値 0.6%、予想 0.6%)
19:00 (欧) 10-12月期 四半期GDP、確定値 前年比 (速報値 2.7%、予想 2.7%)
20:00 (土) トルコ中銀、政策金利発表 (現行 8.00%)

22:00 (米) ダドリー米NY連銀総裁 講演
22:00 (米) ボスティック米アトランタ連銀総裁 講演
22:15 (米) 2月 ADP雇用統計 前月比 (1月 23.4万人、予想 20.0万人)
22:30 (米) 10-12月期 四半期非農業部門労働生産性・改定値  前期比 (速報値 -0.1%、予想 -0.1%)
22:30 (米) 1月 貿易収支  (12月 -531億ドル、予想 -550億ドル)
24:00 (加) カナダ銀行 政策金利 (現行 1.25%、予想 据え置き)
28:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)
29:00 (米) 1月 消費者信用残高 前月比 (12月 184億ドル、予想 183億ドル)

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