円 底割れ回避3連続陽線でリバウンド気配(2月第一週)

米労働省が発表した1月の雇用統計では、非農業部門就業者数が前月比20.0万人増となり、市場予想の18.0万人増を上回った。

円 底割れ回避3連続陽線でリバウンド気配(2月第一週)

【概況】

1月23日の日銀金融政策決定会合での現状維持を弱気して下落、さらに1月24日の米財務長官によるドル安容認発言から一段安して110円割れとなり、1月26日未明のトランプ大統領によるドル安容認否定発言で一時的に戻したものの27日未明には108.28円まで安値が切り下がった。この時点では、トランプ発言による反発も一時的なものに止まる程度だったため、ドル安基調が継続してゆきやすい環境にあったが、1月31日午前のトランプ大統領一般教書演説、2月1日未明のFOMC、2日夜の米雇用統計と重要イベントが続くため、29日、30日は109円台に到達しても戻りを売られ、30日深夜には108.41円まで下落して底割れに余裕がなくなっていた。

しかし、31日午前のトランプ大統領一般教書演説では特に円高を助長する内容はなく、31日は週末の米労働省雇用統計の前哨戦となるADP民間雇用報告で非農業部門就業者数が前月比23.4万人増と事前予想の18.0万人増を大幅に上回ったことでドル円は上昇。さらに2月1日未明のFOMCでは予想通りに政策金利は据え置きだったがインフレ見通しがやや強めに修正されたことで続伸、1日夜には109.75円を付けて1月26日高値109.77円に迫った。

2月2日は日銀が無制限買いオペを実施して本邦の長期金利上昇および円高を抑える姿勢を示したことで2月1日高値および1月26日高値を超える上昇となった。
さらに夜の米雇用統計では非農業部門就業者数が予想の18.0万人増を超える20.0万人増となる強い数字だったことから一段高へ進み、深夜には110.48円の高値を付けて7日ぶりに110円台を回復した。深夜からは上げ一服、110円台を維持して週を終えた。

【米雇用統計反響】

米労働省が発表した1月の雇用統計では、非農業部門就業者数が前月比20.0万人増となり、市場予想の18.0万人増を上回った。失業率は横ばいの4.1%だったが、2000年12月の3.9%以来の最低水準を4か月連続で維持した。また物価上昇の先行指標となる平均時給は前月比+0.3%となり、前月の+0.4%(速報の+0.3%から上方修正)を下回ったものの高水準を維持、年比では2.9%増で2009年6月以来の高水準となった。
総じて強い内容となったため、市場は米連銀の利上げペースが加速するのではないかと受け止めてドル高反応となり、ドル円は110円を突破した。
利上げペースが加速する可能性を踏まえて米10年債利回りは高値で2.852%まで上昇、凡そ4年ぶりの高水準をつけ、NYダウは前日比665.75ドル安と暴落した。ダウの1日の下落幅としてはリーマンショックの最中だった2008年12月以来。

為替市場では豪ドル、NZドル、南ア・ランド、メキシコペソ等の資源通貨の下落が目立った。
ユーロは深夜へ反落したがその後は下げ渋り、反応としては軽微なものだった。またドル円も上昇はしたが、サプライズ的な急騰というほどではなかったが、ダウの急落が金融市場全体に警戒感を抱かせるに十分な暴落ぶりだった。ダウ急落が世界連鎖株安へ波及するリスクを踏まえて深夜以降、ユーロ、円が下落一服となってしっかりしたともいえる。

【米長期金利上昇による円安圧力と株安によるリスク回避円高の綱引き】

米長期金利はすでに年初から上昇基調にある。米連銀による利上げ継続、あるいはペースの加速という要因だけではなく、ECBの緩和終了へ向けた動きを背景としたドイツ等欧州長期債利回り上昇、トランプ政権による大規模減税や今後の巨額インフラ投資等が米財政収支の悪化、国債増発を招く可能性を見込んでの米長期債下落=結果としての利回り上昇を引き起こしている。米連銀が昨年9月からバランスシート縮小に入っているが、米連銀による米国債買い入れが縮小すれば市中での供給過剰感から米長期債利回りは上昇へ進みやすい。
この米長期債利回り上昇傾向については、1月後半にかけては円高のブレーキにはならなかった。それよりもユーロ高を中心としたドル安感が勝っていたためであり、金利上昇といっても水準そのものはまだ低かったからだ。しかし、昨年10月水準を超え、米10年債利回りが昨年1−3月期の水準を超えてきたことで、長期金利水準そのものが金融市場全般への警戒感を呼ぶレベルに至ったとして、雇用統計後のNYダウが急落するなどやや過剰反応を引き起こしたといえるのではないか。

