2018年のドル円見通し 円高の前半、秋に一時的な反発

前年同期並みかそれ以上の円高の前半、秋に一時的な反発

2018年のドル円見通し 円高の前半、秋に一時的な反発

2018年のドル円見通し 前年同期並みかそれ以上の円高の前半、秋に一時的な反発

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「FX羅針盤」の1月の年間相場見通し、第2弾は連日精緻なテクニカル分析を提供していただいている上村さんのドル円見通しです!サイクル分析を中心に据えて構築されたメインシナリオは昨日の斎藤さんの分析とは真逆の結果に!?(編集部)
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【2018年の注目スケジュール】

1月21日 独SPD臨時党大会 = メルケル首相第1党の大連立なるか?
1月30日 トランプ大統領一般教書演説 = 巨大インフラ投資計画(1兆ドル)の実現性
2月 9日 平昌冬季五輪(2月25日まで) = 五輪後の北朝鮮有事情勢再燃か対話か
3月 4日 イタリア総選挙 = 欧州政治情勢不安拡大か沈静か
3月18日 ロシア大統領選挙  
4月8日  日銀黒田総裁任期満了 = 金融緩和政策の出口論
6月 8日 G7 カナダ (6月9日まで)
9月   自民党総裁選挙
10月   英国のEU離脱交渉終了
11月 6日 米国中間選挙 = 与党共和党優勢を維持できるかどうか

【2018年のFOMCスケジュール ★ は FRB 議長会見あり】

1月30日〜 31日  イエレン議長退任 新たなメンバーの動向
3月20日〜 21日 ★ 1回目の利上げ予想 市場の確率予想は80%
5月 1日〜 2日
6月12日〜 13日 ★ 2回目の利上げ予想
7月31日〜 8月1日
9月25日〜26日 ★ 年4回に拡大なら利上げの可能性
11月 7日〜 8日
12月18日〜19日 ★ 年3回、株安発生なら12月まで3度目の利上げは遅れる?

【バブル的な株高による投機マネーの膨張、リスクオンがドル円にまで波及していない】

NYダウは1月17日に300ドルを超える上昇となる26000ドルに乗せた。ナスダック総合指数も7000ポイントを超えていずれも史上最高値を更新した。2016年11月の米大統領選挙でトランプ大統領が誕生した直後は想定外の事態にトランプ・ショックで当日の米国株は暴落したが、その暴落を1日で消化して楽観論に転じ、その後はトランプ・ラリーと化した。リーマンショック後の上昇も8年目に入って行き詰まりかけていたところに沸き起こったラリーは2017年もほぼ一本調子の上昇を継続、連日のように史上最高値を更新してきた。

米国第一主義による米国企業擁護と雇用拡大、2017年末にまとまった30年振りの大規模減税を柱とした税制改革の実現は、緩やかな米連銀による利上げプロセスに抑圧されることなく株高を継続させた。
1月30日には一般教書演説が予定されているが、法人減税効果による企業業績向上期待とともに、もう一つの大統領選挙公約である1兆ドルの巨額インフラ整備計画も新たな株高テーマとなってくる可能性がある。
NYダウにとっては過去最大級の上昇角度で連騰状態に入り、現状は半ばバブルと化しているものの、買いが買いを呼び、持たざるリスクさえ意識されている状況にある。米ナスダック指数の上昇は1990年代後半のITバブルによる大上昇期を彷彿とさせる。
2016年初頭からの上昇はすでに丸2年に入っているため、バブルはいつ弾けても不思議ないが、現状は「もうは未だ也」と思われる。

この米国株高は投資家にとっては金融資産インフレであり、含み益の膨張は投機マネーの膨張となり、米国株式市場や不動産投資に止まらずさらに周辺のリスク市場へと波及し、リスク通貨、新興国株、更にコモディティの原油、貴金属、非鉄等の上昇を助長している。特に原油相場における投機マネーの買いポジションは過去最大となっている。
実はこうした投機マネーの膨張と周辺リスク市場へのシフトがドル安要因となっている。2017年を振り返れば、例えばユーロドルではユーロ高ドル安、ユーロ円ではユーロ高円安でもドル円はドル安円高気味の推移であったわけだが、その背景には超長期周期でのドル安サイクルが隠れている。

