ドル円見通し 年初来安値更新、109円割れ(1/25)

24日夕刻、スイスのダボス会議出席中のムニューシン米財務長官が記者会見において、トランプ政権が目指す貿易不均衡是正に関連して「弱いドルは良いことだ」

ドル円見通し 年初来安値更新、109円割れ(1/25)

【概況】

1月17日安値110.19円以降は110円割れを時期尚早として下げ渋りの持合いとなっていたが、23日の日銀金融政策決定会合での現状維持発表、黒田総裁会見を通過して再び下落に転じ、24日午前には17日安値を割り込み、110円割れへと崩れた。
24日夕刻、スイスのダボス会議出席中のムニューシン米財務長官が記者会見において、トランプ政権が目指す貿易不均衡是正に関連して「弱いドルは良いことだ」「米国企業が公平に競争できるようにしたい」と述べたことからドル安が加速、25日未明には108.96円まで大幅続落した。25日午前は109円台を回復しているが、歴代の米財務長官が「強いドルは米国の国益」と繰り返してきたスタンスを否定するようなドル安誘導だったため、その後にロス商務長官が火消しに回ったもののドル全面安の流れに陥った。

【米財務長官発言、トランプ政権の保護主義とドル安誘導】

ムニューシン米財務長官は「弱いドルは良いことだ」「米国企業が公平に競争できるようにしたい」と述べた。同席したロス商務長官はこの発言に対して「財務長官が米国の長年にわたる強いドル政策の転換を表明したわけではない」と述べて火消しに回った。また「米国には通商戦争始める意図なく、公平な国際貿易目指す」とも述べた。
サンダース報道官は「米経済の力強さから、ドル相場は非常に安定している」と述べ、政権はドル高とドル安のいずれを望むかとの記者質問に対して「われわれは自由変動相場を信じている。大統領は常にそう信じてきた」と答えた。

しかし、米トランプ米大統領は23日に洗濯機と太陽光パネルに輸入関税をかける大統領令に署名し、政権発足後初めてとなる米通商法201条に基づく緊急輸入制限(セーフガード)を発動した。今後は鉄鋼やアルミニウム、知的財産権などをめぐっても何らかの措置を打ち出す可能性があるとみられている。
トランプ大統領は米中、日米の貿易不均衡是正を掲げ、米国内の企業誘致、雇用拡大への政策を実行してきた。年末に成立した30年振りの税制改革法も大規模な企業減税、海外からの米国への送金にたいする課税負担低下も盛り込んだ。アメリカ・ファーストとしての保護主義で米国の利益優先主義は一貫して貫かれている。
1月26日夜にはトランプ米大統領自身がダボス会議で演説を行うため、記者質問等に対してドルに関する言及があるかもしれない。少なくともドル高による貿易上の不利益に対しては好ましくなく、ドル安が米国の輸出拡大の寄与することを歓迎しているとも考えられる。

トランプ米大統領は24日、ホワイトハウスでの自治体首脳との会合で選挙公約のインフラ投資計画について1兆7000億ドル規模に膨らむと述べたようだ。従来は10年間で官民併せて1兆ドルを投資するという内容だったが、大幅上方修正に走ってゆく可能性がある。
トランプ大統領は2019年会計年度(2018年10月から2019年9月)の予算教書を2月12日に議会へ提出するが、その前の1月30日に一般教書演説を行うため、そこで大規模インフラ投資計画について言及すると思われる。

ドル安を誘導し、大規模なインフラ投資を行うことは、米国内の雇用、輸出、インフラ受注関連には好影響だが、これらは米財政収支の悪化、国債増発、インフレ等を引き起こす可能性がある。現に米長期債は下落、長期債利回りは上昇基調に入ってきている。ただし、通常なら米長期金利上昇がドル高要因になるものだが、「弱いドル安を反映した金利上昇」としてドル安要因となっているため、最近の日米長期金利差等がドル円に反映しなくなっている。

【欧州中銀金融政策発表】

1月25日はEC定例理事会がある。政策変更にかかわるフォワードガイダンスの表現を変えることや年内の量的緩和の終了、来年以降の利上げへのプロセスを示す流れへ向かいつつあるというのが市場のコンセンサスであるが、最近のユーロ高を踏まえると、さらにユーロ高を助長するような強気姿勢をあえて示すことはないかもしれない。現状維持ならユーロも高値圏維持の持合いか、ややトーンダウンならユーロ安ドル高、ドル円でもドル反発のきっかけになる可能性はある。もちろん、金融緩和終了へのプロセスが進みつつある印象が強まれば一段とユーロ高ドル安、ドル円でも円高が加速するきっかけになりうる。

