【概況】
1月23日の日銀金融政策決定会合、黒田総裁会見の後、ドル安基調は継続として110円割れへと下落、さらに24日には米財務長官によるドル安容認発言からドル安が加速、25日未明には109円を割り込んだ。さらに25日夜のECB理事会後のドラギ総裁会見発言等を背景にユーロが一段高、ドル円も26日未明には108.497円まで安値を更新した。
4時過ぎ、ダボス会議に出席予定のトランプ大統領が強いドルを望んでいるとインタビューに答えたと報じられたことがきっかけでドルが反騰、ドル円も109.70円台まで戻した。
【米トランプ政権はドル安容認なのかドル高希望なのか?】
1月26日未明、ダボス会議出席のトランプ大統領は米CNBCテレビのインタビューに応え「ドルはより強く、さらに強くなる。最終的に強いドルを望んでいる」「米国は経済的に非常に強くなる」、「(ムニューシン財務長官発言が)ドル安容認と受け止められたことは文脈から逸脱している」と述べた。この報道をきっかけとしてドルが総じて反騰、ユーロが下落、ドル円も反発した。
1月24日夕刻に、同じくダボス会議出席の米ムニューシン米財務長官が「弱いドルは良いことだ」「米国企業が公平に競争できるようにしたい」と述べたことが米トランプ政権のドル安容認姿勢と市場は受け止めた。歴代の財務長官が「強いドルが米国の国益」という文言を繰り返してきたことに対する方針転換とも受け止められた。24日当日にはロス商務長官が「財務長官が米国の長年にわたる強いドル政策の転換を表明したわけではない」と述べて火消しに回ったが、効果はなくドル安が加速したため、過度のドル安への警戒感からトランプ大統領自らが火消しに回ったのだろうと思われる。
トランプ大統領は米中貿易不均衡問題を取り上げ、これまでもメキシコ等NAFTA諸国、日本に対して貿易不均衡是正を求めてきた。米国第一主義=保護主義であり、米国内への海外企業誘致努力や北朝鮮問題を背景とした日韓の武器大量購入要請、新興国通貨安への牽制等を繰り返してきた。
ドル安は米国の輸出企業にとってはプラスだが、ドル安で輸入額が増えれば貿易赤字問題は解消しないし、米国債の価値下落として財政ファイナンスのコスト増を招きかねないので、必ずしもトランプ政権にとってドル安誘導が是とされるものではないだろうが、短期的には米国の輸出拡大を進める上でドル安、人民元高や円高、資源通貨高等を歓迎している印象があり、財務長官発言は不用意に内心を吐露したものかもしれない。
米財務長官のドル安容認発言で過剰反応した分の下落をトランプ大統領発言でひとまず解消した。しかしそれ以前からドル安は進んできたのであり、大統領発言を以てドル安基調が終了したとは言えない。短期的なオーバーシュートに対するリバウンドを入れても、例えば1月8日以降の下落道中における戻り高値である1月18日の111.48円を超える様な高値切り上がりまで進まないと、戻したものの高値を切り下げ、その後の安値も切り下げる弱気パターンが続く可能性が残る。
【ECBは現状維持、ドラギ総裁は景気回復に自信】
ECBは2日の定例理事会でマイナス金利を含む金融政策を現状維持とした。資産購入等量的緩和については月300億ユーロ規模の購入を9月末まで継続するとの従来方針を維持した。主要政策金利は0%、上限金利の限界貸出金利が0.25%、下限金利の中銀預入金利がマイナス0.40%。
ECBのドラギ総裁は理事会後の会見で「当面は十分な金融緩和が必要」としたものの「ユーロ圏経済の力強い回復」に言及、将来の物価目標達成に自信を示した。市場は年内の量的緩和終了、来年は利上げ再開へ進む可能性が高いとみてきたが、そうした見通しを肯定するものと受け止め、総裁会見後にユーロドルは1.2535ドルまで上昇、2017年1月安値1.0341ドル以降の最高値を更新、2014年10月以来3年半ぶりの高値をつけた。その後はトランプ大統領発言で反落しているものの、中長期的なユーロ高ドル安基調はさらに継続してゆく可能性が高いのではないかと思われる。
【60分足 一目均衡表分析】
60分足の一目均衡表では、26日未明からの反騰により遅行スパンが好転し、先行スパン帯に突っ込んできている。このため、ひとまず戻り高値を試す流れとして遅行スパン好転中は高値試しを優先する。先行スパン上限の後110円前後では抵抗感も大きいと思うが、仮に先行スパンを突破、110円台維持から続伸という流れへ進むようなら110円台中盤まで戻してゆく可能性も出てくるかもしれない。ただし、110円前後を抵抗として反落し、遅行スパンが悪化してくる場合は下げ再開、一段安入り警戒と考える。
60分足の相対力指数は25日未明安値と26日未明安値更新の間で指数のボトムが切り上がる強気逆行型を見せて戻しているので、50ポイント台を維持する内は高値を試しやすいとみるが、50ポイント割れから続落し始める場合は下げ再開を疑う。
概ね3日から5日周期の高値・安値形成サイクルでは、19日午後安値と22日朝安値によるダブル底を前回のサイクルボトムとし、23日未明と午後高値をダブルトップとして下落期に入っていた。22日朝安値から4日目となる26日未明安値で直近のサイクルボトムをつけて反騰入りしたと思われる。今回の高値形成期は26日午前から30日午後にかけての間と想定されるので、109円台を維持する内は高値を試す余地ありとし、109円割れからは新たな弱気サイクル入り警戒として26日未明安値試しとし、底割れの場合は次の安値形成期となる31日未明から2月2日朝にかけての間への下落と昨年9月8日安値試しが想定されると考える。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、109円を支持線110.00円を抵抗線とみておく。
(2)109.50円以上での推移中は高値を試しやすいと仮定し、110円を超えて続伸の場合は110.50円手前への上昇を想定する。110円台序盤からは反落警戒圏とし、110円を超えた後の109.70円割れ、110円に届かずに109.50円割れするところからは下げ再開を疑う。
(3)109.50円割れからは弱気転換注意、109円割れから続落の場合は新たな底割れへ向かうと仮定し、昨年9月8日安値107.32円試しへ向かうとみる。(了)<9:35執筆>
【当面の主な予定】
1/26(金)
オーストラリア休場(オーストラリアデー)
18:30 (英) 10-12月期GDP・速報 前期比 (前期 +0.4%、予想 +0.4%)
18:30 (英) 10-12月期GDP・速報 前年比 (前期 +1.7%、予想 +1.4%)
22:00 (米)トランプ米大統領、ダボス会議で演説
22:30 (米) 12月耐久財受注 前月比 (11月 +1.3%、予想 +0.9%)
22:30 (米) 12月耐久財受注 前月比:除輸送用機器 (11月 -0.1%、予想 +0.7%)
22:30 (米) 10-12月期GDP・速報 前期比年率 (前期 +3.2%、予想 +2.9%)
22:30 (米) 10-12月期個人消費・速報 前期比年率 (前期 +2.2%)
22:30 (米) 10-12月期GDPデフレーター・速報 前期比年率 (前期 +2.1%、予想 +2.4%)
22:30 (米) 10-12月期コアPCEデフレーター・速報 前期比年率 (前期 +1.3%)
オーダー/ポジション状況
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