日銀が長期金利上昇を抑えにかかる一方で米長期金利が上昇基調をこれまでよりも鮮明化したことは、長期金利差の面ではドル円にとっての大きな反騰要因となってくる。
しかし、米10年債利回りの推移とドル指数およびドル円が必ずしも正相関しないように、米長期金利上昇だけでドル円が上昇を継続できるものではない。より注目すべきは

NYダウの大幅下落が一時的なことか、トランプ大統領誕生から続いてきたトランプラリーにおける最初のまとまった急落調整期入りとなるのかどうかということになるのではないかと思う。世界的な株安の連鎖が発生する場合はリスク回避的な円高を招く可能性があるためだ。このため、2月前半において、米長期金利上昇基調が継続する中で株式市場が落ち着いた動きに止まるなら、金利差相場としてドル円は上昇を継続してゆく可能性が優勢になるが、株安が継続する場合、それもリスク回避心理を拡大させる場合はリスク回避型円高によりドル円が再び下落基調へ押し返される可能性を考える必要が出てくると思われる。

【テクニカルなポイント】

【テクニカルなポイント】

(1)1月27日未明安値までの下落幅は12月高値から5.46円幅、11月6日高値からは6.44円幅である。2016年12月天井からの下落は当初、2017年2月6日までの7.07円幅で止まって反発した。2017年3月から4月への下落は7.39円幅、6月14にかけての下落は5.52円幅、7月から9月への下落は7.17円幅であり、直近の天井から凡そ7円程度の下落で下げ一服となるパターンを繰り返してきたが、今回もそれらと同様に下げ一服からリバウンド入りしてよい程度の下げは実現している。

(2)昨年4月底108.13円、6月底108.80円、9月底107.32円が往来相場の下値支持帯を形成してきたが、今回の下げでもこの支持帯のレベルには到達している。また9月底割れをひとまず回避している。
(3)日足の相対力指数は1月末に30ポイントを割り込んだが、これは昨年4月底以来の水準である。11月安値形成時との強気逆行は見られないが、昨年4月底も強気逆行なしで戻しに入っているので、同様の展開になる可能性がある。

(4)日足は1月31日から3日連続陽線=赤三兵となったが、11月27日からの反騰入り、9月8日底打ちも3日連続陽線から上昇期に入っているので、今回もその可能性がある。
(5)(1)から(4)までは、日足レベルでリバウンド入りする可能性を示唆するが、週足では前週の陰線を解消できていないこと、概ね10か月から1年周期の天井サイクルでは、2016年12月天井に続くサイクルの天井を2017年11月に付けて下落している可能性が考えられること、前週までが週足での3週連続陰線=三羽烏であり、昨年11月高値からの下落当初に続いて二度目であることが、中勢レベルでは重要視すべき事と思われる。そのため、日足レベルでの短期的なリバウンドが継続しても、リバウンド一巡後には11月高値からの三段下げ型の下落を再開する可能性を警戒すべきと考える。

以上を踏まえて、週中のポイントを示す。
(1)2月2日深夜高値110.48円を超える上昇となる場合、108円割れ回避からのリバウンド入りの可能性を踏まえ、まず26日移動平均(110.95円近辺で下降中)及び111.00円前後試しを想定する。26日移動平均を上抜いて続伸の場合は111.50円から112円手前への上昇を想定する。111.75円以上はいったん戻り売りにつかまりやすいとみるが、111円台を固める場合はその後の上昇で112円台序盤へ一段高する可能性が出てくると思われる。その条件は株安がリスクオフ円高を招かないこと。またこのケースでのリバウンド期間は2月後半までとみる。

(2)109.50円を当初の支持線とし、一時的に割り込んでも切り返すうちは上昇継続余地ありとするが、109.50円割れから続落の場合は下げ再開注意、109円割れからは2月2日の日足陽線を解消するために下げ再開と仮定して1月27日未明安値108.28円試しへ向かうとみる。底割れの場合は9月8日安値107.32円試し、さらに107円割れを試しにかかるとみる。時期的には2月中後半に安値を付けて、その後はいったん戻しを入れやすいとみるが、金融市場全般がリスク回避的な展開から抜け出せなくなる場合は3月中後半まで下落基調が長引くとみる。(了)<4日21:50執筆>

