ドル円欧米長期金利上昇イベント前で円高一服(1/30)

米商務省が発表した12月の個人消費統計では、個人消費が前月比+0.4%で市場予想と一致したが11月の+0.8%(速報の+0.6%から上方修正)からは低下した。

ドル円欧米長期金利上昇イベント前で円高一服(1/30)

【概況】

1月23日の日銀金融政策決定会合が現状維持となり、昨年から続く手詰まり感が解消しないとしてそれまで持ち堪えていた110円台から転落。さらに1月24日の米財務長官によるドル安容認発言から大幅続落して109円を割り込み、、26日未明には1108.49円まで下げた。トランプ大統領による財務長官によるドル安容認姿勢を否定する発言を行ったことから26日午前にはいったん109.77円まで戻した。しかし今度は黒田日銀総裁が「インフレ目標達成が近い」旨の発言を行ったことで108.28円まで一段安して週を終えていた。
週明けは突っ込み警戒感から下げ渋り、日中は109円前後が戻り抵抗となっていた。
夜間では欧米の長期金利が上昇する一方でユーロが下落したためドル円も30日未明への上昇で109.20円まで戻したが、その後は再び109円を割り込んで30日朝を迎えている。

米商務省が発表した12月の個人消費統計では、個人消費が前月比+0.4%で市場予想と一致したが11月の+0.8%(速報の+0.6%から上方修正)からは低下した。PECデフレーターは全体が前年同月比1.7%上昇となり、前月の1.8%上昇から鈍化した。コア指数では+1.5%で予想および前月と同じだった。全体のデフレーターは米FOMCが目標とする2%には10か月連続で到達していないが、発表後の市場反応は限定的だった。

【欧米長期金利上昇】

週明けの欧米長期金利上昇のきっかけはECB理事会メンバーであるクノット・オランダ中銀総裁発言だった。同総裁は「ECBは債券買い入れプログラムの終了の在り方を早期に明確にすべき」と発言したことが報じられたために独10年債利回りが上昇、それにつれて仏、オランド等各国長期債利回りが上昇し、欧州の長期金利上昇が米10年債、30年債利回り上昇にも波及した。このため日米長期金利差の拡大がドル円には若干の押上げ材料となったようだ。ECBのプラート専任理事も「インフレが追加的な景気刺激策なしに目標に向かうと確信した際には資産買い入れを終了する」と述べたこともこれら長期債利回り上昇を助長した。
独10年債利回り上昇を中心とした欧州各国の長期金利上昇では、米長期金利上昇も連鎖的に発生させるものの、主要な反応としてはユーロ高となったため、ドル円にとっては米長期債利回り上昇=ドル円の上昇とはなってこなかった。このため2017年1月からのドル全面安基調の長期化が日米長期金利格差によるドル円の方向付けを緩めてきた。今回も、本来ならもう少しドル円が上昇してもよいところだが、効果としては下げ渋り程度にとどまっている。

【FOMCと米大統領一般教書演説】

1月30−31日には米FOMC(連邦公開市場委員会)がある。2月1日未明に声明文の発表があり、議長会見は予定されていない。市場は3月の利上げを予想しているため、今回は現状維持とみている。声明文の中で3月利上げおよびその後の利上げ観測を強めるように景気判断を上方修正してくるかどうかが注目されている。
声明文を見るまではやや動きずらいところだが、30日夜にはトランプ大統領による一般教書演説があるため、演説内容次第では大きく動く可能性がある。

米政府関係者によると、トランプ大統領は一般教書演説において巨額インフラ投資計画の概要を示すが、詳細は2月半ばになるという。大統領選挙公約としてぶち上げてきた1兆ドルのインフラ投資計画が大規模減税計画とともに1年を超えて上昇している株のトランプ・ラリーにおける心理的な背景となってきたともいえる。具体性、現実性等を見定める必要があるが、最近では当初の1兆ドル規模から1.7兆ドル規模へと拡大するという大統領発言もあったので注目される。