【60分足 一目均衡表分析】

【60分足 一目均衡表分析】

60分足の一目均衡表では、23日夜の下落で遅行スパン悪化、先行スパンから転落となった。25日未明へ大幅下落したが、その後はやや下げ渋っているため、このまま新たな安値更新を回避して109円台を維持して推移すれば遅行スパンが好転してくる可能性があるが、109円台中後半には先行スパンが分厚い抵抗帯を形成しているので、反騰入りのハードルは高いと思われる。遅行スパンが好転してくる場合は先行スパン試しとその後の反落を想定し、遅行スパンが好転できずに安値更新へ進むなら、遅行スパン悪化中の安値試し継続と考える。

60分足の相対力指数は24日深夜の下落で20ポイント割れまで低下した。相当な売られ過ぎだが、指数自身は強気逆行型を見せていないため、指数は新たな安値更新に至らなくても相場が安値を更新して強気逆行型を形成するような展開余地が残る。50ポイント台回復、その後も45ポイント以上で推移してくるならひとまず戻りに入る可能性があるが、30ポイント割れからは一段安警戒と考える。

概ね3日から5日周期の高値・安値形成サイクルでは、19日午後安値と22日朝安値をダブル底として下げ渋っていたが、23日未明と午後の高値をダブルトップとして弱気サイクルに入って一段安している。今回の安値形成期は25日朝から29日朝にかけての間と措定されるので、早ければ25日未明安値で目先の底をつけた可能性もあるが、109円台後半へ戻せない内は25日夜、26日への一段安余地ありとみる。

昨年末以降、112円割れに対しては二度踏み止まり、110円割れも17日と19日の二度踏み止まった。このため、もう2円下の108円割れに対しては踏み止まる状況が発生しやすいと思うが、109円については既にいったん割り込んでいるので、さほどブレーキが利かずに次の安値更新から108円試しへ向かう可能性があるのではないかと思う。
中勢レベルでは11月6日高値を当面の天井とした下落とし、チャート上の下値支持線は9月8日安値107.32円まで見当たらなくなっている。

前年同期は12月15日と1月3日をダブル天井として下落、2月6日から3月10日までは戻したが、4月17日へ一段安している。今回は11月6日高値と12月12日のダブル天井からの下落という印象であり、前年同期に近い展開が続きやすいかもしれない。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、1月25日未明安値108.96円を支持線、109.50円を抵抗線とみておく。
(2)109.50円以下での推移中は安値更新から108円台前半試しへの下落を想定する。11月8日から17日への下落(3.22円幅)と同レベルの下落幅となる場合はN=108.26円が下値計算値となるので、それ以下は突っ込み警戒とみるが、109円以下での推移中は26日の日中も安値を試しやすいとみる。
(3)109.50円台回復、維持へと戻す場合は110円試しへの上昇を想定するが、110円前後で戻り一巡、次の下落へ向かうとみる。(了)<9:55執筆>

【当面の主な予定】

1/25(木)
18:00 (独) 1月Ifo景況感指数 (12月 117.2、予想 117.0)
21:45 (欧) 欧州中銀金融政策発表
22:30 (欧)ドラギ総裁会見
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.0万件、予想 23.5万件)
24:00 (米) 12月新築住宅販売件数 (11月 73.3万件、予想 67.5万件)
24:00 (米) 12月新築住宅販売件数  前月比 (11月 +17.5%、予想 -7.9%)

1/26(金)
オーストラリア休場(オーストラリアデー)
08:30 (日) 12月全国消費者物価指数 前年比 (11月 +0.6%、予想 +1.1%)
08:30 (日) 12月全国消費者物価指数 コア前年比 (11月 +0.9%、予想 +0.9%)
08:30 (日) 1月東京都区部消費者物価指数 コア前年比 (12月 +0.8%、予想 +0.8%)
08:50 (日) 日銀・金融政策決定会合議事要旨(12月20-21日開催分)
18:30 (英) 10-12月期GDP・速報 前期比 (前期 +0.4%、予想 +0.4%)
18:30 (英) 10-12月期GDP・速報 前年比 (前期 +1.7%、予想 +1.4%)
22:00 (米)トランプ米大統領、ダボス会議で演説
22:30 (米) 12月耐久財受注 前月比 (11月 +1.3%、予想 +0.9%)
22:30 (米) 12月耐久財受注 前月比:除輸送用機器 (11月 -0.1%、予想 +0.7%)
22:30 (米) 10-12月期GDP・速報 前期比年率 (前期 +3.2%、予想 +2.9%)
22:30 (米) 10-12月期個人消費・速報 前期比年率 (前期 +2.2%)
22:30 (米) 10-12月期GDPデフレーター・速報 前期比年率 (前期 +2.1%、予想 +2.4%)
22:30 (米) 10-12月期コアPCEデフレーター・速報 前期比年率 (前期 +1.3%)

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