【米連銀による利上げ継続でもドルは下落】

2015年12月に米連銀はリーマンショック対策として始めた量的金融緩和とゼロ金利政策を終了して正常化プロセスを開始、最初の利上げを実施した。中国株等の下落により2016年は当初予定の年4回の利上げに対して2016年12月に1回の利上げを行っただけであったが、2017年は想定通りに3月、6月、12月と3回の利上げを実施した。また9月には米連銀のバランスシート縮小も開始した。
しかし、ドル指数(メジャー通貨による加重平均)は2017年1月を天井として下落、9月から10月末にかけては反発を入れたものの年末年始の下落で既に9月底を割り込む一段安となっている。

米国の長期金利は2017年3月にピークをつけてからは下降し、昨年9月以降は持合い程度の推移に止まっている。利上げプロセスにあると言っても米10年債利回りはまだ2.5%程度の低水準であり、FFレート誘導基準も1.25〜1.50%であり、今後の利上げが継続しても長期金利には下落余地が残り、多少上昇しても歴史的な低水準からなかなか抜け出せない。このため、米長期金利が多少上昇するという程度の中では米連銀による利上げ継続が必ずしもドル高トレンドを形成するものではないという解釈となる。

【ドル指数、ユーロ、ドル円の16年周期】

ドル指数は2008年3月底と2011年5月底によるダブル底から上昇し、2008年3月底から107か月目の2017年1月高値で天井をつけ、その後の下落で26か月移動平均、52か月移動平均を割り込んできている。実は2001年7月天井を形成した時も、1992年9月底と1995年4月底によるダブル底から上昇、107か月目で2001年7月天井を形成している。2002年に26か月移動平均、52か月移動平均を割り込んで、2008年までドル安基調が長期化した。ダブル底から凡そ9年の上昇を実現してからの下落という意味で両者は類似しており、52か月移動平均を割り込んだ現状は2002年当時に近い状況と考えられる。

ドル指数は1971年の変動相場制移行から14年目の1985年天井、16年後の2001年7月天井、さらに16年目となった2017年1月の天井と、概ね14年から16年の周期で大天井が形成されている可能性がある。これはドル指数に対する構成比率が凡そ6割であるユーロドルの大底周期とも合致しているため、ユーロドルは2000年10月底から16年強となる2017年1月3日に大底をつけて上昇期に入ったと考えられる。ユーロドルの上昇が1年を経過しても継続しているのは、こうした超長期周期での上昇期に入っていることが影響しているのだろうと思われる。

        ドル指数・ドル円推移(月末終値ベース)

        ドル指数・ドル円推移(月末終値ベース)

ではドル円の超長期周期はどうかというと、同じく凡そ4年周期、8年周期、16年周期のサイクルで推移しており、1995年4月底から16年目の2011年10月で前回の大底をつけ、1998年8月天井から17年目の2015年6月で大天井をつけている。
2016年6月安値から反発したが、これは16年周期の天井をつけて数か月から1年間下落した後のリバウンドであり、1991年6月、1999年5月、2008年8月への反発等、20円に満たない戻りを入れ、その後に一段安したところ等と同様の戻りだった可能性が高いと思われる。

ドル指数、ユーロドル、ドル円と同様に、豪ドル、英ポンド等も4年、8年、16年周期のサイクルで推移しており、英ポンドが2016年のブレクジットショック安値からの反騰を継続しているのも2001年底から16年目で底打ち反騰したからともいえる。
そして、これら超長期周期においてドルがサイクルの下落期にあるため、ドル円も日経平均の大上昇と同調しきれずに2017年4月以降は114円台を戻り抵抗とし、4月底に対して9月底を切り下げたのだろうと思われる。また2018年もこの超長期周期によるドル安がドル円の2018年における展開を予想する上での前提になってくると思われる。

【ドル円の10か月から1年周期】

              ドル円週足

              ドル円週足

ドル円を週足レベルで見た場合、概ね10か月から1年周期の底打ちサイクルで推移している事が分かる。2010年以降の底打ち間隔は46週から60週の範囲で推移してきた。サイクルの天井はより上位のサイクルに影響されるため短縮や延長も多いが、概ね10か月から1年周期で推移してきた。
2016年6月24日の英国ショックによる一時的急落を含め、6月から9月にかけて安値圏で三角持合いを形成したところが前々回のボトムであり、そこから1年目となる2017年9月8日安値が直近のボトムとなっている。一方で2016年12月15日と2017年1月3日のダブルトップでこのサイクルにおける前回のサイクルトップをつけており、そこから1年弱となる2017年11月6日高値で直近のサイクルトップをつけた可能性が高いと思われる。サイクルトップ形成としての11月6日への上昇は小規模であったが、超長期周期でのドル安サイクルの影響、投機マネー流入によるリスク通貨高、超長期周期でのユーロ、豪ドル、ポンド等の上昇期入りにより、ドル円の上昇が抑圧され、株高への連鎖が途絶えて伸びきれなかったと考えられる。