【60分足 一目均衡表分析】

【60分足 一目均衡表分析】

60分足の一目均衡表では、24日夜以降は先行スパンから転落した状況が続いてきたが、29日夜の反発からは薄くなった先行スパン上限に来ており、上抜けやすくなっている。また26日夜に一段安してからはジリ高で推移してきたために遅行スパンが好転している。しかし、先行スパンが薄いため早々に転落する可能性があり、ジリ高程度のために遅行スパンも再び悪化しやすい状況にある。
109.20円を超えて続伸し始める場合は先行スパン突破を優先して109.50円から26日高値109.77円試しへ向かう可能性ありとするが、108.80円割れから続落し始める場合は先行スパンからの転落となるため下げ再開注意とし、108.50円割れからは遅行スパン悪化も顕著となるため27日未明安値108.28円試し、底割れなら107円台中後半試しへ向かいやすくなるとみる。

60分足の相対力指数は25日未明、26日未明、27日未明の安値更新に対して指数のボトムが切り上がる強気逆行型を示したが、今のところは下げ渋りを反映しているにとどまる。60ポイント超えへ上昇の場合は戻り高値試しへ向かうとみるが、40ポイント割れして来る場合は逆行ラインを割り込むために下げ再開が懸念される。

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、23日午前安値から4日目となる26日未明安値でいったんサイクルボトムを付けたが、26日午前高値からの下落で底割れしたことにより、すでに新たな弱気サイクルに入っている可能性がある。26日午前高値を超えられないうちは一段安警戒とし、安値更新の場合は31日朝から2月2日朝にかけての間への安値試しを優先する。
ただし、26日午前高値を上抜く場合は26日未明安値と27日未明安値によるダブル底型形成による強気転換として110円台後半試しへ向かう可能性が出てくる点に注意する。

以上を踏まえ、当面のポイントを示す。
(1)目先、108.80円を支持線、109.20円を抵抗線とみておく。
(2)109.20円超えの場合は109.50円前後試しと見るが、109.50円から26日高値109.77円にかけてのゾーンを抵抗帯とし、その後の反落注意とし、109円割れからは下げ再開とみる。
(3)108.80円割れからは下げ再開注意、108.50円割れからは27日未明安値108.28円試しとし、底割れの場合は30日深夜から31日にかけての下落で107.50円以下を試すとみる。その際は昨年9月8日安値107.32円割れを回避するか、底割れするのかにより、中勢レベルの展開にも大きな影響が出ると注目する。(了)<9:35執筆>

【当面の主な予定】

1/30(火)
19:00 (欧) 10-12月期GDP・速報 前期比 (前期 +0.6%、予想 +0.6%)
19:00 (欧) 10-12月期GDP・速報 前年比 (前期 +2.6%、予想 +2.7%)
22:00 (独) 1月消費者物価指数速報 前年比 (12月 +1.7%、予想 +1.7%)
23:00 (米) 11月S&P/ケースシラー住宅価格指数 前年比 (+6.3%)
24:00 (米) 1月消費者信頼感指数 (12月 122.1、予想 123.0)
24:30 (英)カーニーBOE総裁、議会証言
未 定 (米)トランプ大統領 一般教書演説

1/31(水)
08:50 (日)日銀金融政策決定会合主な意見公表
08:50 (日) 12月鉱工業生産速報 前月比 (11月 +0.5%、予想 +1.5%)
09:30 (豪) 10-12月期消費者物価指数 前期比 (前期 +0.6%、予想 +0.7%)
09:30 (豪) 10-12月期消費者物価指数 前年比 (前期 +1.8%、予想 +2.0)
10:00 (中) 1月国家統計局製造業PMI (12月 51.6、予想 51.5)
10:00 (中) 1月国家統計局非製造業PMI (12月 55.0、予想 55.0)
10:30 (日)岩田日銀副総裁、講演
19:00 (欧) 12月失業率 (11月 8.7% 、予想 8.7%)
19:00 (欧) 1月消費者物価指数(HICP)速報 前年比 (12月 +1.4%、予想 +1.3%)
22:15 (米) 1月ADP全国雇用者数 (12月 +25.0万人、予想 +17.0万人)
23:45 (米) 1月シカゴ購買部協会景気指数 (12月 67.6、予想 63.5)
24:00 (米) 12月中古住宅販売保留件数指数 前月比 (11月 +0.2%、予想 +0.5%)
28:00 (米) FOMC政策金利発表 (現状 1.25-1.50%、予想 現状維持)

オーダー/ポジション状況

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