ドル円上昇続かず、全般的ドル高と並行して円高(3/1)

28日午前、日銀は残存期間25年超の国債買いオペのオファー額を前回より100億円減額した。2月初旬に指し値オペを実施して長期債利回り上昇を抑え込んだため、

ドル円上昇続かず、全般的ドル高と並行して円高(3/1)

【概況】

2月27日夜のパウエル米連銀議長の米下院議会証言が景気拡大、雇用、インフレ目標実現への楽観的自信を示したことで米連銀の利上げペースが加速するとの思惑からドルが全面高となり、ドル円も27日深夜には107.67円まで上昇した。しかし、一方では米長期金利上昇、利上げ加速を嫌気してNYダウが下落、28日の日経平均も下落したこと、加えて日銀が長期国債買い入れオペを減額した事等からドル円は失速、夕刻には107円を割り込んだ。
28日夜はユーロ圏の消費者物価上昇率が3か月連続で鈍化したこと、日欧米株安を背景にユーロが続落、ポンド、豪ドル、NZドル等も下落してドルストレートではドル高となったが、株安やクロス円での円高からドル円は下落、深夜には106.56円まで下げ、1日朝も安値圏に止まっている。

【利上げペースの動き】

パウエル議長の27日夜議会証言後、米短期金利先物市場では市場が織り込む利上げ確率が3月で100%、4-6月が約80%、7-9月が約70%、10-12月が50%となった。22日未明に公開された1月FOMC議事要旨でも12月会合から1月会合へ景気判断等が改善、利上げ継続への姿勢が強まった印象を与えたが、パウエル議長の証言も同様の楽観、自信を示したため3月20日、21日の次回のFOMCではメンバーの利上げ予想回数が前回から増える可能性がある。予想中央値が年3回利上げでも、4回以上の利上げ予想が12月時点よりも増加すれば利上げ加速の可能性が高まる。
こうした米連銀による利上げペース加速の可能性は、3月9日の米雇用統計がかなり悪かったり、2月序盤に発生した世界連鎖株安がより深刻に再燃する場合には後退するだろうが、雇用統計が強く、株安が発生しても暴落的深刻さというほどでなければ利上げペース拡大感は強まる可能性がある。

【日銀の国債買いオペ減額】

28日午前、日銀は残存期間25年超の国債買いオペのオファー額を前回より100億円減額した。2月初旬に指し値オペを実施して長期債利回り上昇を抑え込んだため、今回は減額の可能性もあるとみられていたため、債券市場の反応は限定的だったが、パウエル議長議会証言から上昇していたドル円にとっては水を差されることとなった。
日銀の黒田総裁が28日の衆院財務金融委員会で、大規模金融緩和から抜け出す出口戦略について、「物価目標達成後は現在の強力な緩和がそのまま続くこと考えられない」とし、「経済にショックを与えることは避けなければならない」「金融政策正常化の過程でも、かなり緩やかに経済・金融情勢を十分勘案しながら進める」と述べた。黒田日銀総裁は3月2日午後2時に衆院で所信表明するが、既に緩和政策に対しては昨年1年間、ほぼ何もできずに現状維持を繰り返してきたことから手詰まり感があり、出口戦略についても議論され始めるところとなってきていることはドル円の上値を抑える要因となりつつある。

【60分足 一目均衡表分析】

【60分足 一目均衡表分析】

60分足の一目均衡表では2月28日夜の下落で先行スパンから転落した。遅行スパンも悪化している。2月21日と22日の高値を上抜けずに失速し、26日安値に迫っているため、既に戻り一巡から新たな下落期に入っている印象があるため、遅行スパン悪化中は安値試しを優先、戻り抵抗を先行スパン下限とし、先行スパンを上抜き返す反騰が発生しない内は一段安警戒とみる。

60分足の相対力指数は23日未明安値から26日午後安値にかけての間で指数のボトムが切り上がる強気逆行型を見せ、28日朝までは指数切り上がりの支持線を上回っていたが、28日午前の下落でこの支持線を割り込み、28日夜の下落で30ポイント台へ下げている。このため戻り一巡による下落期入りの印象が強まっており、20ポイント台への下落、あるいは2月23日、14日への下落時のように20ポイント割れへ進む可能性も懸念される。強気回復には50ポイント台回復、維持へと戻す必要がある。

概ね3日から5日周期の短期的高値・安値形成サイクルでは、21日昼と22日未明高値をミニダブルトップとし、26日安値をボトムとして上昇したが、27日深夜高値でサイクルトップをつけて新たな下落期に入ってきた印象だ。26日安値106.37円割れ回避の内はもう一度戻りを試す可能性もあるが、底割れからは弱気サイクル入りとして次の安値形成期となる1日午後から5日にかけての間への下落を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、2月26日安値106.37円を支持線、107.00円を抵抗線とみておく。
(2)107円台回復、維持へと進めない内は26日安値割れからの一段安警戒とし、安値更新の場合は2月16日安値105.546円試しまで下値目処を引き下げる。また106.50円以下での推移が続く内は3月2日午前にかけても安値を試しやすいとみる。
(3)107円前後への反発では新たな強気材料の裏付けがなければ戻り売りにつかまりやすいとみる。107.00円から107.25円前後までが先行スパン帯となるのでここは抵抗がきついとみる。
(4)27日深夜高値で21日及び22日の高値を上抜けなかったため、26日安値を割り込む場合は21日からの下落が二段下げ型へと発展することになる。また昨年9月8日安値を割り込んでのリバウンドが長続きせず、早々に新たな安値更新へと進んで円高が長期化する可能性も警戒すべきと思う。(了)<9:45執筆>

【当面の主な予定】

3/1(木)
17:55 (独) 2月 製造業PMI、改定値 (速報 60.3、予想 60.3)
18:00 (欧) 2月 製造業PMI、改定値 (速報 58.5、予想 58.5)
18:30 (英) 2月 製造業PMI (1月 55.3、予想 55.0)
19:00 (欧) 1月 失業率 (12月 8.7%、予想 8.6%)
22:30 (米) 1月 個人消費 前月比 (12月 0.4%、予想 0.2%)
22:30 (米) 1月 個人所得 前月比 (12月 0.4%、予想 0.2%)
22:30 (米) 1月 PCEコア・デフレーター 前月比 (12月 0.2%、予想 0.3%)
22:30 (米) 1月 PCEコア・デフレーター 前年比 (12月 1.5%、予想 1.5%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.2万件、予想 22.5万件)
24:00 (米) 1月 建設支出 前月比 (12月 0.7%、予想 0.2%)
24:00 (米) 2月 ISM製造業景況指数 (1月 59.1、予想 58.7)

3/2(金)
08:30 (日) 2月 東京都区部消費者物価コア指数 前年比 (1月 0.7%、予想 0.8%)
08:30 (日) 1月 失業率 (12月 2.8%、予想 2.7%)
19:00 (欧) 1月 生産者物価指数 前月比 (12月 0.2%、予想 0.4%)
19:00 (欧) 1月 生産者物価指数 前年比 (12月 2.2%、予想 1.6%)
24:00 (米) 2月 ミシガン大学消費者信頼感指数 確報 (速報 99.9、予想 98.0)

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