2016年6月24日安値とダブル底となった同年8月16日安値と2017年9月8日安値を結ぶ支持線は現在110円近辺にある。また2015年6月天井、2015年11月18日の戻り天井、2016年12月天井を結ぶ抵抗線はちょうど11月6日高値を抑えた。これら支持線、抵抗線により、現状は大きな三角持合い型を形成し、その末期に来ていると考えられる。
現状から反騰して11月6日高値を上抜く場合、抵抗線突破から上昇再開となり、昨年9月8日底からの上昇基調が継続する可能性があるが、110円割れから続落し始める場合は支持線割れとなり9月8日安値割れの場合は底割れによる新たな弱気サイクル入りとして、次の10か月から1年周期底形成への下落へ向かう可能性が高まると思われる。

以上の超長期周期、10か月から1年周期のサイクルを踏まえ、2018年の展開シナリオを構築してみよう。

【年間予想シナリオ@ 前年同期型の円高ドル安】

(1)株高とドル安の併存、米連銀の3回利上げ、ECBの夏秋における金融緩和見直し、日銀の金融緩和は量的にやや縮小気味で新たな政策は手詰まり、中程度の地政学的・有事リスクは継続すると仮定する。
(2)概ね10か月から1年周期のサイクルにおいて、2017年9月8日安値を前回のサイクルボトム、11月6日高値を前回のサイクルトップと仮定し、次のボトム形成期を2018年7月から9月にかけての間と仮定する。
(3)2016年12月15日高値118.65円から2017年9月8日底107.32円への下落と同レベルの円高ドル安とした場合の下値計算値を103.39円前後と仮定する。ややオーバーシュートで2016年6月底99.04円試しの可能性も考えておく。
(4)凡そ5か月から6か月周期レベルの中間的な安値を2月から3月にかけていったんつけて小反発期を入れ、その後の一段安で100円台序盤を目指すと想定する。7月から9月にかけての間に底打ちとなる場合、概ね10か月から1年周期のサイクルにおけるリバウンドは9月から11月にかけての間とし、戻り幅を10円程度までとする。年末は新たな下落期の序盤として下落再開中と想定する。

【年間予想シナリオA 有事リスク、株暴落等発生による急激な円高】

(1)北朝鮮有事リスクの急拡大、ないしは株暴落による金融市場全般のリスク回避が進行し、超長期的なドル安圧力に加えてリスクオフによる円の買い戻しが加速するケースの場合、下落規模は2017年レベルではなく、2016年1月のマイナス金利導入からブレクジットショックまで大幅下落した時と同様の規模となる可能性がある。
(2)安値形成期はシナリオ@と同様に7月から9月にかけて、リバンドを入れて年末には下げ再開というリズムは同じと考える。
(3)下落落規模を2015年11月から2016年6月底(ブレクジットショック)への下落並とすれば91.85円前後を下値計算値とする。また2016年同様、26週移動平均を上抜けない内は下落の継続と考える。
(4)秋のリバウンド幅は10円から15円弱までと想定する。

【年間予想シナリオB 9月底割れ回避、現状の持合い継続から年後半上昇】

(1)バブル的な株高が一段と加速、北朝鮮情勢等有事リスクが大幅に後退してドル円にもリスクオン心理が再燃する場合を想定。
(2)昨年4月以降の107円台から114円台までのレンジ相場を継続、1月末から2月への下落では9月8日安値を割り込まず、もう一度114円台へ回復する。その後の反落でも新たな底割れを回避して115円超えへ上昇、昨年後半のレンジ相場を上抜ける。
(3)このケースでは9月8日底とのダブル底、ないしは逆三尊型の底打ちとなり、7月から9月にかけての1年サイクルの底形成期を底値切り上げ型の押し目として上昇し、10月から12月にかけての間にサイクルトップを形成、118円から120円にかけてのゾーンを試す上昇へ進むと想定する。
(4)9月8日安値を割り込まない内は、この可能性は残る。年前半は114円台の抵抗を上抜けないと思うが、シナリオ@やAのように下落していかない場合は年後半の上昇で2016年12月高値を上抜くところまで上昇する可能性が出てくるだろう。ただし、概ね8年周期及び16年周期の天井である2015年6月高値を超えることはないと考える。(了)<H30年1月18日執筆>

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