【当面の主な予定】

2/5(月)
メキシコ休場(憲法記念日)
10:45 (中) 1月 財新サービス部門PMI (12月 53.9、予想 53.5)
17:55 (独) 1月 サービス部門PMI改定値 (12月 57.0、予想 57.0)
18:00 (欧) 1月 サービス部門PMI改定値 (12月 57.6、予想 57.6)
18:30 (英) 1月 サービス部門PMI (12月 54.2、予想 54.1)
19:00 (欧) 12月 小売売上高前月比 (11月 +1.5%、予想 -1.0%)
19:00 (欧) 12月 小売売上高前年比 (11月 +2.8%、予想 +1.9%)
24:00 (米) 1月 ISM非製造業景況指数 (12月 55.9、予想 56.5)
25:00 (欧) ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁、発言

2/6(火)
NZ休場(建国記念日)
ペンス米副大統領、来日
09:30 (豪) 12月 貿易収支 (11月 -6.28億豪ドル、予想 2.00億豪ドル)
09:30 (豪) 12月 小売売上高 前月比 (11月 1.2%、予想 -0.2%)
12:30 (豪) 豪準備銀行(RBA)政策金利発表 (現行 1.50%、予想 据え置き)
18:00 (独)ワイトマン独連銀総裁、講演
22:30 (米) 12月 貿易収支 (11月 -505億ドル、予想 -520億ドル)
22:50 (米) ブラード米セントルイス連銀総裁、講演

2/7(水)
06:45 (NZ) 10-12月期 四半期失業率 (前期 4.6%、予想 4.7%)
午 後 (日)ペンス米副大統領・安倍首相会談
14:00 (日) 12月 景気先行指数(CI)速報 (11月 108.3、予想 107.9)
16:00 (独) 12月 鉱工業生産前月比 (11月 3.4%、予想 -0.5%)
18:00 (欧) ラウテンシュレーガーECB理事、ヌイECB銀行監督委員長、講演
20:00 (米) カプラン米ダラス連銀総裁、講演
22:30 (米) ダドリー米NY連銀総裁、講演
24:15 (米) エバンス米シカゴ連銀総裁、講演

2/8(木)
朝鮮人民軍創建日

05:00 (NZ) ニュージーランド準備銀行 政策金利 (現行 1.75%、予想 据え置き)
07:20 (米) ウィリアムズ米サンフランシスコ連銀総裁、講演
08:50 (日) 12月 国際収支 経常収支 (11月 1兆3473億円、予想 1兆514億円)
08:50 (日) 12月 国際収支 貿易収支 (11月 1810億円、予想 4881億円)
未 定 (中) 1月 貿易収支(米ドル) (12月 546.9億ドル、予想 523.5億ドル)
未 定 (中) 1月 貿易収支(人民元) (12月 3619.8億元、予想 3300.0億元)
16:00 (独) 12月 貿易収支 (11月 237億ユーロ、予想 210.億ユーロ)
16:00 (独) 12月 経常収支 (11月 254億ユーロ、予想 250憶ユーロ)
17:45 (独) ワイトマン独連銀総裁、講演
18:00 (欧) 欧州中央銀行(ECB)月報
18:00 (豪) ロウRBA総裁、講演
19:30 (欧) メルシュECB理事、講演


19:45 (欧) プラートECB理事、講演
21:00 (英) イングランド銀行(BOE)金利発表 (現行 0.50%、予想 据え置き)
21:00 (英) 英中銀資産買取プログラム規模 (現行 4350億ポンド、予想 据え置き)
21:00 (英) 英中銀金融政策委員会(MPC)議事要旨、四半期物価報告
22:00 (米) ハーカー米フィラデルフィア連銀総裁、講演
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 23.0万件、予想 23.5万件)
23:00 (米) カシュカリ米ミネアポリス連銀総裁、講演
28:00 (メ) メキシコ中銀 政策金利 (現行 7.25%) 

2/9(金)
平昌五輪開会式、日韓首脳会談
08:50 (日) 1月 マネーストックM2 前年比 (12月 3.6%、予想 3.6%)
10:30 (中) 1月 消費者物価指数 前年比 (12月 1.8%、予想 1.5%)
10:30 (中) 1月 生産者物価指数 前年比 (12月 4.9%、予想 4.2%)
11:00 (米) ジョージ米カンザスシティ連銀総裁、講演
18:30 (英) 12月 貿易収支 (11月 -122.31億ポンド、-115.00憶ポンド)

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